更新日:2026年10月7日
テナントビルや貸しビル、アパートなどでは、建物全体の電気料金をオーナーや管理会社が一括して電力会社へ支払い、各テナント・各室の電気使用量に応じて配分(按分)することがあります。この配分の根拠となる電気メーターが「子メーター」で、経済産業省や日本電気計器検定所(JEMIC)の資料では「証明用電気計器」とも呼ばれています。
子メーターは分電盤の中や機械室など、日常的に目に入りにくい場所に設置されている場合もあります。「現時点で支障がない」「動作している」「テナントからクレームもない」といったことだけで判断せず、有効期限を確認しておく必要があります。
一方で、恒電社が工事で伺う現場でも、子メーターに有効期限があること自体が認識されていなかったり、期限切れのまま使用が継続されていたりする例があります。そうした問題は、定期点検の場ではなく、テナントから「電気代がおかしいのではないか」と指摘を受けた“後”に表面化することもあります。
本記事では、子メーターとは何か、親メーターとの違い、計量法で定められた検定と有効期限の考え方、そして有効期限が切れたまま使用することで生じるリスクについて分かりやすく解説します。
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子メーターの交換工事の流れや停電の考え方、受電方式の基礎から確認したい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
要約
役割と管理責任:
子メーターは、建物全体の電気料金を各テナント・各室の使用量に応じて配分するための電力量計で、請求の公平性を支える設備です。原則として一般送配電事業者(東京電力パワーグリッドなど)が取り付ける親メーターと異なり、子メーターは建物側の設備のため、設置・管理・更新の手配はオーナーや管理会社などの設置者側が行います。
有効期限と法的背景:
電気料金の配分に使う子メーターは、計量法上「取引又は証明」に使う計量器に当たります。検定証印または基準適合証印が付き、その有効期間内のものでなければ使えません。有効期間はメーターの種類によって10年・7年・5年で、ラベルや検定票で確認できます。
期限切れの実態とリスク:
取材した電気工事士によると、「有効期限があること自体を知らない」お客さまが多い印象とのことです。有効期間を過ぎた子メーターで計った使用量を料金の配分に使うことは計量法の使用制限に反し、罰則規定もあります。加えて、テナントから電気料金への疑問が出たときに、計量値の正しさを根拠をもって説明しにくくなります。
交換対応と実務上の注意:
子メーターの交換は電気工事会社へ依頼するのが一般的で、設置場所によっては停電や電気主任技術者の立会いが必要になります。交換時は前後の指示値の記録や旧メーターの保管を行い、後日の説明根拠を残すことが信頼維持につながります。
「子メーター」とは?電気契約上の位置づけを整理
子メーターとは?
子メーターとは、建物全体の電力使用量を計測する親メーターとは別に、テナントやフロアごとの電力使用量を把握するために設置される電力量計です。
複数のテナントや住戸が入る建物で、建物全体の電気料金をそれぞれの使用量に応じて配分して請求する場合、子メーターの計量値がその計算根拠になります。電気料金の配分や請求の公平性を保つうえで欠かせない設備です。
親メーターとの違い
親メーターは、電力系統から建物へ電気を受け取る地点(供給地点)に設置される電力量計です。東京電力パワーグリッドの託送供給等約款では、料金の算定に必要な計量器とその付属装置(変成器を含む)は、原則として一般送配電事業者が選定・所有し、その負担で取り付けると定めており、その計量値が建物全体の電気料金の算定に使われます。一方、子メーターは親メーターよりも建物の内側に設置される、建物側の設備です。
そのため、子メーターの設置や管理、更新の判断は、ビルオーナーや管理会社の責任範囲となります。
| 項目 | 親メーター | 子メーター |
|---|---|---|
| 設置場所 | 電力系統から建物への供給地点 | 親メーターより内側(分電盤内・各テナントの区画など) |
| 取り付け・所有 | 原則として一般送配電事業者 | オーナー・管理会社など建物の設置者側 |
| 計量値の使い道 | 建物全体の電気料金の算定 | 一括で支払った電気料金を各テナント・各室へ配分 |
| 取り替えなどの相談先 | 一般送配電事業者 | 設置者側が電気工事会社などに依頼 |
高圧で受電している建物では、親メーターの電力量計とVCT(電力需給用計器用変成器)がキュービクルの中に置かれていることもあります。キュービクル内にあっても原則として一般送配電事業者の所有物で、恒電社では親メーターやVCTの工事は行っていません。これらについては一般送配電事業者への確認が必要です。VCTの所有と管理の考え方を詳しく知りたい方は、キュービクルのVCT(計器用変成器)の役割と所有者を解説した記事もご覧ください。
子メーターの「有効期限」
料金の配分に使う子メーターは計量法の対象
計量法では、「取引」を有償・無償を問わず物や役務の給付を目的とする業務上の行為、「証明」を公に、または業務上他人に一定の事実が真実である旨を表明することと定めています(第2条第2項)。
資源エネルギー庁の「電気の計量制度に関するQ&A」では、貸しビル・アパート・分譲マンションなどで一括して支払った料金を各室の使用量に応じて配分するために用いる子メーターは、賃貸か分譲かにかかわらず「取引又は証明上の計量に使用される特定計量器」に該当し、検定済みの特定計量器の設置が必要と説明しています(2026年10月時点の掲載内容)。オーナーや管理会社などが子メーターの計量値を料金徴収の算定根拠に使っている場合は、取引又は証明に該当します。それ以外の使い方が該当するかどうか迷う場合は、都道府県などの計量検定所に確認すると確実です。
検定・有効期限の考え方
計量法第16条では、料金の配分など取引又は証明に使う電力量計は、検定証印または基準適合証印(指定製造事業者の表示)が付いていて、その有効期間を過ぎていないものでなければ使用できないと定められています。変成器(変流器や計器用変圧器)と組み合わせて使う子メーターの場合は、変成器と一緒に検査に合格し、同じ「合番号」が付いた組み合わせで使うことも求められます。
有効期限の表示場所は、メーターの種類によって異なります。
- 単独計器(変成器を使わないメーター):計器のガラスカバー正面に貼られた丸形で白色の検定ラベル(または適合ラベル)に、有効期限が表示されています。
- 変成器付計器:計器の正面に向かって右側の封印ねじに取り付けられた検定票(ファイバー票)に、有効期限が刻印されています。
有効期間の長さは、定格電圧、変成器と一緒に使うかどうか、定格電流、電子式か機械式かによって決まっています(計量法施行令 別表第三)。日本電気計器検定所が「現在使用されている計器」として示す電力量計の区分を整理すると、次のとおりです(単独計器は普通電力量計、変成器付計器は定格電流5Aの普通・精密・特別精密電力量計が対象)。表はいずれも、計器そのものの定格電圧が300V以下の電力量計についての区分です。定格電圧が300Vを超える電力量計は5年です(計量法施行令 別表第三 五ハ)。
| メーターの種類 | 条件 | 検定証印等の有効期間 |
|---|---|---|
| 単独計器(普通電力量計) | 定格電流30A・120A・200A・250A | 10年 |
| 単独計器(普通電力量計) | 定格電流20A・60Aの電子式 | 10年 |
| 単独計器(普通電力量計) | 定格電流20A・60Aの機械式 | 7年 |
| 変成器付計器(定格電流5A) | 電子式 | 7年 |
| 変成器付計器(定格電流5A) | 機械式のうち、定格電圧300V以下で、定格一次電流120A以下の変流器とともに使用するもの(定格一次電圧が300Vを超える変圧器とともに使用するものを除く) | 7年 |
| 変成器付計器(定格電流5A) | 機械式のうち、上記以外 | 5年 |
※平成14年7月3日施行の計量法施行令改正より前の変成器付計器は、上の表で機械式でも7年となる条件(定格電圧300V以下で、定格一次電流120A以下の変流器とともに使用するもの。定格一次電圧が300Vを超える変圧器とともに使用するものを除く)に該当するものを除き、電子式・機械式とも5年です。法令上の正確な区分は計量法施行令 別表第三で確認できます。
なぜ期限が設定されているのか
計量法は、構造や使用条件、使用状況からみて検定に有効期間を定めることが適当な計量器に、有効期間を設けています(第72条第2項)。電力量計もその対象です。
子メーターは長年使用することで、内部部品の摩耗や経年劣化が進み、使用環境によっては計測誤差が生じる可能性があります。
見た目や動作に問題がなくても、表示値の正しさは外から見ただけでは確かめられません。有効期間は「交換の目安」ではなく、取引・証明に使える期間の区切りです。料金の配分に引き続き使う場合は、有効期限が切れる前に、検定証印または基準適合証印が付いた有効期間内のメーターへ取り替えるなどの対応が必要です。
また、計量法第172条では、第16条に違反した者に対する罰則(6月以下の拘禁刑もしくは50万円以下の罰金、またはその併科)が定められています(2026年10月時点の条文)。子メーターの検定有効期間を確認する立入検査は、各地方自治体の計量検定所・計量検査所といった行政機関が行うもので、経済産業省や日本電気計器検定所の委託を名乗る民間の調査・立入検査は行われないと、経済産業局が注意を呼びかけています。
一方で、有効期間を過ぎた子メーターで計った使用量をテナントへの料金請求の根拠に使っている場合、計量法の使用制限に反することに加えて、別の意味でも大きなリスクがあります。それは、「この数値は正確です」と根拠をもって説明しづらくなることです。説明責任を果たしにくい状態そのものが管理上の弱点になり得ます。
電気工事士に聞く、子メーターの期限切れが「多い理由」と、実際の工事での注意点
解説者
高橋 宏武
インタビュアー
岩見啓明
ーーー実際に期限切れの子メーターを使用されているお客さまは多くいらっしゃいますか?
定量的に「これくらい」とは言いにくいですが、結構いらっしゃる印象です。毎月の検針で目にする機会はあるとしても、「そもそも有効期限がある」ことを認識していないお客さまが多いのではないでしょうか。
ーーー電気主任技術者さんが教えてくれるものではないのですか?
電気主任技術者が点検・保守等を行うのは、あくまでもキュービクルの内部です。子メーターは基本的にキュービクルの外についていて、基本的にはお客さまの設備ですので、電気主任技術者も確認しないことが多いです。
※補足:電気事業法上、電気主任技術者は自家用電気工作物の工事・維持・運用に関する保安の監督を担う立場で、その対象はキュービクルの中に限られません。高圧受電の建物では、需要家側の設備であっても自家用電気工作物として保安の監督の対象です。一方、子メーターの検定の有効期限は計量法上の事項で、保安の点検で確認されるとは限りません。子メーターの有効期限の確認が点検項目に含まれているかは、保安管理の契約内容や点検内容を確認するか、ご自身で検定ラベル・検定票を見ておくと確実です。工事会社と保安管理の役割分担については、高圧電気設備の保安と責任の線引きを解説した記事で詳しく紹介しています。
ーーー有効期限切れの子メーターを放置していると、どんな問題がありますか?
テナント様から電気料金に関する疑問やクレームが上がった際、計器の有効期限が切れていると、「その数値は正確です」と根拠をもって説明できなくなります。
この「説明責任を果たせない状態」こそが、オーナー様や管理会社様の信頼を損ない、交渉において立場を不利にしてしまう最大の要因です。期限切れは、計測誤差のリスクよりも、むしろ管理上の大きな弱点になります。
※補足:有効期限が切れたことだけで、計量値が不正確だと確定するわけではありません。ただし、有効期間を過ぎた計器で料金配分のための使用量を計ることは、計量法の使用制限に反します。有効期間内に計った使用量を期限後に請求することとは区別が必要です。「最大の要因」という評価は、取材した電気工事士の実務上の実感です。
ーーーでは、有効期限を過ぎた子メーターの交換は、どこに依頼すれば良いのですか?
子メーターは基本的にお客さまの設備なので、電力会社に相談しても「それはお客さま側で更新してください」との案内になるでしょう。そのため、電気工事会社に交換を頼むのが一番スムーズです。
子メーターの種類によっては、キュービクル内部に設置されているものもあります。そのような場合は、工事の際に受電を停止する必要があり、電気主任技術者の立会が必要になるパターンもあります。そのため、電気工事会社への工事依頼と別に、電気主任技術者の立会手配も必要になります。
※補足:停電の要否や範囲は、子メーターの設置場所や回路の構成によって変わります。キュービクル内に設置されていることだけで受電停止が必須になるわけではなく、電気主任技術者の立会いの要否も工事内容に応じて確認します。交換工事の内容や停電の考え方、費用の構成は、子メーター交換工事の進め方を解説した連載第2回の記事で整理しています。
ーーー交換工事のときに恒電社で気を付けていることはありますか?
メーター交換前後の数字の取り扱いです。子メーターに表示される数字は電力の使用量であり、お客さまが各テナントへ電気代を請求する際の根拠になる大切なものです。交換前の数字と、交換後の数字は必ず写真に撮って記録しています。
また、交換後のメーターはすぐには処分せず、だいたい半年〜1年くらいは保管するようにしています。万が一「交換した時のトラブルではないか」という状況になった場合も、写真だけではなく実物を残しておくと説明の根拠になります。
施工事例
テナントの入れ替えや商業施設の電力量計の更新が実際にどのように進んだのかは、以下の施工事例でご覧いただけます。
まとめ|子メーターは「何も起きていない今」こそ確認しておきたい設備
子メーターは、テナントごとの電気料金を配分するための重要な設備です。料金の配分に使う場合は計量法上の「取引又は証明」に当たり、検定証印または基準適合証印が付いた有効期間内のメーターを使う必要があります。取材では、有効期限を認識していないお客さまが多いという声もありました。動作やクレームの有無だけで判断せず、有効期限を確認することが大切です。
クレームの有無にかかわらず、有効期間を過ぎた子メーターで料金配分のための使用量を計ることは、計量法の使用制限に反します。有効期間を過ぎた子メーターで計った使用量を請求根拠にすると、テナントへの説明が難しくなる場合があります。有効期間内に適法に計った使用量を、期限後に請求する場合とは区別が必要です。
こうした事態を避けるために、まずは次の点を確認しておくと計画が立てやすくなります。
- 建物内の子メーターがどこに、何台あるか
- それぞれの検定ラベル・検定票に表示された有効期限
- 変成器付きのメーターかどうか(変成器との合番号の組み合わせも含む)
- 計量値をテナント・各室への請求に使っているかどうか
そのうえで、期限が近いものから計画的に交換できる状態をつくっておくことが現実的な対策です。交換工事の内容や停電の有無、費用の構成については、連載第2回「子メーター交換工事とビルオーナー・設備担当者が確認すべきポイント」で解説しています。
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高圧受電の建物で、子メーターの上流にあるキュービクル(高圧受変電設備)の内部構成や、更新費用の考え方もあわせて確認したい方は、以下の記事もご覧ください。
「検定ラベルの見方が分からない」「変成器付きの子メーターの期限が近い」「テナントの営業への影響を抑えて交換したい」といった段階でも、ご相談いただけます。恒電社では子メーターの交換工事を行い、交換前後の指示値を写真で記録して、取り外したメーターも一定期間保管しています。キュービクル内の計器で停電が必要な場合も、電気主任技術者の立会いを含めた段取りを事前にご相談しながら進めます。
この記事を書いた人
蕨川 真央







