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【企業の電気料金 #2】「デマンド」とは何か|基本料金を左右する最大需要電力の仕組みと、設備オーナーが知るべき非対称なルール

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#電気の基礎知識

企業の電気代について深ぼる本シリーズ。今回は基本料金を理解するうえで重要な「デマンド」という概念を取り上げ、解説します。

「節電に取り組んでいるのに、基本料金がなかなか下がらない」——そのような経験をお持ちの設備担当者の方も少なくないのではないでしょうか。

実は、基本料金は「1か月のうちのたった30分」で1年間の水準が決まる仕組みになっています。しかも、節電の効果が料金に反映されるまでには1年近くかかる一方、使用量が上がった場合は翌月すぐに反映されます。この非対称なルールを知っているかどうかが、設備運用コストの管理精度に直結します。

加えて、電気料金のコスト構造全体を見ると、「電力会社を変えれば安くなる」という発想には限界があることも見えてきます。企業が実効性のあるコスト対策を取るうえで、デマンドの仕組みを正確に理解しておくことは、その出発点となります。

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本記事は、電気料金の仕組みについて専門家が解説した動画・記事をもとに、高圧受電設備を持つ法人の設備オーナー・設備担当者向けに再編集したものです。

要約

基本料金はデマンド(最大需要電力)で決まる
基本料金の算出基準となるのは、月間の電力使用量の合計ではありません。1か月あたり約1,440回にわたって30分ごとに計測される電力使用量のうち、最も値が大きかった1回分の値が「最大需要電力(デマンド)」として算出され、これが基本料金の基準となります。使用量の平均ではなく最大値が基準になる点が、この仕組みの大きな特徴です。

下げるには1年、上がるのは翌月という非対称なルール
節電や省エネに取り組み、最大需要電力が下がっても、基本料金への反映には12か月間の実績が必要です。一方、使用量が上がった場合は翌月すぐに基本料金の基準に反映されます。この非対称性を前提とした設備運用の計画が重要です。

2025年度以降の料金改定で“デマンド管理”がさらに重要に
高圧向け料金改定では、主要プランで基本料金単価が引き上げられ、電力量料金単価が引き下げられました。これにより、デマンド(契約電力)を抑制できている施設ほどコスト削減の恩恵を受けやすく、逆に負荷率が低い施設では電気代が上昇しやすい構造になっています。

デマンド(最大需要電力)とは

「デマンド」とは、最大需要電力のことを指します。高圧受電設備を持つ企業では、電力会社との契約においてこのデマンドが基本料金の算出基準となります。

1か月1,440回の計測と最大需要電力の算出

電力会社は、需要家(契約者)の電力使用量を30分ごとに計測しています。1日24時間を30分ごとに区切ると48回、1か月(30日)では1,440回の計測が行われます。

この1,440回の計測値のうち、1か月の中で最も使用量が多かった30分間の値が「最大需要電力」として算出されます。

つまり、ある月に「1,439回はほぼ省エネで運用できていたが、特定の30分だけ電力使用が集中した」という場合でも、その1回の値が基本料金の基準となります。使用量の「平均」ではなく「最大値」が基準になる点を、まず押さえておく必要があります。

年間で最も高かった月が契約基準になる

さらに重要なのが、年間を通じた最大需要電力の扱いです。

毎月算出される最大需要電力のうち、1年間で最も値が高かった月の値が、その後1年間の基本料金の契約基準となります。

例えば、夏場の冷房使用が集中する月に最大需要電力が突出して高くなった場合、その値が翌年にかけての基本料金の基準になります。「普段はほとんど電力を使っていない」という企業でも、特定の30分間だけ使用量が多ければ、その影響が1年間の基本料金に反映される点には注意が必要です。

夏季とその他季で単価が異なる理由

電力量料金(使用料)の単価は、一般的に「夏季」(7月1日〜9月30日)「その他季」(10月1日〜6月30日)で分かれており、夏季のほうが単価が高く設定されているケースが多いです。

これは夏季に冷房需要が集中し電力消費が増加しやすいこと(ピーク需要)が背景にあります。デマンドのピークが発生しやすい時期と、電力量料金の単価が高い時期が重なる夏季は、電気料金の管理において特に注意が必要な時期です。

「下げるのは1年、上がるのは翌月」非対称なルール

デマンドの仕組みで特に押さえておきたいのが、基本料金が「下がる場合」と「上がる場合」で反映のタイミングが大きく異なるという点です。

下げる場合:12か月間の実績が必要
節電に取り組み、最大需要電力が下がったとしても、電力会社はその状況を1年間観察します。12か月間にわたって使用量が安定して下がった場合に限り、次の契約基準に反映されます。例えば、3月に100kWだった最大需要電力が、4月以降80kWに下がったとします。この場合、基本料金の契約基準が80kWに更新されるのは1年後です。

上がる場合:翌月すぐに反映
一方、新たに過去12か月の中で最大となる値が発生した場合はすぐに反映されます。例えば、1年後の4月に80kWまで下がっていた最大需要電力が、5月に再び100kWになった場合、翌月にはすぐに100kWが基準となります。

この非対称なルールを把握していないと、「節電しているのに料金が下がらない」という状況に陥りやすくなります。また、設備の新設・更新工事や試運転など、一時的に電力使用が増える場面でも、そのピークが翌月以降の基本料金の基準になり得る点には注意が必要です。工事のタイミングや稼働スケジュールを検討する際にも、デマンドへの影響を事前に考慮することが重要です。

デマンド管理が設備投資判断に直結する理由

電気料金のコスト構造から考える

デマンド管理の重要性を理解するうえで、電気料金のコスト構造を把握しておくことが役立ちます。

コスト区分概算の割合需要家側での制御
発電費用50〜60%基本的に不可
送配電費用(託送料金)25〜30%不可
小売費用(電力会社の利益等)10〜25%一部可能(スイッチング)
※撮影時点の目安です。現在の実態とは異なる可能性がございます。

この構造を見ると、電気料金の約9割は発電費用と託送料金で占められており、需要家側が直接コントロールできる部分は非常に限られていることが分かります。

スイッチングでは解決しない理由

電力会社を変えること(スイッチング)自体が悪いわけではありませんが、削減できるのは小売費用の部分に限られるため、構造的に大幅なコスト削減にはつながりにくい傾向があります。

つまり、電気料金を実質的に下げるためには、需要家側でコントロールできる数少ない手段(その中でも特に影響度が大きいデマンドの管理)に取り組むことが、現実的かつ効果的なアプローチになります。

2025年度以降の料金改定が意味すること

2025年4月以降の高圧向け料金改定(ベーシックプラン・市場調整ゼロプラン)では、基本料金単価が引き上げられ、電力量料金単価が引き下げられる方向に見直しが行われました。

これは、デマンド(契約電力)を抑制できている施設ほど電気代が下がりやすく、負荷率が低い施設ほど電気代が上がりやすい構造への移行を意味します。電力会社側が「ピークカットやデマンド管理に取り組む需要家にメリットが出るように」という方針で単価を設定した結果です。

この構造変化を踏まえると、デマンド管理への取り組みは単なる省エネ策ではなく、現行の料金制度において直接的なコスト削減効果が期待できる経営課題として位置づけることができます。

具体的には、以下の点を把握・改善することが基本料金の削減につながります。

  • ピークが発生している時間帯はいつか
  • どの設備がピーク電力の発生源になっているか
  • 設備の稼働スケジュールや起動タイミングの変更で、ピークを分散できるか

例えば、複数の大型設備が同じ時間帯に一斉起動することでピークが発生しているケースでは、起動タイミングをずらすだけで最大需要電力を抑えられる場合があります。また、設備の更新や新設を検討する際にも、その設備がデマンドにどう影響するかを事前に把握しておくことが、コスト管理の観点から重要です。

解説|デマンドの仕組みと基本料金の関係

※本対談は、2023年5月に弊社で製作した動画コンテンツの内容をもとに再構成しています。動画内の情報は、一部最新のものと異なる部分がありますので、あらかじめご了承ください。

ーーー基本料金はどのように決まるのでしょうか。

基本料金は、最大でどれだけ電力を使用したか、つまり「最大需要電力」によって決まります。

具体的には、1日24時間の中で30分ごとの電力使用量を測定し、1か月の中で最も使用量が多かった30分が「最大需要電力」として算出されます。そして1年間で最も使用量が多かった月が、基本契約の基準となります。

そのため、基本料金は企業によって異なり、工場や業務用オフィスの場合、電気の使用パターンや休日の使用有無などによっても契約内容が変わります。普段ほとんど電気を使用しない企業でも、特定の30分間だけ多く使用すると、その使用量が1年間の基本料金に反映される点が重要です。

ーーーつまり、全体の使用量ではなく、最大使用量が基本料金を決める重要なポイントなのですね。

その通りです。そして特に意識していただきたいのが、電気料金を「下げる場合」と「上がる場合」で仕組みが非対称である点です。

企業が節電しても、すぐに翌月から電気料金が安くなるわけではありません。電力会社は節電状況を1年間観察し、12か月間の使用量が安定して下がった場合に限り、次の契約に反映されます。

例えば、3月に100kW使った後、4月以降80kWに下がったとします。この場合、次の契約は1年後に80kWが基準となります。一方で、使用量が上がる場合はどうでしょうか。例えば、1年後の4月に80kWまで下がったものの、5月に100kW使った場合、翌月にはすぐに100kWが基準となります。

下げるときは1年間かかりますが、上がるときは翌月に反映される——この非対称なルールを理解することが、基本料金の管理において重要です。

まとめ

  • 基本料金の算出基準となるのは、1か月1,440回の計測のうち最も値が大きかった30分間の電力使用量(最大需要電力=デマンド)。年間で最も高かった月の値が1年間の契約基準として適用される。
  • 節電によって最大需要電力が下がっても、基本料金への反映には12か月間の実績が必要。一方、使用量が上がった場合は翌月すぐに反映されるという非対称なルールを前提に、設備の新設・更新・運用計画を立てることが重要。
  • 2025年4月以降の料金改定で基本料金単価が引き上げられたことにより、デマンド管理に取り組みピークを抑えられている施設ほど恩恵を受けやすく、負荷率が低い施設ほど電気代が上昇しやすい構造になっている。

次の記事(#3)では、電力量料金の契約メニュー・負荷率の考え方と、企業側では制御できない変動コスト(燃料費調整額・再エネ賦課金)について解説します。

出演

狩野 晶彦
株式会社エネリード 代表取締役

狩野 晶彦

電設資材卸会社勤務20年・家電業界専門誌リックの元専任講師・パナソニック客員講師。「ネット・ゼロ・エネルギーハウスとは」「知らないと損する電気料金セミナー」など、電力会社・大手企業・特約代理店等に向けて年間100 回以上の講演を行う。

恒石陣汰
第一種電気工事士/第二種電気工事士

恒石陣汰

日本における再生可能エネルギーの普及と、電力業界の脱炭素化へ大きな可能性を感じ、2020年に恒電社に入社。現在は、YouTubeなどを通じた、電力・エネルギー業界の情報提供をはじめ、電気工事設備工事の内容や流れを解説するなど、マクロからミクロ領域までを解説。第一種電気工事士・第二種電気工事士資格保有。

記事を書いた人

岩見 啓明
第二種電気工事士/二等無人航空機操縦士

岩見 啓明

前職はWebメディアの編集者。恒電社に参画後はマーケティングに従事し、現在は採用全般も担当している。2023年に二等無人航空機操縦士(ドローン)資格、2024年に第二種電気工事士資格を取得。プロフィールはこちら

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