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【トランス更新工事の手順】結局、お客様(設備オーナー)は何をすれば良いのか?[東京電力管内]

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#PCB, #キュービクル, #トランス
投稿日:2026年4月27日
更新日:2026年4月27日

※古い変圧器(トランス)やコンデンサなどに含まれる低濃度PCB(ポリ塩化ビフェニル)の処理期限は2027年3月です。自社設備に含有が疑われる場合は、急ぎ検査・処分を行うことを推奨いたします。


トランスは、キュービクル内で高圧6,600Vを低圧100V・200Vへ変換する「電力の心臓部」とも言える機器です。一般的には20〜25年が更新目安とされますが、使用環境や負荷条件によってはそれより早く劣化が進行するケースもあります。

老朽化した変圧器を放置すると絶縁劣化による地絡・短絡事故や、最悪の場合は焼損・火災につながるリスクがあります。

本記事では、「❶事前手続き」→「❷工事準備」→「❸工事実施」→「❹後日対応」の4ステップで、トランス更新工事の全体像と設備オーナーが何をすべきかを分かりやすく解説します。

❶事前手続き

1)お問い合わせ・必要書類のご提出【お客様】

まずは電気工事会社へ工事の「相談・問い合わせ」を行います。この際、お客様側で準備すべき主な書類・情報は以下のとおりです。

  1. 直近の「電気料金明細書」:
    お客さま番号や契約電力が記載されており、東京電力への申請に必要です。
  2. 設備の点検記録(月次・年次点検報告書):
    電気保安協会や主任技術者からの年次点検報告書があればご用意ください。過去の指摘事項や劣化の履歴が分かると、新設備の仕様検討に役立ちます。
  3. 受電設備の図面類:
    現在の単線結線図や構内配置図。主任技術者が所有しているケースが多いため、ご不明な場合は主任技術者へご確認ください。
  4. 既設変圧器の銘板情報:
    メーカー・型番・製造年・容量(kVA)・電圧比などが分かると、機種選定がスムーズになります。

2)現地確認の実施【電気工事会社】

お問い合わせ後、電気工事会社による「現地確認」が行われます。主なチェックポイントは以下のとおりです。

  • キュービクル内部の状況確認:既存変圧器の配置・容量・配線の引き回しを確認し、新しいトランスが収まるスペースに加え、放熱性・保守スペースが確保できるかも含めて確認します。
  • 搬入・搬出経路の確認:変圧器は機種によって100kg〜数百kgになることもあります。搬入口の幅・高さや通路の狭さ、段差の有無を事前に確認します。
  • 負荷容量の確認:現在の電力使用状況や将来的な設備増設を踏まえ、変圧器容量(kVA)の見直しが必要かを検討します。
  • PCBリスクの予備調査:製造年が1989年以前の変圧器は、PCB含有絶縁油が使われている可能性があります。製造年・メーカーを現地で確認します。詳しくはこちら

※恒電社の場合、現地確認費用はいただいておりませんのでご安心ください。

3)見積書の提出【電気工事会社】

現地確認の情報に基づき、2週間ほどで電気工事会社から工事費用の「見積書」が提示されます。トランス更新工事の費用を左右する主な要素は以下のとおりです。

  • 変圧器本体価格:容量(kVA)・絶縁種別(油入式・モールド式)・メーカーなど。条件により大きく異なります。
  • 工事費用:キュービクル内での作業となるため比較的コンパクトですが、搬入条件(クレーン使用・夜間工事など)が難しいほど費用が高くなります。
  • 付帯工事費用:高圧ケーブル・低圧ケーブルの更新が同時に必要な場合、ブレーカー類の交換が生じる場合は別途費用が発生します。
  • PCB処理費用(該当の場合):PCB含有が確認された場合、法定処理に別途費用がかかります。

4)電力会社との事前協議・工事負担金の確認【電気工事会社】

トランス更新工事は、既存設備内での機器交換が中心であるため、キュービクル新設工事と比べて工事負担金が発生しないケースが多いです。ただし、変圧器容量を大幅に変更する場合(例:契約電力の変更を伴う場合)は、東京電力パワーグリッドとの事前協議が必要になることがあります。

「工事負担金」:契約容量の増減に伴い、電柱や配電線を新設・延長する場合に生じるお客さま負担分です。容量変更を伴わない単純なトランス更新では発生しないことがほとんどですが、事前に電気工事会社に確認しておくことをおすすめします。

※恒電社が必要に応じて事前協議を代理で行いますのでご安心ください。

5)電気工事会社への発注・契約手続き【お客様+電気工事会社】

工事内容・見積金額に合意できたら、電気工事会社に正式発注します。費用を抑えたい場合は、施設メンテナンス会社や建設会社など複数社を通さず、電気工事会社への直接発注を強くお勧めいたします。

❷工事当日までの準備

6)東京電力への申請・調整【電気工事会社】

トランス更新の作業中は、停電が必須です。また工事の内容によっては、電力会社に送電自体を停止してもらう必要があります。その場合、工事会社が東京電力パワーグリッドと工事日の調整・停電申請を行います。なお、変圧器容量に変更がない場合は、停電申請のみで対応できる場合がほとんどです。

7)工事日程の決定【三社】

停電申請が受理されたら、工事日程の決定ができます。工事日程は電気工事会社が旗振り役となり、以下のメンバー間で調整されます。

  • 東京電力パワーグリッド
  • 電気工事会社
  • お客様(またはテナント)+主任技術者

トランス更新工事の停電時間は、キュービクル全体の更新と比べて短く、状況によっては4〜6時間程度で完了するケースもあります。ただし作業範囲が広い場合(ケーブル更新などを同時実施する場合)は終日停電となることもあります。

※工事日程の調整には数か月先になるケースも少なくありません。計画段階から「◯月中には実施したい」など早めに調整することをおすすめいたします。

8)各種許可申請【お客様+電気工事会社】

工事日が確定すると、電気工事会社が工事計画書を作成します。クレーン車を道路に駐車する場合は警察署への道路使用許可申請が必要です。これらは電気工事会社が中心となって対応します。

9)テナント・近隣住民への通知【お客様】

工事日が正式決定したら、少なくとも数週間前には、テナントや関係者へ停電と工事の予定を通知してください。

  • 告知文の配布:停電日時や作業内容を記載した「停電のお知らせ」を作成し、テナント各社へ配布します。
  • 協力依頼:テナントには重要機器のシャットダウン(PC・サーバ・セキュリティシステム等)や業務調整の協力を依頼します。
  • 非常用設備の確認:自家発電機や蓄電池の有無・容量を確認し、停電中も最低限の設備が稼働できるよう準備します。

❸工事実施

10)工事日当日(工事作業前)

いよいよ「工事日当日」です。工事作業前の流れは以下のとおりです。

  1. 朝の打ち合わせ(朝礼):工事関係者(東京電力作業員、電気工事会社、主任技術者、お客様設備担当など)が現地に集まり、停電時刻や作業手順を最終確認します。
  2. 安全措置の確認:作業者は保護具(ヘルメット、絶縁手袋など)を着用。高圧側回路にアースを装着し、万が一誤送電があっても作業者に電流が流れないよう安全措置を徹底します。
  3. 停電措置の実施:定められた時刻に東京電力作業員が操作して送電を遮断。検電器で無電圧を確認してから作業を開始します。

11)既存トランスの撤去と新設トランスの据付【電気工事会社】

停電が確認されたら、既存変圧器の撤去作業に取りかかります。

  • 高圧・低圧ケーブルの切り離し:変圧器一次側(高圧)・二次側(低圧)のケーブルをすべて外し、完全に離線状態にします。
  • 接地線の切り離し:変圧器外箱に接続された接地線を外します。
  • 撤去・搬出:固定ボルトを外し、手動または小型ホイストで変圧器をキュービクルから取り出します。油入式の場合、絶縁油が漏れないよう細心の注意が必要です。

既存変圧器の撤去が完了したら、新しい変圧器の据付です。

  • 新変圧器の搬入:キュービクル内の所定の位置まで搬入します。搬入経路が狭い場合は事前に工夫が必要です。
  • 据付・固定:所定位置にセットし、アンカーボルトで確実に固定します。
  • 結線作業:高圧・低圧ケーブルを接続し、接地工事も実施。施工図通りに確実に接続します。

12)使用前検査の実施【電気主任技術者】

新たに設置した変圧器は、送電再開前に法令で定められた使用前自主検査を行う必要があります。主任技術者が責任をもって実施します。主な試験項目は以下のとおりです。

  • 絶縁抵抗試験:高圧・低圧回路それぞれの絶縁状態を測定し、規定値以上の絶縁抵抗を確保しているか確認します。
  • 耐圧試験(交流耐圧試験):高圧設備に所定の試験電圧を一定時間加え、絶縁破壊や放電が起きないかを確認します。
  • 変圧比・位相試験:変圧器の変圧比と位相が規定どおりかを確認します。
  • 無負荷試運転・電圧測定:変圧器の無負荷運転を行い、二次側出力電圧が正常かチェックします。

13)復電作業

すべての試験で問題がなければ、復電作業へ進みます。復電操作は、通常、主任技術者の確認・監督のもとで行い、必要に応じて電気工事会社が対応します。

なお、工事範囲によって電力会社による停電措置が必要だった場合は、電力会社の担当作業員に送電再開を依頼します。本線送電の再開後、新しいトランスで受電を開始し、変圧器二次側から建物へ低圧電力が供給されていることを確認します。そのうえで、ブレーカーを順次投入し、各系統の電気を復旧します。

かくしてトランス更新工事が無事終了し、新しい変圧器での電力供給が始まります。

14)PCB検査の実施【電気工事会社】

撤去した古い変圧器には、PCB(ポリ塩化ビフェニル)を含む絶縁油が使われていた可能性があります。PCBは毒性が強く環境汚染のおそれがあるため現在使用が禁止されており、含有機器は法定期限までに廃棄処分しなければなりません。

特に1989年以前に製造された油入変圧器は要注意です。PCBが不検出であれば通常の産業廃棄物として処理できますが、含有が確認された場合は法律上の義務として適切な処理が必要です。処理費用は数十万円以上と高額になる場合もありますが、放置することはできません。

PCB検査は、国が認定した分析機関に絶縁油のサンプルを提出する方法で実施します。数週間ほどで結果が出ます。古い設備の更新はPCBリスクを解消する絶好の機会ですので、まずは年次点検実施時の検査を強くお勧めします。

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❹後日対応

15)工事費用の支払い・精算【お客様】

工事完了後は、契約時の取り決めに従い、所定の期日までに工事費を支払います。また、主任技術者への工事立会い費用は、通常の月次・年次点検料に含まれない場合が多いため、事前に確認しておくことが望ましく、必要に応じて別途費用をお支払いください。

【まとめ】設備オーナーがやるべきことは?

以上が、トランス更新工事の主な流れと、お客様側で対応すべき事項です。多くの手続きは電気工事会社と主任技術者が代行します。設備オーナーに求められる主な対応は以下の3点に集約されます。

  1. 必要書類・情報の準備(電気料金明細書・点検報告書・図面・銘板情報)
  2. テナントや関係者への停電通知と協力依頼
  3. 工事費用・工事負担金(該当する場合)の支払い

変圧器の老朽化を放置すると、停電・火災リスクが高まるだけでなく、突発的な故障の場合は復旧に数週間かかることもあります。「そろそろ交換時期かもしれない」とお感じの方は、まずはお気軽にご相談ください。計画的な更新で、安全・安定した電力供給を維持しましょう。


この記事を書いた人

岩見 啓明
第二種電気工事士/二等無人航空機操縦士

岩見 啓明

前職はWebメディアの編集者。恒電社に参画後はマーケティングに従事し、現在は採用全般も担当している。2023年に二等無人航空機操縦士(ドローン)資格、2024年に第二種電気工事士資格を取得。プロフィールはこちら

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