【高圧受電と低圧受電の違い #2】設備・コスト・選び方を電気工事士目線で解説
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更新日:2025年12月25日

建物の規模や設備容量、電力の使い方によって選択が変わる「低圧受電」と「高圧受電」。本シリーズでは、電力会社から電気を受け取る際のこの2つの受電方式について、段階的に解説しています。
#1では、「受電」の基礎知識と、それぞれのメリット・デメリットを整理しました。その一方で、
- 「では、自社の場合はどちらを選ぶべきなのか?」
- 「設備やコスト面では、具体的に何が変わるのか?」
と、判断に迷われている方も多いのではないでしょうか。
受電方式の選択は、単なる電気料金の比較だけでなく、設備構成・初期費用・保守コスト・将来の設備計画まで含めて考える必要があります。
選び方を誤ると、「思ったほど電気代が下がらない」「将来の増設に対応できない」といった問題につながることもあります。
本記事では、電気工事士の視点から、設備・コスト・実務上の判断ポイントを中心に解説します。
目次
要約
受電方式選定の全体像:
高圧・低圧の選択は単なる料金の比較に留まらず、設備構成・初期費用・保守費用・更新周期、将来増設まで含む重要な判断です。一般的に契約電力50kW未満は低圧、50kW以上や長時間の大負荷運用は高圧の使用が有利となります。
工事負担金と「低圧切替 vs 高圧設備更新」:
低圧切替では、電力会社側の設備工事が必要な場合には、工事負担金が発生する可能性があります。都市部で道路掘削・配管撤去等が重なると数百万円規模に膨張し得ます。見積り例としては、高圧更新約600万円に対し低圧切替700万円超で逆転し、高圧を継続する判断も現実的です。
高圧継続と低圧化の判断基準:
契約電力50kW未満は低圧、50kW以上は高圧とするのが目安ですが、工事負担金の有無、引込方式・設置スペース、更新周期、将来の設備計画を加味し、総合的に比較・最適化する必要があります。判断が難しい場合は電気工事会社などの専門家への相談も推奨されます。
シリーズ記事のご紹介
【高圧受電と低圧受電の違い #1】「受電」の基礎知識とメリット・デメリット
高圧化を検討したものの、低圧受電のままで工夫できるケース
解説者
インタビュアー
ーーーーーー「高圧化を検討したものの、低圧受電のままで対応できるケース」はありますか?
結論から言うと、経験上はほとんどありません。 高圧化を検討する段階に来ている時点で、多くの場合、事業者(お客さま)側が電力の使い方を工夫しなければならないほど、低圧の契約容量に余裕がない状態だからです。
理論上は、事業者が電力の使い方や設備の運用を調整し、
- 設備の稼働時間をずらす
- 使用エリアを分けて、同時使用を避ける
といった形で電力使用のピークを抑えられれば、低圧受電のまま運用できる可能性はあります。
ーーーなるほど。一時的なピークを避ける、という考え方ですね。
はい、そういう考え方です。
例えば「30分〜1時間だけ使用電力が50kWを超える」というケースであれば、常時その電力が必要なわけではないため、事業者側の運用次第でピークを抑えられないかを検討すること自体は可能です。
ただし実際には、起動時に大きな電力を必要とする設備も多く、事業者(お客さま)側の運用調整だけで解決できるケースはほとんどありません。
ーーー過去の事例として、「工夫して低圧のまま運用できた」というケースはありますか?
正直に言うと、記事として紹介できるような実例はほぼありません。
敷地が広い場合など、理論上は「使用エリアを限定して電力を分散させる」といった方法も考えられますが、実務経験上は現実的ではないという印象です。
ーーーでは、「高圧化を検討=ほぼ高圧化が必要」という理解で良いでしょうか?
はい、その理解で問題ありません。高圧化を検討する段階に来ている時点で、低圧の限界を超えていることがほとんどです。
だからこそ私たちも「本当に高圧化が必要なのか」「工夫で回避できる余地はないか」を一度は確認しますが、最終的には高圧化に進むケースが大半ですね。
低圧化を検討したものの、高圧受電のまま使い続けるケース
ーーー 一方で「低圧化を検討したものの、高圧受電のまま使い続けるケース」としてはどのようなものがありますか?
高圧受電のまま使い続ける、一番多い理由は「工事負担金が想定以上に大きくなるため」です。
低圧に切り替える際、電力会社側が供給容量を確保するための工事が必要になる場合があります。そのときに発生するのが、いわゆる工事負担金です。
ーーー必ず発生するものではないんですよね?
そうですね。ケースによっては発生しないこともありますし、発生しても30万円前後で収まる場合もあります。ただ一方で、条件が悪いと金額が一気に跳ね上がることがあります。
ーーーどのようなケースで、どのくらいまで上がることがあるのでしょうか?
東京都内などの都市部では、
- 道路掘削が必要になる
- 既存配管の撤去・埋設を行う
といった条件が重なると、工事負担金だけで数百万円規模になることもあります。状況によっては、1,000万円近くになるケースもあり得ます。
その結果、「低圧に切り替えたい気持ちはあるけれど、この工事負担金を見ると現実的ではない」と判断されるお客さまは少なくありません。
「低圧切り替え」VS「高圧設備更新」
もちろん工事負担金だけでなく、低圧切り替え工事全体にかかる金額を考えた結果、高圧設備を更新して使い続けた方が、コストメリットを生む場合もあります。
ーーー実際の判断例として、どのようなケースがありましたか?
例えば、以下のような見積りになったケースがありました。
- 高圧設備をそのまま更新する場合:600万円程度
- 低圧へ切り替える場合:700万円以上
この場合、「だったら無理に切り替えず、高圧設備を更新した方がいい」という判断になります。
ーーー高圧は電気料金単価が安い一方で、保守費用がかかるという話もありましたよね。
はい。契約内容にもよりますが、高圧は電力量料金(使用量)が比較的安価である一方、保守・点検が必要という特徴があります。
※電気料金の構成と仕組みについては、こちらの記事をご覧ください。
ただ、それを踏まえても、工事負担金が大きすぎる場合は、高圧継続の方がトータルで合理的になることが多いです。
ーーーでは、「低圧化を断念する理由」としては、やはり工事負担金が最大要因になりますか?
間違いなく第1位の理由ですね。これまでの経験上も 「工事負担金がネックになって低圧化を断念する」というケースが圧倒的に多いです。
技術的には可能でも、費用を見た瞬間に現実的ではなくなる。それが低圧化の難しさだと思います。
ーーー最後に、これから高圧・低圧の切り替えを検討する方へ、伝えたいことはありますか?
結論としては、「高圧か低圧か」だけで判断しないことが重要だと思います。
- 切り替えにいくらかかるのか
- 更新した場合はいくらなのか
- 工事負担金は発生するのか
こうした条件を一度すべて整理した上で比較する。それが、後悔しない判断につながります。
判断基準のまとめ
| 項目 | 低圧受電に向くケース | 高圧受電に向くケース |
|---|---|---|
| 契約電力 | 50kW未満 | 50kW以上 |
| 初期費用 | 抑えたい | 投資して単価を下げたい |
| 電気料金 | 単価は高いが固定費少なめ | 単価が安く、使用量が多いほど有利 |
低圧と高圧の違いは、単なる契約区分ではなく経営判断に関わる重要な要素の1つです。実際の判断では、「工事負担金の有無」や「将来の設備増設計画」といった要素も加えて、総合的に比較することが重要です。
設備投資・維持費・使用電力量のバランスを見極め、最適な受電方式を選ぶことで、電力コスト削減やトラブル予防にもつながります。「自社の設備に高圧・低圧どちらが適しているかわからない」「切り替えコストや手続きを具体的に知りたい」という方は、お気軽にご相談ください。
施工事例
まとめ
受電方式の選定は、料金単価だけでなく初期投資・保守費用・更新頻度まで含んで、総合的に比較・検討し、判断すべき事項です。「契約電力50kW」は一つの目安に過ぎず、負荷の時間分布や電源品質要件、引込方式・設置スペース、そして何より工事負担金の有無と規模が結論を大きく左右します。
運用分散で低圧を維持できる可能性は理論上あっても実務では稀で、高圧化を検討する段階では多くが高圧移行に至ります。一方、低圧切替は電力会社側工事の負担金が膨らむと更新との費用逆転が起き、高圧継続の方が有利になるケースも現実的です。
まずは現地調査と需給データの把握、更新と切替の比較見積、電力会社との協議を早期に進め、停止計画や産廃処理を含む工程を繁忙期前に確保しましょう。契約電力だけでなく総合的に判断した上で意思決定することが、コスト削減とトラブル予防への最短ルートです。まずはお気軽にご相談ください。
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