更新日:2026年10月3日
キュービクル(キュービクル式高圧受変電設備)の更新計画において、機器選定は予算規模と施設の安全性を左右する重要なプロセスです。その中で、多くの設備担当者様が直面するのが「VCB(真空遮断器)とLBS(高圧交流負荷開閉器)の違い」に関する疑問ではないでしょうか。
結論から言うと、VCBは短絡(ショート)などの事故電流そのものを遮断できる「遮断器」、LBSは通常の負荷電流を入り切りする「開閉器」です。LBSを主遮断装置として使う場合は限流ヒューズ(PF)を組み合わせ、短絡事故の電流はヒューズが切ります。
キュービクルでは、VCBなどの遮断器を主遮断装置に使う形式を「CB形」、LBSと限流ヒューズを組み合わせて使う形式を「PF・S形」と呼びます。JIS C 4620(キュービクル式高圧受電設備)の2018年版では、PF・S形は受電設備容量300kVA以下、CB形は4,000kVA以下の区分です。
※JIS C 4620は2023年12月に改正されており、現行は2023年版です。本記事で紹介する条項・数値は、2018年版で確認したものです。
見積もりの金額にも差が出ますが、費用の多寡だけで判断することは推奨できません。両者は「電路の開閉」を担う点では共通していても、事故が起きたときに何が電流を切るのか、事故のあとにどう復旧するのかが異なるためです。
本記事では、高圧設備のオーナー様および管理担当者様を対象に、VCBとLBSの違いと、CB形・PF・S形の選び方を、更新工事の現場の視点から解説します。VCBそのものの仕組みやキュービクルの中での役割を先に押さえておきたい方は、VCB(真空遮断器)の役割を解説した記事もあわせてご覧ください。
キュービクルの更新を控えていて、自社の設備をCB形とPF・S形のどちらで更新すべきか迷っている方は、恒電社のキュービクル工事の内容を以下のページでご確認いただけます。
【基礎知識】VCBとLBSの役割と決定的な違い
キュービクルを構成する機器の中で、特に混同されやすいのがVCBとLBSです。どちらも「電気回路を開閉する」という点では共通していますが、「遮断能力」と「設置目的」において決定的な違いがあります。
また機能やコストを比較する以前に、まず確認しなければならないのが「受電設備容量」です。JIS C 4620:2018は、公称電圧6.6kV・周波数50Hzまたは60Hz・系統短絡電流12.5kA以下の回路に用いる受電設備容量4,000kVA以下のキュービクルを対象とし、その種類を主遮断装置の形式ごとに次のように区分しています。
- 受電設備容量が300kVAを超え4,000kVA以下の場合:CB形(主遮断装置にVCBなどの遮断器を使う形式)
PF・S形の区分は300kVA以下のため、JISに沿ったキュービクルでは、300kVAを超えるとCB形を選ぶことになります。費用を理由にPF・S形(LBS+限流ヒューズ)へ変えることはできません。 - 受電設備容量が300kVA以下の場合:CB形とPF・S形のどちらも選べる
CB形の区分は4,000kVA以下なので、300kVA以下の設備でもVCBを使えます。PF・S形を選べば、主遮断装置の構成を簡素にできます。どちらの形式でも、設置場所の短絡電流以上の遮断性能や地絡保護など、容量以外の要件も満たす必要があります。
つまり「300kVA超〜4,000kVA以下ならCB形(VCBなどの遮断器)」「300kVA以下なら、設置環境や将来の増設予定と費用を比べて選ぶ」というのが、機器選定のスタートラインとなります。この300kVAという境目は、JIS C 4620(2018年版)が定めるキュービクルの種類の区分です。
受電設備容量(kVA)とは?:
JIS C 4620:2018では「受電電圧で使用する変圧器,高圧引出し部分(電動機を含む)などの合計容量(kVA)」と定義されています。高圧電動機は定格出力(kW)をそのまま機器容量(kVA)とみなし、高圧進相コンデンサは含めません。高圧で使う機器が変圧器(トランス)だけで、ほかへ高圧のまま送る回路がなければ、変圧器の容量の合計になります。(計算例:電灯用変圧器50kVA+動力用変圧器250kVA=受電設備容量300kVA)なお、電気料金で使う契約電力(kW)とは別の数字です。
CB形・PF・S形を含むキュービクルの種類や選び方の全体像は、キュービクルの種類と選び方を解説した記事で整理しています。
VCB(真空遮断器)とは?

VCB(Vacuum Circuit Breaker)は、高圧受変電設備の要となる保護装置です。
- 役割: 通常の負荷電流の開閉に加え、短絡(ショート)などの異常時に流れる大きな電流も遮断できます。JIS C 4603(高圧交流遮断器)では、交流遮断器を「常規状態の電路のほか,異常状態,特に短絡状態における電路をも開閉できる装置」と定義しています。
- 特徴: 電路の開閉を真空中で行う遮断器です。
- 主な用途: CB形キュービクルの主遮断装置(受電用の遮断装置)として使われます。
消弧(しょうこ)とは?
電流が流れている回路を切り離すと、接点の間にアーク(火花のような放電)が発生します。このアークを消して電流を止めることを「消弧」といいます。VCBは、このアークを真空の容器の中で消します。
また、VCBを選定する上で理解しておきたいのが、「VCB自体には事故を検知する能力がない」点です。VCBはあくまで「遮断するスイッチ」であり、事故を見つけるのは継電器(リレー)という「センサー」の役目です。過電流による自動遮断では、「OCR(過電流継電器)」が過電流を検出し、VCBに遮断の指令を送ります。地絡(漏電)の検出には地絡継電装置を使います。JIS C 4620:2018でも、CB形の主遮断装置は遮断器と過電流継電器とを組み合わせたもの、または一体としたもの(必要に応じて地絡継電装置も組み合わせる)とされています。そのため、VCBを更新する工事では、OCRと組み合わせた動作の確認(連動試験)もあわせて行います。
LBS(高圧交流負荷開閉器)とは?

LBS(Load Break Switch)は、通常の負荷電流を入り切りする開閉器です。
- 役割: 通常の負荷電流の開閉はできますが、短絡電流をLBS単体で遮断することはできません。JIS C 4605(高圧交流負荷開閉器)の2020年版では、負荷開閉器を「通常の回路条件で,電流を投入,通電及び電流遮断できる開閉装置」と定義しています。
- 特徴: 事故電流から回路を守るために、限流ヒューズ(PF)と組み合わせて使います。JIS C 4611(限流ヒューズ付高圧交流負荷開閉器)でも、ヒューズ部が過電流(特に短絡電流)の遮断を、開閉器部が負荷電流の開閉を受け持つ装置と定義されています。
- 主な用途: PF・S形キュービクルの主遮断装置のほか、変圧器(トランス)や高圧進相コンデンサの開閉器として使われます。
JIS C 4620:2018では、PF・S形の主遮断装置について、高圧側の短絡に対しては限流ヒューズが遮断し、地絡(漏電)に対してはLBSが自動で開く機能をもつものとしています。また、ヒューズが溶断したときにヒューズから飛び出す「ストライカ」でLBSを引き外し、開閉器部を開く方式とすることも定められています。
PF・S形の利点は、構成が簡素で費用を抑えやすいことです。メーカーのカタログでも、LBSと限流ヒューズを組み合わせたPF・S形の遮断装置は、300kVA以下の主遮断装置として経済性などの利点から広く使われていると紹介されています。LBSの仕組みをさらに詳しく知りたい方は、LBSの役割と仕組みを解説した記事もご覧ください。
【比較表】一目でわかるVCBとLBSの性能・コスト比較
VCB(CB形)とLBS+限流ヒューズ(PF・S形)の違いを、キュービクルの主遮断装置として使う場合で整理します。
更新計画を立てる際は、機器の価格だけでなく、事故後の復旧や点検、将来の増設まで含めて比較することが重要です。
| 項目 | CB形(VCB+OCR) | PF・S形(LBS+限流ヒューズ) |
|---|---|---|
| 主遮断装置の構成 | 遮断器(VCBなど)と過電流継電器(OCR)。必要に応じて地絡継電装置 | LBSと限流ヒューズ(PF)。必要に応じて地絡継電装置 |
| 受電設備容量(JIS C 4620:2018) | 4,000kVA以下 | 300kVA以下 |
| 短絡事故の電流を切るもの | OCRの信号を受けたVCB | 限流ヒューズ(溶断するとストライカでLBSも開く) |
| 事故後の復旧 | 原因を取り除き、点検で機器が使えると確認できれば遮断器を再び入れられる(ヒューズ溶断に伴う交換はない) | ヒューズが溶断した場合は、その交換が必要 |
| 点検での動作確認 | OCRに試験用の電流を与え、VCBが連動して動作するかを確認できる | ヒューズが事故電流で溶断するかは事前に試せない(LBSの開閉の状態などは点検で確認する) |
| 機器・工事の費用 | 高くなる(当社の更新工事の実務) | 構成が簡素で抑えやすい |
両者の決定的な違い
技術的な最大の相違点は「短絡電流を遮断する役割を、遮断器と限流ヒューズのどちらが担うか」にあります。
- VCB:OCRなどの継電器が事故を検知し、その信号でVCBが回路を遮断する(遮断したあとも、点検で問題がなければ再び使える)。
- LBS(PF・S形):短絡事故のときは限流ヒューズが溶断して回路を守る(溶断したヒューズは交換が必要)。
そのような違いから、事故発生時の対応プロセスにおいても、VCBとLBSには対照的な特徴があります。
VCBの強みは「復旧の早さ」です。事故の原因を取り除き、電気主任技術者などが点検して機器が使えると確認できれば、遮断器を再び入れて送電を再開できます。ヒューズのような溶断に伴う部品交換はありません。対してPF・S形で短絡などによりヒューズが溶断した場合は、溶断した限流ヒューズ(PF)を交換しなければなりません。
ここで問題になるのが「部品と人」の手配です。ヒューズには定格や形式があり、適合する予備が現場になければ取り寄せに数日かかることもあります。また、高圧機器のヒューズ交換は、事故原因の調査や安全確認とあわせて専門の技術者が行う作業で、通常はお客様ご自身では行いません。ヒューズの手配と技術者の対応がそろうまで、停電が続くことになります。
なお、漏電(地絡)の保護は、どちらの形式でも必要に応じて地絡継電装置を組み合わせて行います。キュービクルへの引込ケーブルの電源側に設けた負荷開閉器(PASなど)で地絡保護を行う場合は、キュービクル側の地絡継電装置は必要ないとされています(JIS C 4620:2018)。引込口の区分開閉器の役割は、PAS(高圧気中負荷開閉器)の役割を解説した記事で紹介しています。
自社のキュービクルはCB形かPF・S形か|見分け方
いま使っているキュービクルがどちらの形式かは、次のような点で確かめられます。
- 受電箱の扉の裏にある接続図:JIS C 4620:2018では、受電箱の正面扉の裏面に接続図を備えることになっています。主遮断装置が遮断器(CB・VCB)か、限流ヒューズ(PF)とLBSの組み合わせかを確認できます。
- キュービクルの銘板:同じくJIS C 4620:2018では、正面扉の裏面の銘板に受電設備容量(kVA)などを表示することになっています。300kVAを超えているかどうかの確認に使えます。
- 機器の見た目:上の写真のように、VCBは前面に入・切の操作部がある箱形の機器で、PF・S形の受電部には筒状の限流ヒューズが3本並んだLBSがあります。
扉の裏の接続図や銘板を見るときも、キュービクルの中は高圧の充電部に近づくため、ご自身で扉を開けず、電気主任技術者に確認を依頼するのが確実です。
形式がわかったら、機器の更新時期もあわせて確認しておきましょう。VCBの寿命や交換時期の目安はVCBの寿命と交換時期を解説した記事で、LBSの点検・診断と交換時期の目安はLBSの交換時期を解説した記事で、それぞれ詳しく紹介しています。
電気工事士に聞く、VCBとLBSの選定基準や工事・メンテナンスの違い
解説者
鷲巣 純一
インタビュアー
岩見啓明
工事費の差について
–––本体価格に大きな差があることは分かりましたが、工事費(施工費)についてもVCBの方が高くなりますか?理由も含めて教えてください。
はい、VCBの工事費のほうが高くなります。これは、LBSに比べて「重量」と「施工の手間」が圧倒的に違うからです。
LBSは構造がシンプルで軽量ですが、VCBは非常に堅牢な作りをしており、さらに正常に動作させるためには周辺機器との複雑な接続が必要になるためです。
例えば、LBSであれば軽量なので、交換作業自体は20〜30分程度で終わることも珍しくありません。 一方でVCBは、本体だけで50kg〜60kgもの重量があります。キュービクルから引き出すだけでも一人では持てず、慎重な搬出入が必要です。
※作業時間は取材した電気工事士が経験した例で、停電から復電までの全体の時間ではありません。機種や施工条件によって異なります。VCBの質量も機種・定格・取付方式によって異なり、メーカーのカタログには30kg前後の機種もあります。
さらに、VCBは単体では機能しません。OCR(過電流継電器)という指令装置との信号線の結線や、連動試験が必須となるため、接続だけでも1時間以上かかります。
「重いものを動かす人件費」と「高度な結線技術にかかる技術料」が必要になるため、どうしてもVCBの方が施工コストは高くなってしまうのです。
あえてVCBを選ぶケース(環境・リスク管理)
–––受電設備容量が300kVA以下であれば、規格上は安価なLBS(PF・S形)を選ぶこともできるはずです。それでも「あえて高価なVCB」を推奨するケースはあるのでしょうか?
「設置環境が悪い場合」は、300kVA以下であってもVCBを強くおすすめしています。
LBSはヒューズによる「受動的」な保護しかできませんが、VCBは事故のリスクが高い環境でも、安全かつ確実に回路を遮断・復旧できる能力が高いためです。
※PF・S形でも、地絡(漏電)に対してはLBSが自動で開く保護を組み合わせます。設置環境が悪い場合にVCBをおすすめしているのは当社の施工経験に基づく判断で、形式だけで安全性の優劣が決まるものではありません。
–––「事故のリスクが高い環境」とは、具体的にどのような場合でしょうか?
具体的には、周囲が畑で土埃が舞いやすい場所や、海沿いの施設などです。 キュービクル内に埃が入り込んで湿気を含むと、絶縁不良(漏電やショート)が起きやすくなります。LBS(ヒューズ)では防ぎきれない微妙な事故予兆も、VCBとOCRの組み合わせなら検知できる場合があります。
※OCR(過電流継電器)が検出するのは、設定した値を超える過電流です。漏電(地絡)は地絡継電装置が検出します。どのような事故を検出できるかは、組み合わせる継電器とその設定によって決まります。
–––他にも、VCBを推奨する場合はありますか?
将来的な増設予定やその可能性がある場合は、LBSではなくVCBをご提案しますね。将来の容量変更に柔軟に対応できるのもVCBの大きな強みです。
「数年後に新館を建てる予定がある」といった場合、トランスの増設で300kVAを超える可能性があります。その時にLBSからVCBへ交換し直すのは二度手間(コスト増)になるため、最初からVCBを入れておくのが正解だと考えています。
※PF・S形からCB形に変える場合は、遮断器を入れるだけでなく、過電流継電器(OCR)の追加や、主遮断装置の電源側に断路器を設けるなど、主遮断装置まわりの構成も変わります(JIS C 4620:2018)。
目先のコスト削減だけでなく、「事故リスクの回避」と「将来の拡張性」を考慮した結果、あえてオーバースペックに見えるVCBを選定することが、長期的な正解になる場合も少なくありません。
–––性能やコストの違いはよく分かりました。 運用面、特に毎年の「点検(メンテナンス)」においては、何か違いはあるのでしょうか?
はい、点検の「確実性」に大きな違いがあります。 VCBは「事故を想定した動作テスト」ができますが、LBSは基本的に「目視点検」しかできません。
VCBは、OCRと組み合わせて使うため、点検時に「擬似的に事故信号を送って、本当に遮断器が動くか」を確認する「リレー試験」が可能です。 一方で、LBSはヒューズが切れるかどうかを試すわけにはいかないため、外観にヒビや汚れがないかを見る目視確認が中心となります。
いざ事故が起きた瞬間にヒューズが正常に溶断するかどうかは、製品の信頼性に委ねるしかないため、「テストができない」というのは、管理する側としては少し不安が残る要素でもあります。
そのため、より高いレベルで安全を担保したい、動作の確証を得たいというお客様には、テスト可能なVCBの方が安心して運用いただけると言えます。
※ここでの「テストができない」は、限流ヒューズが事故電流で正しく溶断するかを事前に試せない、という意味です。LBS全体が目視点検しかできないという意味ではなく、停電して行う点検では開閉の状態なども確認します。また、OCRとVCBの連動試験は事故時の遮断性能のすべてを確かめるものではなく、この試験ができるかどうかだけで両形式の安全性を比べることはできません。
–––最後に、キュービクルの更新計画を立てる際、VCBやLBSといったスイッチ以外に「見落としがちな機器」はありますか?
「VT(計器用変圧器)」と「CT(変流器)」の劣化には特に注意が必要です。 これらはメインのスイッチではありませんが、高圧電気が常時通るルート上にあり、ここが劣化すると発火事故につながる恐れがあります。
VTとCTの役割や仕組みは、VT(計器用変圧器)を解説した記事とCT(変流器)を解説した記事で詳しく紹介しています。
PF・S形のキュービクルでLBSを交換する場合に、停電の調整から復旧までどの順で進むかは、LBS更新工事の流れで順を追って説明しています。
施工事例
VCBとLBSを実際に交換した工事の内容は、次の施工事例で確認できます。VCB交換を依頼されたお客様が工事をどう評価されたかは、VCB交換工事のお客様の声でご紹介しています。
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自社のキュービクルがCB形かPF・S形か分からない、更新の時期や費用を相談したいという方は、お気軽にお問い合わせください。
この記事を書いた人
蕨川 真央




