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「ナフサショック」が及ぼす電気工事業界への影響|高圧設備オーナーが今すぐ知るべき工事のリードタイムと法定期限

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コラム

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#PCB, #電気の基礎知識, #高圧ケーブル
投稿日:2026年5月28日
更新日:2026年6月1日

「設備更新を実施したいのに、高圧ケーブルが手に入らず、工事ができない」――今、そんな事態が現実のものになりつつあります。

中東情勢の緊迫を背景とした「ナフサ価格の高騰」による、住宅建材への影響は、新聞各社でも「建築資材メーカーに受注制限の動き」などと報じられており、工期の大幅な遅延が現実的なリスクとして浮上してきました。

その影響は今、住宅だけでなく電気工事業、特に高圧ケーブルの供給にも直撃しています。

この記事では、設備オーナー様が今すぐ把握しておくべき「最新の工事リードタイム」と、見落としがちな「法定期限」の重なりについて詳しく解説します。

要約

ナフサ高騰による高圧ケーブルの深刻な受注制限の動き
中東情勢の緊迫化に伴うナフサ価格の急騰は、高圧ケーブルの絶縁体に欠かせない石化製品の調達を困難にしています。すでに電線メーカー各社では受注制限や新規受注停止の動きが出ており、業界紙でも納期遅延のリスクが大きく報じられています。「住宅建材だけの問題」と楽観視せず、電気設備の主要部材であるケーブルが手に入らないという事態を、設備オーナーは喫緊の課題として捉える必要があります。

通常3〜6ヶ月の工期が1年超になる可能性あり
高圧電気設備の更新工事は、通常であれば業者選定から完工まで半年程度ですが、現在は資材確保の工程が大きなボトルネックとなっています。資材の発注から納品までに半年以上の時間を要したり、最悪の場合は納期回答すら得られないケースも珍しくありません。来春の完工を目指すなら今夏には動き出す必要があり、早急な意思決定と発注を行わなければ、事業計画に大きな狂いが生じるリスクが高まっています。

PCB処理期限と資材不足が重なることによる懸念点
2027年3月末には「低濃度PCB含有電気機器」の法定処理期限が控えていますが、この期限と現在の資材不足が重なっている点が極めて危険です。PCB機器の処分には代替設備の設置が不可欠ですが、資材調達が間に合わなければ法定期限を過ぎてしまう恐れがあります。「まだ動いているから大丈夫」と更新を先送りにすることは、法令違反や保安上のリスクを積み上げることに他ならず、今すぐ専門業者へ相談すべき段階と言えます。

ナフサ高が高圧ケーブルに波及するまでの構造

そもそも「ナフサ」とは、原油を精製する過程で得られる石油化学製品の基礎原料です。プラスチック、合成ゴム、合成繊維など、現代の製造業を支える多くの素材が、このナフサを起点に作られています。

2026年春、中東情勢の緊迫化によるホルムズ海峡の封鎖懸念などから、ナフサ価格は急騰しました。この影響は、日本経済新聞などでも報じられている住宅建材への影響に留まらず、高圧電気設備の現場にも波及しています。

なぜケーブルが不足するのか

高圧ケーブルには「絶縁体」が不可欠ですが、これには架橋ポリエチレンや塩化ビニル(PVC)が使用されています。これらはいずれもナフサ由来の石化製品です。そのため、原料調達が困難になると、ケーブル自体の生産・供給が停滞してしまうのです。

大手メディアで主に取り扱われるのは、マンションや住宅建材の話題ですが、実は高圧ケーブルを伴う受変電設備の更新・新設工事も、確実にこの影響下にあります。

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「発注してから完工まで」のリアルなリードタイム

高圧電気設備の工事は、施工会社への依頼後すぐに着工できるものではありません。

通常時でも、業者選定から完工まで3〜6ヶ月程度を要します。これは、設備の設計・申請・資材調達・施工の各工程がそれぞれ一定の期間を必要とするためです。

【高圧ケーブル更新工事の手順】結局、お客様は何をすれば良いのか?[東京電力管内]

お問い合わせから現地調査、見積もり比較、業者選定に始まり、部材手配や電力会社・警察・消防等への各種申請、工事日の調整など、さまざまなステークホルダーと多くの調整が必要となる高圧電気設備工事。

現在、深刻になっているのは資材調達の工程です。通常1〜2ヶ月で調達できていた高圧ケーブルが、現在は納期回答すら出ないケースも生じています。ケーブルが揃わなければ当然着工できません。「業者は決まっていても、資材待ちで工程全体が止まる」という事態が、あちこちで起きているのが実情です。

法定更新期限・PCB処理期限との「重なり」に注意

資材不足で工期が読めない今、さらに問題を複雑にしているのが、「法的な期限」の存在です。設備の更新は、任意のタイミングで動けるケースばかりではありません。

受変電設備の維持・更新義務

電気事業法および電気設備に関する技術基準省令に基づき、設備オーナー様には受変電設備を適切な状態に維持する義務があります。

キュービクル(高圧受電設備)は一般的に、法定耐用年数が15年、実用上の更新推奨時期は20〜25年とされています。老朽化した設備をそのまま使い続けることは、停電などの保安リスクだけでなく、電力会社や行政への法的な責任問題にも直結します。

「まだ動いているから大丈夫」という判断は今や通用しません。深刻な資材不足が続く現状では、更新を先送りにするほど、「いざという時に直せない」という致命的なリスクを積み上げることになります。

PCB含有電気機器の処理期限

もう一つ、非常に重要な期限があります。「PCB廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(PCB特別措置法)」に基づき、低濃度PCB含有電気機器の処理期限は2027年3月31日と定められています。

かつてトランスやコンデンサの絶縁油として広く使われていたPCBは、昭和40〜50年代(1965〜1980年頃)に設置された受変電設備に残存している可能性があります。期限内に適切な処分を行わなかった場合、改善命令や罰則の対象となります。

問題は、この「2027年3月末」という期限と、現在の高圧ケーブルを中心とした資材調達難が重なっている点です。

本来、PCB含有機器の撤去・処分は、新しい受変電設備への更新工事とあわせて実施されるケースが一般的です。しかし現在は、高圧ケーブルの納期長期化によって、設備更新全体のスケジュールが読みにくくなっています。

そのため現場では、「更新工事を一括で行う」のではなく、「PCB含有機器の調査・処分を先行する」「ケーブル未納部分を後施工に切り分ける」ような工程調整が必要になるケースも出始めています。

特にPCB処理期限は法定期限であるため、「設備更新が間に合わないからPCBも後回しにする」という判断はできません。まずは自社設備のPCB含有有無と、現在の設備更新計画を早急に整理することが重要です。

「自社の設備内にPCB含有機器があるかどうか分からない」というオーナー様も多いかと思いますが、まずはその確認から動き始めることが先決です。

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設備オーナーが今すぐ確認すべき3つのこと

現状の資材不足と法定期限の重なりを踏まえ、まずは以下の3点を確認してください。

①自社設備の「最終更新時期・次回更新予定」を把握しているか
設備台帳や竣工図書を確認し、キュービクル・変圧器・高圧ケーブルの設置年月を把握してください。もし設置から20年以上が経過している設備は、更新の検討を始める時期に入っています。

②PCB含有機器の有無と2027年3月末の期限を認識しているか
昭和40〜50年代(1965〜1980年頃)に設置された設備には、PCB含有の可能性があります。銘板・試験成績書の確認や、専門業者による調査を急いでください。

③工事業者への初回相談を「いつまでにするか」を決めているか
「いつかやらなければ」と先延ばしにするのが最も危険です。現状の納期遅延を踏まえ、逆算して今月中に初回相談を行う、といった具体的なスケジュールを立てましょう。

まとめ

現在の状況をまとめると、以下の通りです。

  • ナフサ高騰により、高圧ケーブルの受注制限や納期遅延が業界紙で相次いで報じられており、住宅建材だけでなく、電気設備工事にも確実に波及している。
  • 通常3〜6ヶ月かかる工事のリードタイムが、現在は最短でも半年、長ければ1年超に延びる恐れがある。
  • 2027年3月末のPCB処理期限が迫っており、資材調達難と重なることで「期限内の更新」が困難になるリスクがある。

「いつかやろう」と思っていた設備更新は、今や「今すぐ動かなければ間に合わない」フェーズに入っています。まずは現状の設備確認と、専門業者への早めのご相談を強くお勧めいたします。

恒電社では、受変電設備の更新からPCB含有機器の調査、工事完工まで、一貫してサポートしています。「自社の設備は大丈夫か?」「まず何から確認すれば良いか?」といったご不安も、ぜひお気軽にお聞かせください。


記事を書いた人

岩見 啓明
第二種電気工事士/二等無人航空機操縦士

岩見 啓明

前職はWebメディアの編集者。恒電社に参画後はマーケティングに従事し、現在は採用全般も担当している。2023年に二等無人航空機操縦士(ドローン)資格、2024年に第二種電気工事士資格を取得。プロフィールはこちら

【参考・出典】
・産業新聞(日刊産業新聞)2026年4月7日付「海峡封鎖で副資材調達難、電線メーカー受注制限の動きも」
・日刊工業新聞「電線ケーブル、新規受注停止続く 工業会「納期に余裕のある発注を」」
・PCB廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(PCB特別措置法)
・電気事業法・電気設備に関する技術基準を定める省令

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