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キュービクルとは?導入時の注意点

工場やビルなど、大規模な電力を使用する施設では、キュービクル(キュービクル式高圧受変電設備)の導入が一般的です。

しかし、電気主任技術者による月次・年次点検が義務付けられていることもあり、以下のようなケースも少なくありません。

  • 設置条件や法令を十分に理解していなかった
  • 設置後に思わぬトラブルが発生した
  • 保守面での見落としに後から気づいた

本記事では、導入前に押さえておくべき注意点を整理し、安心・安全な設備運用につなげるためのポイントを解説します。

  • 「キュービクルとは何か?」についてはこちらの記事をご覧ください。
  • 「キュービクル導入のメリット/デメリット」についてはこちらの記事をご覧ください。
  • 「キュービクルを構成する各機器の役割」についてはこちらの記事をご覧ください。

要約

容量選定と将来計画
導入時は将来の電力需要を見越した容量設定が重要です。トランス容量が不足すると追加工事が必要になりコスト増につながるため、余裕を持った容量選定が推奨されます。特に工場では機械や空調増設による需要増加を想定しておくべきです。

設置環境と点検性
メンテナンス作業がしやすい場所を確保し、点検通路や周囲の安全スペースを法令通りに確保する必要があります。月次・年次点検時に主任技術者が作業しやすい動線を確保しておくことも重要です。

屋外設置と環境対策
防雨構造で雨風には強いものの、湿気や粉じんの影響を受けやすいため定期清掃が必須です。通風を妨げない設置、直射日光や熱がこもる環境を避ける工夫が必要で、設置前の環境確認と適切な対策が求められます。

電気工事士に聞く、キュービクル導入時の注意点

監修

高橋宏武
第一種電気工事士/一級電気施工管理技士

高橋宏武

大学卒業後、恒電社に入社したプロパー社員。電気工事士として、住宅の電気工事に加え、法人向けの高圧電気設備工事の直接提案を開始するなど、現在の会社の礎を創ってきたメンバー。2020年からは事業部長として、エンジニアリング事業部を統括している。

インタビュアー

岩見啓明
第二種電気工事士/二等無人航空機操縦士

岩見啓明

恒電社にて動画、記事、広報、企画、セミナー運営、デジタル広告と幅広く施策を担当。個人では登録者数1万人超えのYouTubeチャンネルを運用した経験の他、SDGsの啓蒙活動で国連に表彰された経歴を持つ。2023年に二等無人航空機操縦士(ドローンの国家資格)、2025年に第二種電気工事士資格を取得。

ーーーキュービクルを導入する際、どのような点に注意すべきでしょうか。

最も重要なのは、将来の電力需要を見据えた容量選定と適切な設置環境の確保です。

これらを誤ると、後から大きな追加工事が必要になったり、点検が難しくなるなど、運用に支障が出る可能性があります。

例えば、工場の場合、将来的に機械を増やしたり空調を増設したりすると、想定以上に電力需要が増えるケースがあります。その場合、トランス(変圧器)の容量が不足してしまうと、十分な電力が供給できなくなってしまうおそれがあります。

トランスの交換には、追加工事が必要になるため、導入段階で少し大きめのトランス容量を選定することが推奨されます。

ーーー設置場所についてはどのような点を確認すべきでしょうか。

まず、メンテナンス作業に支障がないかを確認することが重要です。

周囲に物を置かない、点検用通路を確保するなど、法令で定められた条件を満たす必要があります。また、月次・年次点検の際に主任技術者がスムーズに作業できる場所であることも大切です。

ーーーキュービクルを屋外に設置する場合、雨やほこりによる故障は心配ありませんか?

キュービクルは防雨構造になっているため、基本的に雨風は問題ありません。

ただし、内部の熱を効率的に逃がすために側面や上部に多くの隙間が設けられている構造上、湿気や粉じんの影響を受けやすいという特性があります。

そのため、こうした環境では機器の劣化が早まるおそれがあり、定期的な清掃や点検が一層重要となります。また、通風を妨げるような物を周囲に置かない、直射日光や熱がこもりやすい環境を避けるといった配慮も必要です。

設置環境は事前に十分確認し、必要に応じて対策を行うことが望まれます。

施工事例

まとめ:キュービクル導入前に押さえるべき注意点

  • 容量選定は将来需要を見据えて行う
    導入時に余裕のあるトランス容量を選定することで、将来的な機械増設や空調増設による電力不足や追加工事のリスクを回避できます。
  • 設置環境は点検・保守のしやすさが最優先
    周囲に物を置かず、点検通路を確保するなど、法令に沿った配置を行うことが重要です。主任技術者が安全かつ効率的に作業できる環境を確保しましょう。
  • 屋外設置では環境リスクへの対策が必要
    雨風には強い構造ですが、湿気や粉じん、熱こもりには注意が必要です。定期清掃と換気確保により、機器の寿命を延ばしトラブルを防ぎます。

キュービクル導入は、容量・設置場所・環境条件の三要素を事前に検討し、長期的に安全で効率的な運用ができる体制を整えることが成功のポイントです。

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この記事を書いた人

蕨川真央

蕨川真央

教育分野でキャリアをスタートし、妊娠・出産を経験しながら複数の業界で人事関連業務に携わる。 現在は恒電社にて、採用およびマーケティングのアシスタントとして、事務業務からコンテンツ制作まで幅広く担当している。

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