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【高圧受電と低圧受電の違い #1】「受電」の基礎知識とメリット・デメリット

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#高圧・低圧切り替え

住居やビル、商業施設などの建物は、電力会社から電気を受け取る際に「低圧受電」または「高圧受電」のいずれかの方式を採用しています。どちらが適しているかは、建物の規模や設備容量、電力の使い方によって大きく変わります。

近年では、設備の増設や老朽化、電力使用量の増減をきっかけに、「現在の受電方式が本当に最適なのか」を見直す企業も少なくありません。

本記事では、大前提となる「高圧受電と低圧受電の違い」、そして設備・料金・保守体制といった観点から「切り替えを検討すべき基準」について、電気工事士の視点で解説します。

要約

受電方式の全体像と選定基準
建物は低圧受電(100/200V)か高圧受電(6.6kV)を採用し、規模・設備容量・使い方で最適解が異なります。高圧は電流が小さく送電ロスが減るため大量需要に適し、特別高圧(22kV~)は大型施設向け。実務上は契約電力50kW超で高圧化を検討するケースが増え、低圧は住宅や小規模店舗、 高圧は病院・工場・中規模ビルが代表例です。

高圧受電のメリットと適用場面
高圧契約は電力量単価が相対的に低く、契約電力も大きく確保できるため、長時間・大負荷運用で年間コストを圧縮できます。キュービクルで安定電圧に変換することで電圧変動が小さく、精密機器や製造ライン、医療機器の誤作動リスクを低減。将来の設備増設や事業拡大に備えた供給余力の確保にも有利です。

切替判断のコスト/リスクと実務フロー
高圧化はキュービクル導入に数百万円規模の初期費用と、保安管理・定期点検等のランニングが不可避で、使用量が小さい場合は費用がメリットを上回ることも。高圧→低圧は現地調査→費用比較→高圧廃止届と新低圧契約→低圧設備整備→切替→キュービクル撤去。低圧→高圧は適合確認→設計・見積(引込/方式含む電力会社協議)→高圧受電契約申込み・電圧変更届→設備設置・検査→受電開始。将来計画と使用量推移を踏まえ総合判断が要点です。

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【高圧受電と低圧受電の違い #2】設備・コスト・選び方を電気工事士目線で解説

低圧受電と高圧受電の違い

電気の受電方式は、大きく「低圧」と「高圧」に分けられます。どちらを採用するかは単なる契約プランの違いではなく、建物の規模や設備容量・電力の使い方に直結する重要な判断です。

低圧受電では、電力会社から100Vまたは200Vの電圧で電気を受け取ります。多くの地域では、電気は6,600Vの高圧で配電線を通って送られてきます。電柱上に設置されているトランス(変圧器)で降圧され、私たちの敷地内に引き込まれます。これは一般家庭と同じ方式で、小規模店舗やクリニック、オフィスなど、比較的電力消費が小さい施設で採用されています。

一方、高圧受電では、6,600Vで電力を受電し、構内に設置したキュービクル(高圧受変電設備)で100V・200Vなどの低圧に変圧してから施設内へ供給します。高い電圧で受け取る理由はシンプルで、電圧が高いほど電流が小さくなり、ロスが減るためです。大量の電力をまとめて送る際、送電効率を上げるために高圧受電が適しています。

さらに、工場や大型商業施設などでは特別高圧(22,000Vや66,000V)で受電するケースもあり、電力使用量の大きさに応じて区分が変わります。一般的には、契約電力が50kW以上になると、高圧受電契約の対象となり、高圧受電への切り替えを検討するケースが多くなります。

区分電圧主な用途
低圧受電100V・200V小規模店舗・オフィス・住宅など
高圧受電6,600V中規模ビル・病院・工場など
特別高圧受電22,000V〜大型工場・商業施設・データセンターなど

高圧受電にするメリット・デメリット

高圧受電にするメリット

高圧受電にするメリットは、大きく分けて以下の3点が挙げられます。

  • 電気料金単価が下がる
    高圧契約は、低圧契約に比べて電力量単価が低く設定されています。そのため、工場や病院、中規模以上の商業施設など、電力を長時間・大量に使用する施設では、高圧化によって年間の電気料金が大きく削減できるケースがあります。
  • 契約電力を大きく取れる
    電力会社から高圧で受けて構内で降圧する方式のため、大量の電力を一度に必要とする設備でも余裕をもって運用できます。設備増設や事業拡大を見据えて電力供給能力を確保したい企業にとって、大きなメリットといえます。
  • 電圧変動が少なく安定性が高い
    高圧で受電し、自社のキュービクルで安定した電圧に変換してから構内に供給するため、電圧変動が少なく、精密機器や大型設備の誤作動リスクを抑えられます。製造ラインや医療機器など、電源品質が業務に直結する現場では、この“安定供給力”が高圧受電の価値をさらに高めています。

高圧受電にするデメリット

一方で、高圧受電には避けて通れないコストや手間といったデメリットもあります。

  • キュービクルの設置・保守コストがかかる
    高圧を受電するためには、構内に変圧器や遮断器を備えた専用設備が必要で、導入には一般的に数百万円規模の初期投資が発生します。また、設置場所や搬入ルートの確保など、建物側の条件も確認しなければなりません。
  • 専門業者による点検が必須
    高圧受変電設備は、電気事業法に基づき、保安管理や定期点検が義務づけられています。点検費用は毎年かかるランニングコストとして計上され、設備更新のタイミング(設備によって変動・通常10〜30年ごと)には、再び大きな投資が必要になることもあります。

このように、高圧受電は「電気料金は下がるが、設備費・保守費が必要」という性質を持つため、電力使用量が少ない場合は、メリットよりコストが勝ってしまうケースもあります。そのため、高圧化は単純に「電気代が安くなるか」だけで判断するのではなく、建物の将来計画や使用電力量の推移も踏まえたうえで、総合的に判断することが重要です。

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電気工事士に聞く、高圧受電を低圧受電へ切り替えるときの流れ

解説者

高橋 宏武
一級電気施工管理技士/第一種電気工事士

高橋 宏武

大学卒業後、恒電社に入社したプロパー社員。電気工事士として、住宅の電気工事に加え、法人向けの高圧電気設備工事の直接提案を開始するなど、現在の会社の礎を創ってきたメンバー。2020年からは事業部長として、エンジニアリング事業部を統括している。プロフィールはこちら

インタビュアー

岩見 啓明
第二種電気工事士/二等無人航空機操縦士

岩見 啓明

前職はWebメディアの編集者。恒電社に参画後はマーケティングに従事し、現在は採用全般も担当している。2023年に二等無人航空機操縦士(ドローン)資格、2024年に第二種電気工事士資格を取得。プロフィールはこちら

ーーー高圧受電から低圧受電への切替を検討するとき、どんなステップで進めるのでしょうか?

まずは現地確認を行い、現在の電力契約内容、設備の状況、電力使用量などをチェックし、低圧化の可否を判断します。

継続して高圧を使う場合のコスト(設備維持・保守費用など)と、低圧化に伴う工事費・解体費・新契約費用の見積りを比較したうえで、最終判断をお願いしています。

また、低圧に切り替えた場合の「電気料金単価」「契約メニュー(電灯・動力など)」も併せて確認することが重要です。

ーーー切り替えのためには、電力会社への申請なども必要ですか?

はい。既存の高圧契約を廃止するための「高圧契約の廃止届」を、電力会社に提出する必要があります。また同時に、新たな低圧契約(電灯契約や低圧動力契約など)の申込みも必須となります。

ーーーどのような工事を行うのでしょうか?

まずは低圧受電用として、配線・分電盤の設置、低圧メーターの設置などを行い、低圧受電が可能な環境を整えます。低圧での受電開始日を確定し、電力会社および施工業者と協力して切替を実施することで正式に低圧受電での電力使用が開始されます。

その後、高圧受電を停止し、必要に応じてキュービクル(変圧設備)を撤去または処分します。処分する場合は、産業廃棄物として適正に処理を行います。

低圧受電を高圧受電へ切り替えるときの流れ

ーーー使用電力量の増加や新設備導入などにより、低圧から高圧への切り替えを検討するときは、どんなステップで進めるのでしょうか?

現在の使用電力量や設備状況(分電盤、負荷設備、建物構造など)を確認し、高圧受電への適合性をチェックしたうえで、高圧化への可否を判断します。

キュービクル設置や高圧設備の構成、必要な申請作業などを含めた工事内容・コスト見積もりを受け取る際には、電力会社との協議が必要かどうか、送電方式や引込線の仕様変更があるかどうかも併せて確認します。

ーーー高圧化が決まった際は、どのような手続きを行えば良いのでしょうか?

電力会社へ「高圧受電契約申込み」「電圧変更届」を提出します。

弊社の場合、契約内容や引込線・変圧設備の仕様、供給開始タイミングなどが正式に決定した後は、全て代理で申請しておりますので、ご安心ください。

ーーー高圧受電への切替では、どのような工事を行うのでしょうか?

構内に、変圧器・遮断器・メーター・引込線などを含む高圧受変電設備の設置工事を行います。工事後は、電力会社および施工業者による設備・安全確認を経て、高圧での受電が開始されます。

キュービクルの構成要素についての詳細は、ぜひ以下の記事をお読みください。

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施工事例

まとめ

高圧化・低圧維持の判断は、現在の使用電力量と負荷時間、将来の設備増設計画を前提に総合的に比較することが重要です。一般的に高圧は電力量単価が下がりますがその一方で、キュービクル導入の初期費や保安管理・定期点検といったランニングコストが増えます。小負荷なら低圧が有利になりやすく、契約電力が概ね50kWを超える、あるいは増設が見込まれる場合は高圧化を軸に検討するのが妥当です。

高圧化する場合の保安管理体制と更新計画(目安10〜30年)、停止計画・資金手当を前倒しで策定し、引込方式や搬入・設置スペースなどを早期に洗い出します。

作業工程や、コスト・工期・運用リスクのバランスについてお悩みでしたら、まずは恒電社にお気軽にお問い合わせください。

記事を書いた人

蕨川 真央
恒電社

蕨川 真央

教育・医療業界を経験したのち、結婚出産を経て恒電社に参画。現在は、マーケティングや採用領域のアシスタントとして従事する。プロフィールはこちら

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