更新日:2026年10月22日
キュービクルの更新や省エネ設備の導入を検討する際、「そもそも自社の電気料金がどのように決まっているか」を正確に把握できている担当者の方は、意外と少ないのではないでしょうか。
電気料金は「使った分だけ払う」という単純な仕組みではなく、複数の要素が組み合わさって決まります。その構造を知らないまま設備投資や省エネ対策を進めると、効果の薄い対策に費用をかけてしまったり、コスト削減の本質的なポイントを見逃してしまうことがあります。
加えて、高圧受電の電気料金制度は近年大きく変化しています。たとえば東京電力エナジーパートナーでは、2024年4月に新しい標準メニュー(3プラン)が始まり、2026年3月末で高圧・特別高圧の旧標準メニューが廃止されました。料金の全体像を正確に把握することが、適切な設備投資・契約判断の前提となります。
基本料金を決めるデマンドの仕組みや、燃料費調整・再エネ賦課金の詳細、高圧受電と低圧受電の違いから知りたい方は、以下の記事もご参考ください。
本記事は、電気料金の仕組みについて専門家が解説した動画・記事をもとに、高圧受電設備を持つ法人の設備オーナー・設備担当者向けに再編集したものです。
要約
電気料金は「3層構造」で成り立っている
企業が支払う電気料金は、説明のために大きく「基本料金」「電力量料金」「その他(燃料費調整額・市場価格調整額・再エネ賦課金)」の3つに分けて整理できます。それぞれ決まり方の仕組みが異なるため、コスト管理においても対策の打ち方が変わります。
基本料金は「使用量の合計」ではなく「ピーク」が左右する
基本料金は、契約電力と基本料金単価をもとに算定されます。東京電力エナジーパートナーの高圧・契約電力500kW未満(実量制)では、その契約電力が、当月を含む過去1年間の最大需要電力(30分ごとの平均使用電力の月間最大値)で決まります。この仕組みを把握しているかどうかが、設備運用コストの管理精度に直結します。詳細は#2で解説します。
自社で決められない単価と、使い方で変わる支払額を区別して把握する
電力量料金は契約メニューの選び方や使い方の工夫で改善できる余地があります。一方、燃料費調整額・市場価格調整額や再エネ賦課金は、単価を企業側で決めることができず、市場や制度によって変動します(支払額は使用量や契約条件によって変わります)。この区別を意識することが、実効性のあるコスト管理の出発点になります。詳細は#3で解説します。
電気料金を構成する3つの要素
電気料金の請求書は一見複雑に見えますが、構造を分解すると以下の3つの要素に整理できます。なお、東京電力エナジーパートナーの標準メニューの料金は「基本料金と電力量料金の合計に再エネ賦課金を加えた金額」で、燃料費調整額・市場価格調整額は電力量料金に適用されます。本記事では、仕組みを分けて理解するために、これらの調整額を「その他」として別枠で整理しています。
| 構成要素 | 決まり方の原則 | 制御の可否 |
|---|---|---|
| 基本料金 | 契約電力と基本料金単価をもとに算定(実量制では契約電力を最大需要電力の実績で決定) | △(設備・運用の工夫で改善できる余地あり) |
| 電力量料金 | 使用量×単価。契約メニューによって異なる | △(メニュー選択・使い方の工夫で改善できる余地あり) |
| 燃料費調整額・市場価格調整額・再エネ賦課金 | 燃料価格・卸電力市場価格・国の制度によって単価が決まる(調整の適用は契約プランによる) | ✕(単価は企業側で決められない。支払額は使用量や契約条件で変わる) |
それぞれの概要を順に整理します。
基本料金
基本料金は、契約電力と基本料金単価をもとに算定されます。実量制では、その契約電力が、30分ごとの平均使用電力の月間最大値(最大需要電力)の実績で決まります。この最大需要電力は「デマンド」とも呼ばれます。
「ほとんどの時間帯は省エネで運用しているのに、特定の時間帯だけ電力が集中してしまっている」という状況でも、そのピークが契約電力を通じて基本料金に影響します。月間の使用電力量や月間平均ではなく、30分ごとの平均使用電力の月間最大値が基準になる点が、この仕組みの大きな特徴です。
また、契約電力500kW未満の高圧の契約(実量制)では、当月を含む過去1年間の各月の最大需要電力のうち最も大きい値が契約電力となり、基本料金の基準になります。節電に取り組んでいても、1か月だけピークが上がってしまうと、その値は発生月を含む12か月の算定対象に残ります。
デマンドの詳しい仕組みと、設備オーナーが取るべき対策については、「デマンド(最大需要電力)とは?計算方法と基本料金が決まる仕組みを設備オーナー向けに解説」で解説します。
電力量料金
電力量料金は、実際に使用した電力量(kWh)に単価を掛けた従量制の料金です。基本料金と異なり、使った量に比例してコストが増減します。
単価は契約プランによって異なります。東京電力エナジーパートナーの高圧・特別高圧では、2024年4月に新設された次の3プランが標準メニューになっています。
| プラン | 電力量料金への調整 | 特徴 |
|---|---|---|
| ベーシックプラン | 燃料費調整+市場価格調整 | 燃料価格とスポット市場価格の変動に連動。市場調整の割合は約40〜50% |
| 市場調整ゼロプラン | 燃料費調整のみ | スポット市場価格の変動の影響を受けない(市場調整の割合0%)。燃料価格の変動は反映される |
| 市場価格連動プラン | 市場価格調整のみ | スポット市場価格の変動に連動(市場調整の割合100%)。電力量料金は4つの時間帯に区分 |
なお、同社の旧来の標準メニューは2026年3月末をもって廃止されています。
また、電力量料金を考えるうえで重要な概念が「負荷率」です。負荷率とは、ある期間の平均使用電力が、その期間の最大需要電力(ピーク)に対してどれくらいの割合かを示す指標です。基本料金単価や比較する期間が同じで、その期間の最大需要電力が契約電力と一致する場合には、負荷率が低い(ピークと平常時の差が大きい)ほど、使用電力量1kWhあたりの基本料金の負担は大きくなります。実量制では過去のピークが契約電力に残るため、両者が一致しない場合もあります。なお、負荷率は設備の省エネ性能の良し悪しを表す指標ではありません。
料金単価の見直しも続いています。東京電力エナジーパートナーのベーシックプランと市場調整ゼロプランでは、2025年4月に「省エネ等により契約電力を抑え効率的に電気をご使用いただいた場合にメリットが出るように」基本料金を高く、電力量料金を低く設定する見直しが行われました。一方、2026年4月の見直しでは基本料金単価が引き下げられ、電力量料金単価が引き上げられています(高圧・関東エリアのベーシックプランで、基本料金1kWあたり3,030円→2,530円、電力量料金1kWhあたり16円56銭→17円43銭。税込、燃料費調整額などを含まない単価)。2025年と2026年で変更の方向が異なるため、最新の単価表で自社の契約条件を確認することが大切です。なお、2026年11月1日からは託送料金の見直し内容を電気料金へ反映する予定も公表されています(東京電力エナジーパートナー「特別高圧・高圧のお客さま向けの電気料金プランについて」)。
契約プランの選び方・負荷率の考え方については、「法人の電気代を高騰させる燃料費調整額と再エネ賦課金の仕組み|企業ができる省エネ対策」で解説します。
その他(燃料費調整額・市場価格調整額・再エネ賦課金)
電気料金の請求書には、基本料金・電力量料金に加えて、契約プランに応じた燃料費調整額・市場価格調整額と、再エネ賦課金が含まれます。いずれも単価は企業側で決めることができず、市場や制度によって変動します。
燃料費調整額は、火力発電に使う燃料の市場価格の変動を電気料金に反映させる制度です。東京電力エナジーパートナーの標準メニューでは、2026年4月から1か月間の貿易統計価格をもとに燃料費調整単価を算定し、計量期間等の始期が毎月1日の場合は公表日の当月分、それ以外は翌月分に反映する仕組みになっています。また東京電力エナジーパートナーの標準メニューでは、卸電力市場(JEPX)のスポット価格の変動を反映させる「市場価格調整」もあり、ベーシックプランでは燃料費調整と市場価格調整の両方、市場調整ゼロプランでは燃料費調整のみ、市場価格連動プランでは市場価格調整のみが適用されます。
再エネ賦課金は、再生可能エネルギーの普及を支えるための費用を電力使用者が広く分担する仕組みで、使用量に応じて負担額が増えます。毎年度改定される国の制度で、2026年度の単価は1kWh当たり4.18円(2026年5月検針分〜2027年4月検針分適用)となっています。
これらは基本料金・電力量料金とは切り分けて、単価を自社で決められない変動要素として把握しておくことが重要です。燃料費調整と再エネ賦課金の仕組みは、燃料費調整額と再エネ賦課金の仕組みを解説した記事で詳しく解説しています。
解説|電気料金の構造を正しく把握することの重要性
※本対談は、2023年5月に弊社で製作した動画コンテンツの内容をもとに再構成しています。動画内の情報は、一部最新のものと異なる部分がありますので、あらかじめご了承ください。
ーーー電気料金のそもそもの決まり方、そして仕組みについて教えていただけますか。
企業の電気料金の請求書には、さまざまな項目が並んでいます。その内訳の決まり方や、構造については、意外と知られていない部分もありますよね。ポイントは、企業の電気料金は、発電コスト・送配電コスト・小売会社の利益の積み上げで決まっているということです。
まず電力会社は、卸取引所などを通じて電気を調達します。そのコストが発電料です。さらに、その電気を需要家に届けるためには送配電網を使う必要があり、その対価として託送料金がかかります。そこに小売会社の利益が上乗せされ、最終的な電力量料金になります。
※補足:上記は2023年5月収録時の、電気の調達・供給に関わるコストの概念的な説明です。請求上の基本料金・電力量料金の内訳と一対一に対応するものではありません。
ーーーでは、実際に企業が毎月支払う電気料金は、どのようにして決まるのでしょうか?
電気料金は一見複雑そうに感じますが、基本的には「基本料金」と「電力量料金」、「その他」の3つの要素で構成されています。
電気は日常的に当たり前に使っているもので、その内訳について、あまり気にされない方も多いと思います。製造業など、電気を多く使う企業では、その料金を気にすることも多いと思いますが、主に総務部の担当者が関心を持っているだけで、すべての従業員が詳しく気にしているわけではないという実態もあると思います。
まずはこの3つの構成要素を理解することが、料金の全体像を把握する出発点になります。

ーーー「基本料金」はどのように決まるのでしょうか。
基本料金は、最大でどれだけ電力を使用したか——つまり「最大需要電力」によって決まります。
具体的には、1日24時間の中で30分ごとの電力使用量を測定し、1か月の中で最も使用量が多かった30分が「最大需要電力」として算出されます。そして1年間で最も使用量が多かった月が、基本契約の基準となります。
※補足:ここでいう「最も使用量が多かった月」は、月間の電力量(kWh)が最大の月ではなく、各月の最大需要電力(kW)を比べて最も大きい値という意味です。東京電力エナジーパートナーの実量制(契約電力500kW未満)では、契約電力は当月を含む過去1年間の各月の最大需要電力のうち最も大きい値で決まり、500kW以上は協議で決まります。
そのため、基本料金は企業によって異なり、工場や業務用オフィスの場合、電気の使用パターンや休日の使用有無などによっても契約内容が変わります。
ーーーでは、「電力量料金」はどのように決まるのでしょうか。
電力量料金は、実際に使用した電力量(kWh)に単価を掛けた従量制の料金です。基本料金と異なり、使った量に比例してコストが増減するシンプルな構造ですが、単価は契約メニューによって異なります。
時間帯や季節によって単価が変わるメニューも存在し、電力の使い方を工夫することでコストを抑えられる余地があります。
電気主任技術者から更新を勧められた設備がいくつかあり、どれから手を付けるべきか決めかねている段階でもご相談いただけます。年次点検報告書と竣工図面をもとに、現地調査で工事の順番と時期をご提案します。
基本料金、電力量料金については、次の記事で詳しく説明していきます。
まとめ
- 企業の電気料金は「基本料金」「電力量料金」「その他(燃料費調整額・市場価格調整額・再エネ賦課金)」の3つに分けて整理でき、それぞれ決まり方の仕組みが異なる。
- 基本料金は契約電力と基本料金単価をもとに算定される。東京電力エナジーパートナーの実量制(契約電力500kW未満)では、契約電力が当月を含む過去1年間の最大需要電力(30分ごとの平均使用電力の月間最大値)の最大値で決まる点に注意が必要。
- 東京電力エナジーパートナーでは、2024年4月に卸電力市場価格の反映割合が異なる3プランが標準メニューとなり、高圧・特別高圧の旧標準メニューは2026年3月末で廃止された。単価は2025年4月・2026年4月と見直しが続いており(変更の方向は両年で異なる)、最新の単価表で契約条件を確認することが重要。
次の記事(#2)では、基本料金を決定するデマンド(最大需要電力)の仕組みと、設備オーナーが知っておくべき「非対称なルール」について詳しく解説します。
シリーズの続きとして、デマンドの仕組みと、燃料費調整・再エネ賦課金の詳細は以下の記事で解説しています。
出演
狩野 晶彦
第一種電気工事士/第二種電気工事士
恒石陣汰(ツネイシ ジンタ)
この記事を書いた人
岩見啓明


