記事

【商業施設向け】営業を止めずに進める電気設備更新|深夜工事・停電調整・テナント対応のポイント

カテゴリー:

コラム

百貨店やスーパーマーケット、ホームセンター、ショッピングセンターなどの商業施設では、高圧受電設備(キュービクル)で受電した電力を、変圧器で低圧へ変換し、各テナントへ供給する構成が一般的です。

営業時間や業態の異なるテナント様が入居している場合、「電気設備を更新したいけれど、停電によって特定のテナントだけ営業を止めるわけにはいかない」そのような悩みを持つ商業施設のオーナー様や管理会社様も少なくないかもしれません。

商業施設の電気設備工事は、特有の前提条件や制約を正しく理解したうえで、綿密な段取りをしなければ、停電の延長やテナント営業への影響につながるリスクが伴います。

この記事では、商業施設における電気設備更新の段取りと注意点を、現場の視点から解説します。

▼関連記事を読む

要約

緻密な段取りと深夜工事の活用で営業継続は可能
商業施設の電気設備更新は、閉店後の深夜帯に工事を集中させることで、店舗の営業を止めることなく実施できます。深夜工事には人件費の割増によるコスト増や、限られた作業時間による工期の長期化といった制約がありますが、繁忙時間帯である日中の売上を守れるメリットは非常に大きいです。事前に徹底した現地調査を行い、図面と現況の乖離を把握しておくことが、翌朝の開店までに確実に復電させるための安定した施工計画の土台となります。

テナント調整と業種別の影響把握が成功の鍵を握る
円滑な工事にはテナントとの信頼関係が不可欠であり、少なくとも1〜2カ月前には停電範囲とスケジュールを通知する必要があります。また、食品管理が必要な飲食店や精密機器を扱うクリニックなど、業種ごとに停電が許容できる条件が異なるため、各店舗の事情を丁寧に汲み取った順序立てが重要です。「営業しながらは無理」と更新を先送りせず、法定点検との同時施工や段階的な更新など、専門家と協力して最適な手法を選択することが推奨されます。

商業施設における電気設備更新の特殊事情

老朽化した高圧受変電設備や幹線、分電盤などを新しい設備に切り替える電気設備更新工事。商業施設での更新工事が他の業種と大きく異なるのは、「電気の供給が止まると、テナントの営業への影響に直結する」という点です。

飲食店やスーパーであれば冷蔵・冷凍設備が停止し、食品温度管理に支障が出る。クリニックであれば診療の中断など、業種によっては短時間の停電が多大な損害を招く恐れがあります。

加えて、商業施設の電気設備は建物全体に張り巡らされ、幹線・分電盤・テナント専用回路が複雑に絡み合っていることが多くあります。長年運営されている施設では、増設や改修が繰り返された結果、図面と実際の配線が一致していないケースも珍しくありません。そのため、事前の現地調査で現状を正確に把握することが、すべての計画の出発点となります。

営業時間外工事のメリットと制約

テナントへの影響を最小限にするため、閉店後や深夜帯に集中して工事を進める「営業時間外工事」は、商業施設における一般的な施工手法の一つです。

大きなメリットとしては、来店客や売上への直接的な影響を回避できる点。特に土日・祝日に集客が集中する施設では、平日の深夜に工事を集中させることで、稼ぎ時の営業を確実に守ることができます。

一方で、営業時間外(深夜)工事には以下のような制約も伴います。

  • コスト面:
    深夜手当などの人件費が発生するため、昼間の施工に比べて工事費が高くなる傾向があります。
  • 工期面:
    1回あたりの作業時間が限られる(閉店から開店までの約4~6時間)ため、工期が長期化しやすくなります。
  • 環境面:
    近隣への騒音や照明の影響に配慮が必要であり、立地によっては施工時間帯がさらに制限される場合もあります。

テナントとの調整で押さえるべきポイント

工事を円滑に進めるためには、テナントとの調整が欠かせません。

  • 工事スケジュールと影響範囲の事前通知:
    いつ、どの区画が停電するかを、少なくとも1〜2カ月前には通知しましょう。直前の通知は、テナント側の準備が間に合わず、トラブルの元となります。最悪の場合、工期変更を余儀なくされることもあります。
  • 業種ごとの停電許容条件を確認する:
    テナントの業種によって、停電への対応能力は大きく異なります。「冷蔵庫の電源は落とせるか」「レジやサーバーのバックアップは必要か」など、業種によって必要な対策は異なります。業種ごとの条件を把握したうえで、工事の順序と範囲を組み立てる必要があります。
  • 停電・復電の時間を守る:
    「何時に停電し、何時に電気が戻るか」という約束を確実に守ることは、オーナー様とテナント側の信頼関係を維持するうえで最も重要な要素です。

電気工事士に聞く、商業施設での電気工事の現場

解説者

高橋 宏武
一級電気施工管理技士/第一種電気工事士

高橋 宏武

大学卒業後、恒電社に入社したプロパー社員。電気工事士として、住宅の電気工事に加え、法人向けの高圧電気設備工事の直接提案を開始するなど、現在の会社の礎を創ってきたメンバー。2020年からは事業部長として、エンジニアリング事業部を統括している。プロフィールはこちら

インタビュアー

岩見 啓明
第二種電気工事士/二等無人航空機操縦士

岩見 啓明

前職はWebメディアの編集者。恒電社に参画後はマーケティングに従事し、現在は採用全般も担当している。2023年に二等無人航空機操縦士(ドローン)資格、2024年に第二種電気工事士資格を取得。プロフィールはこちら

ーーー商業施設での電気工事で、工場やビルと比べて特に難しいと感じる点はどこですか?

一番の懸念は「食料品を扱うテナント様」への対応です。

停電を伴う工事の場合、冷蔵・冷凍設備の管理が最優先事項になります。ドライアイスなどの対応で一定時間は温度管理を維持できますが、施設規模や外気温によっては長時間の停電対応が難しいケースもあります。食品の管理が難しいと判断される場合はドライアイスの追加投入や発電機の手配が必要になり、コストも跳ね上がります。

また、意外と盲点なのが動線の確保ですね。商品の搬入トラックと工事車両が重なってしまうと、通路の確保や迂回ルートの誘導が必要になります。単に作業をするだけでなく、施設の「物流」を止めないための配慮が欠かせないのが、商業施設ならではの難しさです。

ーーー商業施設では、「営業しながらの工事」は難しいのでしょうか?夜間工事がメインになる理由を教えてください。

物理的には、発電機などを利用して、工事中でも電気を供給することは可能です。それでも、商業施設の場合、基本的には「閉店後の夜間工事」になります。なぜなら、営業時間には一般のお客様の出入りが激しいため、安全な作業スペースを確保すること自体が困難になるためです。

また、商業施設はテナントごとに営業時間が異なるため、日中に調整しようとするとその手間が複雑になりすぎます。閉店後であれば、全館一斉に、あるいはエリアごとにまとめて停電させる調整が最もスムーズに進むという側面もあります。

ーーーテナントとの調整がうまくいかずに、工事が難航したケースはありますか?

夜間であっても、実質的な「作業時間」が極端に制限されてしまうケースは発生します。例えば、店舗の営業が終わっても、そこからスタッフの方がレジ締めや清掃をするのに2時間ほど電気が必要な場合があります。

そうなると、夜間工事であっても開始時間を遅らせざるを得ません。さらに、別のテナント様が「早朝営業」をしていたりすると、私たちが作業できる時間は深夜のわずか2〜3時間という非常に限定的なものになります。

こうした各店舗固有の運営事情を把握しきれていないと、当日の工程が立ち行かなくなります。

ーーー営業時間外工事を成功させるために、オーナー様に事前にやっておいてほしいことはありますか?

各店舗への時間調整はもちろんですが、意外と見落としがちなのが「各店舗が契約している警備会社への通達」です。工場やビルだと、建物全体を1つの警備会社が担当することが多いかと思いますが、商業施設だと各テナントごとに警備会社と契約をしているケースがあります。

通達なしの状態で停電させると、警備システムが異常を検知し、各社の警備員がバラバラと現場に駆けつけてしまいます。その対応のために作業員が手を止められ、説明に追われることになると、ただでさえ短い作業時間がさらに削られてしまいます。

オーナー様から各テナント様へ「警備会社への連絡」まで依頼しておいていただけると、現場は非常に助かりますね。

ーーー深夜工事の場合、労務費以外でコストが増える要素はありますか?

深夜工事特有の要素は、「照明」と「防音」です。当たり前ですが、深夜かつ停電しての工事は、真っ暗な中での作業になるため、手元を照らす仮設照明の設置が必要になります。

また、住宅街が隣接している施設では、深夜の作業音がクレームにつながらないよう、防音シートの設置や、音の出るインパクトドライバーの使用制限など、特殊な対策が発生します。

コスト増を抑える一番の方法は、正直に言えば「平日の昼間に工事をさせていただくこと」ですが、現実的には難しいですよね。ですから、いかに効率よく「短時間の夜間工事」で終わらせるか。そのための「事前調整」こそが、結果的にコストを抑える最大の武器になります。

まとめ

商業施設の電気設備は、以下を踏まえた適切な段取りを組めば、営業を続けながら更新工事が可能です。

  • 深夜工事の費用割増・工期の長期化・テナントとの調整という制約を前提に計画を立てる必要があります。
  • テナントへの影響を最小化するには、工事スケジュールと停電範囲を1〜2カ月前に通知し、業種ごとの停電許容条件を把握したうえで工事の順序を組み立てることが重要です
  • 段階的更新はテナントへの影響を分散できる一方でコストが積み上がりやすい特徴があります。大規模改修と同時に実施できる場合は一括更新が効率的です。

「営業継続下での工事は難しい」という思い込みは、更新を先送りにし続ける最大の原因になります。工事会社に相談することで、想定していなかった選択肢が見えてくることもあるでしょう。

恒電社では、商業施設の営業スケジュールやテナント構成に合わせた最適な工事計画の立案から施工まで、一貫して対応しています。まずはお気軽にお問い合わせください。

関連記事を読む

記事を書いた人

岩見 啓明
第二種電気工事士/二等無人航空機操縦士

岩見 啓明

前職はWebメディアの編集者。恒電社に参画後はマーケティングに従事し、現在は採用全般も担当している。2023年に二等無人航空機操縦士(ドローン)資格、2024年に第二種電気工事士資格を取得。プロフィールはこちら

電気設備工事のことなら、
“まるっと”
恒電社へご相談ください。

お問い合わせはこちら

お電話のご相談はこちら

048-728-4283
自家消費型太陽光発電はこちら