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VCBとLBSの違いを徹底解説|電気工事士に聞く、高圧設備の選び方

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コラム

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#キュービクル
投稿日:2025年12月23日
更新日:2025年12月24日

高圧受変電設備(キュービクル)の更新計画において、機器選定は予算規模と施設の安全性を左右する重要なプロセスです。その中で、多くの設備担当者様が直面するのが「VCB(真空遮断器)とLBS(高圧交流負荷開閉器)の価格差」に関する疑問ではないでしょうか。

見積書上で数倍の費用差が生じることも珍しくない両機器ですが、単なるコストの多寡だけで判断することは推奨できません。これらは共に「電路の開閉」を担う点では共通しているものの、事故発生時の「遮断能力」と「設置目的」において、機能的に明確な区別が存在するためです。

それぞれの特性を正しく理解せずに選定を行うことは、必要な安全機能の欠如による事故リスクの増大、あるいはオーバースペックによる不要なコスト増を招く要因となります。

本記事では、高圧設備のオーナー様および管理担当者様を対象に、VCBとLBSの技術的な相違点と、現場の視点に基づいた適切な選定基準について解説します。

【基礎知識】VCBとLBSの役割と決定的な違い

高圧受変電設備(キュービクル)を構成する機器の中で、特に混同されやすいのがVCBとLBSです。どちらも「電気回路を開閉する」という点では共通していますが、「遮断能力」と「設置目的」において決定的な違いがあります。

また機能やコストを比較する以前に、まず確認しなければならないのが「設備容量(トランス容量の合計)」による規定です。消防法やJIS規格等の兼ね合いにより、以下の基準が定められています。

  • 設備容量が300kVAを超える場合:主遮断器として「VCBが必須」
    この規模になると事故電流が大きくなるため、LBS(ヒューズ)では保護協調が取れず、安全性を確保できないためです。この場合、コストを理由にLBSへ変更することはできません。
  • 設備容量が300kVA以下の場合:主遮断器として「LBSの使用が可能」
    もちろん、より安全性の高いVCBを使用しても問題ありませんが、コストダウンのためにLBSを選択することが認められている領域です。

つまり「300kVA超ならVCB一択」「300kVA以下なら予算と安全性を天秤にかけて選択可能」というのが、機器選定のスタートラインとなります。

kVA(キロボルトアンペア)とは?:
その施設で使える電気の量(規模)を表す単位。キュービクル内に設置されている「トランス(変圧器)」の容量をすべて足し合わせることで算出できます。この合計値が「300kVA」を超えるか否かが、法律および規格上、VCB(遮断器)の設置義務の重要な境界線となります。(計算例: 電灯用トランス(50kVA)+ 動力用トランス(250kVA)= 設備容量 300kVA)

VCB(真空遮断器)とは?

VCB(Vacuum Circuit Breaker)は、高圧受電設備の要となる保護装置です。

  • 役割: 通常の負荷電流の開閉に加え、短絡事故(ショート)などで発生する大電流を瞬時に遮断する能力を持ちます。
  • 特徴: 真空バルブ内でアーク(火花)を消弧するため、遮断性能が極めて高く、電気的寿命も長いのが特徴です。
  • 主な用途: キュービクルの引込口直下に設置される「主遮断器」として採用されます。

消弧(しょうこ)とは?
電気が流れている回路を無理やり切り離すと、接点の間に激しい火花(アーク放電)が発生します。高圧電力の場合、このアークは雷のようなもので、適切に消さないと機器が爆発・焼損する原因になります。「消弧」とは、このアークを瞬時に消し去る機能のことです。VCBは真空の容器内でこの処理を行うため、非常に高い安全性を誇ります。

また、VCBを選定する上で理解しておきたいのが、「VCB自体には事故を検知する能力がない」点です。VCBはあくまで「遮断するスイッチ」であり、事故を見つけるには「OCR(過電流継電器)」という「センサー」が必要です。OCRが異常電流を感知し、VCBに信号を送って初めて動作します。そのため、更新工事の際はVCB本体だけでなく、OCRの更新や連動試験もセットで行う必要があります。

LBS(高圧交流負荷開閉器)とは?

LBS(Load Break Switch)は、主に分岐回路に使用される開閉器です。

  • 役割: 通常の負荷電流の開閉は可能ですが、短絡電流のような大電流をLBS単体で遮断することはできません。
  • 特徴: 短絡保護を行うために、必ずPF(パワーヒューズ)と組み合わせて使用します。事故時はヒューズが溶断することで回路を保護する仕組みです。
  • 主な用途: 変圧器(トランス)やコンデンサの一次側など、主遮断器以降の分岐スイッチとして採用されます。

LBSの大きなメリットには「圧倒的なコストパフォーマンス」という点があります。 構造がシンプルであるため、機器本体の価格はVCBと比較して非常に安価です。さらに、重量が軽くコンパクトなため、搬入や設置工事にかかる労力も少なく済み、結果として工事費全体を抑えることが可能です。

【比較表】一目でわかるVCBとLBSの性能・コスト比較

VCBとLBSの仕様および運用面での違いを整理します。

更新計画を立てる際は、単なる機器価格だけでなく、メンテナンス性や再利用性を含めたトータルコストでの比較が重要です。

両者の決定的な違い

技術的な最大の相違点は「事故電流を自力で遮断できるか否か」にあります。

  • VCB:OCRが事故電流を検知し、自ら回路を遮断して設備を守る(繰り返し使用可能)。
  • LBS:事故電流発生時はヒューズが溶断することで回路を守る(ヒューズは使い捨て)。

そのような違いから、事故発生時の対応プロセスにおいても、VCBとLBSには対照的な特徴があります。

VCBの最大の強みは「復旧の迅速さ」です。家庭用のブレーカーと同様に、事故原因を取り除いて安全を確認できれば、レバー操作ひとつで即座に再送電が可能です。 対してLBSの場合は、溶断したPF(パワーヒューズ)を交換しなければなりません。

ここで問題になるのが「部品と人」の手配です。ヒューズには容量や規格があり、適合する予備が現場になければ取り寄せに数日かかることもあります。また、交換作業は高圧電気工事の資格が必要なため、お客様自身では行えず、電気工事店が到着するまで停電状態が続くことになります。

電気工事士に聞く、VCBとLSBの選定基準や工事・メンテナンスの違い

解説者

鷲巣純一
第一種電気工事士/第二種電気工事士

鷲巣純一

通信工事や、オール電化など住宅の電気工事業などを経て、恒電社に入社。現在は、法人向け電気設備工事の提案から施工までを担うエンジニアリング事業部のマネージャー職に加え、技術者の視点から自家消費型太陽光発電システムの現場管理も行う。プロフィールはこちら

インタビュアー

岩見 啓明
第二種電気工事士/二等無人航空機操縦士

岩見 啓明

前職はWebメディアの編集者。恒電社に参画後はマーケティングに従事し、現在は採用全般も担当している。2023年に二等無人航空機操縦士(ドローン)資格、2024年に第二種電気工事士資格を取得。プロフィールはこちら

工事費の差について

–––本体価格に大きな差があることは分かりましたが、工事費(施工費)についてもVCBの方が高くなりますか?理由も含めて教えてください。

はい、VCBの工事費のほうが高くなります。これは、LBSに比べて「重量」と「施工の手間」が圧倒的に違うからです。

LBSは構造がシンプルで軽量ですが、VCBは非常に堅牢な作りをしており、さらに正常に動作させるためには周辺機器との複雑な接続が必要になるためです。

例えば、LBSであれば軽量なので、交換作業自体は20〜30分程度で終わることも珍しくありません。 一方でVCBは、本体だけで50kg〜60kgもの重量があります。キュービクルから引き出すだけでも一人では持てず、慎重な搬出入が必要です。

さらに、VCBは単体では機能しません。OCR(過電流継電器)という指令装置との信号線の結線や、連動試験が必須となるため、接続だけでも1時間以上かかります。

「重いものを動かす人件費」と「高度な結線技術にかかる技術料」が必要になるため、どうしてもVCBの方が施工コストは高くなってしまうのです。

あえてVCBを選ぶケース(環境・リスク管理)

–––トランス容量が300kVA以下であれば、法律上は安価なLBSを選んでも問題ないはずです。それでも「あえて高価なVCB」を推奨するケースはあるのでしょうか?

「設置環境が悪い場合」は、300kVA以下であってもVCBを強くおすすめしています。

LBSはヒューズによる「受動的」な保護しかできませんが、VCBは事故のリスクが高い環境でも、安全かつ確実に回路を遮断・復旧できる能力が高いためです。

–––「事故のリスクが高い環境」とは、具体的にどのような場合でしょうか?

具体的には、周囲が畑で土埃が舞いやすい場所や、海沿いの施設などです。 キュービクル内に埃が入り込んで湿気を含むと、絶縁不良(漏電やショート)が起きやすくなります。LBS(ヒューズ)では防ぎきれない微妙な事故予兆も、VCBとOCRの組み合わせなら検知できる場合があります。

–––他にも、VCBを推奨する場合はありますか?

将来的な増設予定やその可能性がある場合は、LBSではなくVCBをご提案しますね。将来の容量変更に柔軟に対応できるのもVCBの大きな強みです。

「数年後に新館を建てる予定がある」といった場合、トランスの増設で300kVAを超える可能性があります。その時にLBSからVCBへ交換し直すのは二度手間(コスト増)になるため、最初からVCBを入れておくのが正解だと考えています。

目先のコスト削減だけでなく、「事故リスクの回避」と「将来の拡張性」を考慮した結果、あえてオーバースペックに見えるVCBを選定することが、長期的な正解になる場合も少なくありません。

–––性能やコストの違いはよく分かりました。 運用面、特に毎年の「点検(メンテナンス)」においては、何か違いはあるのでしょうか?

はい、点検の「確実性」に大きな違いがあります。 VCBは「事故を想定した動作テスト」ができますが、LBSは基本的に「目視点検」しかできません。

VCBは、OCRと組み合わせて使うため、点検時に「擬似的に事故信号を送って、本当に遮断器が動くか」を確認する「リレー試験」が可能です。 一方で、LBSはヒューズが切れるかどうかを試すわけにはいかないため、外観にヒビや汚れがないかを見る目視確認が中心となります。

いざ事故が起きた瞬間にヒューズが正常に溶断するかどうかは、製品の信頼性に委ねるしかないため、「テストができない」というのは、管理する側としては少し不安が残る要素でもあります。

そのため、より高いレベルで安全を担保したい、動作の確証を得たいというお客様には、テスト可能なVCBの方が安心して運用いただけると言えます。

–––最後に、キュービクルの更新計画を立てる際、VCBやLBSといったスイッチ以外に「見落としがちな機器」はありますか?

「VT(計器用変圧器)」と「CT(変流器)」の劣化には特に注意が必要です。 これらはメインのスイッチではありませんが、高圧電気が常時通るルート上にあり、ここが劣化すると発火事故につながる恐れがあります。

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記事を書いた人

蕨川 真央
恒電社

蕨川 真央

教育・医療業界を経験したのち、結婚出産を経て恒電社に参画。現在は、マーケティングや採用領域のアシスタントとして従事する。プロフィールはこちら

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