【PCBとは? #4】PCB含有製品の処理期限を過ぎるとどうなる?罰則・行政指導・社会的リスク
更新日:2025年12月2日

古い変圧器や照明機器などに使われていたPCB(ポリ塩化ビフェニル)は、強い毒性と環境残留性があるため、厳格な管理と期限内の処理が法律で義務付けられています。
処理期限を過ぎた場合には罰則や行政指導の対象になるだけでなく、企業名の公表や信用失墜といった社会的リスクに直結します。
本記事はPCB対策の全体像を段階的に学ぶ連載シリーズ「PCBとは?」の第4回です。PCB特別措置法の概要から、違反時の罰則、行政指導・改善命令の流れまでを分かりやすく解説します。
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要約
法律の要点を理解する:
PCB特別措置法は、PCB含有製品やPCB廃棄物を期限内に確実に処理し、環境汚染を防ぐことを目的とした法律で、事業者には毎年の届出や期限内処理が義務付けられています。期限を過ぎると処理ができなくなるだけでなく、行政指導や改善命令の対象となるため、法的義務の理解と早期対応が不可欠です。
違反時の罰則と社会的ダメージが大きい:
期限超過や届出漏れに対しては懲役や罰金といった重い刑事罰が科される可能性があるほか、改善命令への不履行や報告拒否などでも罰則があります。また、企業名の公表や報道によって信用が失墜し、取引や契約に影響が及ぶなど、法令違反は経営リスクに直結します。
行政指導は段階的に強化される:
期限を過ぎると自治体による実態調査が行われ、行政指導 → 改善命令 → 企業名公表・告発という流れで強制力が強まっていきます。改善命令に従わなければ刑事罰の対象となり、最終的には社会的非難を受けることもあるため、適切な保管状況の把握と迅速な是正が求められます。
期限ギリギリは“混雑”で間に合わない可能性:
低濃度PCBの処理期限(2027年3月31日)が近づくと、分析検査や運搬・処理の依頼が全国的に集中することが予想されます。そのため、通常であれば間に合うスケジュールでも、処理能力の逼迫により期限超過となるリスクがあります。早期調査と余裕ある計画が、罰則や追加費用を回避する最も確実な手段です。
PCB特別措置法とは
PCB含有製品やPCB廃棄物の適正な処理を進めるため、2001年に制定されたのが「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(PCB特別措置法)」です。
PCB廃棄物を期限内に確実に処理すること、処理の実施状況を届出・報告によって適切に把握・監督すること、PCBによる環境汚染を未然に防ぐことを目的としています。
PCB含有製品やPCB廃棄物を保管している事業者は、以下のような義務を負います。
- PCB廃棄物の保管状況を毎年、都道府県知事等に届出すること
- 処理委託契約の締結・運搬・処理の完了までを期限内に実施すること
- 変更や移動があった場合は速やかに報告すること
都道府県知事への報告は、最初に報告したら終わりではなく、毎年届け出が必要なことに注意してください。
低濃度PCB廃棄物は、環境大臣による認定施設または都道府県知事による許可施設で処理する必要があります。低濃度PCB廃棄物の処分期間は2027年3月31日で終了します。
※参照:環境省「低濃度PCB廃棄物早期処理情報サイト」
PCB特措法における違反と罰則
PCB特別措置法では、以下のような罰則が科されたり、社会的リスクを負ったりする可能性があります。
罰則
- 処理期限を超えてPCB廃棄物を保管していた場合や他者に譲り渡した場合
→ 3年以下の懲役または1,000万円以下の罰金、または併科 - 保管状況や処理計画の届出を怠った場合
→6ヶ月以下の拘留または50万円以下の罰金 - 行政からの改善命令に違反した場合
→ 1年以下の懲役または100万円以下の罰金 - 行政から求められた報告や立入検査の拒否をした場合
→30万円以下の罰金
参照:ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法
社会的リスク
処理期限を守らなかった場合、単なる罰金では済まず、企業経営に大きな打撃を与える可能性がある点に注意が必要です。
- 企業名の公表や報道により、企業イメージや取引先との信用が失墜する可能性
- 取引先や自治体との契約に影響が出るケースも。
行政指導・改善命令の流れ
期限を過ぎてPCB廃棄物が保管され続けている場合、自治体や環境省による行政指導や改善命令が行われます。主な流れは次の通りです。
- 実態調査・確認
自治体の職員が現地調査や文書照会を行い、PCB廃棄物の有無・数量・保管状況を確認します。 - 行政指導(文書または口頭)
期限を超過している場合、速やかな処理委託や届出を求める行政指導が行われます。改善計画の提出が求められることもあります。 - 改善命令の発出
行政指導に従わない、または改善が見られない場合には、法的拘束力を持つ改善命令が出されます。これに違反すると刑事罰の対象となります。 - 企業名の公表・告発
改善命令にも従わなかった場合、企業名が公表されたり、告発・起訴に至るケースもあります。過去には複数の企業が全国的に報道され、社会的非難を受けた例があります。
実際に摘発・報道された企業事例
解説者
インタビュアー
ーーー実際に摘発・報道された企業の事例をご存知ですか?
高濃度PCBの期限(2024年3月31日)以降、期限を過ぎてしまって困ってるという話は、今のところ聞いたことがないです。
ただし、低濃度PCBについては「こちらの記事」でお伝えしたとおり、社内で現状を把握できていない企業は少なくありません。こうした状況を踏まえると、実際には多くの企業が潜在的なリスクを抱えているといえます。
なぜなら、低濃度PCBの処理期限が近くなった時には、分析検査の実施や運搬・処理業者への依頼が殺到することが考えられるからです。通常時であれば間に合うスケジュールでも、依頼が殺到することで処理が追いつかず、結果的に期限に間に合わなくなる企業が出てくるかもしれません。
ーーー検査や運搬、処理がスムーズに出来るかどうかが大きな問題になってくるということですね?
それだけではありません。
処理期限直前になって既設トランスからPCBが含有していることが判明した場合、PCB含有トランスの処理に加えて、新たなトランスへの更新が必須となります。
しかしながら、一般的に新設トランスの納期は約3~8カ月を要します。そのため、PCB含有トランスの処理自体は期限内に実施できても、更新用トランスの納入が期限に間に合わないという事態が生じる可能性があります。
これは事業活動に関わる大きなリスクです。
ーーーもし処理期限を過ぎた後に、PCB含有の機器があった場合はどうなりますか?
「PCB特別措置法」で定められている罰則が科されたり、社会的な信用を棄損する可能性があります。
また仮に処分ができた場合でも、追加費用がかなり高額になることも想定されます。処分期限までに間に合うよう、早め早めのスケジュール管理が推奨されます。
施工事例
まとめ:
PCB含有製品・PCB廃棄物の処理は、期限が過ぎると法的にも社会的にも重大なリスクを伴います。 「自社には関係ない」と思っていても、古い設備の中にPCBが潜んでいる可能性は少なくありません。
処理期限(2027年3月31日)が近くなると、処理業者も混み合うことが想定されるため、PCB含有の有無を早期に調査・確認をしましょう。
必要に応じて専門業者に相談し、確実な処理計画を進めます。処理期限を念頭に、余裕を持って処理スケジュールを立てましょう。早い段階で準備を始めることで、罰則や信用失墜といったリスクを未然に防ぐことができます。
本記事は、連載シリーズ「PCBとは?」の第4回として、処理期限を過ぎた場合のリスクをまとめました。次回の第5回では、PCB含有製品のコストと補助制度について、お届けします。
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