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【トランスとは?#1】容量の決め方・目安・注意点を電気工事士が徹底解説

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#キュービクル, #トランス

高圧受電設備において、トランスの「容量」は、設備コスト・電気料金・安定稼働のすべてに直結する重要な要素です。容量の選定を誤ると、過負荷によるトラブルや無駄なコスト増加につながる可能性があります。

しかし実際は「何kVAが、自社に適正なのか分からない」「これまでと同じ容量で更新して問題ないのか判断できない」といった悩みを抱える設備担当者の方も少なくありません。

本記事では、トランスの基礎知識、容量の考え方、さらに電気工事士の現場視点による注意点までを整理し、分かりやすく体系的に解説します。

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要約

トランスの基本理解
トランス(変圧器)は高圧で受電した電気を安全に使用できる電圧へ変換する設備であり、その性能を示すのがkVAで表される容量です。容量は「安全に供給できる電気の上限」を示し、過不足があると設備トラブルや無駄なコスト増加につながります。

kVAと力率の関係
トランス容量のkVAと実際に仕事をする電力kWは一致せず、その差を左右するのが力率です。kW=kVA×力率で決まり、力率を考慮せずに選定すると容量不足が生じる可能性があります。正しい理解が適正容量判断の前提となります。

容量算定の考え方
容量は単純な合計ではなく、需要率や不等率、時間帯ごとの使用傾向を加味して決定します。30分デマンド値などの実績データを活用し、業種や運用実態に即した予測を行うことで、過大投資や過小設計を防ぎます。

余裕とコストのバランス
将来増設を見据えて10〜20%の余裕を持たせるのが一般的ですが、過大すぎる容量は初期費用増加につながります。現在主流のデマンド契約では実使用量が基本料金に反映されるため、長期的視点でのバランス判断が重要です。

そもそも「トランス」とは何か?

「トランス」とは?

トランス(変圧器)とは、電圧を変換するための電気設備です。高圧で受電した電気を、建物や設備で安全に使用できる電圧へと変換する役割を担っています。

高圧受電設備では、電力会社から6,600Vといった高い電圧で電気が供給されますが、そのままでは照明や空調、機械設備には使用できません。そこで必要になるのがトランスです。トランスによって電圧を下げることで、各設備へ適切な電気を安定して供給できるようになります。

このとき重要なのが、トランスが「どれだけの電気を扱えるか」という性能です。この能力を数値で表したものが「トランス容量」であり、一般的に「kVA(キロボルトアンペア)」という単位で示されます。

つまりトランス容量とは、そのトランスが安全に供給できる電気の“上限”を示す指標だと考えると分かりやすいでしょう。

容量を超えた電気を流そうとすると、トランス本体に大きな負担がかかり、過熱や劣化、最悪の場合は設備トラブルにつながります。一方で、必要以上に大きなトランスを設置すると、設備コストや電気料金の面で無駄が発生することもあります。

このように、トランスを正しく理解することは、適切な容量選定を行うための前提条件でもあります。

kVAとkWの違い

トランス容量を正しく理解するうえで欠かせないのが、「kVA」と「kW(キロワット)」の違いです。

kVAは、電圧と電流を掛け合わせた値で、設備として流すことができる電気の大きさを表します。一方で、kWはモーターを回したり照明を点灯させたりといった、実際に仕事をしている電力の量を示します。

ここで重要なのは、実際は流れている電気(kVA)の全てが使われているわけではないという点です。

工場やビルで使われるモーターや空調設備などの多くは磁気を利用して動作するため「実際に仕事に使える電気(有効電力)」と同時に、「設備を動かすための準備に必要な電気(無効電力)」も流れます。

その結果、設備としては100kVAの電気が流れていても、実際に使われている電力は80kW程度、という状態が生じます。

この「流れている電気のうち、実際に仕事をしている割合」を「力率」と呼びます。力率が100%であればkVAとkWは一致しますが、実際の設備では80〜90%程度が一般的です。

※ 力率が低い状態では、設備や電気料金の面で無駄が増えるため、進相コンデンサなどによる力率改善が行われることもあります。

高圧設備で「トランス容量」が重要な理由

トランス容量は、単に使える電気の量を計るだけの数値ではありません。

適正な容量で運用することで、過負荷を防ぎ、安全に電気を使用することができます。逆に、容量に余裕がない状態が続くと、トランス本体の劣化が早まり、寿命を縮める原因となります。

また、トランス容量は電力会社との契約電力や基本料金にも間接的に影響します。容量が過大な場合、実際の使用状況に見合わない高い基本料金を支払い続けることになるケースも少なくありません。

このように、トランス容量は長期的な運用コストと設備の信頼性を左右する重要な判断要素といえます。

トランス容量の単位「kVA」を正しく理解する

トランス容量はkVAで表され、実際に使用できる電力(kW)は力率を考慮して決まります。その関係は次のとおりです。

  • kVA = 電圧(V)× 電流(A)
  • kW = kVA × 力率

力率を考慮せずに容量を判断すると、実際の使用電力を正しく把握できません。例えば、必要な電力が100kWだからといって100kVAのトランスを選定すると、力率次第では容量不足に陥る可能性があります。

電気工事士に聞く、トランス容量の決め方

解説者

高橋 宏武
一級電気施工管理技士/第一種電気工事士

高橋 宏武

大学卒業後、恒電社に入社したプロパー社員。電気工事士として、住宅の電気工事に加え、法人向けの高圧電気設備工事の直接提案を開始するなど、現在の会社の礎を創ってきたメンバー。2020年からは事業部長として、エンジニアリング事業部を統括している。プロフィールはこちら

インタビュアー

岩見 啓明
第二種電気工事士/二等無人航空機操縦士

岩見 啓明

前職はWebメディアの編集者。恒電社に参画後はマーケティングに従事し、現在は採用全般も担当している。2023年に二等無人航空機操縦士(ドローン)資格、2024年に第二種電気工事士資格を取得。プロフィールはこちら

ーーートランス容量を決める際、まずは何から手をつければ良いのでしょうか?

基本となるのは、そのトランスから電気を供給するすべての機器を把握することです。

具体的には、動力設備(エレベーター、ポンプ、業務用エアコンなど)、照明、コンセント負荷などをすべてリストアップします。設備表や単線結線図をもとに、それぞれの「定格容量」を積み上げ、「建物全体で最大どれだけの電力を使う可能性があるか」という全体像を可視化します。

ーーー全負荷を足し合わせた合計が、そのままトランスの容量になるのでしょうか?

いえ、単純な足し算で決めると「オーバースペック」になる可能性があります。すべての設備が24時間365日、同時にフル稼働することはまずありません。そのため「需要率(どれくらい使われるか)」と「不等率(ピークが重ならないか)」を計算に入れます。

特に重要なのが「時間帯による使い方のズレ」です。例えば、テナントビルに「昼営業のカフェ」と「夜営業のバー」が入っているとします。この場合、昼と夜で電力のピークが分散するため、両方の合計値ほどのトランス容量は必要ないケースが多いのです。

また施設の用途によって、その計算は大きく変わります。主な業種ごとの特徴をまとめると以下のようになります。

  • 工場:生産ラインの稼働パターンや、大型モーターの始動電流に左右される。
  • オフィスビル:昼間の空調・照明負荷が大きく、夜間との時間帯差が激しい。
  • 倉庫:荷役設備の稼働時(ピーク)と閑散時の差が非常に顕著。

お客さまの業種や実際の運用形態に合わせて「実態に即した見積もり」を行うことで、過大すぎる設備投資を防ぐことができます。

キュービクルを新設する場合は、近隣の類似施設のデータや、メーターの30分(デマンド)値(最大需要電力)などを参考に、精度の高い予測を行います。

「30分値・デマンド」とは?
電力会社から提供される電力使用実績データで、30分ごとの消費電力量を記録したものです。このデータを1年分収集すると、1日あたり48コマ × 365日 = 17,520コマとなり、電力の使用傾向を非常に高い精度で可視化できます。

ーーーギリギリを攻めすぎても怖い気がします。余裕はどれくらい見るべきですか?

「将来の増設」と「契約方式」を考慮し、適度な余裕を持たせます。一般的には、将来の設備計画を考慮して20〜50%程度の余裕を見込むのが標準的です。トランス容量が小さい場合ほど、余裕の幅を大きく見ておくことが多いです。

「余裕を持ちすぎると基本料金が高くなるのでは?」と心配されるオーナー様も多いですが、現在はスマートメーターによる「実量制契約(デマンド契約)」が主流です。

これは、トランスの大きさではなく、「実際にその月(および過去1年間)で一番電気を使った30分間の値」で基本料金が決まる仕組みです。つまり、トランス容量に多少の余裕を持たせておいても、実際の使用量が少なければ基本料金は抑えられるのです。

逆に、容量ギリギリで設計して後からトランスを入れ替える工事費の方が高くつくため、初期投資とランニングコストのバランスを丁寧に説明して決定します。

よく使われるトランス容量の目安

ーーー最後に、施設・業態ごとの一般的なトランス容量の目安を教えていただけますか?

分かりました。施設・業態ごとのトランス容量の目安は以下の通りです。

  • 小規模事務所、店舗:50kVA
  • 中小規模の事務所・クリニック:75kVA
  • 小規模工場、ビル:100kVA
  • 中規模工場、商業施設:150kVA
  • 生産設備を多く持つ工場:200kVA以上

これらはあくまで一般的な目安であり、実際の容量は必ず個別検討が必要です。

また導入の際にかかる費用は、製品代と工事費の合計となります。付帯する工事の内容や、設置する場所(屋内・屋外・屋上など)の条件によって異なりますので、一度現地調査にお伺いしたうえで、お見積もりを提出しております。

まとめ

トランス容量は、単なる数値の大小ではなく、「いまの使用状況」と「これからの運用計画」の両方を見据えて判断すべき重要な設備条件です。必要な負荷を正しく把握し、需要率や不等率、力率といった要素を踏まえて検討することで、過不足のない容量選定が可能になります。さらに、デマンドデータを活用すれば、より実態に即した根拠ある判断が行えます。

容量に余裕を持たせることは、将来の増設や突発的なピークへの備えとして有効ですが、過大設計は初期費用の増加につながります。一方で、過小設計はトランスの劣化や更新工事といった大きなリスクを招きます。だからこそ、設備の使われ方を丁寧に分析し、初期投資と長期的な運用コストのバランスを見極めることが重要です。

トランスは高圧受電設備の“心臓部”ともいえる存在です。適切な容量選定は、安全性の確保だけでなく、電気料金の最適化や設備寿命の延伸にも直結します。更新や新設を検討されている場合は、「これまでと同じ」で判断するのではなく、現在の使用実態と将来計画を踏まえた見直しを行うことが、安定した設備運用への第一歩となります。

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記事を書いた人

蕨川 真央
恒電社

蕨川 真央

教育・医療業界を経験したのち、結婚出産を経て恒電社に参画。現在は、マーケティングや採用領域のアシスタントとして従事する。プロフィールはこちら

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