記事

【トランスとは?#2】トランス新設・更新・増設時に設備オーナーが確認すべき注意点とリスク

カテゴリー:

コラム

タグ:

#キュービクル, #トランス

高圧受電する工場やビルにおいて、高い電圧の電気を「降圧」して、施設内で使用できる電気に変換「変圧」するトランス。キュービクル(高圧受電設備)の中でも、トランスの更新や新設は、建物の心臓部を入れ替える大きな工事です。

そこで重要になってくるのが、トランスの「容量」。この容量は「不足していなければ問題ない」「大きめにしておけば安心」と思われがちですが、実はその考え方こそがトラブルや無駄なコストを招く原因になることがあります。

容量が足りなければ、設備トラブルや突発的な停電リスクが高まり、逆に大きすぎれば、使っていない電気のために高い設備費や電気料金を払い続けることにもなりかねません。

本記事では、トランス容量が“適正でない場合”に実際に起こりうる問題を、容量不足・容量過大の両面から整理して解説します。さらに後半では、現場を知る電気工事士の視点から、容量判断で特に注意すべきポイントについても掘り下げていきます。

  • 「今の容量は本当に適切なのか?」
  • 「更新や増設の前に何を確認すべきか?」

そんな疑問をお持ちの方は、ぜひ参考にしてください。

▼関連記事はこちら

要約

容量不足と過大のリスク
トランス容量は小さすぎても大きすぎても問題が生じます。容量不足は過熱や停電リスク、将来増設への対応不能を招き、過大容量は初期費用や維持コスト増加、軽負荷による効率低下につながります。適正容量の判断が安全性と経済性を左右します。

判断基準は“実態”重視
定格容量の単純な合計ではなく、実際のピーク電力や30分デマンド値、稼働時間帯を踏まえた検討が不可欠です。ブレーカーの作動状況や負荷の偏りを把握することで、容量変更が本当に必要かどうかを見極められます。

更新は見直しの好機
トランス更新や増設は、電力の使い方を再点検する重要な機会です。現地調査によって運用実態や将来計画を整理し、安全性・拡張性・コストのバランスを考慮した容量設計を行うことが、長期安定運用への近道となります。

トランス容量が適正でない場合に起こる問題

トランス容量は、大きすぎても小さすぎても問題が発生します。容量不足の場合だけでなく、容量過大の場合にも、それぞれ異なるリスクがあるため注意が必要です。

容量不足の場合

負荷が集中することでトランス本体が過熱し、劣化が早まって寿命が低下します。また、過負荷状態では保護装置が作動しやすくなり、ブレーカー動作や突発的な停電が発生するリスクも高まります。

容量に余裕がない場合、

  • 設備の同時使用が制限される
  • 繁忙期やピーク時間帯に電力不足が顕在化する
  • 将来的な設備増設に対応できない

といった問題が生じやすくなります。

容量過大の場合

一方で、必要以上に大きなトランスを選定すると初期設備コストが増加します。また、高圧電気設備を保守・点検する主任技術者との契約によっては、トランス容量に応じた金額の変動もありますので、確認が必要です。

さらに、トランスを常に軽い状態で運転する「軽負荷運転」が続くことで効率が低下し、エネルギーを無駄に消費する要因にもなります。

このように、トランス容量は「大きければ安心」「とりあえず余裕を持たせれば良い」というものではありません。設備の安全性、運用コスト、将来の拡張性を総合的に考えたうえで、適切な容量を選択することが重要です。

電気工事士に聞く、トランス容量の判断で「注意すべきポイント」

解説者

高橋 宏武
一級電気施工管理技士/第一種電気工事士

高橋 宏武

大学卒業後、恒電社に入社したプロパー社員。電気工事士として、住宅の電気工事に加え、法人向けの高圧電気設備工事の直接提案を開始するなど、現在の会社の礎を創ってきたメンバー。2020年からは事業部長として、エンジニアリング事業部を統括している。プロフィールはこちら

インタビュアー

岩見 啓明
第二種電気工事士/二等無人航空機操縦士

岩見 啓明

前職はWebメディアの編集者。恒電社に参画後はマーケティングに従事し、現在は採用全般も担当している。2023年に二等無人航空機操縦士(ドローン)資格、2024年に第二種電気工事士資格を取得。プロフィールはこちら

ーーー更新工事の際に「前回と同じトランス容量で」と言われることは多いですか?逆に「増やしてほしい」と言われることもありますか?

感覚値ですが、8割ほどのお客さまは「前回と同じトランス容量」をご希望されます。一方で、単なる老朽化対応ではなく、トラブル(停電)をきっかけに「容量を増やしたい」という相談も少なくはありません。

そのような増設の理由としては、以下のような実情があります。

  • 空調・生産設備・厨房機器などの負荷が増えた
  • (テナント変更などの理由により)設備内容が変わった
  • 電気の使用時間帯が変化した

お客さまごとの背景、事情をヒアリングしたうえで、こちらから増設を提案することもあります。

また、更新ではなくキュービクルを新設する場合は、「低圧受電だったが、使用電力が増えてブレーカーが落ちることが増えたため、高圧受電にしたい」といったケースもあります。

ーーートランス容量を判断する際、注意すべきはどんな点でしょうか。

注意すべきなのは「機器の定格容量の合計」と「実際の使用ピーク」が必ずしも一致しない点です。

設置されている機械や設備の定格容量(kVA)を単純に足し算してしまうと、実態よりも過大な容量を見積もってしまうことがあります(詳細はこちらの記事で解説しています)。

一方で、最も警戒すべきは、容量不足です。定格容量ギリギリのトランスを選定してしまうと、想定外のタイミングでブレーカーが作動し、業務や営業に支障をきたす可能性があります。

また、現在の使用状況だけでなく、将来の設備更新や増設計画なども考慮して、余裕をもったトランスを導入することが重要です。

ーーートランス容量を検討する際、必ず確認している項目を教えてください。

主に以下の3点を必ず確認します。

  1. 既存ブレーカーの容量と作動状況:主幹ブレーカーは何アンペアか、どのような条件で作動しているかを確認します。全体的な使いすぎなのか、一部回路に負荷が集中しているのかを見極めます。
  2. 施設の用途・稼働時間帯: 昼間中心か、夜間も稼働するのか。業種や使われ方によって、電力のピークは大きく変わります。
  3. デマンド値(最大需要電力): スマートメーター等が設置されていれば、過去の「30分デマンド値(実際に使用した最大電力)」を確認します。これが最も確実なデータになります。

トランス更新・増設時に設備オーナーが確認すべきこと

ーーー設備オーナーとして、更新や増設の前に押さえておくべきポイントは何でしょうか。

最も重要なのは、「なぜブレーカーが落ちるのか」「容量が足りなくなった理由は何故なのか」を把握することです。一時的な要因なのか、構造的な問題なのかによって、必要な対策は大きく変わります。

特定の設備やエリアに原因がある場合は、回路の見直しや部分的な対策で解決することもあります。一方で、施設全体の使用電力が底上げされている場合は、トランス容量そのものの見直しが必要になります。

また、将来的な用途変更や設備計画についても、事前に共有いただけると、無駄のない設計が可能になります。

ーーー現地調査を行うことで、初めて見えてくる情報にはどのようなものがありますか。

図面や資料だけでは分からない「実際の使われ方」と「物理的な制約」です。

  • 実際の稼働状況
  • 空調機器や動力設備の設置状況
  • 盤内の負荷バランスや電流の偏り

これらは、現地で確認・計測して初めて把握できます。

「とりあえず容量を大きくしておけば安心」ではなく、現場の状況を一つずつ整理し、コストと安全性のバランスが取れた最適な容量を導き出すことが、長期的に見て最も合理的な選択と言えるでしょう。

まとめ

トランスの新設・更新・増設は、単なる機器の入れ替えではなく、施設全体の電力バランスを見直す重要な機会です。容量が不足すれば停電や設備トラブルのリスクが高まり、過大であれば初期費用や維持コストの増加、効率低下につながります。どちらも経営や事業運営に直結する問題である以上、「今と同じでよい」「大きめにしておけば安心」という判断は避けるべきです。

適正な容量を導き出すためには、定格容量の合計だけでなく、実際のピーク使用電力やデマンド値、稼働時間帯、将来の設備計画までを総合的に確認する必要があります。特に、ブレーカー作動の原因や負荷の集中箇所を正しく把握することは、容量見直しの是非を判断するうえで欠かせません。

図面上の数字だけでは見えない実態を、現地調査や計測によって丁寧に整理し、安全性・拡張性・コストのバランスを取ることが、長期的に安定した設備運用につながります。トランス更新のタイミングこそ、自社の電力の使い方を再点検し、将来を見据えた最適化を図る絶好の機会といえるでしょう。

関連記事を読む

記事を書いた人

蕨川 真央
恒電社

蕨川 真央

教育・医療業界を経験したのち、結婚出産を経て恒電社に参画。現在は、マーケティングや採用領域のアシスタントとして従事する。プロフィールはこちら

電気設備工事のことなら、
“まるっと”
恒電社へご相談ください。

お問い合わせはこちら

お電話のご相談はこちら

048-728-4283
自家消費型太陽光発電はこちら