【PCBとは #3】PCB含有製品の処分対応の進め方|計画から処理までのロードマップ
更新日:2025年11月19日

環境省が定めるPCB(ポリ塩化ビフェニル)含有製品の処理期限が、いよいよ最終段階を迎えています。
しかし、いざ社内で対応を進めようとすると「どこに依頼すればいいのか」「処理完了までどのくらいかかるのか」「そもそも自社の設備にPCBが含まれているか分からない」といった疑問が多く挙がります。
本記事では、PCB含有製品の処分対応を計画から処理完了まで一連の流れで整理し、担当者が「自社は今どの段階にあり、いつまでに何をすべきか」を具体的に描けるよう、5つのステップと処理ルートの違いを解説します。
目次
要約
計画的対応が必要なPCB処理の全体像:
PCB含有製品の処理は、環境省が定める期限(最終2027年3月31日)までに完了させる必要があります。対応は「調査→分析→委託→処理→報告」の5ステップで進行し、現地調査での機器特定から分析依頼、許可業者への委託契約、搬出・焼却、行政報告まで一連の工程を経る複雑なプロセスです。
運搬業者選定と法的注意点:
PCB含有機器の運搬は、都道府県知事等から特別管理産業廃棄物の運搬許可を得た業者のみが実施可能です。不適正業者に委託すると法令違反や処理不備のリスクが生じるため、許可証の確認と実績のある運搬業者の選定が不可欠です。電気工事会社経由の紹介であれば信頼性が高いケースが多いとされています。
期限遵守のための早期対応の重要性:
PCB処理は単なる廃棄ではなく法的義務を伴う社会的責任です。分析・契約・処理・報告には長期間を要するため、期限間際になると分析機関や処理施設の予約が困難になります。「検査は完了したのに処理が間に合わない」事態を防ぐためにも、早期に自社設備のPCB含有有無を確認することが極めて重要です。
期日までに必要な5ステップ(調査→分析→委託→処理→報告)
PCBを含む製品の処理は、環境省の定める期限までに確実に完了させることが求められています。ここでは、企業が計画的に進めるための5ステップを整理します。
関連記事:PCB含有製品の処理期限を過ぎるとどうなる?罰則・行政指導・社会的リスク
ステップ1:現地調査(保有状況の把握)
最初の工程は、自社設備にPCB含有機器が存在するかを確認することです。
過去に設置されたキュービクル・蛍光灯安定器・油入機器などを対象に、現物確認(銘板・型式・製造年)や、電気主任技術者の記録などを照合し、対象機器を洗い出します。
ステップ2:分析(PCB含有の有無を確定)
調査で「PCB含有の可能性あり」と判断された場合、油のサンプリングと分析依頼を行います。
分析は、環境省登録の分析機関に委託し、高濃度/低濃度/不含有のいずれかを特定します。この分析結果が、後工程(処理委託・報告)の基礎データになります。
ステップ3:委託(運搬業者の決定と契約)
分析結果で「含有あり」と判定された場合、運搬業者との委託契約締結が必要です。
運搬業者は、PCB含有機器を設置場所から処理施設まで搬出・運搬します。運搬業者は「PCB特別管理産業廃棄物の運搬許可」を有している必要があります。
基本的に、設備オーナー様は運搬業者と契約を締結し、処理業者の選定や手続きは運搬業者が担います。
契約には、処理計画書・見積書・分析証明書など複数の書類が必要で、書類整備や審査には一定の時間を要します。
ステップ4:処理(実際の搬出・焼却)
契約締結後、運搬業者が処理業者との調整を行い、搬出・運搬・焼却処理が実施されます。処理業者も環境大臣が認定した無害化処理認定施設、もしくは都道府県知事等の許可を受けた施設である必要があります。
また、搬出時にはマニフェスト(産業廃棄物管理票)の交付・確認が求められます。
ステップ5:報告(行政・社内への記録)
処理完了後は、都道府県・政令市への報告が義務付けられています。
マニフェストの写し、処理完了証明書、分析結果などを添付し、期限内に提出します。会社としても、環境マネジメントシステム(ISO14001等)やCSR報告書に反映することで、コンプライアンス遵守の証跡を明確化できます。
PCB含有製品を処理する際の注意点
解説者
インタビュアー
ーーー PCB含有製品の運搬の委託先は、どのように選定しますか?
PCB含有製品の運搬は、適正な許可を有する運搬業者を選定することが最も重要です。
恒電社では、お客様が安心して依頼できるよう、信頼できる運搬業者をご紹介しています。
多くの場合、設備オーナー様はPCB含有機器の処分とあわせて新しい機器への更新を行います。そのため、電気工事会社に依頼するケースが一般的です。このような場合、電気工事会社がこれまでの実績をもとに信頼できる運搬業者を手配する、または紹介してもらうことも多いと思います。
一方、倉庫などで保管している機器の処分のみを行う場合など、電気工事会社を介さないケースでは、設備オーナー様ご自身で運搬業者に依頼することになります。
ーーー 運搬業者と契約をする上で注意すべき点はありますか?
PCBの運搬を委託する際は、「法的な許可を持つ業者であるか」を必ず確認することが重要です。
PCBの運搬は、管轄する都道府県知事(または政令指定都市の市長)から許可を受けた業者でなければ行うことができません。また、PCBを実際に処理できるのは、環境大臣が認定した無害化処理認定施設、もしくは都道府県知事等の許可を受けた施設に限られています。
契約を結ぶと、処理先(最終処理施設)は運搬業者が指定することになるため、不適切な業者を選んでしまうと、法令違反や不適正処理につながるおそれがあります。したがって、信頼できる運搬業者を選定することが非常に重要です。
一般的に、電気工事会社から紹介された運搬業者であれば、法的な要件を満たし、PCB処理の実績もあるため、安心して任せられるケースが多いです。一方で、自社で直接依頼する場合には、必ず許可証の有無を確認し、PCB運搬の実績があるかどうかも併せて確認することをおすすめします。
施工事例
まとめ:
PCBの処理は、単に“古い機器を捨てる作業”ではなく、法令で定められた期限内に確実に完了させなければならない「社会的責任」です。環境省が定める最終期限である2027年3月31日までは一見まだ時間があるように思えますが、実際には、分析・契約・処理・報告といった複数の工程を経るため、対応には想像以上の期間を要します。
また、期限が迫るにつれ、分析機関や処理施設の予約が取りづらくなり、結果的に「検査は済ませたのに処理が間に合わない」という事態も起こり得ます。だからこそ、今のうちに自社の設備を確認し、PCBが含まれているかどうかを明確にしておくことが何より重要です。
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