【法人向け|LED照明 #4】2027年問題:蛍光灯が製造中止に―企業が今すぐ準備すべき「LED更新ロードマップ」
更新日:2025年11月26日

オフィス・工場・店舗など、全国で使われてきた一般照明用の蛍光灯。その製造・輸出入が、2027年末をもって終了します。
これは単なる照明の切り替えにとどまらず、企業の設備管理やコスト、BCP(事業継続計画)にも関わる重要な問題です。対応を後回しにすると「蛍光灯の調達難」「保守不能」「安全リスク」「ESG評価の低下」など、複数のリスクが一気に顕在化します。
本記事は、企業に求められる照明更新の考え方を体系立てて解説する連載シリーズ「法人向け|LED照明」の第4回です。蛍光灯製造禁止のスケジュールやリスクを整理し、「LED更新を成功させるための具体的ロードマップ」まで解説します。
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目次
要約
2027年問題の本質:
蛍光灯は水俣条約に基づく水銀規制により2027年末で製造・輸出入が終了し、直管・コンパクト形など多くの一般照明が入手困難になります。これにより調達難や保守不能、安定器故障の増加、火災リスク、ESG評価の低下など複数のリスクが同時に顕在化するため、企業にとって照明更新は待ったなしの経営課題となります。
放置による経営リスク:
蛍光灯を使い続けると、在庫枯渇や模倣品による品質低下、安定器の劣化、発煙・火災リスクの増加など、深刻な問題が発生します。特に高天井やビル共用部では突発故障が大きなコスト負担となるため、設備全体の運用コスト視点では先延ばしが最も高くつき、早期LED化の合理性が高まっています。
LED更新の計画が必須:
2027年に向けLED需要が急増することで納期遅延が起こり得るため、現場条件や施工スケジュールを早期に確認することが重要です。工事中の業務影響や高所作業車の搬入、温度条件への対応など事前準備が必要で、現地調査で「明るさの悩み」「眩しさ」「使用時間帯」などの利用者意見を整理することで、最適な器具選定と円滑な更新計画が実現します。
2027年の製造禁止スケジュールと背景

2027年、蛍光灯の製造が段階的に終了します。
これは単なる 「メーカーの方針転換」ではなく、国際的な環境規制(RoHS指令)や国内エネルギー政策に基づく動きです。特に、水銀灯、蛍光灯に含まれる「水銀」が大きな問題となっており、2013年に採択された水銀に関する水俣条約により、各国は水銀の使用削減・廃止に取り組んでいます。
日本国内でも、2027年末を目処に以下の蛍光灯が製造・輸出禁止の対象となります。
- 直管形蛍光灯
- コンパクト形蛍光灯
- 一部の高周波点灯型蛍光灯
つまり、オフィス・工場・店舗で一般的に使われている蛍光灯の大半が新規に入手できなくなるということです。照明業界ではこれを「2027年問題」と呼び、既に大手メーカーは、蛍光灯器具の生産縮小や終了スケジュールを順次発表しています。
蛍光灯の生産終了を発表している大手メーカーと、それぞれの期日は以下の通りです。
- パナソニック株式会社 エレクトリックワークス社:2027年9月
- 株式会社ホタルクス(旧 NECライティング製):2027年12月
- 東芝ライテック株式会社:2027年9月
対象となる照明器具の種類とリスク
主な対象機種
| 区分 | 使用場所 |
|---|---|
| 直管形蛍光灯 | オフィス、工場、学校 |
| 丸形(サークライン)蛍光灯 | 住宅、工場の休憩室 |
| コンパクト形蛍光灯 | ダウンライト、看板照明 |
| 高周波点灯専用型 | 商業施設、倉庫 |
これらをそのまま使用し続ける場合、以下のようなリスクが発生します。
- 蛍光灯の入手難:2027年以降、在庫・流通品の急減による、価格高騰の恐れ。
- 照明器具の寿命問題:安定器の故障リスク増加と、在庫切れによる修理ができない可能性。
- 安全性の低下:経年劣化による発煙・発火事故のリスクの増加。
- 企業の環境対応遅れ:CSR・ESG評価への取り組みへの影響。
また、高天井照明やビル共用部の照明など、交換工事に足場が必要な設備では、突発的な故障対応コストが高くつくため、早期のLED化が合理的です。
さらに、今回の規制で対象となるのは、単に蛍光ランプ本体だけではありません。それらを点灯させるための安定器(バラスト)も、部品供給やメンテナンスの観点で実質的にサポート対象外となります。
バラスト「ballast」とは?
蛍光灯の発光、および照明性能を安定的に持続させるために必要な装置。
放置するとどうなる?(保守・調達・安全面)
「まだ使えるから」「在庫を買っておけば大丈夫」──そう考える企業経営者様やご担当者様も少なくないかもしれません。しかし、蛍光灯を使い続けるリスクは想像以上に大きく、設備運用コスト全体で見れば「先延ばしが最も高くつく」可能性があります。
調達リスク
2028年1月以降は、新品の蛍光灯が市場から消えるため、在庫販売が中心になります。メーカーの出荷終了→販売代理店の在庫枯渇→中古・模倣品の流通、という流れは2012年の白熱灯終了時にも見られました。品質不明の模倣品を使用した結果、照明器具の故障や電源回路の焼損といった事故も報告されています。
保守リスク
蛍光灯器具に内蔵された安定器は、通常10年程度で劣化します。安定器が故障するとランプ交換では直らず、器具全体の更新が必要になります。既に部品供給が終了している器具も多く、保守対応そのものができなくなる可能性が高まっています。
安全面
蛍光灯は起動時に高電圧を発生させる構造のため、劣化すると「チラつき」「点滅」「異臭」などが発生します。そのまま使用を続けると、発熱・絶縁破壊・火災のリスクが高まるほか、作業現場では照度低下による労災リスクにもつながります。
電気工事士に聞く「今から始める照明(LED)更新計画の立て方」
解説者
インタビュアー
ーーー照明(LED)更新を検討する設備オーナー様が、今すぐ確認すべきことは何ですか?
まずはLEDへの切り替えを行う場所の条件と、工事にかかるスケジュール感をご確認いただくことが大切です。2027年末に向けて蛍光灯の調達が難しくなることが想定されますが、同時にLED照明への変更需要も高まるため、LED照明の納期も想像していた以上にかかる可能性が高いです。
実際に今(2025年11月時点)は、広く使用される「逆富士型」と呼ばれるLED照明が2ヶ月の納品待ち状態ですし、ものによっては半年近くお待たせしてしまう商品もあります。
いざ蛍光灯の不具合が発生したら、電気工事会社へ依頼して更新してもらえば良いと思っていても、LED設備が市場になく、すぐに工事を行えないという状況もあり得ます。
また、照明器具の設置箇所の真下で業務を行っている場合や、大きな荷物・機材などを設置している場合にも注意が必要です。養生を施したうえで通常どおり業務を続けられるのか、それとも一時的に場所を移して作業する必要があるのか——工事期間中の業務への影響を考慮し、場合によっては工期の調整も検討する必要があります。
電気工事会社に現地調査をしてもらい、ご依頼から実際の工事完了までどれくらいかかるかを先に知っておくことでスケジュール感をつかみやすいでしょう。
ーーー現地確認では事前にどんなことを準備しておくと役立ちますか?
照明器具の交換を希望する場所の特徴や、実際に使用している方からの意見を事前にまとめておくと、電気工事会社からの提案もスムーズに進むでしょう。
場所の特徴例:
- 天井付近が高温になりやすい工場や倉庫の場合は高温対応の機器を選定します。
- 高天井の場合は、高所作業車を使用します。搬入経路の確認や設置スペースはあるか事前に確認する必要があります。
使用している方の意見例:
- オフィスの中で特定の座席の下だけ暗くて困っている場合は、照明の増設も検討しながら器具の選定を進めます。
- まぶしすぎて目が疲れるような場合は、グレア低減タイプを使用して光源が直接視界に入らないよう工夫します。
- 日中は明るいので夜だけ自動点灯にしたい場合、明るさセンサを用いたご提案をいたします。
- 落ち着く空間にしたい場合、暖色の照明に変更することでリラックス感のある空間に変更することができます。
現地調査の際に、現場の方から出た意見や、どんな明るさにしたいかなどのイメージを事前に共有していただけますと、より想像に近い空間に近づけることができます。
施工事例|蛍光灯からLEDへの更新工事
まとめ:
2027年末に迫る蛍光灯の製造・輸出入終了は、単なる照明器具の切り替えにとどまらず、企業の設備運用・コスト・安全・ESG対応に直結する大きな転換点です。蛍光灯の調達難や安定器故障の増加、火災リスクなど、放置すればするほど企業が受ける負担は大きくなり、突発対応や設備停止によるロスも避けられません。
一方で、LED更新を早期に計画すれば、省エネ効果によるコスト削減、保守負荷の軽減、作業環境の改善など、多くのメリットを享受できます。現場の利用状況や課題を事前に整理し、余裕を持ったスケジュールで進めることが、2027年問題をチャンスに変える鍵となります。
蛍光灯依存からの脱却は、これからの企業に求められる「安全・省エネ・環境配慮」を同時に高める重要な投資です。早い段階から準備を進め、持続可能な照明環境への移行を計画的に進めていきましょう。まずはお気軽にご相談ください。
本記事は、連載シリーズ「法人向け|LED照明」の第4回として、蛍光灯の製造中止に向けた具体的な準備事項を整理しました。第5回では、LED化と点灯制御を組み合わせた省エネ戦略について解説します。
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