記事

【キュービクルとは? #4】設備の構成する各機器の役割

投稿日:2025年11月12日
更新日:2025年11月12日

工場やビルなど、大規模な電力を使用する施設では、キュービクル(キュービクル式高圧受変電設備)を導入している企業も多いと思います。

しかし「中に収められている機器が何をしているのか」まで正しく理解している担当者の方は意外と少ないかもしれません。実際、遮断器や変圧器、保護装置といった機器は、それぞれに重要な役割を持ち、どれか一つが欠けても安全な受変電は成り立ちません。

本記事では、キュービクルを構成する主要機器の機能を一つずつ整理し、安全かつ効率的に運用するための基本知識を分かりやすく解説します。

  • 「キュービクルとは何か?」についてはこちらの記事をご覧ください。
  • 「キュービクル導入のメリット/デメリット」についてはこちらの記事をご覧ください。
  • 「キュービクル導入時の注意点」についてはこちらの記事をご覧ください。

要約

受電:
まずは電力会社から届く6,600Vの高圧電気を「安全に受け取る」段階です。LBSは電気の入り口にあるスイッチのような役割で、異常時には自動で遮断して被害を広げません。VT・CTは電圧や電流を測りやすい数字に変えて、メーターや保護装置に正しい情報を伝えます。LAは雷が落ちた時に電気の衝撃から設備を守る「避雷針」のような役割をします。

変電:
受け取った高圧電気を、施設で使える100V/200Vに変換します。ここで活躍するのが変圧器(トランス)で、言わば「電気の変換器」。将来機械を増やす可能性を考えて少し余裕のある容量を選ぶと、停電リスクや無駄な電気の消費を減らすことが可能です。

配電:
低圧になった電気を建物内の機械や照明へ分けて届けます。配電盤が「電気の分配センター」として各回路へ送り、ELBが漏電時にストップして火災や感電を防ぎます。MCCBはブレーカーとして過負荷から回路を守り、計器盤でどれくらい電気を使っているかを常にチェックします。

電気工事士に聞く、キュービクル導入時の注意点

解説者

高橋 宏武
一級電気施工管理技士/第一種電気工事士

高橋 宏武

大学卒業後、恒電社に入社したプロパー社員。電気工事士として、住宅の電気工事に加え、法人向けの高圧電気設備工事の直接提案を開始するなど、現在の会社の礎を創ってきたメンバー。2020年からは事業部長として、エンジニアリング事業部を統括している。

インタビュアー

岩見 啓明
第二種電気工事士/二等無人航空機操縦士

岩見 啓明

前職はWebメディアの編集者。恒電社に参画後はマーケティングに従事し、現在は採用全般も担当している。2023年に二等無人航空機操縦士(ドローン)資格、2024年に第二種電気工事士資格を取得。

キュービクル設備を構成する各機器の役割

キュービクルには受電・変電・配電の3つの役割があります。

受電 ― 高圧電力を安全に受け取る

まず、電力会社から送られてくる6,600Vの高圧電力を、安全に施設内へ取り込む工程です。ここでは、以下の機器が活躍します。

  • 高圧交流負荷開閉器(LBS:Load Break Switch)
    トランスやコンデンサの一次側に設置され、電気回路の開閉を行います。万が一事故が発生した場合、波及事故を防ぐ役割も担います。
  • 計器用変成器(VT:Voltage Transformer/CT:Current Transformer)
    高電圧・大電流を、計測しやすい低電圧・小電流に変換する装置です。電力量計や保護装置に正しい情報を送ったり、設備の状態を管理するために必要です。
  • 避雷器(LA:Lightning Arrester)
    雷サージなどによる過電圧から設備を守ります。
    ※LAは電柱に設置される高圧気中負荷開閉器(PAS:Pole-mounted Air Switch)の近くに設置されることが一般的ですが、キュービクル内部に設置されることもあります。

変電 ― 高圧を低圧に変換する

受け取った6,600Vの電気を、施設で使える100V/200Vに変換する工程です。ここで中心的な役割を果たすのが変圧器(トランス)です。

  • 油入変圧器またはモールド変圧器
    高圧電力を必要な低圧に変換します。用途に応じて適切な容量を選定することが重要で、過負荷やエネルギーロスを防ぎます。

配電 ― 施設内に電気を分配し保護する

最後に、低圧に変換した電気を建物内の各設備に分配します。同時に、過負荷や短絡(ショート)から回路を保護する役割もあります。

  • 低圧配電盤
    施設内の各回路に電気を分配する装置です。
  • 漏電遮断器(ELB:Earth Leakage Breaker)
    漏電や過電流が発生した際に回路を遮断し、火災や感電を防ぎます。
  • 配線用遮断器(MCCB:Molded Case Circuit Breaker)
    ビルや工場等で用いられるブレーカー(漏電遮断機能なし)。
  • 計器盤
    電力量計、電流計、電圧計などが設置され、電気の使用状況を監視します。

施工事例

まとめ:キュービクル導入のメリット・デメリットと検討ポイント

  • 受電機器:高圧電力を安全に受け取る
    LBSが回路の開閉を行い、VT/CTが計測可能な値に変換、LAが雷サージから設備を保護します。安全な受電のための第一段階です。
  • 変電機器:電圧を適切に降圧する
    変圧器(トランス)が6,600Vを100V/200Vに変換。容量選定を誤ると過負荷やエネルギーロスが発生するため、導入時の設計が重要です。
  • 配電・保護機器:電気を分配し事故を防止する
    低圧配電盤が電力を各回路に分配し、ELBやMCCBが過電流や漏電時に遮断。計器盤で使用状況を監視し、安全な運用を支えます。

キュービクルには「高圧電力を受ける」→「使える電圧に変える」→「安全に分配する」という3段階の役割があり、複数の機器が連携して初めて安全な受変電が成立します。各機器の役割を理解することが、トラブル防止と効率的な電力運用の第一歩です。

関連記事を読む

記事を書いた人

蕨川 真央
恒電社

蕨川 真央

教育・医療業界を経験したのち、結婚出産を経て恒電社に参画。現在は、マーケティングや採用領域のアシスタントとして従事する。

電気設備工事のことなら、
“まるっと”
恒電社へご相談ください。

お問い合わせはこちら

お電話のご相談はこちら

048-728-4283
自家消費型太陽光発電はこちら