キュービクルのVCB(真空遮断器)とは?|役割や交換のポイントを電気工事士が解説
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更新日:2025年12月25日

工場やビル、学校などで使われる高圧受電設備「キュービクル」は、日々の業務を支える“電気の玄関口”ともいえる存在です。
その中核を担い、万が一の事故発生時に設備を守る最後の砦となるのが、VCB(真空遮断器:Vacuum Circuit Breaker)。
同じく高圧設備内で「スイッチ」として機能するLBS(負荷開閉器:Load Break Switch) との違いが分かりづらく、複数社から見積もりを取得した際に、
- 「なぜA社はVCB、B社はLBSを提案しているのか」
- 「どちらが正解なのか分からない」
と、提案内容の違いに疑問を覚えた設備オーナーの方も少なくないかもしれません。
本稿では、「VCBの基本的な役割」や「LBSの違い」「寿命・点検・交換の考え方」「交換時に押さえておきたいポイント」を解説します。
目次
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要約
VCBの本質的な役割:
VCB(真空遮断器)は、高圧受電設備における主遮断装置として、通常時は安定して通電し、短絡や地絡などの異常時には瞬時に回路を遮断する役割を担います。OCRやGRなどの継電器が異常を検知し、その信号を受けてVCBが遮断動作を行うことで、設備全体を事故から守る“最後の砦”として機能する重要機器です。
LBSとの構成・役割の違い:
高圧設備の主遮断方式には、VCBを用いるCB形と、LBS+ヒューズで構成されるPF・S形があり、保護の考え方が異なります。CB形は継電器による精度の高い事故検出と確実な遮断が強みで、比較的大容量設備に対応可能。一方PF・S形は構成が簡素でコストを抑えやすく、小容量設備向けの方式と整理できます。
VCBが動作しないリスク:
VCBが正常に動作しない場合、事故電流を遮断できず、ケーブルや変圧器、配電盤へ異常電流が流れ続け、焼損や発火など被害が連鎖的に拡大する恐れがあります。結果として長期停電や事業停止、周辺地域への影響、損害賠償リスクに発展する可能性もあり、定期点検や計画的な更新が重要です。
キュービクルの中で、VCBはどんな役割をしているのか?
VCBとは?
VCB(Vacuum Circuit Breaker)は、高圧受電設備の主遮断装置(メインブレーカー)として使われる遮断器です。通常時は電気を安全に通電させ、短絡(ショート)や地絡など、異常電流が発生したときには、瞬時に回路を遮断することで設備を保護します。
VCBの大きな特徴は、電流遮断時に発生するアーク(火花)を、真空容器内で消弧する点にあります。これにより、高圧電流であっても安定かつ安全な遮断が可能となっています。
また、VCBは単独で動作するのではなく、設備内に設置されたOCR(過電流継電器)や、GR(地絡継電器)などの保護装置と連携して機能します。
- 継電器が短絡・地絡などの「異常」を検知
- VCBに「止めてください」という信号を出す(遮断信号)
- VCBが高圧回路を遮断する

このようにVCBは、「異常を検知して止める」システムの最終動作を担う、極めて重要な役割を果たしています。
CB形(VCB)とPF・S形(LBS+ヒューズ)の違い
高圧自家用受電設備において、事故を未然に防ぎ、設備を確実に保護するためのVCBの役割は「主遮断装置」と呼ばれます。日本では、この主遮断装置の構成により、大きく次の2つの方式に分けられます。
CB形:
継電器(OCR/GR 等)が異常を検出し、その信号を受けたVCBが回路を遮断する
PF・S形:
地絡事故:継電器が検出→LBSを解放(OFFにする)
短絡など大電流:PF(ヒューズ)が溶断し回路を遮断
「CB形」は、事故検出の精度が高く、異常電流に対して確実に遮断できるという点が大きな強みで、比較的大きな設備容量にも対応します。
対して「PF・S形」は構成がシンプルで機器スペースも小さく済むため、導入コストを抑えやすいというメリットがあります。
また、JIS(日本産業規格)の定める標準キュービクルでは、扱える容量に制限があります。
| 主遮断装置の方式 | 使用機器 | 適用できる変圧器容量(合計) |
|---|---|---|
| CB形(VCB使用) | VCB+継電器 | 4,000kVA 以下 |
| PF・S形(LBS+PF) | LBS+ヒューズ | 300kVA 以下 |
この基準により、300kVAを超える設備ではVCBを使う「CB形」が前提であり、逆に300kVA未満では、LBS+PFで構成される「PF・S形」も選択肢になると整理できます。
電気工事士に聞く、VCBが正常に動作しないと何が起きるのか?
解説者
インタビュアー
ーーーVCBが正常に動作しなかった場合、どんな影響が出るのでしょうか?
VCBが動作しないと、止めるべき電気が止まらず、設備被害が連鎖的に拡大していく、非常に危険な状況になります。これは、事故電流が本来切り離されるべき区画から排除されず、設備全体へ流れ込み続けてしまうからです。
本来、ショートや地絡が起きた際には、VCBが瞬時にその区画を遮断して被害を最小限に抑えます。しかしVCBが動作しなければ、異常な大電流がケーブルや変圧器、配電盤といった設備に流れ続け、許容電流を超える負荷によって絶縁が劣化したり、機器が焼損したり、最悪は発火に至ることさえあります。
さらに停電も長期化し、工場であればライン停止、ビルならテナントの営業停止、病院なら治療の中断など、事業そのものへの深刻な影響が発生します。特別高圧設備では、障害が施設内にとどまらず周辺一帯へ停電が広がるケースもあり、社会的損失や損害賠償リスクも無視できません。
つまり、「VCBが効かない」という状態は、車で例えるなら“ブレーキペダルを踏んでも車が止まらない”のと同じで、安全を守る最後の装置が働かないことの危険性を意味します。普段は目に触れない機器ですが、いざというときに確実に機能させるため、日常的な点検や更新判断がいかに重要かが分かります。
ーーー自社設備の外側への影響する場合もあるのでしょうか?
VCBだけではありませんが、高圧受電設備で事故が起きると、場合によっては電力会社の配電線を通じて周辺エリアにも停電が波及する可能性があります。
近隣の工場、店舗、病院、交通機関などに影響が及んでしまった際は、結果として、以下のような経営に直結する影響も無視できません。
- 損害賠償リスク
- 企業イメージの低下
- 利用者・顧客への信頼毀損
設備の更新には余裕を持って、早め早めに行動することをお勧めいたします。
施工事例
まとめ|キュービクルにおけるVCB(真空遮断器)の役割と選定・更新の考え方
本記事では、VCBを「よく分からない機器」ではなく「事業継続と安全を支える中核装置」として正しく理解し、設備規模に応じた選定と計画的な更新を行う重要性を整理しました。
- VCBは高圧受電設備を守る主遮断装置:
VCBはキュービクル内のメインブレーカーとして、通常時の安定供給と、短絡・地絡など異常発生時の瞬時遮断を担います。継電器と連携し、設備被害を最小限に抑える“最後の安全装置”です。 - CB形とPF・S形は思想と適用範囲が異なる:
VCBを用いるCB形は高精度な事故検出と確実な遮断が可能で、300kVA超の設備では原則必須となります。一方、LBS+ヒューズのPF・S形は構成が簡素で、小容量設備向けの方式として位置づけられます。 - VCBの不動作は事業リスクに直結する:
VCBが動作しない場合、事故電流が遮断されず、機器焼損や発火、長期停電へと被害が拡大する可能性があります。自社設備にとどまらず、周辺停電や損害賠償リスクにも発展し得るため、点検・更新判断が重要です。
VCBは普段意識されにくい設備ですが、万一の瞬間に確実に機能するかどうかが、設備の安全性だけでなく、事業そのものの信頼性を左右する重要な判断材料となります。
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