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 【LBSとは? #1】役割・仕組み|PASやVCBとの違いを解説

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#キュービクル

キュービクルの中には、電気を安全かつ確実に受電するためのさまざまな機器が組み込まれています。その中でも「LBS(Load Break Switch:気中負荷開閉器)」は、日常的な運用から緊急時の遮断まで幅広く関わる、重要なスイッチング機器です。

一方で、似た機能を持つPAS(気中開閉器:Pole-mounted Air Switch)VCB(Vacuum Circuit Breaker:真空遮断器)との違いが分かりづらく「何が自社の設備に適しているのか」「それぞれ何をしている機器なのか」といった疑問を持つ担当者も少なくありません。

本記事は、キュービクル設備で重要な役割を担うLBSについて基礎から学べる連載シリーズ「LBSとは?」の第1回です。設備担当者が押さえておくべき役割・仕組み・PASやVCBとの違いを分かりやすく整理します。

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要約

LBSは「負荷電流を安全に開閉するためのスイッチ」:
LBS(気中負荷開閉器)は、高圧受電設備において定格内の負荷電流を安全にON/OFFするための機器です。日常運用や点検・工事時の回路切り分けを目的として使われ、短絡電流を遮断する能力は持たない点が、遮断器であるVCBとの大きな違いです。

保護機能はヒューズと組み合わせて成立する:
LBS単体には事故電流を遮断する機能がないため、実際の設備では電力ヒューズ(PF)とセットで使用されます。短絡などの事故時にはヒューズが溶断することで回路を保護する仕組みであり、LBSはあくまで開閉操作を担う機器として位置づけられます。

設備規模と運用方針が選定の判断軸になる:
主遮断器としてLBSを採用するか、VCBを採用するかは、キュービクル容量(300kVAを一つの目安)や将来の増設計画、停電復旧のスピードなどを踏まえて判断されます。単純な機器比較ではなく、設備全体の運用を見据えた選定が重要です。

LBSとは?

LBS(Load Break Switch:気中負荷開閉器)とは、定格内(あらかじめ想定された範囲内)の負荷電流を安全に開閉することを目的とした高圧用スイッチです。

高圧受電設備では、低圧設備と比べ高い電圧(6,600V)を扱うため、LBSの内部には、ON/OFFの瞬間に発生するアーク(火花)を安全に消せる仕組み(消弧装置)が入っています。

ただし、LBS単体では、事故などの際に発生する短絡電流を遮断する能力はありません。そのため、事故電流を遮断できる「電力ヒューズ(PF)」とセットで設置されるのが一般的です。事故時には、電力ヒューズが溶断することで回路を保護する仕組みです。

LBSの設置場所

LBSは 「高圧の電気を施設へ入れる手前」 に取り付けられるスイッチです。そのため、主に次の場所に設置されています。

  • キュービクル内部
    工場・ビル・店舗・病院など、高圧受電の建物で使われるキュービクル内部に、点検時の区切り用スイッチとして設置されています。
  • 構内へ電気を引き込むための電柱上
    小規模設備や敷地形状の都合で、敷地へ電気を引き込むポイント(構内引込点)に、電柱上LBSとして設置される場合があります。
  • 太陽光発電所・分岐版
    高圧回路の分岐や切り替えのために設置されることもあります。

LBSの果たす役割

LBSの主な役割は以下のとおりです。

  1. 負荷電流の開閉(=通常時のON/ OFF)
    建物や機械に電気を“入れる・止める”という、日常的な操作を安全に行うことができます。
  2. 高圧回路の電路切替・点検作業のための開閉区分
    点検や工事のときに、作業員が触る部分へ電気が流れないように、回路をしっかり分けて区切ることができます。安全な作業のための“仕切り”を作るスイッチとして使われます。

※基本的には開閉器としての役割がメインですが、設備規模が小さい場合など、建物全体の電気をまとめてON/OFF する主遮断装置としての役割を果たすこともあります。

一方で、以下のことはLBSでは対応できません。

  • 短絡(ショート)電流の遮断
    LBS単体には、事故で一気に流れる大電流を止める能力がありません。もしショートした状態でLBSを操作すると、想定以上のアークが発生し、機器損傷や重大事故につながる危険があります。

LBSそのものには保護機能はないことが重要です。そのため、LBS単体で使用されることはなく、電力ヒューズが保護機能の役割を果たします。

LBSとほかの高圧機器との違いは?

高圧設備にはいくつか似た名前の機器があります。それぞれ 「何をするための機器なのか」 という視点で比較すると以下のようになります。

機器できること(役割)事故への対応能力
LBS(気中負荷開閉器)負荷電流の切り替えのために使用されるスイッチ。
※電力ヒューズ(PF)と組み合わせることで、小規模設備では主遮断装置として用いられる場合がある。
×(短絡は不可)
※ただしヒューズがあれば短絡保護が可能
PAS(気中開閉器)責任分界点(電柱)での高圧電気のON/OFF構内の地絡事故が電力会社側へ波及するのを防ぐ。△(地絡事故などの初期遮断・波及防止)
VCB(真空遮断器)大規模な設備のメインスイッチ。
アークを真空中で消す性能を持つ。

電気工事士に聞く、選定のポイント|「LBSとVCB、どちらを主遮断器にすべき?

解説者

鷲巣純一
第一種電気工事士/第二種電気工事士

鷲巣純一

通信工事や、オール電化など住宅の電気工事業などを経て、恒電社に入社。現在は、法人向け電気設備工事の提案から施工までを担うエンジニアリング事業部のマネージャー職に加え、技術者の視点から自家消費型太陽光発電システムの現場管理も行う。プロフィールはこちら

インタビュアー

岩見 啓明
第二種電気工事士/二等無人航空機操縦士

岩見 啓明

前職はWebメディアの編集者。恒電社に参画後はマーケティングに従事し、現在は採用全般も担当している。2023年に二等無人航空機操縦士(ドローン)資格、2024年に第二種電気工事士資格を取得。プロフィールはこちら

ーーーキュービクル内の主遮断器を、LBSとVCBのどちらにするかは、どのように考えれば良いのでしょうか?

どちらも分岐回路を開閉するという点では共通していますが、遮断能力が異なります。

トランス容量の合計(=キュービクル容量)が300kVA以上だとVCB、300kVA未満だとLBSという運用目安が一般的です。基本的には、現状の設備でキュービクル容量が300kVA以上であれば、VCBを主遮断器に採用します。

ーーーキュービクル容量が300kVA未満でもVCBを採用するパターンはあるのですか?

絶縁不良が起こりやすく、事故が起きやすい環境であれば、キュービクル容量が300kVA未満でも保護性能と即時復旧の利点を重視し、VCBを主遮断器として採用するケースもあります。

また、将来的にトランス容量が増える見込みの場合も、先行してVCBを採用するパターンもあり得ますね。

ーーーVCBのほうが保護性能が高く、即時復旧できるのはなぜですか?

VCBは「リレー試験」と呼ばれる「異常発生時にVCBが正常に稼働するか確認する試験」を年次点検で実施できます。そのため、故障の早期発見が可能です。

対して、LBSはリレー試験ができないため、異常がないか目視で点検するに留まります。よって、予防保全のしやすさに差が出ます。

また、即時復旧の観点では、VCBは点検し異常がなければ即時復旧できるのに対し、LBSは溶断したヒューズの交換が必要です。予備在庫の確保や、電気工事士への交換依頼などでどうしても時間がかかってしまい、停電が長引くパターンも考えられます。

ーーー主遮断器の下位の分岐にもVCBを使うことはありますか?

主遮断器はVCBまたは、LBSのどちらかを採用します。その下の分岐回路(例:コンデンサ回路)には、LBSや高圧カットアウトと呼ばれる機器を使用する構成が一般的です。VCBはあくまで主遮断器としてしか使用しません。

施工事例

まとめ|キュービクルにおけるLBSの役割とVCBとの使い分けの考え方

本記事では、LBSを「VCBの代替」ではなく「役割の異なる機器」として正しく理解し、自社設備に合った主遮断器構成を判断するための基礎知識を整理してきました。要点をまとめると以下の通りです。

  1. LBSは開閉を担う運用機器
    LBSは高圧回路の負荷電流を安全に開閉するためのスイッチであり、日常操作や点検・工事時の安全確保を主な役割としています。
  2. ヒューズとの組み合わせで事故を保護
    LBS自体に短絡遮断能力はなく、電力ヒューズと組み合わせることで初めて事故時の保護が可能となる点が重要な特徴です。
  3. 主遮断器の選定は容量と将来性で決定
    300kVA未満ではLBS+PFが選択肢となりますが、保護性能や即時復旧、将来の設備拡張を考慮するとVCBを選ぶケースもあります。

LBSは、単に「電気を止める装置」ではなく、「安全に電気を扱うための装置」であり、その役割を正しく理解することが、過不足のない設備構成と将来を見据えた判断につながります。

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記事を書いた人

蕨川 真央
恒電社

蕨川 真央

教育・医療業界を経験したのち、結婚出産を経て恒電社に参画。現在は、マーケティングや採用領域のアシスタントとして従事する。プロフィールはこちら

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