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【ビルオーナー様向け】電気設備リニューアル計画の立て方|築30年超のビルが直面するリスクと工事の進め方

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コラム

築30年を超えたビルやマンションを所有・管理していると、避けては通れないのが設備更新。特に高圧電気設備の更新は、営業活動や日常生活にも直結する問題のためビル運営にとって重要な要素の一つです。

一方で、劣化具合や更新対象については専門的な知識が必要な部分も多く「電気設備の更新時期がそろそろなはず…」とは知りつつも、「いつ、何から動けば良いか」が具体的に分からないまま時間が過ぎてるオーナー様も少なくないかもしれません。

この記事では、「建物種別 電気設備更新計画」シリーズの一つとして、ビルにおける電気設備更新の計画の立て方と、築年数が経過したビルのオーナー様が知っておくべきリスクについて、現場の視点から詳しく解説します。

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要約

老朽化のリスク把握
築30年を超えたビルの電気設備は、多くの場合で更新推奨時期の20〜25年を大幅に過ぎており、深刻なトラブルの種を抱えています。絶縁劣化による「波及事故」は、自社ビルだけでなく近隣一帯を停電させ多額の損害賠償を招く恐れがあるほか、旧式モデルの部品生産終了により、故障時に数ヶ月復旧できない致命的な事態も起こり得ます。見た目に変化がなくても、内部では確実に法令違反や資産価値低下のリスクが進行していることを認識する必要があります。

計画的な更新の進め方
リニューアルを成功させる鍵は、現状把握と余裕を持ったスケジュール管理にあります。受変電設備であるキュービクルは受注生産品のため、発注から納品まで半年以上を要することも珍しくありません。また、稼働中のビルでは「いかに停電時間を短縮するか」が重要となるため、仮設電源の活用や深夜・休日施工など、テナントへの影響を最小化する手法を工事会社と早期に協議すべきです。「壊れてからの緊急対応」は高額かつ困難を極めるため、事前の現地調査が不可欠です。

築30年超のビル|電気設備に潜むリスクとは

老朽化した受変電設備・配線・照明などの電気系統は、計画的に新しい設備に更新することが必要です。

しかしながら、劣化が目に見えるために修繕計画を立てやすいビルの外壁や内装と比べ、電気設備は設備室の中や壁の内側に隠れているため、「現状動いているから問題ない」と判断されがちなのも事実です。

高圧受電設備(キュービクル)の推奨更新年数は、一般社団法人日本電気協会の指針で20〜25年とされています。築30年を超えたビルでは、この推奨年数を大幅に超えた設備が稼働し続けているケースが少なくありません。そのまま放置することで、以下の3つのリスクが伴います。

停電・波及事故のリスク

絶縁体が経年劣化すると、短絡事故(ショート)や地絡(漏電)が発生しやすくなります。最悪の場合、自社設備の事故が電力会社の系統や近隣施設にまで影響を及ぼす「波及事故」に発展しかねません。波及事故を引き起こすと、復旧工事の費用負担だけでなく、周辺施設への損害賠償が生じる可能性もあります。

保守部品の調達が困難

製造から20年以上が経過した機器は、メーカーのサポートが終了し、補修部品の供給が打ち切られている場合があります。故障しても修理ができず、緊急工事を余儀なくされる事態は現場でも珍しくありません。緊急対応は通常の工事費よりも費用が高くなるうえ、工期が読めなくなるというデメリットもあります。

法令上のリスク

電気事業法第42条では、自家用電気工作物(高圧受電設備など)の設置者に対し、保安規程の遵守を義務付けています。設備の劣化が著しく、電気設備に関する技術基準を定める省令(電技省令)が求める技術基準を満たせない状態での使用継続は、コンプライアンス上の大きなリスクとなります。

「そろそろ限界」を示すサインを見逃さない

設備の寿命が近付いているサインは、日常の管理業務の中に現れます。以下のような兆候がないか確認してみてください。

  • ブレーカーが頻繁にトリップする:過電流保護機器の動作特性変化や、設備容量が現在の電気負荷に追いついていない可能性があります。
  • 設備室から異音・異臭がする:変圧器(トランス)やコンデンサからの唸り音、焦げたような匂いは、内部異常の可能性があります。
  • 定期点検の報告書に「要注意」が続いている:電気主任技術者や点検業者から「経年劣化」「要監視」という指摘が複数回出ているなら、早急な対応フェーズに入っていると判断してよいでしょう。
  • 増設・改修のたびに対応が複雑になっている:既存設備の容量や構成が現在の使用実態に合わず、場当たり的な対応が増えている場合は、根本的な見直しの時期だといえます。

1つのサインだけであれば様子を見ることも選択肢に入りますが、複数が重なっている場合は、まず専門家による現地調査をご検討ください。

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リニューアル計画の進め方|現地調査から工事完了までのフェーズ

電気設備のリニューアルは、大きく以下の4つのフェーズで進行します。

  • フェーズ1:現地調査・設備の状況確認
    工事会社が現地を訪れ、既存設備の年式・状態・仕様を確認します。「年次点検報告書」や「設備図面(単線結線図など)」をご用意いただけると調査がスムーズです。
  • フェーズ2:更新計画・見積もりの策定
    調査結果をもとに、「全体交換」か「部分更新」か、優先順位を工事会社と協議します。テナント側の停電許容時間、建物の運用スケジュール、予算規模を具体的に共有することで、実態に即した計画が策定できます。
  • フェーズ3:発注・機器製作・着工準備
    高圧受電設備(キュービクル)は受注生産が基本です。発注から納品まで数カ月、時期や仕様によっては1年程度かかるケースもあります。余裕を持った早めの発注が、計画変更のリスクを最小化します。
  • フェーズ4:工事・試験・引き渡し
    停電を伴う工事の場合、テナントや入居者との事前調整が不可欠です。工事後は試験運転、電気主任技術者への報告、使用前自主検査を経て引き渡しとなります。法定の手続きは省略できないため、スケジュールには必ず組み込む必要があります。

テナント・入居者への影響をどう最小化するか

稼働中のビルで最も調整が難しいのが「停電時間の確保」です。影響を抑えるための主なアプローチをご紹介します。

  • 深夜・休日施工:営業時間外に集中して工事を実施します。割増料金は発生しますが、自社やテナントの営業への影響を最小限に抑えられるメリットがあります。
  • 段階的施工:工事を数回に分け、1回あたりの停電時間を短く設定します。全体の工期は長くなりますが、テナントの負担を分散可能です。
  • 仮設電源の活用:追加費用は発生しますが、仮設電源を用いて電力を供給しながら施工することで、停電時間を大幅に短縮できます。

最適なアプローチは、設備の状態・テナントの業種・予算規模によって異なります。工事会社と早い段階から詳細を詰めることが、トラブル防止への近道です。

電気工事士に聞く、経年が進んだビルにおける電気工事の現場

解説者

高橋 宏武
一級電気施工管理技士/第一種電気工事士

高橋 宏武

大学卒業後、恒電社に入社したプロパー社員。電気工事士として、住宅の電気工事に加え、法人向けの高圧電気設備工事の直接提案を開始するなど、現在の会社の礎を創ってきたメンバー。2020年からは事業部長として、エンジニアリング事業部を統括している。プロフィールはこちら

インタビュアー

岩見 啓明
第二種電気工事士/二等無人航空機操縦士

岩見 啓明

前職はWebメディアの編集者。恒電社に参画後はマーケティングに従事し、現在は採用全般も担当している。2023年に二等無人航空機操縦士(ドローン)資格、2024年に第二種電気工事士資格を取得。プロフィールはこちら

ーーービルの高圧受電設備の更新工事で、工場や商業施設と大きく異なる点はどこですか?

一番の違いは、設備が「立体的」に配置されている点です。工場は広い敷地に平面的な設備が多いですが、ビルの場合は限られたスペースを活用するため、上層階や屋上、地下などに設備が分散しています。

そのため、資材の搬入経路の確保や、停電させる「順序」が非常にシビアになります。

例えば、エレベーターを動かして資材を上層階へ運び終えてからでないと、建物全体の電源を切れないといった工程管理が求められるのがビル特有の難しさです。

ーーーなるほど、工事の進め方が肝になってくるんですね。では、設備更新の計画フェーズで、オーナー様が事前に準備してくださっていると嬉しい情報などはありますか?

大きく分けて「設備仕様を正確に把握するための書類」と、停電計画を立てるための「テナント情報(業種や営業時間)」の2点をご準備いただけると非常に助かります。

まず書類については、「月次・年次点検報告書」「竣工図面(単線結線図や平面図、系統図など)」「電気料金の明細」の3点です。詳しくはこちらの記事でお話しした通りです。

次にテナント情報についてですが、停電を伴う工事の場合、各テナント様の営業時間や、PC・サーバー・エレベーターの停止可能時間帯などを事前にヒアリングし、情報共有していただけると非常にありがたいです。

この情報があれば、我々施工会社も「テナント様の業務影響を最小限に抑える、最短の停電スケジュール」を逆算して設計することが可能になります。

ーーーテナント様が入居したまま工事をする場合、停電時間を短くするために工夫していることを具体的に教えてください。

停電時間は工事の内容以上に、事前調査・工程設計・現場対応といった「施工会社の段取りの質」によって大きく左右されます。テナント様への影響を最小限に抑えるため、私たちは徹底した「事前準備」と「当日の現場対応」を行います。

具体的には、事前の現地調査を徹底し、必要な材料や機器を漏れなく事前手配しておくのは当然として、当日の施工では「工程の並行作業」を緻密に設計し、作業員の手待ち時間をなくします。

最も重要なのが「停電前の仕込み作業」です。通電したままでも安全に行える部材の組み立てや準備作業はすべて停電前に済ませておき、いざ停電した後は「電気が止まっていないと絶対にできない作業(高圧ケーブルの切り離しや機器の入れ替えなど)」だけに全力を集中させます。

復電前の最終確認作業も効率化することで、テナント様の負担を最小限に抑えています。

現地調査や、工事の際に起こる“想定外”

ーーー「まだ使える」と思われていた設備が、現地調査後に「実はそうではない」と判明するケースはありますか?

多々ありますね。特に、設備そのものは動いていても、「目視でわかる深刻な劣化・外傷」が進んでしまっているケースは少なくありません。

経年劣化は「設置年数」だけで判断されがちです。しかし、実際には「設置環境(腐食性ガスが発生しやすいエリア、潮風の影響を受ける塩害地域など)」で、劣化のスピードは大きく変わります。

たとえば、屋外に設置されているキュービクルの外装が錆びて穴が開きかけている状態。オーナー様からすれば「今は普通に使えている」とお感じになるかもしれませんが、プロの目から見ると、そこから雨水が侵入すれば即座にショートを引き起こし、全館停電や火災に直結する非常に危険な状態です。

また、主遮断器や波及事故防止機器(PAS・UGS)に異常の兆候がある場合も同様です。これらが故障すれば、自社ビルだけでなく近隣一帯を巻き込む「波及事故」に発展し、多額の損害賠償リスクを抱えることになります。

「動いているから安全」ではなく、「事故が起きる一歩手前である」という事実と、それに伴う社会的・経済的リスクの大きさを丁寧にご説明するようにしています。

ーーー築年数の経っているビル特有の「想定外」が発生しやすい工事フェーズはどこですか?

まずは、やはり「着工時」です。特に「既存の配管や基礎を流用する」場合ですね。稼働中には見られなかった部分が、いざ作業を始めて見えるようになった瞬間に想定外が発覚することが多いです。

書類や図面だけを見て工事計画を立てると、長年稼働しているビル特有の「経年による周囲環境の変化」を見落とす危険があります。たとえば「配管経路が狭くなっている部分があった」「改装やリフォームの際に点検口が塞がれてしまいアクセスできない」といったケースもありました。

ほかに想定外が発生しやすいのは「搬入・揚重」作業の時で、図面上では搬入スペースがあっても、数十年で樹木が生い茂ってクレーンが使えなくなっていたり、隣の建物が新築されて重機が入る隙間が狭くなっていたり、地盤が不等沈下を起こしているケースがあります。

また、既存のコンクリート基礎が劣化していて強度が足りず、そのままでは新しい機器の重さに耐えられないといった事態も現場では発生します。

これらは事前の現地調査でプロが見抜いておかないと、施工当日に「重機が搬入できない」「工事が中断する」といった深刻なトラブル(想定外)に直結してしまいます。

経年ビルの費用対効果について

ーーー建物の残存価値と、電気設備更新工事の費用対効果が合わない場合は、どのようなご提案をしますか?

ビルがあと数年で解体予定にも関わらず、高圧設備の老朽化により更新の必要が出てくるケースでは、正直、ご提案できる幅がかなり狭くなってしまいます。

一昔前なら、「中古のキュービクル・トランスで安く抑えましょう」というご提案もできましたが、今は中古品自体が手に入りづらく、価格も高騰しています。そのため、基本は新品での交換をご提案しますが、たとえば「あと5年しか使わない」という場合、新品を導入し、建物解体時にその設備を中古として売却する、という選択肢もあります。

入手困難で割高な中古を探してしのぐのか、将来の売却価値を考慮して新品を手に入れるか。建物の残りの寿命と照らし合わせ、どちらがトータルで損失を抑えられるかという視点で、最適な着地点を探るようにしています。

まとめ

築30年を超えた電気設備は、「波及事故」「部品調達困難」「法令リスク」の3つのリスクが同時に高まっています。

  • キュービクルは受注生産のため、決断から着工まで数カ月以上の期間が必要。
  • テナントへの影響を抑えるには、仮設電源や深夜施工などの早期検討が鍵。
  • 「壊れてから直す」のではなく、「壊れる前に直す」ことで、コストもリスクも抑えられる。

「まずは設備の状態を見てほしい」という段階からのご相談もお待ちしております。恒電社では、現地調査から施工まで一貫してサポートいたします。所有されているビルの電気設備に不安を感じてきたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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記事を書いた人

岩見 啓明
第二種電気工事士/二等無人航空機操縦士

岩見 啓明

前職はWebメディアの編集者。恒電社に参画後はマーケティングに従事し、現在は採用全般も担当している。2023年に二等無人航空機操縦士(ドローン)資格、2024年に第二種電気工事士資格を取得。プロフィールはこちら

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