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【高圧設備更新の準備 #2】電気主任技術者から「更新が必要」と言われたら?設備オーナーの次のアクション

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コラム

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#キュービクル
投稿日:2026年5月22日
更新日:2026年5月22日

定期点検の報告書に並ぶ「更新」や「取替」の文字。電気主任技術者からも「そろそろ更新しないと危ないですよ」と口頭で促されたものの、具体的なステップが分からず動きを止めていませんか?

「どこに相談すべきか分からない」「更新費用の妥当性をどう判断すればいいのか不安」と感じる設備オーナー様も少なくありません。

前回の記事では、点検報告書の見方やリスクの考え方を解説しました。今回は、設備オーナー様が「納得感のある設備更新」を進めるための具体的なステップを、現場のプロである電気工事士の視点を交えて解説します。

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保工分離の原則:なぜ「電気主任技術者」は工事をしないのか?

高圧設備の保安管理において、「点検を担当している電気主任技術者が、そのまま更新工事まで行った方が効率的では?」と思われるかもしれません。しかし、実務上の役割は厳格に分かれており、それぞれに異なる役割があります。

  • 電気主任技術者:法令に基づき、設備の安全維持を「監督・点検」する立場
  • 電気工事会社:設計図に基づき、物理的な「施工・交換」を完遂する立場

ここで重要なのが、「保工分離」(保守と工事の分離)の考え方です。

保安監督を行う者と施工を行う者を分けることで、設備状態をより客観的に評価しやすくなります。
また、更新内容や工事範囲について第三者的な視点で確認できるため、透明性の高い設備管理につながります。

高圧設備の更新は、設備オーナーにとって大きな投資判断です。そのため、「なぜ更新が必要なのか」「どの程度の緊急性があるのか」を、客観的な根拠をもとに整理することが重要になります。

更新を勧められた際に確認したいポイント

受変電設備の更新は、単に「古いから交換する」というものではありません。設備の使用環境や負荷状況、事故発生時の影響範囲などを踏まえながら、総合的に判断する必要があります。

では、具体的な検討を進める前に、確認しておくべきポイントは何なのでしょうか。ここでは大きく3つのポイントをご紹介します。ここで確認した内容が、その後の工事計画や見積もり内容にも大きく関わってきます。

「更新の緊急度」の客観的な評価

単に「古いから」という理由だけでなく、故障の予兆があるのかを確認します。

具体的には「1年以内の計画停止(更新)が必要な状態か」、あるいは「中長期的に予算化できる状態なのか」を確認します。絶縁抵抗値の推移や外観の劣化状況(錆・油漏れ)など、具体的な判断根拠を明確にすることで、予算編成の優先順位を決めやすくなります。

「故障時の影響範囲」のリスク把握

万が一、更新を見送って事故が発生した場合の社会的・経済的影響を明確にします。

「自社のみの停電(自責事故)で済むのか」、あるいは「電力会社の配電を止めてしまう『波及事故』に発展し、近隣一帯を停電させる恐れがあるのか」を確認します。波及事故のリスクが高い場合、賠償問題や企業の社会的信用に関わるため、経営判断としての更新優先度は極めて高くなります。

「推奨機器」および「容量変更」の必要性

更新時には、単純な“現状復旧”(新品への交換)ではなく、現在の使用状況に合わせて設備構成を見直すケースもあります。

「メーカー指定の有無」や「現在の負荷(電力使用量)に対して、トランス(変圧器)容量が適正か」を確認します。竣工時と比較して、設備の稼働状況が変わっている場合、容量を最適化(ダウンサイジング等)することで、工事費だけでなく将来的な電気代の削減に繋がる可能性もあります。

これらの情報を整理した上で、複数の施工会社へ相談し、それぞれの提案内容(施工範囲)や見積もりを比較検討することも重要です。

高圧設備の更新は、「どの機器を交換するか」だけではなく、

  • どのような施工方法を採用するのか
  • 停電時間をどう最小化するのか
  • 将来的な保守性まで考慮されているか

といった視点によって、工事品質や運用負荷が大きく変わるケースもあります。

そのため、価格だけではなく、「なぜその工事内容なのか」を丁寧に説明してくれる会社を選ぶことが、納得感のある設備更新につながります。

電気工事士に聞く、納得感のある「更新計画」の立て方

解説者

高橋 宏武
一級電気施工管理技士/第一種電気工事士

高橋 宏武

大学卒業後、恒電社に入社したプロパー社員。電気工事士として、住宅の電気工事に加え、法人向けの高圧電気設備工事の直接提案を開始するなど、現在の会社の礎を創ってきたメンバー。2020年からは事業部長として、エンジニアリング事業部を統括している。プロフィールはこちら

インタビュアー

岩見 啓明
第二種電気工事士/二等無人航空機操縦士

岩見 啓明

前職はWebメディアの編集者。恒電社に参画後はマーケティングに従事し、現在は採用全般も担当している。2023年に二等無人航空機操縦士(ドローン)資格、2024年に第二種電気工事士資格を取得。プロフィールはこちら

―――「更新を勧められたけれど、予算の関係で来年にしたい」という相談を受けた場合、どこをチェックして「待てる・待てない」を判断しますか?

まず、大前提として法定耐用年数や推奨更新年数を超えている設備は、基本的に更新をお勧めします。

その上で、特に「待てない(今すぐ更新すべき)」と判断する基準は、直近で漏電やショートのリスクが非常に高まっているケースです。具体的には、絶縁抵抗値が著しく低下している場合や、屋外設置のキュービクル等において、目視でサビによる穴あき(またはその一歩手前の状態)が確認できる場合です。

ここから雨水が侵入すれば、即座に全停電や火災に直結するため猶予はありません。また、主遮断器(VCBやLBS)や、波及事故防止機器(PASやUGS)に異音・過熱などの兆候がある場合も同様です。これらが故障すると、自社施設だけでなく近隣地域一帯を巻き込む「波及事故」に発展し、莫大な損害賠償リスクを負うことになるため、即時対応を強く推奨します。

一方で、法定耐用年数や推奨更新年数を超えている場合でも、「待てる」(猶予を見込める)のは、年次点検などの測定データが極めて安定しており、目視でも内部・外観に変色やサビ、異音などの異常が一切認められない場合です。

―――万が一、事故が起きた場合の影響度やリスクも重要なんですね。

はい。ただし、ここで電気工事士としてお客様に必ずお伝えしなければならない重要な注意点があります。

近年の半導体不足や物流の停滞により、高圧機器は発注から納品まで半年から1年近くかかる「長納期化」が常態化しています。仮に「来年施工する」と決める場合であっても、「来年中に工事を完了させるために、今すぐ発注(予算確保)だけは済ませておく」という段階的な計画が必要不可欠となります。

施工会社としては、ご発注いただいた後でないと部材は発注できません。予算の関係などで年度内に工事を終わらせる必要がある場合は、特に早めに発注する必要がでてきます。

―――見積もりを作成するために、恒電社では必ず現地調査を行なっています。その実施前にお客様にご用意いただきたい書類などはありますか?

現在は、現地調査の実施前に「年次点検報告書」と「竣工図面(単線結線図や平面図、系統図など)」のご提出をお願いしています。「月次点検報告書」もあると、よりありがたいですね。

これらの書類をご用意いただけるかどうかで、見積もりの精度はもちろん、作成のスピードが劇的に変わります。現場調査自体もスムーズに進めることが出来ますし、不確定要素を残したまま進めることで発生する「手戻り」も減らせるからです。

―――具体的に、それぞれの必要性や有用性を教えてください。

「月次・年次点検報告書」には過去の不具合の指摘や、現在稼働している機器の正確な型番・仕様(容量など)が記録されています。これがあることで、最適な後継機種の選定が可能になります。

「竣工図面」では、電気工事において最もリスクとなる、目視では確認できない壁の裏や地中、天井裏を通る配線のルートを確認することができます。正確な工事範囲が特定でき、施工当日の想定外のルート変更による追加費用の発生を未然に防ぐことにつながります。

また、高圧工事で必ずお客様にご準備いただきたいのが「電気料金明細(請求書の写し)」です。現地調査やお見積り段階では、必ずしも必要ではありませんが、電力会社への各種申請手続きに必要となります。申請業務における手続きの遅延を防ぎ、スムーズな着工に繋がります。

―――そもそも、なぜ現地調査は必須なのでしょうか?書類だけの見積もりだと危ない理由があれば教えてください。

一言で言えば、図面や書類上のスペックと「現在の実際の現場環境」には、必ずと言っていいほど乖離があるからです。現地調査を省略した書類だけの見積もりは、施工当日になって「工事が物理的にできない」「工期が延びて大幅な追加費用が発生する」といった致命的なトラブルを引き起こすリスクが非常に高くなります。

書類だけでは決して見抜けないリスクの代表例が、搬入・設置環境の経年変化です。

図面上にはキュービクルの設置スペースが十分にあるように見えても、実際には敷地内に樹木が生い茂っていたり、隣接する建物が新築されたことで隙間が狭くなっていたりすることがあります。また、上空に電線や建物の庇(ひさし)があるためにクレーン車などの大型重機が配置できない、といったケースも珍しくありません。

さらに、既存のコンクリート基礎の劣化状態や耐荷重、搬入路となる周囲の道路の実際の道幅や傾斜などは、熟練の電気工事士が現地を目視・計測しなければ絶対に判断できません。「書類上は問題ないはずだった」という思い込みが、工事の決定的失敗を招くため、現地調査は絶対に省略してはならないプロセスです。

まとめ|オーナーの「意思決定」が資産を守る

電気主任技術者からの「更新推奨」は、あくまで設備の現状を把握するための重要なデータに過ぎません。そのデータを実際の「更新計画」として具体化し、実行に移せるのはオーナー様ご自身に他なりません。納得感のある設備更新計画を進めるためには、以下のプロセスが重要です。

  1. 現状把握の徹底
    点検報告書や竣工図面など、見積もりに必要な情報を整理し、工事会社に正確な現状を伝える。
  2. 実効性の高い現地調査の実施
    書類上だけではなく、搬入経路や施工条件を現場で直接確認し、追加費用発生のリスクを抑える。
  3. 多角的な視点でのプラン比較
    工事金額の安さだけではなく、機器の納期(工期)や更新後の省エネ効果までを考慮して判断する。

高圧設備の計画的な更新は、突発的な故障による長期停電や波及事故といった「事業継続を脅かすリスク」を最小限に抑えるための実務的な対策です。主任技術者や信頼できる工事会社をパートナーとし、客観的な情報に基づいた適切な意思決定を行うことが、結果として建物と事業の安全を維持することにつながります。

恒電社では、設備の状況に合わせた最適な工事計画の立案から施工まで、一貫して対応しています。「点検で指摘された機器があってまずは相談だけしたい」という段階でも構いません。まずはお気軽にお問い合わせください。

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記事を書いた人

蕨川 真央
恒電社

蕨川 真央

教育・医療業界を経験したのち、結婚出産を経て恒電社に参画。現在は、マーケティングや採用領域のアシスタントとして従事する。プロフィールはこちら

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