【PCBとは? #5】PCB含有製品処理のコストと補助制度|費用を抑える現実的対策
更新日:2025年12月2日

PCB(ポリ塩化ビフェニル)を含む機器の処理は、単なる廃棄ではなく「法的義務に基づく特別管理産業廃棄物処理」です。
そのため、一般的な産廃処理よりも高額になりやすく、いくらかかるのか不明確な点が、処理の判断を先送りしてしまう要因の一つになっています。
本記事は、PCB対策の全体像を段階的に学ぶ連載シリーズ「PCBとは?」の第5回です。今回は、実際の処理費用の相場感や、専門家に聞く「見積もりを取得する際の注意点」をお伝えします。
▼関連記事はこちら
目次
要約
総額を早期に可視化:
PCB含有製品の処理費用は、分析・運搬・処理の3要素で構成されるため総額が不透明になりがちです。早期に現地調査と分析を行い、総額見積を取得することで費用判断が容易になり、対応の先送りによる追加コストの発生を防ぐことにつながります。
補助制度の活用が重要:
国や自治体には分析費補助など、中小企業の負担軽減を目的とした支援策があります。申請要件や期限があるため情報収集を早めに行い、適用できる制度を的確に利用することで、総費用を現実的な範囲に抑えることが可能です。
見積の内訳確認が必須:
PCB処理は項目が多いため、見積書の記載が「一式」で示されると妥当性評価が困難になります。重量や絶縁油量など、算定根拠が数値で明示されているかを確認し、追加費用のリスクを減らすことが、効率的で安心な処理につながります。
処理費用の相場感
高濃度PCB廃棄物(絶縁油中濃度が5,000mg/kg超)の処理期限はすでに終了しております。ここでは、低濃度PCB廃棄物の場合について解説します。
低濃度PCB(絶縁油中濃度が5,000mg/kg以下)は、許可を受けた民間処理業者によって処理されます。対象は、比較的新しいトランス・コンデンサ・機械制御盤などです。
- トランス(変圧器):1台あたり 40〜80万円程度
- 高圧進相コンデンサ:1基あたり 10〜30万円程度
- 油入機器(低圧コンデンサの設置された分電盤・制御盤):1基あたり 10〜50万円程度
分析・運搬・工事にかかる費用は別途加算されるため、最終的な総額は電気工事会社や運搬会社へ確認が必要です。
費用構成(分析費/運搬費/処理費)
PCB廃棄にかかる費用は、単に“処理費”だけではありません。大まかに以下の3つの項目で構成されます。
(1)分析費
PCB濃度を確認するための分析です。ラベルや製造番号だけでPCB含有の有無を判断できない場合、絶縁油を採取し、専門機関に依頼して分析を行います。
- 費用目安:1試料あたり 2〜5万円程度
- 所要期間:採取〜結果通知まで 1〜2週間程度
- 留意点:一部自治体では分析費用の補助金制度あり(後述)
分析結果によって「高濃度/低濃度/不検出」が確定し、処理ルートと費用が変わります。
(2)運搬費
PCB含有機器は“特別管理産業廃棄物”として、許可を受けた運搬業者が、専用車両・密閉容器で輸送する必要があります。
- 費用目安:1回あたり 5〜30万円前後(数量・距離による)
- 留意点:
- JESCOや民間処理業者は「搬入先の指定」があり、そこまでの距離が費用に直結します。
- 更新や撤去の工事費用は別途発生する場合があります。
(3)処理費
PCBの処理にかかる費用は、機器の種類・重量・PCB濃度によって大きく異なります。民間委託の場合、処理単価だけでなく容器費・手続き代行費・証明書発行費なども加算されるため、「総額見積」で比較することが重要です。
- 費用目安(平均値):
- 低濃度PCBトランス:約60万円前後/台
- 安定器・小型機器:数量単位で数千円〜
国・自治体の補助金・支援策紹介
PCB廃棄は環境保全のための「社会的義務」であり、国や自治体も中小企業への費用負担軽減策を実施しています。いずれも対象や補助率、申請方法については、公式のホームページなどをご確認ください。
環境省:PCB廃棄物処理等に係る支援制度
埼玉県:PCB廃棄物の取扱いについて
電気工事士に聞く、見積もりを取得する際の注意点
解説者
インタビュアー
ーーーPCB含有製品を処理したい場合、設備オーナー様はどこへ見積もりを依頼すべきでしょうか?
結論から言うと、分析費用は「分析を行う業者」へ、運搬費用・処理費用は「運搬業者」を通して依頼するのが一般的です。
まず分析費についてですが、恒電社でも採油から専門機関への分析依頼まで一括で対応可能です。電気工事会社がこの分析を代行する場合、通常はトランス更新などの関連工事の見積もりに含まれる形となります。
一方で、自社で直接依頼する場合は、現地調査から採油・分析までを一貫して行う専門業者へ見積もりを依頼します。
次に、運搬費用と処理費用については、いずれも運搬業者および処理業者への委託に伴って発生するものです。基本的には、設備オーナー様が運搬業者と契約を締結します。その上で、運搬業者が処理業者の費用を含めた一括見積書を作成・提出する流れとなります。
ーーーお客様が見積もりを取得するうえで、注意して見るべき点や、比較したほうが良い点は何ですか?
「内訳の明確さ」と「算定根拠の有無」が重要な確認ポイントです。
理由として、PCBが関係する見積もりでは、費用項目が多岐にわたるため、内容が「一式〇〇円」といった形でまとめられている場合、後から詳細が不明瞭になりやすいからです。このような見積もりは、追加費用の発生や誤解のもとになる可能性があります。
具体的には、運搬費や処理費は、絶縁油の量(L)や機器の重量(kg)に基づいて算出されるのが一般的です。したがって、これらの根拠が数値で明示されているかどうかを確認することで、費用の妥当性を判断しやすくなります。
▼関連記事を読む

施工事例
まとめ:
PCB含有製品の処理は、分析・運搬・処理といった複数の費用が重なるため、総額が分かりにくい点が最大のハードルです。しかし、早期に現地調査や分析を行い、総額見積を可視化するだけで費用判断が一気にしやすくなります。
また、自治体の分析費補助など、費用負担を軽減できる制度も利用可能です。見積取得時には、内訳の明確さや算定根拠の有無を確認することで、追加費用や誤解を防げます。
PCB処理は「対応の先送りほど選択肢が減り、コストが上がりやすい」分野です。まずは情報を整理し、早めに動くことが最終的なコストを抑える最も現実的な対策です。恒電社では、分析から処理工程の見積取得まで一貫してサポート可能です。次の一歩が必要な際は、ぜひお気軽にご相談ください。
本記事は、連載シリーズ「PCBとは?」の第5回として、コストと活用できる補助制度をまとめました。次回の第6回では、実際の事例を通じて、より具体的な対応イメージをつかめる内容をお届けします。
関連記事を読む
記事を書いた人






