更新日:2026年10月3日
住居やビル、商業施設などの建物は、電力会社から電気を受け取る際に、受電する電圧によって「低圧受電」・「高圧受電」、大規模な施設では「特別高圧受電」のいずれかの方式になります。本記事では、主に低圧受電と高圧受電を比べます。どちらが適しているかは、建物の規模や設備容量、電力の使い方によって大きく変わります。
近年では、設備の増設や老朽化、電力使用量の増減をきっかけに、「現在の受電方式が本当に最適なのか」を見直す企業も少なくありません。
本記事では、大前提となる「高圧受電と低圧受電の違い」、そして設備・料金・保守体制といった観点から「切り替えを検討すべき基準」について、電気工事士の視点で解説します。
受電とは?受電電圧と高圧受電・低圧受電の意味
受電とは、外部から電気を受け入れることです。本記事では、建物や工場が電力会社の配電線などから電気を受け入れる場合を扱います。このとき受け入れる電圧を受電電圧といい、受電電圧によって「低圧受電」「高圧受電」「特別高圧受電」に分かれます。
高圧受電とは、高圧の配電線から電気を受け入れ、構内のキュービクル(高圧受変電設備)などで100V・200Vなどに下げてから使う方式です。これに対して低圧受電は、電柱上などの変圧器で100V・200Vに下げられた電気を、そのまま受け入れる方式です。
東京電力パワーグリッドの託送供給等約款では、低圧を「標準電圧100ボルトまたは200ボルト」、高圧を「標準電圧6,000ボルト」、特別高圧を「標準電圧20,000ボルト以上」と定めています。電気事業連合会の資料では、高圧の配電線の電圧は6,600Vと示されており、本記事で「6,600V(6.6kV)」と書いているのはこの配電線の電圧です。
ご自身の施設がどちらに当たるかは、電気料金の請求書や契約書に書かれた契約電力・契約種別で確認できます。敷地内にキュービクルなどの受変電設備がある場合は、高圧(または特別高圧)で受電していると考えられます。迷う場合は、契約している電力会社や電気主任技術者に確認してください。
要約
受電方式の全体像と選定基準:
多くの建物は低圧受電(100/200V)か高圧受電(6.6kVの配電線から受電)で、大規模な施設では特別高圧で受電します。
東京電力パワーグリッドの約款では、接続送電サービス契約電力が原則50kW以上2,000kW未満なら高圧、原則2,000kW以上なら特別高圧のサービスが適用されます。新たに供給を始める場合や受電設備を変更する場合などで接続送電サービス契約電力が500kW未満のときは、契約設備電力が50kW以上かどうかで供給電圧(高圧か低圧か)を判定します。低圧は住宅や小規模店舗、高圧は病院・工場・中規模ビルが代表例です。
高圧受電のメリットと適用場面:
電力・ガス取引監視等委員会の2025年8月分の集計では、1kWhあたりの平均は高圧のほうが低く、高圧は大きな契約電力にも対応できるため、電気を長時間・大量に使う施設では年間の電気料金を抑えられる場合があります。構内に自社の変圧器を持つため、設備に合わせて変圧器の容量や回路を設計できる点も特徴です。
切替判断のコスト/リスクと実務フロー:
高圧化にはキュービクル導入の初期費用と、電気主任技術者による保安管理(外部委託を含む)の費用がかかり、使用量が小さい場合は費用がメリットを上回ることもあります。
高圧→低圧は現地調査→費用比較→高圧廃止届と新低圧契約→低圧設備整備→切替→必要に応じてキュービクル撤去。低圧→高圧は適合確認→設計・見積(引込/方式含む電力会社協議)→電力会社への申込みと保安規程・電気主任技術者の手続き→設備設置・検査→受電開始。将来計画と使用量推移を踏まえ総合判断が要点です。
シリーズ記事のご紹介

低圧受電と高圧受電の違い
受電方式には特別高圧もありますが、ここでは多くの施設が当てはまる「低圧」と「高圧」を比べます。どちらを採用するかは単なる契約プランの違いではなく、建物の規模や設備容量・電力の使い方に直結する重要な判断です。
低圧受電では、電力会社から100Vまたは200Vの電圧で電気を受け取ります。多くの地域では、電気は6,600Vの高圧で配電線を通って送られてきます。電柱上などに設置されているトランス(変圧器)で降圧され、私たちの敷地内に引き込まれます。これは一般家庭と同じ方式で、小規模店舗やクリニック、オフィスなど、比較的電力消費が小さい施設で採用されています。
一方、高圧受電では、6,600Vで電力を受電し、構内に設置したキュービクル(高圧受変電設備)で100V・200Vなどの低圧に変圧してから施設内へ供給します。同じ電力を、電気方式や力率、電線の条件が同じ状態で送る場合、電圧が高いほど流れる電流は小さくなり、電線での損失も小さくなります。電力会社の約款でも、契約電力が大きくなるほど高い電圧で供給する定めになっています。
さらに、大規模な工場や商業施設などでは特別高圧(東京電力パワーグリッドの約款では標準電圧20,000ボルト以上)で受電するケースもあり、契約電力などの大きさに応じて区分が変わります。
契約電力50kWが高圧受電の目安になる理由
どの電圧で受電するかの基準は、電力会社(一般送配電事業者)の約款で定められています。東京電力パワーグリッドの託送供給等約款の場合、主な基準は次のとおりです。
- 高圧の接続送電サービスは、接続送電サービス契約電力が「原則として50キロワット以上であり、かつ、2,000キロワット未満である場合」に適用し、供給電圧は「標準電圧6,000ボルト」です。特別の事情があり契約者が希望する場合は、50kW未満でも適用することがあります。
- 接続送電サービス契約電力が原則として2,000kW以上の場合は、特別高圧(標準電圧20,000ボルト以上)です。
- 新たに供給を始める場合や受電設備を変更する場合などで、接続送電サービス契約電力が500kW未満のときは、主開閉器の定格電流などから算定する「契約設備電力」で判定し、50kW未満なら標準電圧100ボルトまたは200ボルト、50kW以上なら標準電圧6,000ボルトです。
つまり、どちらの基準でも、高圧と低圧の境目は原則として50kWです。
ただし、電灯と動力をあわせた契約設備電力が50kW以上でも、お客様が希望し、電気の使用状態や電力会社の設備の状況から低圧での供給が適当と認められた場合は、低圧で供給されることがあります。他の電力会社のエリアでは、各社の約款を確認してください。
| 区分 | 判定の目安と標準電圧(東京電力パワーグリッドの場合) | 主な用途 |
|---|---|---|
| 低圧受電 | 原則50kW未満・100V/200V | 小規模店舗・オフィス・住宅など |
| 高圧受電 | 原則50kW以上2,000kW未満・6,000V(配電線は6,600V) | 中規模ビル・病院・工場など |
| 特別高圧受電 | 原則2,000kW以上・20,000V以上 | 大型工場・商業施設・データセンターなど |
※高圧・特別高圧の範囲は、接続送電サービス契約電力によるサービスの適用区分です。低圧と高圧の境目(50kW)は、新たに供給を始める場合や受電設備を変更する場合などで接続送電サービス契約電力が500kW未満のときは、契約設備電力で判定します。
東京電力エナジーパートナーの高圧の契約では、契約電力500kW未満の場合、当月を含む過去1年間の各月の最大需要電力(デマンド)のうち最も大きい値が契約電力になります(500kW以上は協議で決定)。契約電力がどのように決まり、どうすれば抑えられるかを知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
デマンド(最大需要電力)とは?基本料金を下げる仕組みを設備オーナー向けに解説
法令上の電圧区分(低圧・高圧・特別高圧)
受電方式とは別に、電気設備の安全基準でも電圧は3つに区分されています。電気設備に関する技術基準を定める省令(第2条)の区分は次のとおりです。受電方式の「低圧・高圧」と言葉は同じですが、こちらは設備の安全基準を当てはめるための区分です。
| 区分 | 交流 | 直流 |
|---|---|---|
| 低圧 | 600V以下 | 750V以下 |
| 高圧 | 600V超7,000V以下 | 750V超7,000V以下 |
| 特別高圧 | 7,000V超 | 7,000V超 |
高圧受電にするメリット・デメリット
高圧受電にするメリット
高圧受電にするメリットは、大きく分けて以下の3点が挙げられます。
- 1kWhあたりの電気料金が低くなる場合がある
電力・ガス取引監視等委員会「電力取引の状況(令和7年8月分)」にある2025年8月分の全国の販売額を販売電力量で割ると、1kWhあたりの平均は高圧が約19.9円、低圧(電灯・電力の計)が約25.9円でした。これは全体の平均で、個々の契約の単価ではありません。
実際の料金は契約する小売電気事業者のメニューや使い方で変わりますが、工場や病院、中規模以上の商業施設など、電力を長時間・大量に使用する施設では、高圧化によって年間の電気料金を抑えられる場合があります。 - 契約電力を大きく取れる
低圧での供給は原則として50kW未満(判定の方法は前述のとおり)ですが、高圧なら東京電力パワーグリッドの場合で2,000kW未満まで受電できます。大型の機械や空調など、多くの電力を必要とする設備を使う施設や、設備の増設を見込む施設に向いています。 - 設備に合わせて受変電設備を設計できる
低圧受電では、電柱上などにある電力会社の変圧器から電気を受けます。高圧受電では構内に自社の変圧器を設けるため、使う設備に合わせて変圧器の容量や構内の回路を設計できます。
高圧受電にするデメリット
一方で、高圧受電には避けて通れないコストや手間といったデメリットもあります。
- キュービクルの設置・保守コストがかかる
高圧を受電するためには、構内に変圧器や遮断器を備えた専用設備が必要です。費用は容量や機器の構成、設置条件によって大きく変わり、小容量でも数百万円規模になることが一般的です。また、設置場所や搬入ルートの確保など、建物側の条件も確認しなければなりません。 - 保安管理の体制と費用が必要
高圧で受電する設備は、電気事業法上の「自家用電気工作物」にあたります。設置者には、技術基準に適合するよう維持すること(第39条)、使用開始前に保安規程を定めて届け出ること(第42条)、電気主任技術者を選任すること(第43条)が求められます。
自社で電気主任技術者を選任する代わりに、要件を満たす事業者と保安管理業務の委託契約を結び、産業保安監督部長などの承認を受けて、電気主任技術者を選任しない方法もあります(電気事業法施行規則第52条第2項)。こうした保安管理の費用は毎年かかり、受変電設備を構成する機器を更新する時期には、まとまった工事費用も必要になります。
このように、高圧受電は「電気料金を抑えられる場合がある一方で、設備費・保安管理の費用が必要」という性質を持つため、電力使用量が少ない場合は、メリットよりコストが勝ってしまうケースもあります。そのため、高圧化は単純に「電気代が安くなるか」だけで判断するのではなく、建物の将来計画や使用電力量の推移も踏まえたうえで、総合的に判断することが重要です。
保安規程の届出や電気主任技術者の選任、外部委託の手続きを詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
キュービクルの保安規程とは?電気事業法で義務付けられる届出・電気主任技術者の選任・罰則まで解説
キュービクル本体と設置工事にかかる費用の目安や、価格を左右する要素は、以下のシリーズ記事で解説しています。
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電気工事士に聞く、高圧受電を低圧受電へ切り替えるときの流れ
解説者
高橋 宏武
インタビュアー
岩見啓明
ーーー高圧受電から低圧受電への切替を検討するとき、どんなステップで進めるのでしょうか?
まずは現地確認を行い、現在の電力契約内容、設備の状況、電力使用量などをチェックし、低圧化の可否を判断します。
継続して高圧を使う場合のコスト(設備維持・保守費用など)と、低圧化に伴う工事費・解体費・新契約費用の見積りを比較したうえで、最終判断をお願いしています。
また、低圧に切り替えた場合の「電気料金単価」「契約メニュー(電灯・動力など)」も併せて確認することが重要です。
ーーー切り替えのためには、電力会社への申請なども必要ですか?
はい。既存の高圧契約を廃止するための「高圧契約の廃止届」を、電力会社に提出する必要があります。また同時に、新たな低圧契約(電灯契約や低圧動力契約など)の申込みも必須となります。
※電力会社への手続きとは別に、通常の方法で電気主任技術者を選任している場合は、解任したときの届出(電気事業法第43条第3項)も必要です。許可を受けて選任している場合などの手続きは、所轄の産業保安監督部に確認してください。保安管理業務を外部に委託している場合の手続きは、委託先や所轄の産業保安監督部に確認してください。
ーーーどのような工事を行うのでしょうか?
まずは低圧受電用として、配線・分電盤の設置、低圧メーターの設置などを行い、低圧受電が可能な環境を整えます。低圧での受電開始日を確定し、電力会社および施工業者と協力して切替を実施することで正式に低圧受電での電力使用が開始されます。
その後、高圧受電を停止し、必要に応じてキュービクル(変圧設備)を撤去または処分します。処分する場合は、産業廃棄物として適正に処理を行います。
高圧受電を続けるか低圧に切り替えるかは、設備の維持費と、切り替えの工事費や撤去費を並べないと決められません。恒電社は現地で契約内容と設備・使用量を確かめ、両方の費用を比べられる形でお示しします。
低圧受電を高圧受電へ切り替えるときの流れ
ーーー使用電力量の増加や新設備導入などにより、低圧から高圧への切り替えを検討するときは、どんなステップで進めるのでしょうか?
現在の使用電力量や設備状況(分電盤、負荷設備、建物構造など)を確認し、高圧受電への適合性をチェックしたうえで、高圧化への可否を判断します。
キュービクル設置や高圧設備の構成、必要な申請作業などを含めた工事内容・コスト見積もりを受け取る際には、電力会社との協議が必要かどうか、送電方式や引込線の仕様変更があるかどうかも併せて確認します。
ーーー高圧化が決まった際は、どのような手続きを行えば良いのでしょうか?
電力会社へ「高圧受電契約申込み」「電圧変更届」を提出します。
弊社の場合、契約内容や引込線・変圧設備の仕様、供給開始タイミングなどが正式に決定した後は、全て代理で申請しておりますので、ご安心ください。
※申込みの名称や様式は電力会社によって異なり、弊社が代理で行う申請の対象と範囲は案件ごとにご説明します。
電力会社への申込みとは別に、設置者(お客様)が行う電気事業法上の手続きとして、使用開始前の保安規程の届出(第42条)と、電気主任技術者の選任(第43条。通常の選任では選任の届出も必要)があります。外部委託により電気主任技術者を選任しない場合は、承認申請を行い、承認を受ける必要があります(電気事業法施行規則第52条第2項)。これらは、選任する電気主任技術者や委託先と相談しながら進めます。
ーーー高圧受電への切替では、どのような工事を行うのでしょうか?
構内に、変圧器・遮断器・メーター・引込線などを含む高圧受変電設備の設置工事を行います。工事後は、電力会社および施工業者による設備・安全確認を経て、高圧での受電が開始されます。
※受電開始に向けては、選任した電気主任技術者または保安管理業務の委託先と、保安上必要な確認・手続きを進めます。恒電社が担うのは工事で、保安管理業務は電気主任技術者(または委託先)の領域です。
キュービクルの構成要素についての詳細は、ぜひ以下の記事をお読みください。
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施工事例
高圧受電設備(キュービクル)を新設した工事と、将来の高圧への復帰も見据えて高圧から低圧へ切り替えた工事が、実際にどう進んだのかは以下の施工事例でご覧いただけます。
まとめ
受電とは外部から電気を受け入れることで、建物や工場の受電方式は、受電電圧によって低圧受電(100V・200V)、高圧受電(6,600Vの配電線から受電)、特別高圧受電に分かれます。
東京電力パワーグリッドの約款では、接続送電サービス契約電力が原則50kW以上2,000kW未満なら高圧、原則2,000kW以上なら特別高圧のサービスが適用されます。新規供給・受電設備変更等で同契約電力が500kW未満の場合は、契約設備電力を用いて低圧・高圧の供給電圧を判定します。
高圧化・低圧維持の判断は、現在の使用電力量と負荷時間、将来の設備増設計画を前提に総合的に比較することが重要です。2025年8月分の全国の集計では1kWhあたりの平均は高圧のほうが低くなっていますが、実際の料金は契約や使い方で変わり、その一方で、キュービクル導入の初期費用や、電気主任技術者による保安管理の費用がかかります。
使用量が小さい場合は低圧が有利になりやすく、契約電力や設備容量が50kWに近づいている、あるいは増設が見込まれる場合は、高圧化も含めて早めに検討するのが安心です。
高圧化する場合は、保安管理の体制と機器の更新計画、停電計画・資金手当を前倒しで策定し、引込方式や搬入・設置スペースなどを早期に洗い出します。
「設備の増設で契約電力が50kWに近づいてきた」「キュービクルの更新時期が来たが、低圧に切り替えたほうがよいのか分からない」といった段階でも、ご相談いただけます。恒電社では、現地で受電設備と電気の使い方を確認したうえで、高圧のまま更新する場合と低圧へ切り替える場合の工事内容と費用を比べられる形でご提案します。
この記事を書いた人
蕨川 真央



