キュービクルの価格|構成要素と価格に影響を与える要因は?
工場やビルなど、大規模に電力を使う施設や企業に欠かせない「キュービクル(キュービクル式高圧受変電設備)」。
新設や更新工事にかかる金額は、大きく分けて「本体価格」と「設置工事費用」から構成されますが、これらの内訳や範囲を正しく理解しておくことが重要です。どこまでがどの費用に含まれるのか、また金額が増減する要因を把握しておくことで、見積もりの妥当性を判断しやすくなります。
本記事では、キュービクル工事の金額を左右する要素を整理し、本体価格と設置費用の目安、新品と中古それぞれのメリット・デメリット、さらに価格が上がる要因などを解説します。
新規導入や更新を検討する際の判断材料としてご活用いただければ幸いです。
- 「キュービクルとは何か?」についてはこちらの記事をご覧ください。
- 「キュービクル導入時の注意点」についてはこちらの記事をご覧ください。
- 「キュービクルを構成する各機器の役割」についてはこちらの記事をご覧ください。
目次
要約
キュービクル価格の基本構成要素:
キュービクルの導入・更新費用は「本体価格」と「設置工事費用」に大別され、見積もりを正しく判断するにはその内訳理解が不可欠です。容量や機器仕様により価格は大きく変わり、100kWで約200万円、500kW超では1000万円以上が目安となります。設置環境や工事条件によって費用が変動するため、単なる金額比較ではなく構成の妥当性を確認する姿勢が求められます。
新品と中古の比較と注意点:
中古キュービクルは本体価格が新品の40〜70%程度と安価ですが、工事費はほぼ同等のため総額差は20〜40%ほど。納期の短さや初期費用の低さが利点である一方、保証の短さ・図面欠落・年式不適合などリスクも伴います。導入時には絶縁試験や履歴確認、周波数・受電電圧の適合性などを慎重に確認することが不可欠です。
設置工事費用を左右する環境要因:
設置工事費用は「どこに」「どのように」設置するかで大きく変動します。屋外・屋内の違い、搬入経路の狭さ、高所作業の有無、クレーン使用や道路占有許可の要否などが主な変動要素です。また、基礎構造(コンクリートか鉄骨か)、据付方式、接地工事の要否も費用差を生みます。見積書では「一式」表記に頼らず、明細と前提条件を確認することがトラブル防止につながります。
キュービクル価格の基本構成要素
キュービクルを新規に設置する際、または更新する際の総額は、大きく分けて本体価格+設置工事費用の合算で決まります。

規格別の目安価格(本体)
キュービクルの本体価格は、トランスの容量(変電可能な電力規模)や、ブレーカー、保護装置の数や仕様によって変動します。
もちろんメーカーや製品によって異なりますので、あくまでも目安としてご参照ください。
- 100kW:200万円
- 200kW:350~450万円
- 300kW:550~650万円
- 500kW以上:1000万~1200万
新品 vs 中古の価格比較(メリット・注意点)
キュービクルの中古再生品は、新品本体価格の40〜70%程度が相場帯となります。
ただし工事費(搬入・据付・結線・試験)は新品と同等に掛かるため、総額での差は20〜40%程度に縮むケースが多いです。
項目 | 新品 | 中古(リユース/リファービッシュ) |
---|---|---|
初期費用 | 高い | 低い(本体40~70%) |
納期 | 受注生産で長め(8~16週目安) | 在庫が合えば短納期。適合品の探索が必要。 |
保証・品質 | メーカー保証・パーツ供給が手厚い | 保証短め/パーツ供給に制約。 |
仕様適合 | 最新基準・ニーズに合わせやすい | 年式により基準が不適合の恐れ |
省エネ性 | 高効率変圧器など最新技術 | 年式相応(損失大きめの可能性) |
図面・履歴 | 図面・試験成績が揃う | 履歴不明の可能性あり。 |
将来性 | 予備回路・増設余地を設計図に反映可 | 経年品につき、ものによっては使用期間が短くなる場合もあり。 |
中古採用時のチェックポイント
中古のキュービクルを採用する際は、下記の点に注意が必要です。
- 年式・使用履歴・保管状態の確認(錆・絶縁・母線変色)
- 試験成績・絶縁抵抗・耐圧試験の再実施、保護継電器の校正
- 受電電圧・周波数が地域の電力会社や法令要件に適合するか
- 図面整備(単線結線図・盤内配線図)
- 更新時の停電計画、仮設受電の要否
電気工事士に聞く、キュービクルの設置工事費用に影響を与える要因は?
監修

インタビュアー

ーーーキュービクルの設置工事費用が変動する要素としては何がありますか?
キュービクルの設置工事費用は「設置環境」と「施工条件」によって大きく変動します。
つまり、どこに置くか・どう運ぶか・どう固定するかが費用を左右するポイントです。
これは、設置条件によって必要な作業や機材が異なるためです。搬入経路や設置場所によっては、特殊な機器や追加の補強工事が必要になることがあります。
ーーー具体的に、費用が変わる例を教えていただけますか?
たとえば、屋外か屋内かだけでも設置工事費用としては結構な差が出ます。
ビルや工場の屋上にキュービクルを設置する場合、ラフタークレーンを使用します。建物の立地条件によっては、クレーンを道路に停めて使用するため、道路使用許可が必要になることもあります。また、設置位置までの距離や高さで車両のサイズ・費用も変わります。
他にも、屋上の構造によっては、設置部分を補強する必要もありますし、雨や紫外線の影響を考えて、防水・防錆の対策も必要になります。
一方で屋内設置の場合、搬入経路が狭い場合には特殊な機器が必要となったり、養生や分解搬入が増えたりして、手間がかかることもあります。
また、見落とされがちなのが基礎の仕様です。コンクリートの基礎を打つのか、鉄骨の架台を組むのかでも設置工事費用は変動します。
ーーー使用する機材や据付方式の他に、工事に関わる人数にも違いがあるのでしょうか?
そうですね。人数も変わりますし、重量物を扱う場合は「重量鳶(じゅうりょうとび)」という職人さんが関わるケースもあります。
これは機器を確実に据え付ける作業になるので、その分の手間賃が発生することになりますね。
基礎はコンクリートで良いのか、鉄骨で架台を組む必要があるのか。コンクリートであればアンカーボルトの仕込み方や数、位置をどうするのか。レベル出し(水平調整)や芯出しをどこまで行うか。さらには、接地(アース)工事やケーブルの引き込みルートをどうするか…など、お客様の設置場所に応じて、判断します。
中古キュービクルを選定する際の注意点
ーーーここまで一般的な、設置工事費用の変動要素を伺ってきましたが、中古のキュービクルを採用する場合の、設置工事費用について、考え方や注意点を教えてください。
中古品の場合、図面が欠落していることがあるので、再採寸や再設計の手間が発生することがあります。また、絶縁試験・耐圧試験などをもう一度やる必要があるケースもあります。
また、関東(50Hz)と関西(60Hz)の周波数の差も気をつけたい点です。稀なことではありますが、中古を他地域から持ってきて、そもそも使えないというケースも経験したことがあります。
その点も注意していただけると良いでしょう。
施工事例
まとめ:
キュービクルの導入コストは大きく「本体価格」と「設置工事費用」で決まり、同じ容量でも“どこに置くか・どう運ぶか・どう固定するか”によって総額は大きく変わります。
また、新品は最新基準・高効率・保証の厚さが強み、中古は初期費用を抑えられる一方で、年式適合や試験・図面整備などの追加対応が必要になる場合があります。中古を選ぶ場合は、年式・履歴・保管状態、各種試験や電力会社要件(受電電圧・周波数)への適合を必ず確認しましょう。
設置工事費用を左右する主な要因は、設置環境、搬入条件、据付方式などです。見積比較の際は「一式」表記に頼らず、基礎工事・搬入揚重・据付・電気接続・仮設養生などの明細、並びに前提条件や除外事項が明確かを重視してください。金額の安さだけでなく「なぜこの金額なのか」を説明できる見積こそ、後のトラブルを防ぎます。
恒電社では、必ず現地確認を行い、設置環境・ご要望・将来の増設余地まで含めて総合的に最適解をご提案します。新品・中古いずれの選択でも、費用・品質・工期・将来性のバランスを踏まえた“納得感のある一台”をご一緒に設計しましょう。ご相談はお気軽にお問い合わせください。
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