更新日:2026年10月3日
工場やビルなど、大規模な電力を使用する施設では、キュービクル(キュービクル式高圧受電設備)を導入している企業も多いと思います。
しかし、金属製の箱の中に何が入っていて、それぞれが何をしているのかまで把握している担当者の方は多くないかもしれません。キュービクルの中には、電気料金のために電気を計る機器、点検のときに回路を切り離す機器、事故のときに電気を止める機器、電圧を下げる機器、低圧の電気を分けて送る機器が組み合わされて入っています。
本記事は、キュービクルに関する知識を総合的に整理する連載シリーズ「キュービクルとは?」の第4回(最終回)です。キュービクルの中身を受電・変電・配電の3つの役割に分け、主な機器の役割を一つずつ整理します。各機器をさらに詳しく解説した記事へのリンクもあわせて紹介します。
キュービクルの定義や種類、導入のメリット・デメリット、導入時の注意点から読みたい方は、連載の第1回〜第3回もご参考ください。
要約
受電:
一般送配電事業者の配電線から高圧(6,600V)の電気を受け取り、事故のときには電気を止める部分です。電気料金の計量に使うVCTと電力量計、事故のときに電気を止める主遮断装置(CB形は遮断器=一般にVCB、PF・S形はLBSと高圧限流ヒューズの組み合わせ)、過電流や地絡を検出する保護継電器などが入ります。CB形などでは、点検のときに回路を切り離す断路器(DS)を設ける構成もあります。VCTと取引用の電力量計は、キュービクルの中にあっても原則として一般送配電事業者の所有物です。
変電:
受け取った高圧の電気を、変圧器(トランス)で施設で使える低圧(100V・200Vなど)に変えます。力率を改善する進相コンデンサも、高圧側に設置されます。変圧器の容量は、足りなければ過負荷になり、大きすぎれば初期費用や無負荷損が増えるため、使い方に合わせて選びます。
配電:
低圧になった電気を、低圧配電盤から建物内の各回路へ分けて送ります。配線用遮断器(MCCB)が過負荷や短絡のときに回路を遮断し、回路によっては漏電遮断器(ELB)が漏電を検出して遮断します。電圧計や電流計などの計器で、電気の使用状況を確認します。
キュービクルの外にある機器:
責任分界点に設置される区分開閉器(架空引込のPAS、地中引込のUGS・UAS)は、キュービクルの外にあります。SOG制御装置と組み合わせ、構内で地絡事故などが起きたときに自社設備を配電線から切り離します。
キュービクルの中身|受電・変電・配電の3つの役割と主な機器
監修
高橋 宏武
キュービクルの中身は、電気の流れに沿って受電・変電・配電の3つに分けると整理しやすくなります。代表的な機器と役割は次のとおりです。主遮断装置の形式や設計によって、設置されない機器もあります。
| 役割 | 主な機器 | 何をしているか |
|---|---|---|
| 受電 | VCT(電力需給用計器用変成器)・電力量計 | 電気料金の計算に使う電力量を計量する(原則として一般送配電事業者の所有) |
| 受電 | 断路器(DS) | 点検や工事のときに回路を電源から切り離す(負荷電流の開閉は目的としない) |
| 受電 | 主遮断装置(CB形は遮断器=一般にVCB、PF・S形はLBSと高圧限流ヒューズの組み合わせ) | 短絡や地絡などの事故のときに電気を止める |
| 受電 | 保護継電器(OCR・GR・DGRなど) | 過電流や地絡を検出し、遮断器や開閉器に開くよう指令を出す |
| 受電 | 計器用変成器(需要家側のVT・CT) | 計器や保護継電器のために、電圧・電流を小さな値に変える |
| 受電 | 避雷器(LA) | 雷などによる異常電圧から設備を守る(PASに内蔵されたものもある) |
| 変電 | 変圧器(油入変圧器・モールド変圧器) | 高圧の電気を、施設で使う低圧に変える |
| 変電 | LBS(PF付)・高圧カットアウト | 変圧器や進相コンデンサの回路ごとに、開閉とヒューズによる保護を行う |
| 変電 | 進相コンデンサ・直列リアクトル | 力率を改善する/コンデンサの突入電流や高調波による電圧ひずみを抑える |
| 配電 | 低圧配電盤(配線用遮断器・漏電遮断器) | 低圧の電気を各回路に分け、過電流や漏電のときに回路を遮断する |
| 配電 | 計器(電圧計・電流計など) | 電気の使用状況を確認する |
中身の構成は、主遮断装置の形式によって変わります。JIS C 4620(2018年版)では、主遮断装置に遮断器(CB)を使う形式をCB形、高圧限流ヒューズ(PF)と高圧交流負荷開閉器(LBS)を組み合わせて使う形式をPF・S形と呼び、PF・S形の対象は受電設備容量300kVA以下、CB形は4,000kVA以下です(JIS C 4620の現行版は2023年改正版)。日立産機システムの標準タイプのカタログに載っている単線結線図の例では、CB形はVCTと電力量計、断路器(DS)、VCB、変圧器ごとのLBS(PF付)、変圧器、進相コンデンサと直列リアクトルで構成されています。PF・S形の例は、VCTと電力量計、主遮断装置となるLBS(PF付)、変圧器、進相コンデンサで構成されています。
受電 ― 高圧の電気を受け取り、事故のときに電気を止める
まず、一般送配電事業者の配電線から高圧(6,600V)の電気を受け取り、事故のときにはキュービクルの入り口で電気を止める部分です。ここには、主に次の機器が入っています。
- VCT(電力需給用計器用変成器)と電力量計
高圧の電圧・電流を電力量計で計量できる大きさに変換し、電気料金の計算に使う電力量を計量します。VCTと取引用の電力量計は、キュービクルの中にあっても原則として一般送配電事業者が選定・所有し、取り付けるもので、需要家や工事会社の資産ではありません。キュービクルの外の引込みの電柱にVCTを取り付ける方式もあります。所有の区分や取り替えの考え方は、キュービクルのVCTの役割と所有者を解説した記事で詳しく説明しています。 - 断路器(DS)
CB形などで設けられ、点検や工事のときに、回路を電源から切り離しておくための開閉器です。負荷電流の開閉は目的としていないため、電流が流れていない状態で操作します。 - 主遮断装置(CB形は遮断器、PF・S形はLBSと限流ヒューズ)
短絡(ショート)や地絡などの事故のときに電気を止める、キュービクルの受電用の遮断装置です。CB形では、遮断器(一般に真空遮断器=VCB)が保護継電器からの指令を受けて回路を遮断します。PF・S形では、高圧交流負荷開閉器(LBS)に限流ヒューズ(PF)を組み合わせ、短絡などの大きな電流はヒューズが溶断して遮断し、その動きでLBSが三相をまとめて開きます。地絡のときは、継電器の指令でLBSを開く構成があります。VCBの役割はVCB(真空遮断器)の役割を解説した記事、LBSとヒューズの仕組みはLBSの役割と仕組みを解説した記事で紹介しています。 - 保護継電器(OCR・GR・DGRなど)
過電流継電器(OCR)は、CTから取り込んだ電流で、短絡や過負荷などの異常な電流を検出します。地絡継電器(GR)は、零相変流器(ZCT)が拾った地絡電流から地絡を判断し、地絡方向継電器(DGR)は零相電圧も使って、地絡が構内で起きたか構外で起きたかを判別します。継電器そのものは電気を切らず、遮断器や開閉器に開くよう指令を出します。 - 計器用変成器(需要家側のVT・CT)
VCTとは別に、需要家側の計器や保護継電器のために、必要に応じてVT(計器用変圧器)とCT(変流器)が設置されます。キュービクルで一般的なVTは6,600Vを110Vに変換します。CTは一次側の電流に応じた小さな電流に変換し、定格二次電流は一般に5Aで、遠隔計測などでは1Aもあります。CTは電流が流れている状態で二次側を開放してはいけない、VTは二次側を短絡してはいけない、という逆の注意点があります。詳しくはVT(計器用変圧器)の役割を解説した記事とCT(変流器)の役割を解説した記事をご覧ください。 - 避雷器(LA)
雷などによる異常電圧から設備を守る機器です。電気設備の技術基準の解釈(第37条)では、原則として、高圧架空電線路から電気の供給を受ける受電電力が500kW以上の需要場所の引込口、またはこれに近接する箇所に避雷器を施設するよう定めています(直接接続する電線が短い場合などの適用除外が同条第2項にあります)。避雷器を内蔵したPASもあり、どこに設置するかは受電設備の構成によって異なります。
なお、名前が似ているVCTとVCBは別の機器です。VCTは電気料金の計量のために一般送配電事業者が設置する変成器で、VCBは事故のときに電気を止める需要家側の遮断器です。
変電 ― 高圧を低圧に変える
受け取った高圧の電気を、変圧器(トランス)で施設で使える低圧に変える部分です。変圧器のほか、変圧器やコンデンサの回路を守る機器と、力率を改善する機器が入っています。
- 変圧器(油入変圧器・モールド変圧器)
高圧の電気を低圧に変換します。絶縁に油を使う油入変圧器と、巻線を樹脂で固めたモールド変圧器があり、配電用6kVの変圧器はそれぞれJIS C 4304とJIS C 4306で規定されています。JIS C 4304:2013の定格二次電圧は単相210-105V、三相210Vなどで、施設では照明やコンセント用の単相100V・200V、動力用の三相200Vなどとして使われます。容量が足りないと過負荷になり、大きすぎると初期費用や、負荷の大きさに関わらず生じる無負荷損が増えます。容量の決め方は、トランス容量の計算方法と選び方を解説した記事で詳しく説明しています。 - LBS(PF付)・高圧カットアウト
CB形のキュービクルでは、変圧器や進相コンデンサの回路ごとに、限流ヒューズ付きのLBSや、ヒューズを組み込んだ高圧カットアウトを設け、回路ごとの開閉と保護を行う構成が一般的です。 - 進相コンデンサ(SC)と直列リアクトル(SR)
進相コンデンサは、電動機などの負荷で低下した力率を改善し、電力のむだを抑えます。直列リアクトルは、コンデンサを投入したときの突入電流を抑え、高調波による電圧ひずみを改善するために、コンデンサと組み合わせて設置されます。日本電機工業会(JEMA)は、高圧進相コンデンサ設備の更新推奨時期を15年としています。
配電 ― 低圧の電気を分けて送り、回路を守る
最後に、低圧に変えた電気を、建物内の照明・空調・機械などの回路へ分けて送る部分です。過負荷や短絡(ショート)、漏電から回路を守る機器もここに入ります。
- 低圧配電盤
変圧器から出た低圧の電気を、建物内の各回路に分けて送ります。 - 配線用遮断器(MCCB:Molded Case Circuit Breaker)
設定された電流値を超える電流が流れたときに、自動で回路を遮断します。過負荷や短絡から電線や機器を守るブレーカーで、漏電を検出する機能はありません。 - 漏電遮断器(ELB:Earth Leakage Breaker)
配線用遮断器と同じ過電流の保護に加えて、漏電を検出して回路を遮断する機能を持つブレーカーです。 - 計器
電圧計や電流計、複数の値を表示するマルチメータで、電気の使用状況を確認します。電気料金の計算に使う取引用の電力量計は、受電部のVCTと組み合わせて一般送配電事業者が取り付けるもので、これらの計器とは別です。
中の機器を個別に交換するか、キュービクルごと更新するかの考え方は、キュービクル工事の「全体交換」と「部分更新」の選び方で整理しています。
キュービクルの外にある区分開閉器(PAS・UGS・UAS)
キュービクルの中身とあわせて押さえておきたいのが、電力会社の配電線との境(責任分界点)に設置される区分開閉器です。架空引込では主に電柱上に設置するPAS(高圧気中負荷開閉器)、地中引込では電力会社の高圧キャビネットの中に取り付けるUGS(ガス式)やUAS(気中式)が使われます。どちらもSOG制御装置と組み合わせ、構内で地絡事故などが起きたときに自社設備を配電線から切り離して、周辺の建物まで停電させる波及事故を防ぎます。
PASの仕組みや交換時期の目安はPAS(高圧気中負荷開閉器)の役割を解説した記事、地中引込の場合はUGS・UASの役割とPASとの違いを解説した記事で詳しく紹介しています。自社の設備がどこから需要家の管理範囲になるのかは、責任分界点の決まり方と確認方法を解説した記事で確認できます。
キュービクルを丸ごと更新するか、VCBやLBS、変圧器、進相コンデンサなど一部の機器だけを交換するかは、設置からの年数や機器の状態、点検で指摘された内容によって変わります。恒電社が対応しているキュービクルの新設・更新・撤去・修繕工事の範囲と進め方は、以下のページで確認できます。
施工事例
恒電社が埼玉県熊谷市の工場で行ったキュービクル新設工事と、さいたま市で行ったキュービクル更新工事の施工事例は、次のページで確認できます。
断路器や進相コンデンサ、VCBなど、キュービクルの中の機器だけを交換した工事の事例もあります。
- 高圧断路器交換工事|埼玉県 伊奈町・大型商業施設:大型商業施設で高圧断路器を計画的に交換した事例で、波及事故を防ぐ考え方を確認できます
- 高圧進相コンデンサ(SC)交換工事|埼玉県さいたま市:点検報告書で「SC」と書かれる高圧進相コンデンサを交換した事例で、その役割も確認できます
- VCB(真空遮断器)交換工事|東京都葛飾区・印刷業:印刷業の施設でパネル取付形VCBを交換した事例で、申請から復電までの手順を確認できます
まとめ:キュービクルの中身は受電・変電・配電の3つで整理する
- 受電:高圧の電気を受け取り、事故のときに電気を止める
VCTと電力量計(原則として一般送配電事業者の所有)、主遮断装置(CB形は遮断器=一般にVCB、PF・S形はLBSと限流ヒューズ)、保護継電器などが入り、構成によって断路器、需要家側のVT・CT、避雷器も設けられます。 - 変電:高圧を低圧に変える
変圧器が高圧の電気を低圧に変えます。CB形などでは変圧器やコンデンサの回路ごとにLBS(PF付)や高圧カットアウトを設け、進相コンデンサで力率を改善します。 - 配電:低圧の電気を分けて送り、回路を守る
低圧配電盤から各回路へ電気を分け、配線用遮断器や漏電遮断器が過電流や漏電のときに回路を遮断します。計器で使用状況を確認します。
キュービクルには「高圧の電気を受け取る」→「使える電圧に変える」→「分けて送る」という3段階の役割があり、それぞれの機器が分担して受変電を支えています。責任分界点の区分開閉器(PAS・UGS・UAS)はキュービクルの外にありますが、あわせて把握しておくと、点検報告書や見積書に出てくる機器の名前と場所が結びつきやすくなります。
本記事は、連載シリーズ「キュービクルとは?」の最終回として、キュービクルの中身を構成する各機器の役割をまとめました。ぜひ前回までの記事も合わせてご活用ください。
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キュービクルの定義と種類、価格を左右する要素、VCBとLBSの使い分けを続けて確認したい方は、次の記事もご参考ください。
点検報告書で指摘された機器がキュービクルのどこにあり、どこまで交換が必要なのか分からないという段階でも、ご相談いただけます。電気主任技術者による点検の結果と現地の状況を確認したうえで、交換する機器の範囲と工事の進め方をご提案します。
この記事を書いた人
蕨川 真央






