記事

【キュービクルとは? #1】選定する際の基準・要素を解説

投稿日:2025年11月12日
更新日:2025年11月26日

工場やビルなど、大規模に電力を使う施設や企業に欠かせない「キュービクル(キュービクル式高圧受変電設備)」。

高圧受電契約を結ぶ需要家にとっては、コスト面や安全性の確保といったメリットもありながら、その役割や構成、法的義務を正しく理解している担当者は意外と少ないかもしれません。

本記事は、キュービクルに関する基本理解を深める連載シリーズ「キュービクルとは?」の第1回です。今回は、キュービクルの基礎知識から構成機器、導入メリットや注意点、関連法規、事例までをわかりやすく解説します。

▼関連記事はこちら

要約

基礎と役割:
キュービクルは高圧電力を受電し、施設で使える低圧へ変圧し、安全に配電する設備で、箱型構造が主流です。名称は英語の「cubicle」に由来し、機器をひとまとめに収めて安全性とメンテナンス性を高めています。

契約とコスト削減:
工場やビルは高圧受電契約を結び、キュービクルで降圧することで電気料金単価を下げることができます。一般家庭や小規模店舗とは異なり、自社管理で電力を効率的に使用できる点が大きなメリットです。

選定基準と現地条件:
サイズ・容量・価格・信頼性のバランスが重要で、現場の広さや既存機器配置を考慮する必要があります。条件を無視すると配線や保守が困難になり、将来の増設等で余計なコストが発生する恐れがあるため注意が必要です。

運用と将来性:
「設置して終わり」ではなく、日常運用や点検作業、増設時の配線容易さ、まで考慮した機種・レイアウト選定が不可欠です。左に高圧機器、右に低圧機器を配置するのが基本ですが、現場状況に応じて変更も可能です。

キュービクルとは(定義と役割)

キュービクルとは、「キュービクル式高圧受電設備」の略称で、電力会社から受け取った高圧電力(6,600Vなど)を需要家施設で使用できる低圧(100V/200V)に変換する設備を金属製の箱に収めたものです。

その役割は大きく3つに分けられます。

  • 受電:電力会社の配電網から高圧電力を受け取る
  • 変電:受け取った電力を施設で使える電圧まで降圧する
  • 配電:変圧後の電力を施設内へ安全に分配する

※それぞれの役割を担う機器については、こちらの記事をご覧ください。

また、同じ高圧受変電設備には、機器が外部に露出している「開放型」もありますが、現在は安全性やメンテナンス性の観点から、箱型のキュービクル式が主流となっています。

名称の由来
「キュービクル」という名称は、英語の cubicle(小部屋・区画)に由来しています。その名のとおり、複数の電気機器をひとまとめに収めた箱型の設備を指します。

高圧電力と低圧電力の契約の違い

一般家庭や事務所、小規模店舗では、電力会社または施設所有者が設置した変圧器で降圧された低圧電力(100V/200V)を受電契約します。一方、電力を多く使用する工場やビルでは、高圧受電(6,600V)契約を結び、自社の管理下でキュービクルを使って降圧します。

この方法により、電気料金単価を抑えることができ、コスト削減につながる点が大きなメリットです。

電気工事士に聞く、キュービクルを選定する際の基準、要素

解説者

高橋 宏武
一級電気施工管理技士/第一種電気工事士

高橋 宏武

大学卒業後、恒電社に入社したプロパー社員。電気工事士として、住宅の電気工事に加え、法人向けの高圧電気設備工事の直接提案を開始するなど、現在の会社の礎を創ってきたメンバー。2020年からは事業部長として、エンジニアリング事業部を統括している。プロフィールはこちら

インタビュアー

岩見 啓明
第二種電気工事士/二等無人航空機操縦士

岩見 啓明

前職はWebメディアの編集者。恒電社に参画後はマーケティングに従事し、現在は採用全般も担当している。2023年に二等無人航空機操縦士(ドローン)資格、2024年に第二種電気工事士資格を取得。プロフィールはこちら

ーーー キュービクルを選定する際の基準、要素は何ですか?

設置する場所における現地条件を踏まえて、以下の要素を考慮して最適なものを選定します。

  • サイズ:収まりやすさ、メンテナンス性の確保
  • 容量:将来的な負荷を見据えた余裕を持つ
  • 価格:コストパフォーマンス重視
  • 信頼性:メーカー・製品品質

現地条件に合わないものを選んでしまうと、メンテナンスや配線作業に支障が出たり、将来、余計なコストが発生する可能性があるためです。

ーーー 現地条件とは何を指すのでしょうか?

たとえば、設置場所の広さや、すでにある周囲の機器配置、点検・メンテナンスの作業スペースの有無ですね。

現地条件を無視すると、配線が複雑化したり、メンテナンス時に機器にアクセスできなくなるなど、運用上の問題が発生するためです。

キュービクルは中にトランスや遮断器など多くの機器が入っていますが、基本的には、左側に高圧機器、右側に行くにつれて低圧機器という順序で並んでいます。

ただし、既設設備との接続方向や配線ルートが合わない場合は、機器の並び順を変更することもあります。そのため、配線のしやすさや点検作業のしやすさを考慮し、現場条件に最も適したレイアウトと機種を選ぶことが重要です。

ーーー 価格だけではなく、サイズ・容量・コストパフォーマンス・信頼性をバランスよく満たすものを選ぶことが重要なのですね。

そうです。「設置して終わり」ではなく、日々の運用や将来の保守まで見据えたレイアウトを考えることが、現地条件を踏まえた適切な選定といえます

施工事例

まとめ:キュービクルの基礎知識と選定ポイント

  • キュービクルの役割を理解する:受電・変電・配電の三本柱:
    キュービクルは高圧電力を受け取り、降圧し、施設内に安全に分配する装置。工場やビルなど大規模需要家では欠かせない存在です。
  • 高圧受電契約によるコスト削減効果:
    高圧で受電し、社内で降圧することで電気料金単価を抑制。電気代の削減は大きな導入メリットとなります。
  • 現地条件を踏まえた最適な選定とレイアウト
    サイズ・容量・価格・信頼性のバランスを取りつつ、設置スペースや配線ルートを考慮したレイアウトを選ぶことで、メンテナンス性と将来の拡張性を確保できます。

キュービクルは「導入して終わり」ではなく、コスト削減・安全性・保守性を長期的に見据えて設計・選定することが、企業の電力マネジメント成功のカギとなります。

本記事は、連載シリーズ「キュービクルとは?」の第1回として、設備選定の基準や判断要素を整理しました。次回の第2回では、導入時に押さえておきたいメリットとデメリットをわかりやすく解説します。

関連記事を読む

記事を書いた人

蕨川 真央
恒電社

蕨川 真央

教育・医療業界を経験したのち、結婚出産を経て恒電社に参画。現在は、マーケティングや採用領域のアシスタントとして従事する。プロフィールはこちら

電気設備工事のことなら、
“まるっと”
恒電社へご相談ください。

お問い合わせはこちら

お電話のご相談はこちら

048-728-4283
自家消費型太陽光発電はこちら