【PCBとは #2】PCB含有製品の見つけ方と判定方法|まず“自社の状況”を把握する
更新日:2025年11月19日

古い変圧器・コンデンサ・安定器などには、今もなおPCB(ポリ塩化ビフェニル)が残っている可能性があります。特に工場やビル、倉庫などで「何十年も前からある設備」の中には、PCBが含まれていることに気づいていないことも少なくありません。
まずは、自社の設備の中にPCB含有機器がないか確認することが重要です。この記事では、銘板・製造年・分析での見分け方を解説します。
高濃度PCBの処分期間は2023年3月31日に終了しており、低濃度PCBは2027年3月31日が期限です。対応漏れは改善命令や罰則のリスクにもつながりますので、ぜひご一読ください。
- 「PCB含有製品の処理期限」についてはこちらの記事をご覧ください。
目次
要約
PCB含有機器の潜在リスク:
古い変圧器やコンデンサ、蛍光灯安定器などにはPCBが残存している可能性があり、特に1972年以前に製造された機器は要注意です。外見だけでは判断できず、銘板や製造年、分析による確認が必要です。PCBを含む機器を放置すると法的罰則や環境リスクにつながるため、まずは設備の棚卸しと確認が重要です。
PCB含有の判定基準と期限:
PCB含有機器は濃度によって「高濃度(0.5%超)」と「低濃度(0.00005%超)」に分類されます。高濃度PCBの処分期限は2023年3月で終了しており、低濃度PCBは2027年3月31日までが処理期限です。期限を過ぎると改善命令や罰則の対象となるため、早期の調査と計画的対応が求められます。
検査・分析の必要性と依頼先:
銘板が不明、製造年が古い、または低・高濃度の区別がつかない場合は、環境省登録の分析機関でPCB濃度分析を行う必要があります。分析依頼時は、実績の有無や採油対応、報告書形式を確認することが重要です。特に油交換や継ぎ足しを行った変圧器では微量混入の可能性もあり、慎重な判断が求められます。
初動対応と恒電社のサポート:
PCB含有が疑われる場合、まず「検査が実施済みか」を確認することが出発点です。主任技術者だけでなく設備担当者にも確認が必要で、情報が不明な場合はメーカー照会や分析依頼を行います。恒電社では調査から分析・運搬会社紹介まで一貫対応を行っており、処理期限内の安全・確実な対応を支援しています。
PCBが使われている可能性のある機器
PCBが使われている可能性のある機器は下記の通りです。
| 機器 | 銘板/表示の例(ヒント) |
|---|---|
| 変圧器 | 不燃性油、不燃性合成絶縁油、Askarel 等の表記があれば要注意。製造年1972年以前は高確率。 |
| 電力用コンデンサ | 油種表示・型式、メーカー照会。 封じ切りで採油不可の場合は製造年・型式から判定。 |
| 計器用変成器/リアクトル/放電コイル/ブッシング | 銘板・型式・冷却方式を確認。 メーカー照会とJEMA資料を併用する。 |
| 蛍光灯安定器 | 1957年1月〜1972年8月製の安定器におけるPCB使用例あり。銘板情報で判定する。 |
| 電圧調整器/整流器/開閉器/遮断機/中性点抵抗器/ OFケーブル | 製造年・油種・保守履歴で要確認。必要に応じ分析する。 |
※参照:JEMA「高濃度のPCBを使用した電気工作物」、経済産業省「PCB含有電気工作物」
PCB濃度の目安と分類
PCB含有製品は、PCBの濃度によって大きく次のように分類されます。
高濃度PCB含有電気工作物:
告示で定められた12種類の電気工作物(変圧器、電力用コンデンサー、計器用変成器、リアクトル、放電コイル、電圧調整器、整流器、開閉器、遮断器、中性点抵抗器、避雷器及びOFケーブル。以下同じ。)のいずれかに該当するものであって、使用されている絶縁油に含まれるポリ塩化ビフェニルの重量の割合が0.5%を超えるもの(換算値:重量比0.5%=5,000mg/kg=5,000ppm)。
低濃度PCB含有電気工作物:
告示で定められた12種類の電気工作物のいずれかに該当するものであって、高濃度PCB含有電気工作物に該当するものを除き、使用されている絶縁油に含まれるポリ塩化ビフェニルの重量の割合が0.00005%を超えるもの(換算値:重量比0.00005%=0.5mg/kg=0.5ppm)。
引用:経済産業省「PCB含有電気工作物・高濃度PCB含有電気工作物の早期処分のための措置(平成28年9・10月改正)」
製造年・銘板からの判別の仕方
変圧器のように絶縁油を採取できる構造の電気工作物については、採取した絶縁油を専門機関へ依頼し、分析を行います。PCB濃度が0.5mg/kg超であれば「低濃度PCB含有電気工作物」と判断されます。
※高濃度PCB含有製品の処理期限はすでに終了しています。以下では、低濃度PCB含有製品の判別の仕方について解説します。
製造年の目安
国内メーカーが1990年頃までに製造した電気機器には、PCB汚染の可能性があることが知られています。
絶縁油の入替ができないコンデンサでは、1991年以降に製造されたものはPCB汚染の可能性はないとされています(ニチコン製のコンデンサについては、2004年3月以前のものでもPCB汚染の報告があります)。
一方、変圧器のように絶縁油に係るメンテナンスを行うことができる電気機器では、交換・継ぎ足しされた絶縁油の中に微量のPCBが含有している可能性もあります。
1994年以降に出荷された機器であって、絶縁油の入替や絶縁油に係るメンテナンスが行われていないことが確認できればPCB汚染の可能性はないとされています(ただし、富士電機製の一部の機器については、平成6年までに出荷された機器にPCB汚染の可能性がある)。
分析が必要なケースと依頼先の選び方
以下のような場合は、PCB含有の有無を確定するために専門分析が必要になります。
- 銘板が読めない・欠損している
- 製造年やメーカーが不明
- 低濃度か高濃度かの判別がつかない
- 蛍光灯安定器など大量にあるが、型式がバラバラ
分析は、環境省に登録されたPCB廃棄物処理の認定機関や、各自治体が公表している分析機関リストから依頼します。依頼時には以下を確認すると安心です。
- PCB分析の実績(自社で分析を依頼したい機器での経験があるか)
- サンプル採取の対応有無(自社で難しい場合は採取も依頼できるか)
- 分析結果の報告書フォーマット(法令提出書類に対応しているか)
PCB含有製品|最初にチェックすべき項目
解説者
インタビュアー
ーーー 自社の設備にPCBの含有が疑われた際、オーナー様が最初にチェックすべき調査項目は何ですか?
まず確認していただきたいのは、該当の製品について「PCB検査が実施済みかどうか」です。ここがすべての出発点になります。検査が実施されていない、または結果が不明なままでは、次の対応(検査・交換・処分)の判断をすることができません。
PCBを含む機器は、一般的な産業廃棄物として処理することが認められていません。環境大臣が認定した無害化処理認定施設、もしくは都道府県知事等の許可を受けた施設で処分する必要があります。
したがって、PCBの含有有無が分かっている場合は検査不要ですが、分からない場合は必ず検査を行い、その結果に応じて処理方法を決定することが重要です。
関連記事を読む:PCB含有製品の処理期限とは?|背景と法的義務を正しく理解する
ーーー PCB検査実施の履歴は、自社が依頼している主任技術者に聞けば状況が分かるものでしょうか?
一概にそうとも言えないですね。
というのも「主任技術者経由でPCB検査を実施したケース」と、「主任技術者を介さずに設備担当者様が直接PCB検査を進めたケース」の両方が存在するためです。
主任技術者が主体となって検査を依頼していれば、確認すればすぐに把握できます。しかし、設備担当者など別の方が対応していた場合は、主任技術者に尋ねても正確な状況が分からないことがあります。
ーーーでは、「検査を実施したかどうか分からない」という状態でお問い合わせをいただくこともあるのでしょうか?
はい、そのようなケースもあります。状況が把握できていない場合には、まずは製造メーカーへの問い合わせやPCB検査のご案内をさせていただきます。
メーカーから「PCB含有の可能性あり」と判断された場合、油のサンプルを抽出し、環境省登録の分析機関へ分析を依頼します。この分析結果(高濃度/低濃度/不含有)によって、その後の対応が変わってきます。
関連記事を読む:PCB含有製品の処分対応の進め方|計画から処理までのロードマップ
施工事例
まとめ:
PCB含有機器は、見た目では分からないものが多く「うちにはないだろう」と思い込むことが最大の落とし穴です。まずは自社の設備を棚卸しし、製造年・銘板・記録をもとにPCB含有の可能性を確認しましょう。
ご不明点がある場合は専門分析を行い、処理期限に間に合うよう計画的な対応を進めることが重要です。恒電社では、PCB含有の調査から、分析、運搬会社のご紹介など、一貫してご対応させていただきます。まずは、お気軽にご相談ください。
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