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キュービクル|「VCTとは?」設備オーナーが知っておくべき基礎知識

投稿日:2025年10月21日
更新日:2025年10月21日

ビルや工場で欠かせないキュービクル(キュービクル式高圧受電設備)。金属製の箱の内部には、電気を安全かつ正確に利用するためのさまざまな機器が設置されています。

そのなかでも、特別な存在であり、重要な役割を果たすのが「VCT(電力メーター用変換装置)」です。この記事では、VCTの基本的な仕組みと役割を分かりやすく解説します。

  • 「キュービクルとは?」についてはこちらの記事をご覧ください。
  • 「キュービクルの価格」についてはこちらの記事をご覧ください。

要約

VCTの基本機能と設置目的:
VCT(Voltage Current Transformer/電力需給用計器用変成器)は、高圧で受電した電気を計測可能な値に変換する装置で、電力量計に安全かつ正確に電圧・電流データを送る役割を担います。設置場所はキュービクル内部または電柱上で、いずれも「高圧を直接扱わず正確な計測を行う」ことが目的です。

所有と管理の区分:
VCTおよび電力量計は、キュービクル内に設置されていても電力会社の所有物であり、需要家や工事会社の資産ではありません。キュービクル本体(筐体・母線・遮断器・トランス等)は需要家所有ですが、VCT部分は計測制度の信頼性維持のため、電力会社が管理・保守を行います。そのため、キュービクル内部には「所有者が異なる機器」が混在しており、管理権限が明確に分かれています。

工事・保守における役割分担:
キュービクルの新設・更新・撤去工事では、VCT部分には工事会社は手を触れず、交換や点検は電力会社または委託業者が担当します。また、VCTや電力量計は「特別検定対象機器」として計量法の管理下にあり、電力会社が5年ごとの定期検査・交換を実施します。需要家や施工業者による独自のメンテナンスは行われません。

VCTとは?

VCTとは「Voltage Current Transformer(電力需給用計器用変成器)」の略称で、電圧や電流を計測しやすい値に変換する装置です。

施設では高圧電力(6,600Vなど)が受電されますが、そのままの大きな電圧・電流を直接電力量計(メーター)で測ることはできません。そこでVCTを介して 電力を「計測可能な範囲まで縮小」 し、正確な電力量を測定できるようにしています。

VCTの設置場所

VCTは以下の場所に設置されます。いずれも「高圧を直接扱わずに正確な計測を実現する」 という点が共通の目的です。

  • キュービクル(高圧受電設備)内:受電した高圧電力を低圧に変換する機器とともに設置され、電力量計と接続して計測を行います。
  • 電柱上:特に小規模事業所や外部受電方式の場合、電柱に取り付けられたVCTを通じて計測するケースもあります。

VCTが果たす役割

VCTの主な役割は以下のとおりです。

  1. 電力使用量の正確な計測:電力量計に入力できる大きさまで変換し、契約電力や請求の基礎となる「正しい数値」を算出します。
  2. 電力品質の把握:施設の負荷状況や電力消費パターンを知ることで、効率的な電力運用が可能になります。

また、高圧電力をそのまま計測するのは危険かつ非効率なため、計測機器を保護する安全性の観点からも重要な役割を果たします。

VCTは誰のもの?|電気工事士に聞く、所有と管理の考え方

監修

高橋宏武
第一種電気工事士/一級電気施工管理技士

高橋宏武

大学卒業後、恒電社に入社したプロパー社員。電気工事士として、住宅の電気工事に加え、法人向けの高圧電気設備工事の直接提案を開始するなど、現在の会社の礎を創ってきたメンバー。2020年からは事業部長として、エンジニアリング事業部を統括している。

インタビュアー

岩見啓明
第二種電気工事士/二等無人航空機操縦士

岩見啓明

恒電社にて動画、記事、広報、企画、セミナー運営、デジタル広告と幅広く施策を担当。個人では登録者数1万人超えのYouTubeチャンネルを運用した経験の他、SDGsの啓蒙活動で国連に表彰された経歴を持つ。2023年に二等無人航空機操縦士(ドローンの国家資格)、2025年に第二種電気工事士資格を取得。

ーーーVCTがキュービクル内に設置されている場合の所有者や管理者の考え方について教えてください。

まず大前提として、設置場所がキュービクル内であれ電柱の上であれ、VCTは需要家(ビルや工場の所有者)や電気工事会社のものではなく、電力会社(東京電力など)の所有物です。

VCTは、電力量を正確に測定するために「高圧の電圧・電流を計測可能なレベルまで変換する」機能を持ち、その測定値をもとに電力会社がお客様に請求を行う仕組みになっています。したがって、計測制度の信頼性確保の観点からも、VCTおよび電力量計は電力会社が管理・保守することが義務付けられています。

つまり、以下のように、1つの設備内に所有者が混在している状態になります。

  • キュービクルそのもの(筐体・母線・遮断器・トランス等)は需要家の所有物
  • その内部に組み込まれているVCTおよび電力量計は電力会社の所有物

ーーーそれでは、キュービクルの新設・更新・撤去工事の際には、どのように作業を進めるのでしょうか?

電気工事会社がキュービクル更新や改修を行う際には、VCT部分には原則として手を触れません。VCTの交換・点検・検定などは、電力会社またはその委託業者が行うためです。

恒電社のような工事会社が対応する範囲はあくまで以下の通りです。

項目所有者工事会社の対応可否
受電設備全般(キュービクル・PAS・トランスなど)需要家○(施工可能)
VCT本体・電力量計電力会社×(施工不可)
停電・開放操作電力会社×(立会い・確認)

そのため、キュービクルを更新する際は、電力会社側でVCTを一時撤去 → 工事会社が更新工事 → 再度電力会社が復旧・接続という流れで進められるのが通常です。

ーーーVCTや電力量計のメンテナンスなど、管理は誰が行うのでしょうか?

VCTや電力量計は、計量法に基づく「特別検定対象機器」に分類され、定期的な検査・交換(通常5年ごと)を電力会社が計画的に実施します。工事会社や需要家が独自にメンテナンスすることはありません。

施工事例

まとめ

  • 高圧電力を安全・正確に計測する装置
    VCTは高圧で受電した電力を電力量計で計測可能な範囲に変換し、正確な使用量データを提供する装置です。計測機器を高圧から隔離し、安全かつ制度的に信頼できる電力計測を実現します。
  • 所有・管理は電力会社が担う
    VCTおよび電力量計は、設置場所がキュービクル内でも電力会社(例:東京電力)の所有物であり、需要家や施工業者が勝手に扱うことはできません。電力量の正確な計測を担保するため、法的にも電力会社の管理下に置かれています。
  • 工事や保守の際は明確な役割分担が必要
    キュービクルの更新・撤去時、VCTの扱いは電力会社が実施し、工事会社は受電設備本体の施工を担当します。また、VCTは計量法上の「特別検定対象機器」であり、5年ごとに電力会社が定期検査・交換を行います。

VCTは電力計測の根幹を支える装置であり、その所有・管理・作業範囲を正しく理解することが、キュービクル工事の安全性と信頼性を確保する第一歩です。

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この記事を書いた人

蕨川真央

蕨川真央

教育分野でキャリアをスタートし、妊娠・出産を経験しながら複数の業界で人事関連業務に携わる。 現在は恒電社にて、採用およびマーケティングのアシスタントとして、事務業務からコンテンツ制作まで幅広く担当している。

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