【PCBとは? #1】PCB含有製品の処理期限とは?|背景と法的義務を正しく理解する
更新日:2025年11月19日

かつて多くの工場や施設で使われていた「PCB(ポリ塩化ビフェニル)」は、電気機器に欠かせない素材として重宝されてきました。しかし、後に強い毒性と環境への悪影響が明らかになり、現在では法律に基づき厳格な廃棄処理が求められています。
特に、低濃度PCB廃棄物の最終処理期限である2027年3月31日が迫る中、企業や工場の設備を管理する立場にある方は、今のうちから対応を進めることが重要です。
本記事では、PCBの基本知識や「高濃度」「低濃度」の違い、法的な処理期限、そして企業として取るべき具体的な対応について、専門家のアドバイスを交えてわかりやすく解説します。
目次
要約
かつての便利な素材が今は有害物質に:
PCB(ポリ塩化ビフェニル)は電気絶縁性や耐熱性に優れ、かつて電気機器などに広く使われていました。しかし、自然分解されにくく強い毒性を持つため、1970年代以降は製造・使用が禁止に。現在は含有濃度に応じて「高濃度」と「低濃度」に分類され、どちらも厳格な処理が義務付けられています。
2027年3月が全国共通の最終期限:
PCB廃棄物の処理は国・自治体・JESCOが連携して進めており、高濃度PCBは既に期限が終了。低濃度PCBについても、2027年3月31日までに処理を完了しなければ法令違反となるおそれがあります。単なる委託ではなく、処理証明書の取得までが事業者の責任です。
法的・社会的・実務的な影響が重大:
期限を過ぎると、PCB特別措置法や廃棄物処理法に基づく罰則を受ける可能性があります。また、環境配慮が求められる時代において、企業の信頼失墜にもつながります。さらに、駆け込み需要による検査・処理の遅延リスクも高く、早期対応が不可欠です。
今すぐ自社設備の検査状況を確認:
最初の一歩は、自社の変圧器やコンデンサがPCB検査を済ませているか確認すること。不明な場合は、型番や製造時期をもとにメーカー照会、又は分析検査を行う必要があります。恒電社では検査から処理までを一括対応可能。今動くことが、期限内完了への最短ルートです。
PCBとは何か
PCBの性質と「高濃度」「低濃度」の違い
PCB(ポリ塩化ビフェニル:Polychlorinated Biphenyl)は、化学的に極めて安定した油状の化合物です。電気絶縁性・耐熱性・化学的安定性に優れていることから、かつては変圧器・コンデンサ・安定器などの電気機器や、熱媒体油・潤滑油などに広く使用されていました。
しかし、その一方でPCBは自然分解しにくく、強い毒性と環境残留性を持つことが明らかになり、1970年代以降に製造・使用が禁止されました。環境中に放出されると食物連鎖を通じて蓄積し、生態系や人体に長期的な悪影響を与えるおそれがあります。
PCB含有製品には、含有濃度によって次のような分類があります。
- 高濃度PCB:PCB濃度が0.5%以上(機器によって定義が異なる場合あり)。特に変圧器・コンデンサなど古い電気機器に多く、法的に厳格な処理が義務付けられています。
- 低濃度PCB:微量のPCBを含む絶縁油など(濃度0.5%未満)。高濃度に比べて毒性リスクは低いものの、同様に環境汚染防止のための処理義務が課されています。
そのため、PCBを含む機器は、たとえ未使用で保管中であっても「廃棄物」として適正に処理しなければなりません。
国・自治体・JESCOの役割
PCB廃棄物の処理は、環境省の指導のもと、国・地方自治体・JESCO(中間貯蔵・環境安全事業株式会社)が連携して進めています。
- 国(環境省):PCB特別措置法の制定・改正、処理スケジュールや基準の設定、広報・指導などの統括的役割を担う。
- 地方自治体(都道府県・政令市):PCB廃棄物の保管・処理状況の把握、事業者への指導、立入検査などを実施する。
- JESCO(中間貯蔵・環境安全事業株式会社):国の委託を受けて、全国5か所の処理事業所で高濃度PCB廃棄物の無害化処理を行う。
PCB含有製品の期日(処理期限)とは?
PCB廃棄物の処理には、法令に基づいた「処理期限」が定められています。これは、PCBを含む機器を保管したまま放置しないよう、国が定めた最終的な廃棄完了の期限です。
| 定義 | 処分先 | 期限 | |
|---|---|---|---|
| 高濃度PCB廃棄物 | PCB濃度が0.5%以上 | JESCO (中間貯蔵・環境安全事業株式会社) | 2023年3月31日まで |
| 低濃度PCB廃棄物 | PCB濃度が0.00005%〜0.5%未満 | 環境大臣が認定する無害か処理認定施設または、都道府県知事等が許可する施設 | 2027年3月31日まで |
高濃度PCB廃棄物の処理期限
高濃度PCBを含む機器(変圧器・コンデンサなど)は、都道府県ごとにJESCOの処理事業所が設けられ、地域別に期限が設定されました。
※この期限はすでに終了しており、未処理の機器を保管している場合は法令違反の可能性があります。
低濃度PCB廃棄物の処理期限
低濃度PCBを含む廃棄物については、2027年3月31日が全国共通の最終処理期限として定められています。この期日までに「収集運搬→中間処理→最終処分」がすべて完了していなければなりません。
そして、単に業者に委託するだけでなく、確実に処理証明書を受け取ることまでが事業者の義務となります。
規制の背景とリスク
これらの期限設定の背景には、PCBが持つ環境汚染リスクと国際的な義務があります。
日本は2001年に「ストックホルム条約」(残留性有機汚染物質に関する条約)に加盟し、PCBを含む有害物質の製造・使用・保管・廃棄の全廃を国際的に約束しました。
この条約に基づき、国内ではPCB特別措置法(2001年施行)が制定され、「保管→処理完了」までの期限が段階的に設けられました。
もし期限を過ぎても処理を行わない場合、次のようなリスクが生じます。
- 法的リスク:PCB特別措置法・廃棄物処理法に基づく罰則(懲役・罰金)
- 社会的リスク:環境配慮が求められる時代における企業の信頼失墜
- 実務的リスク:期限間近になると処理施設や運搬業者が逼迫し、処理が間に合わない可能性
つまり「2027年3月31日」という期限は単なる目安ではなく、国際条約・国内法に基づく最終的な義務期限です。
設備オーナーが今すぐ確認すべきこと
解説者
インタビュアー
ーーー PCB期日を守るために、設備オーナー様が今すぐ確認すべきことは何ですか?
一番大事なのは、自分の会社や工場の所有しているトランス(変圧器)がPCB検査を済ませているかどうかを確認することです。
意外かもしれませんが、PCB検査を実施しているかどうか、把握していない会社は少なくありません。PCB検査の実施状況につきましては、企業様の規模によって、把握されているご状況が異なる傾向があるように思います。
例えば、比較的小規模な企業様の場合、経営者様が社内の設備全体を詳細に把握されており、「検査は既に完了しております」と即時ご回答をいただくことが多いように感じております。
その一方で、比較的規模の大きな企業様におかれましては、所管部署が分かれていらっしゃることもあり、実施の有無をお伺いした際に、「まずは社内の担当部署を確認する必要がございます」といったケースも、少なくないという印象を受けています。
ーーーPCB含有製品を処理する場合、検査は絶対に済ませなければならないのですか?
トランスなどの製品で、PCB含有の有無が分からない場合には検査が必須です。
なぜなら、PCBが入っていない機器の処分は一般の産業廃棄物として処理できるのですが、そのためには「このトランスにはPCBが入っていません」と証明する不含証明書が必要になるからです。
PCBを含有している場合でも、していない場合でも「そのことを証明できる状態」にすることが処理における第一歩になるんです。
ーーー検査をしていない場合はどうすれば良いのでしょうか?
まずはトランスなどの製品の型番を確認しましょう。
恒電社にお問い合わせいただいた際には、メーカーに問い合わせて、製造年月日から「PCBが混入している可能性があるか」を確認します。PCBが禁止された後に製造されたものであれば、メーカーが不含証明書を発行してくれます。
混入しているか微妙な時期の製品だと、メーカーから「要検査」と言われることが多いので、その場合は絶縁油を採取して分析機関で検査します。恒電社では、その検査対応(絶縁油の採取から分析機関への提出)も代理で行っております。
ーーー2027年3月の期限が近付くと、駆け込みで検査需要が増えそうですね。
そうですね。増えることが想定されます。通常は2〜3週間で分析結果が出ますが、検査機関が込み合うと、もっと時間がかかる可能性があります。
また、検査が終わると、専門の運搬業者に依頼し、処分業者へ運ぶ必要があります。検査の先にもステップがあるため、結果的に処分が「間に合わない」状況になるリスクすらあります。
そうならないためにも、まずはトランスなど自社の製品がPCB検査済みであるか、確認してください。
検査実施の有無が分からない場合は、電気工事会社や専門業者にご相談することをおすすめします。恒電社では、検査から処分までワンストップで対応できる体制を整えていますので、“気づいた今”が一番早いタイミングです。
施工事例
まとめ:
PCBは、取り扱いを誤ると法令違反や環境汚染につながる有害物質です。
2027年3月の処理期限はもう目前。今はまだ余裕があるように見えても、全国的に検査や処理が集中すれば、分析結果の遅延や処理枠の不足が起こる可能性があります。
期限ぎりぎりになって慌てて依頼しても、間に合わないような事態を防ぐためには、今このタイミングでPCB検査を済ませておくことが最善策です。
自社のトランスやコンデンサがPCBを含んでいるのか、不含証明が取れているのか。「まだ時間があるから大丈夫」ではなく、まずは自社の「現状確認」から始めてみてください。自社の状況が分からない場合でも、お気軽に恒電社までご相談ください。
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