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【工場向け|LED照明 #6】 「作業効率」と「コスト削減」を両立する方法とは?

投稿日:2025年11月25日
更新日:2025年11月26日

エネルギー価格の高騰や脱炭素経営への関心の高まりを背景に、多くの企業が「工場の省エネ対策」を重要課題としています。

なかでも蛍光灯などの照明設備の「LED照明切替(LED化)」は、設備投資の中でも効果が見えやすく、電気代削減と環境負荷低減の両立を実現できる手段として注目されています。

しかし、単に「蛍光灯をLEDに変えるだけ」で最大の効果が得られるとは限りません。工場の環境に適した明るさ設計や照明配置、耐久性のある製品選定が、長期的なコストメリットと安全性を左右します。

本記事は、業種別にLED導入の最適解を探る連載シリーズ「法人向け|LED照明」の第6回です。工場照明に求められる条件とLED化による効果を中心に、導入時のポイントを分かりやすく解説します。

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要約

工場に適した照明環境が重要:
工場照明は、安全性と生産効率の両方を支える重要なインフラです。作業内容に応じた明るさ、粉塵や振動・高温への耐久性、温度に適した器具選定が欠かせません。LEDは高効率で明るさムラが少なく、センサー制御とも相性が良いため、工場の多様な条件に対応しやすい大きな強みがあります。

LED化がもたらす大きな省エネ・環境効果:
LED化は、工場規模によって年間数十万〜数百万円のコスト削減につながります。さらに、CO₂排出量も大きく減らせるため、ESG経営やカーボンニュートラルの取り組みとしても評価されます。指向性の高さによる作業効率向上や、長寿命による保守コスト削減も大きなメリットです。

LED更新成功の鍵は環境条件と段取り:
LED化では、高温・低温など工場特有の温度条件に適した器具選定が不可欠で、設備周辺の作業スペース確保や高所作業車の搬入ルート確認など、段取り次第で工期や仕上がり品質が大きく変わります。明るさ・グレア・演色性・耐環境性能といった要素を考慮し、作業効率と疲労軽減を両立する設計が求められます。

 工場照明に求められる条件(明るさ・耐久・温度対応)

工場の照明は、オフィスや店舗とは異なり「作業の安全性」と「生産効率」を支える重要なインフラです。以下の3つの要素を満たすことが、適切な照明環境の前提条件となります。

明るさ(照度)

作業内容に応じた照度が確保されていないと、目の疲労やミスの増加を引き起こしかねません。例えば、精密作業を行う製造ラインと、荷物の保管や出荷を行うエリアでは必要な明るさが異なります。また、LED照明は高効率かつ照度ムラが少ないため、作業エリア全体を均一に明るく保つことが可能です。

耐久性・メンテナンス性

LED照明は一般的に40,000〜60,000時間の長寿命であり、蛍光灯や水銀灯と比べて交換頻度を大幅に減らせる点もメリットです。一方で、工場では粉塵・振動・高温など、照明器具にとって過酷な環境条件が存在する場合も少なくありません。そのため、使用環境によって防塵・防水規格高温対応などの仕様を満たす器具が求められます

温度・環境対応

冷凍倉庫など低温環境下でも安定して点灯するLED照明は、蛍光灯と異なり低温時の明るさ低下が少ないことが特徴です。他にも、瞬時点灯が可能な特性から、人感・明るさセンサー制御やエリアごとの点灯管理にも適しています。

 LED化での効果(明るさUP・CO₂削減・保守コスト減)

LED化の最大の魅力は「省エネ」と「コスト削減」を同時に実現できることです。ここでは、導入によって得られる具体的な効果を整理します。

電気代の削減

LED照明は従来の水銀灯や蛍光灯と比べて約40〜70%の電力削減が可能です。例えば、1,000㎡規模の工場で水銀灯(400W)をLED(150W)に置き換えた場合、年間で数十万円〜数百万円の電気代削減が見込めます。加えて、照明点灯時間をセンサー制御で最適化すれば、さらなる省エネ効果が期待できます。

CO₂排出量の削減

電力消費の削減はそのままCO₂排出量の削減につながります。企業のESG経営やカーボンニュートラルへの対応が求められる中、LED化は環境報告書やCSR活動においても有効な施策として評価されます。

明るさ・作業効率の向上

LED照明は指向性が高く、必要な場所に的確に光を届けられるため、影が少なく視認性の高い作業環境を実現します。結果として、作業者の疲労軽減やミス防止につながり、品質向上にも貢献します。

保守コストの削減

LED照明は長寿命に加え、点灯・消灯の繰り返しに強く、交換や修理の頻度を大幅に削減できます。高所作業を伴う照明交換の回数が減ることで、安全リスクの低減保守コストの抑制が可能です。

電気工事士に聞く、工場での照明(LED)更新時の注意点とは?

解説者

高橋 宏武
一級電気施工管理技士/第一種電気工事士

高橋 宏武

大学卒業後、恒電社に入社したプロパー社員。電気工事士として、住宅の電気工事に加え、法人向けの高圧電気設備工事の直接提案を開始するなど、現在の会社の礎を創ってきたメンバー。2020年からは事業部長として、エンジニアリング事業部を統括している。プロフィールはこちら

インタビュアー

岩見 啓明
第二種電気工事士/二等無人航空機操縦士

岩見 啓明

前職はWebメディアの編集者。恒電社に参画後はマーケティングに従事し、現在は採用全般も担当している。2023年に二等無人航空機操縦士(ドローン)資格、2024年に第二種電気工事士資格を取得。プロフィールはこちら

ーーー工場の照明をLED化する際、設備オーナー様はどのような点に注意すれば良いですか?

大きくは設置環境の条件作業の段取り器具選定制御設計スケジュールの5点に注意する必要があるでしょう。実際の施工方法についてはどのような用途の施設でも大差ありませんが、工場においては環境と作業段取りが成果を左右します。

ーーー工場特有の設置環境というと、どのようなものが挙げられますか?

「温度」が最も分かりやすい例だと思います。たとえば、多くの工場は天井付近が熱くなりやすいです。要因はいくつかありますが、稼働している機器の影響や、屋根の断熱材が薄いなどの原因が考えられます。

標準のLED照明は耐熱上限が60℃までのものが多いですが、高温対応の器具だと上限70℃まで耐熱な製品もあります。高温になる工場では、高温対応の器具を選定してご提案しています。

逆に低温エリア(冷凍・冷蔵)では低温対応品を使用する必要があります。工場内の温度に合わせた器具の選定が重要です。

ーーー作業の段取りにおいて注意すべきことは何ですか?

工場の場合、作業スペースの確保が最重要ポイントです。照明の真下にスペースがあるかで進捗が大きく変わります。

製造ラインや機器、棚の一時移動・養生範囲の合意を事前に行いましょう。高天井の場合は、高所作業車を使用するため、搬入経路や設置スペースに併せ、駐停車場所の確認も必要です。

ーーー器具の選定ではどんなところに気を付けると良いでしょうか?

器具の選定によって作業効率アップと同時に、作業者の疲労感軽減にもつながります。選定の際は、主に以下の4つの要素を考慮します。

  • 明るさ:現状が暗ければ、明るくなるよう段階的に増やす設計も。
  • グレア:直接光源が視界に入らないようグレア低減タイプにすることで、まぶしさによる疲れを軽減。
  • 演色性:目視検査や色合わせの工程があるゾーンでは高演色が有利。
  • 耐環境:油煙・粉塵・振動・温度など、エリアごとに適合グレードを選ぶ。

施工事例|工場におけるLED更新工事

まとめ:

工場照明のLED化は、単に“明るくするための設備更新”ではなく、安全性・生産性・省エネのすべてに直結する重要な設備投資です。工場は粉塵・振動・高温・低温など過酷な環境下で稼働するため、照明器具には高い耐久性や温度対応力が求められます。LEDはこれらの条件を満たしやすい点に加え、従来照明と比べて40〜70%の電力削減やCO₂排出量の抑制、長寿命による保守費用の削減といった多くのメリットがあります。

また、照度ムラの少ない高品質な光は作業の見やすさを高めて、ミス防止や作業効率の改善にもつながります。さらに、高所作業を伴う交換頻度が減ることで安全面のリスク低減にもつながり、長期的に見れば企業の運用コストと現場環境を大きく改善します。

LED更新で最大の効果を得るためには、温度条件や作業動線、設置スペースなど工場特有の要件を踏まえた器具選定と段取りが不可欠です。現場の課題や希望を整理し、最適な照明環境を設計することで、LED化は“コスト削減”だけでなく“働きやすく安全な工場づくり”を実現する大きな一歩となるでしょう。まずはお気軽にご相談ください。

本記事は、連載シリーズ「法人向け|LED照明」の第6回として、工場での照明改善ポイントを整理しました。次回の第7回では、オフィスビルにおける照明更新の最適なタイミングについて解説します。

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記事を書いた人

蕨川 真央
恒電社

蕨川 真央

教育・医療業界を経験したのち、結婚出産を経て恒電社に参画。現在は、マーケティングや採用領域のアシスタントとして従事する。プロフィールはこちら

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