【企業の電気料金 #3】電力量料金・燃料費等調整額・再エネ賦課金とは|”制御できるコスト”と”制御できないコスト”を整理する
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「企業の電気料金」と題して、#1では電気料金の全体像を、#2では基本料金を決めるデマンドの仕組みを整理しました。本記事では、電気料金を構成する残りの要素、電力量料金・燃料費調整額・再エネ賦課金について解説します。
これらの要素には、設備や契約の工夫によって改善できる「制御できるコスト」と、企業側では直接コントロールできない「制御できないコスト」が混在しています。この区別を正確に把握することが、実効性のあるコスト管理の前提となります。
加えて、高圧受電の電気料金制度は、近年大きく変化しており、契約プランの選択が電力量料金のコストに直接影響する局面になっています。最新の制度を踏まえた理解が重要です。
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本記事は、電気料金の仕組みについて専門家が解説した動画・記事をもとに、高圧受電設備を持つ法人の設備オーナー・設備担当者向けに再編集したものです。
目次
要約
電力量料金は契約メニューと負荷率で大きく変わる
電力量料金は「使用量×単価」の従量制ですが、直近の高圧向け標準メニューでは、卸電力市場価格の反映割合が異なる3プランが標準となっています。また2025年4月以降の改定では基本料金単価が引き上げられ電力量料金単価が引き下げられたことで、負荷率(ピーク使用量に対する平均使用量の割合)が高い施設ほどメリットが出やすい構造になっています。
燃料費調整額・再エネ賦課金は制御できない変動コスト
燃料費調整額は、燃料市場価格の変動を電気料金に反映させる制度です。現在の高圧向け標準メニューでは燃料費の変動に加えて卸電力市場価格の変動も反映される「燃料費等調整制度」が導入されており、変動要因が複合化しています。再エネ賦課金は2026年度が1kWh当たり4.18円で、毎年度改定される変動コストです。いずれも企業側では直接コントロールできません。
制御できないコストを前提に、制御できる部分を最適化する
燃料費調整額や再エネ賦課金は今後も変動リスクを伴います。制御できない外部コストを所与の条件として認識したうえで、デマンド管理・プラン選択・負荷率の改善に着実に取り組むことが、電気料金全体を抑制するうえで現実的な戦略となります。
電力量料金とは
電力量料金は、実際に使用した電力量(kWh)に単価を掛けた従量制の料金です。#2で解説した基本料金(デマンドで決まる固定的なコスト)とは異なり、使った量に比例してコストが増減します。
夏季とその他季で単価が異なる
電力量料金の単価は、一般的に「夏季」(7月1日〜9月30日)と「その他季」(10月1日〜6月30日)で分かれており、夏季のほうが単価が高く設定されているケースが多いです。
これは夏季に冷房需要が集中し電力消費が増加しやすいこと、いわゆる「ピーク需要」が背景にあります。電力使用が多い時間帯や季節を分散させることで、電力量料金の上昇を抑えられる可能性があります。
負荷率:契約電力を効率よく使えているかの指標
電力量料金を考えるうえで重要な概念が「負荷率」です。
負荷率とは、ピーク時の使用量に対する平均使用量の割合を指します。負荷率が高いほど、契約電力をフルに活用できている状態です。
例えば、冷凍冷蔵庫を利用する倉庫のように、一日を通して電力使用量が一定の施設は負荷率が高く、コストパフォーマンスが良い状態といえます。
一方で、特定の時間帯だけ電力使用が集中し、それ以外の時間はほとんど使っていない状態は負荷率が低く、契約電力に対する利用効率が下がります。これはちょうど、広い敷地に4世帯だけのアパートを建てるようなもので、キャパシティを活かしきれていない状態です。
最新の契約プランと料金構造の変化
高圧・特別高圧向けの標準メニューは2022年頃より段階的に変更され、現在は以下の3プランが標準となっています。旧来のメニューの新規受付はすでに終了しており、徐々に廃止されています。
| プラン | 電力量料金への調整 | 向いている施設の特徴 |
|---|---|---|
| ベーシックプラン | 燃料費調整+市場価格調整 | 市場変動をある程度許容できる施設 |
| 市場調整ゼロプラン | 燃料費調整のみ | 市場価格変動リスクを避けたい施設。契約期間が1年単位 |
| 市場価格連動プラン | 市場価格調整のみ | 市場価格が低い時期に使用が集中する施設。変動リスクを許容できることが前提 |
さらに2025年4月以降の改定では、ベーシックプランと市場調整ゼロプランで基本料金単価が引き上げられ、電力量料金単価が引き下げられました。電力会社は「デマンドを抑制し効率的に電気を使う需要家にメリットが出るように」という方針をこの改定に込めており、負荷率が高い施設ほど電気代が下がりやすく、低い施設ほど上がりやすい構造になっています。
どのプランが自社に合っているかは、電力使用の時間帯パターン・デマンドの状況・市場変動への許容度によって異なります。現在の契約プランが自社の実態に合っているかどうかを改めて確認することが重要です。
制御できないコスト①|燃料費等調整額
燃料費等調整額の仕組み
燃料費等調整額は、火力発電に使用する燃料(石油・石炭・液化天然ガス)の市場価格の変動を電気料金に反映させる制度です。
動画撮影(2023年5月)時点の仕組みとしては、例えば12月・1月・2月の3か月間で購入した燃料の平均価格を算出し、それを3か月後(この場合5月)に電力会社が定める基準価格と比較。購入価格が基準価格を上回れば電気料金にプラス調整が加わり、下回ればマイナス調整となるものでした。
しかしながら、東京電力の2026年4月改定により、高圧向けは「1か月の貿易統計価格をもとに、原則当月分の電気料金に反映」する仕組みに移行しています。(参照:東京電力エナジーパートナー「2026年4月1日からの特別高圧・高圧の新標準メニューの見直し内容について」)
算定方法・反映タイミングは電力会社・契約プランによって異なるため、契約先に確認することが必要です。
「燃料費“等”調整制度」への変更
従来の燃料費調整制度は、燃料の購入価格のみを反映する仕組みでした。しかし近年、電力会社が不足分を補うために日本卸電力取引所(JEPX)から電力を調達するケースが増え、その市場価格の高騰も電力会社のコスト増加につながっています。
こうした状況を受け、多くの電力会社が燃料費の変動だけでなく卸電力市場(JEPX)の価格変動も反映させる「燃料費等調整制度」を導入しました。この変更により、燃料費と卸市場価格の双方が上昇した場合、電気料金への影響がさらに大きくなる可能性があります。
設備オーナーとしては、燃料費調整額が「燃料市場だけでは決まらない」変動コストになりつつある点を念頭に置いておく必要があります。
制御できないコスト②|再エネ賦課金
再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)は、再生可能エネルギーの普及を支えるための費用を、電力使用者が広く分担する仕組みです。2012年に始まり、使用電力量に応じて負担額が増える構造となっています。
仕組みとしては、電力会社がFIT制度(固定価格買取制度)のもとで再生可能エネルギーで発電された電気を買い取り、その買取費用から「回避可能費用(再エネ買取によって不要になった化石燃料のコスト相当分)」を差し引いた金額を、日本全体の年間電力使用量で割ることで単価が決まります。
毎年改定される国の制度で、直近の単価は以下の通り推移しています。
| 年度 | 賦課金単価(1kWh当たり) |
|---|---|
| 2022年度 | 3.45円 |
| 2023年度 | 1.40円 |
| 2024年度 | 3.49円 |
| 2025年度 | 3.98円 |
| 2026年度 | 4.18円 |
※2026年度単価は2026年5月検針分〜2027年4月検針分に適用。経済産業省発表による。
単価はFIT買取費用・卸電力市場価格の動向・販売電力量の変化によって変動し、一方向に上昇し続けるわけではありません。2023年度に大幅に低下したのは、燃料価格の高騰による卸電力市場価格の上昇に伴い、回避可能費用が一時的に増大したためです。
ただし市場価格が落ち着くと賦課金は再び上昇する構造になっており、2026年度は過去最高水準の4.18円となっています。
こちらも、企業側での直接的なコントロールはできないため、毎年度の改定単価を把握したうえで電気料金全体の見通しを立てておくことが重要です。
「制御できるコスト」と「制御できないコスト」の整理
ここまで解説してきた内容を、設備オーナー様や、企業の設備担当者様の実務判断に使いやすい形で整理します。
| 項目 | 制御の可否 | 改善のアプローチ |
|---|---|---|
| 基本料金(デマンド) | △ 改善できる余地あり | ピーク電力の発生源・時間帯を把握し、設備稼働スケジュールや機器選定を見直す |
| 電力量料金 | △ 改善できる余地あり | 契約メニューの最適化・負荷率の改善・使用時間帯の分散 |
| 燃料費調整額 | ✕ 制御不可 | 変動リスクとして織り込んだ上で、制御できるコストの削減で補う |
| 再エネ賦課金 | ✕ 制御不可 | 同上 |
制御できないコストは今後も一定の変動リスクを伴います。だからこそ、制御できる部分(デマンド管理・契約メニューの最適化)を着実に改善しておくことが、外部環境の変化に左右されにくいコスト構造を作ることにつながります。
変動する電気代の中で、設備オーナーが取れる対策とは?
※本対談は、2023年5月に弊社で製作した動画コンテンツの内容をもとに再構成しています。動画内の情報は、一部最新のものと異なる部分がありますので、あらかじめご了承ください。
ーーー電力量料金について、メニューの選び方や使い方の工夫で改善できる部分はあるのでしょうか。
電力量料金は単純に使った量に応じて決まりますが、上手なメニューの選び方をすることで、電気代を抑えられる可能性があります。例えば、電力の使用が多いのが昼間や特定の季節の場合、時間帯や季節ごとに使い方を分散させると、電気料金の上昇を防ぐことが可能です。
契約と使い方のバランスを考えることが重要だという点が、電力量料金におけるポイントです。
ーーー「負荷率」という考え方についても教えていただけますか。
負荷率とは、ピーク時の使用量に対する平均使用量の割合を指します。負荷率が高いほど、契約電力を効率よく活用できることを意味します。
例えば、冷凍冷蔵庫を利用する倉庫のように、一日を通して電力使用が一定であれば、契約電力をフルに活用できるため、コストパフォーマンスが良くなります。一方で、負荷率が低い場合は、契約電力に対する利用効率が下がり、コストが高くなる傾向があります。これを例えるなら、広い敷地に多くの集合住宅を建てると効率的ですが、広い敷地に4世帯だけのアパートを建てると非効率になるのと同じです。
ーーー燃料費調整制度についても教えていただけますか。
燃料費調整制度も、正直なところ限界に近づいています。そのため多くの電力会社が経済産業省に申請を出し、この制度を変更しようとしています。特に高圧需要家の皆さんに関係するのが、「燃料費調整制度」から「燃料費等調整制度」への変更です(2026年3月時点では、ほとんどが移行済み)。
これまでの燃料費調整制度では、例えば東京電力の場合、燃料の石油・石炭・ガスに基準価格が設定されており、実際の購入価格が基準を超えた場合はプラス調整、下回った場合はマイナス調整を行う仕組みでした。

しかし、燃料費が上昇すれば燃料費調整額を上げることはできても、もう一つの問題があります。不足分を補うための電力を卸市場から調達しようとしても、その価格も高騰しているため、その分の負担も大きくなってしまうのです。つまり、制度自体に限界があり、燃料費だけでなく、卸市場の単価も反映させる必要があるという状況になっています。
ーーー場合によっては、燃料費と卸市場価格の両方が上昇するダブルパンチになる可能性もあるということですね。
そうです。まさにダブルパンチです。燃料費の高騰による影響を少しでも適切に反映するために、燃料費調整制度だけでなく、JEPXでの仕入れ価格も反映させる「燃料費等調整制度」への変更が進んでいます。
まとめ
- 電力量料金は使用量×単価の従量制で、夏季とその他季で単価が異なる。2024年度以降の高圧向け標準メニューは3プランに刷新されており、自社の使用パターンに合ったプラン選択が重要。2025年4月以降の改定では基本料金単価が引き上げられ電力量料金単価が引き下げられたことで、負荷率が高い施設ほど電気代が下がりやすい構造になっている。
- 燃料費調整額は燃料市場の変動を電気料金に反映する制度で、高圧契約には上限がなく変動がそのまま反映される。現在の高圧向け標準メニューでは卸電力市場価格の変動も加わる「燃料費等調整制度」が導入されており、変動要因が複合化している。再エネ賦課金は2026年度が1kWh当たり4.18円で毎年度改定される。いずれも企業側では制御できない変動コストとして把握する。
- 制御できない変動コストを前提として、デマンド管理・プラン選択・負荷率の改善など制御できる部分を着実に最適化しておくことが、外部環境の変化に左右されにくいコスト構造につながる。
本シリーズ(#1〜#3)を通じて、企業の電気料金が「基本料金(デマンド)」「電力量料金(プラン選択・負荷率)」「変動コスト(燃料費調整額・再エネ賦課金)」の3層構造で成り立っており、それぞれ対策の打ち方が異なることを整理してきました。
設備投資や省エネ対策を検討する際の判断材料として、ご活用いただければ幸いです。
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