【オフィスビル向け|LED照明 #7】照明更新のベストタイミングとは?
更新日:2025年11月26日

企業のオフィスにおける照明は、ものの見え方だけでなく、働く人の快適性や生産性に直結します。また建物のオーナーにとっては、テナント満足度や運営コストにも関わる大きな要素です。
蛍光灯など既存設備の点灯不良やちらつき、安定器の不具合といった“更新サイン”が出始めたら、場当たり的な修理よりも、計画的な照明更新を検討する好機です。
本記事は、施設ごとに適したLED更新の考え方を解説する連載シリーズ「法人向け|LED照明」の第7回です。更新の最適なタイミングを見極める視点と、照明のLED化によるコスト・運用・環境面のメリットを、実務の進め方とともに分かりやすく解説します。
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目次
要約
更新のサインを見逃さない:
オフィス照明は視認性だけでなく、生産性・快適性・テナント満足度にも影響するため、点灯不良・ちらつき・安定器の異音や過熱・照度ムラなどの不具合が増えてきたら更新のサインと捉える必要があります。蛍光灯は今後ますます調達が難しくなるため、場当たり的な修理を続けるより、LEDへの一括更新に切り替えることで総コストの削減と運用の手離れが大きく改善します。
更新タイミングを判断する3つの視点:
照明更新は「設備寿命×保守コスト」「テナント満足度・内装改装との整合」「電気料金・制度・蛍光灯規制動向」の3点から判断することが重要です。特に安定器の寿命を迎える10年前後では不具合や修理頻度が増え、LED化することで保守負荷を大幅に軽減できます。さらに、内装リニューアルのタイミングでは照度や色温度を見直す絶好の機会となり、ESG対応や調達リスクの回避にもつながります。
LED化がもたらす確実なコスト削減効果:
LEDへの更新は電気代を削減するほかにも、長寿命によりランプ交換や安定器交換の手間が減り、間接コストや突発対応も大幅に抑制できます。共用部など長時間点灯エリアから優先導入すれば効果が早期に可視化され、ビル運営における固定費改善を強力に後押しします。
更新成功の鍵は一貫した設計・施工体制:
LED更新は単独工事で完結することが多いものの、天井張替えなど内装工事と併せて行うことでレイアウト一新や施工効率化が図れます。成功には、現地調査・照度計測による課題の見える化、目的に沿った配灯計画と器具選定、施工・運用までの一貫対応が欠かせません。
オフィスビルの照明更新のタイミング
オフィスビルの照明更新のタイミングについて、まず意識したいのは、日々の不具合や手間が「更新のサイン」になっていることです。
点灯不良やちらつき、起動遅れが目立ち始めた、安定器の異音・過熱、器具カバーの黄変や破損、フロア内の照度にムラがあるなど、気になる不具合が増えてきたら、個別修理の積み重ねよりも、計画的な全体更新に舵を切る時期かもしれません。設置から8〜10年を超える器具、修繕履歴が年々増えているフロアは、特に要注意です。
また、蛍光灯は今後ますます調達が難しくなります。部材の在庫確保や互換性の不安を抱えたまま部分交換を続けるより、器具一体をLED照明へ一括更新した方が、中長期的スパンで見た総保有コスト(電力・消耗品・作業費・停止時間)を抑えやすく、運用の手離れも良くなります。
また、施工を行う際はテナント稼働への影響を抑えるため、夜間・休日にゾーン単位で計画するとスムーズです。
ビルオーナーが照明更新の最適なタイミングを判断する3つの視点
① 設備寿命 × 保守コストのバランス
照明設備の修理頻度が増えている、安定器の不良が散見される、清掃やランプ交換の手配に手間がかかる–––こうした兆候が重なるほど、更新効果は大きくなります。
蛍光灯の安定器の交換目安である10年前後を境に、個別修理から更新計画へ切り替えると、以後の保守作業や高所作業の発生を大幅に抑制できます。LED器具は長寿命のため、突発対応が減り、現場担当者の負荷やテナントとの調整回数も減らせます。
② テナント満足度・内装リニューアルとの整合
内装の改装やレイアウト変更のタイミングは、照度や配光、色温度を見直す好機です。執務・会議・来客などエリアごとの用途に合わせて照明設計を最適化し、必要に応じて調光・調色やシーン制御を取り入れれば、見た目の印象だけでなく、テナントの生産性や快適性の向上にも寄与します。
結果として入居希望者の増加(リーシング力の強化)や、入居更新率の改善につながる可能性があります。
③ 電気料金高騰・蛍光灯規制スケジュールへの対応
電気料金の先行きが不透明な中、LED化は導入直後から確実に効果が現れる「固定費対策」です。また、省エネ法対応やESG開示を意識するオーナーにとっても、照明の効率化は説明しやすい投資といえるでしょう。
蛍光灯の製造・流通が段階的に縮小していくスケジュールも見据え、在庫逼迫や価格上昇が本格化する前に着手しておくと、調達リスクを抑えられます。
電気工事士に聞く、照明(LED)設備の更新時に検討すべきポイント
解説者
インタビュアー
ーーーLED更新工事を依頼する際、同時に検討すべき工事はありますか?
前提として、LED照明の更新工事は、特別な手続きや外部機関との調整を必要とせず、電気工事会社とお客様の間だけで完結する工事です。高圧受変電設備(キュービクルやPASなど)のように、主任技術者の選任や点検、電力会社との調整が必要になるケースはほとんどありません。
既設の照明器具を取り外し、新しいLED器具に取り替えるだけであれば、建物の電気系統に大きな変更がないため、該当箇所のブレーカーを切るだけで施工できるのが特徴です。
例外的に、天井の張替えを予定しているなら、同時に行っても良いでしょう。
ーーーそれはなぜですか?
照明の変更と同時に内装リニューアルもできて、工事が効率的だからです。
多くのオフィスでは、照明の電源線が天井裏(天井ボードの上)を通って器具へ接続されています。つまり、照明を交換する際には、天井裏の配線ルートや固定金具にもアクセスする必要があるのです。
通常、照明更新だけを先に行い、数年後に天井を張り替える場合、再び照明器具を外してから天井を開口する必要が出てきます。これでは二重の足場・手間・コストが発生します。
一方で、照明更新と同時に天井リニューアルを行えば、天井材を剥がした状態で配線や器具の位置変更が容易ですし、以下のようなメリットもあります。
- 照明レイアウトを一新でき、デザイン性・明るさを最適化できる。
- 高所作業をまとめて完了でき、テナントの休業期間を最短化できる。
ーーー天井を張り替えずに照明器具のみを交換した場合、設置跡が残るのも気になるポイントです。
そうですね。5〜10年に渡って設置していた場合、どうしても天井の色は変色している可能性が高いです。
天井の色を途中で変えている場合は、照明器具の設置箇所だけ前の状態のままですので、気になる場合は天井の塗り替え・張り替えをおすすめします。
施工事例|オフィス向けLEDリニューアル
まとめ:
オフィスビルの照明更新は、器具が故障してからの場当たり的な対応ではなく、寿命・保守コスト・テナント満足度・制度動向をふまえた計画的な固定費削減の手立てです。
点灯不良やちらつきなどの不具合が増え始めたら更新のサインですが、内装リニューアルやレイアウト変更の節目に合わせ、必要照度・配光・色温度、そして調光・調色やシーン制御の活用まで見直すと、見た目の刷新だけでなく生産性や快適性、リーシング力の向上にもつながります。
また運用面では、夜間・休日のゾーン分割施工でテナント稼働への影響を最小化しつつ、共用部など長時間点灯エリアから優先着手すると効果が早く可視化できます。ビルの特性とテナントニーズに合わせて最適解を設計することで、コスト・快適性・環境価値を同時に高める投資になります。
本記事は、連載シリーズ「法人向け|LED照明」の第7回として、オフィスビルの照明更新計画に必要な判断基準を紹介しました。最終回となる第8回では、店舗におけるLED化のメリット・デメリットを解説します。
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