大がかりな電力系統切替工事|埼玉県
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更新日:2025年12月23日
埋設工事中
埋設工事後
高圧ケーブル更新前
高圧ケーブル更新後
工事の概要|法人向け高圧ケーブル更新、電力系統切替工事
- エリア :埼玉県
- 費用レンジ:1000万円以上
埼玉県内の企業様より、複雑で大規模な電力系統切替工事のご依頼をいただきました。本工事では、同じ敷地内にある3つの施設(A・B・C)に対し、以下のような改修を行いました。
- A・B棟のケーブル更新工事を実施し、キュービクルからの配線を変更。
- これまで1号柱から各建物へ高圧・低圧を配線していたものを、C棟のみ分離。
- C棟専用の1号柱を新設し、高圧を受電する設計へ変更。
本工事は、既存の設備と新設の設備を組み合わせながら運用する必要があり、計画段階から綿密な調整が求められました。この記事では、どんな点に注意しながら進行したかをまとめています。
手順・スケジュール
Step0:現地調査・切替計画の策定・電力会社協議
お客さまより系統切替のご相談をいただいた後、まずは目的(更新のための一時切替/本線→予備線切替/電源設備の冗長化など)をヒアリングします。続いて現地確認を行い、以下の項目を確認します。
- 現在の受電系統構成(本線・予備線、単独線・ループ受電など)
- 切替対象となる高圧機器(PAS・LBS・VCB・ケーブルなど)
- 切替後の電源ルート・負荷影響・停電範囲
- キュービクル内の結線状況、母線の構成
- 切替時に必要な停電調整・電力会社操作の有無(PAS操作など)
これらをもとに、切替手順・安全措置・停電計画・復電手順 をまとめた切替計画書を作成します。
電力会社の操作が必要な場合は、事前協議・申請も行います。
Step1:受電停止・安全措置の実施
電力会社立会のもと受電停止を行い、安全が確保されたことを確認して作業に入ります。
- 接地線の取付
- 作業箇所の施錠・表示
- 負荷設備側の停止確認
- 切替対象設備の状態確認(VCB開放・PAS開放など)
停電の範囲を明確にし、作業員全体で安全指示を共有します。
Step2:既存系統の切離し・新系統への切替作業
切替計画に沿って、既存系統の切離しを行います。
- 既存受電線(高圧ケーブル)の開放
- 母線の切替え(本線→予備線、A系統→B系統など)
- PAS/LBS/VCB の結線変更
- 仮設電源への切替(工場稼働を止められない場合) など
必要に応じて、ケーブル端末の処理・固定、盤内の結線変更、機器設定(継電器の保護設定など)も行います。
Step3:復電前試験(絶縁・導通・動作確認)
切替作業が完了したら、復電前に以下の試験を実施します:
- 絶縁抵抗測定(新系統の健全性確認)
- 導通試験(結線誤り・相順確認)
- VCB/LBS の開閉動作試験
- 母線電圧の無電確認(誤送電防止)
- 継電器の設定値チェック・連動試験
これらの試験をクリアして初めて復電が可能となります。
Step4:復電作業・動作確認
電力会社立会のもと、新系統で復電を行います。復電後、次の項目を確認し、問題がなければ切替作業は無事完了となります。
- 電圧・電流値が正常であるか
- 母線の電圧バランス
- 負荷設備の運転状況(機器の復帰確認)
- 異音・異臭・過熱がないか
- 新系統の保護協調・トリップ状況
Step5:産廃処理・工事報告書提出
ケーブル端材・不要となった旧系統部材(古いPAS、LBS、ケーブル等)が発生した場合は、産業廃棄物として適切に処理します。最後にお客様へ以下を提出し、これにて電力系統切り替え工事は完了となります。
- 工事報告書
- 切替後の系統図(Before/After)
- 各種試験結果書
- 新系統の運用上の注意点・保守方法
恒電社の3つの特長

導入背景・課題・解決
- 背景:自社構内に引き込んだ電力の使用方法を変えるための系統切り替え工事。
- 課題:物理的に確認ができない場所もあったため、電気主任技術者様にご協力いただき、現地確認を複数回実施しました。
- 解決:あらゆるトラブルを想定し、入念な計画を立案しました。特に「配線ルートや配管状況の把握」「既設高圧ケーブルの動線」「今後の移設可能性」について重点的に確認しました。
ルール・法律・更新目安
設備更新・系統変更が求められる背景
電力系統の切り替え工事は、老朽化した受電設備の更新や電源構成の最適化、設備増設による負荷変動への対応など、さまざまな理由で必要となります。特に複数系統の受電を採用している施設や、自立運転設備・非常用発電機との連携がある場合は、運用の信頼性向上と事故時のリスク低減を目的として系統切替が行われます。また、工場や大型施設では生産ラインの増設や設備更新に伴い、電力の流れを最適化する必要性が生じるため、電力系統の切り替えは設備の安定運用に不可欠な工事となっています。切替工事の目的を明確にし、現状の負荷と将来計画を踏まえた最適な系統構成を検討することが重要です。
法令遵守と切替に伴う高圧設備の安全管理
電力系統の切り替え工事は高圧系統に直接関わるため、電気事業法、電気設備技術基準(電技)、内線規程に基づく設計と施工が求められます。電力会社との協議では、受電方式、保護協調、引込区間、計量方式などを確認し、切替後の電力供給が安定して行えるように計画を立てます。切替工事に伴う既存設備の撤去や更新では、変圧器、PAS・UGS、コンデンサなどの高圧機器にPCBが含まれている可能性があるため、事前に証明書確認やPCB分析を実施し、法令に従って適正に処理する必要があります。工事後は耐圧試験や動作試験を行い、切替後の系統が安全に機能することを検証します。
停電計画と切替後の信頼性向上
電力系統の切り替え工事では、系統の一時停止や高圧設備の停電が避けられないため、操業スケジュールや業務への影響を考慮した綿密な停電計画が必須となります。必要に応じて仮設受電設備や非常用電源を活用しながら、切替ポイントを最小限の停電時間で完了させることで、業務継続性を確保します。切替後は電源系統の冗長性が高まり、故障時のバックアップ経路が確保されるなど、電力供給の信頼性が大きく向上します。また、負荷バランスの改善や電源ロスの低減により、設備全体の効率向上も期待でき、長期的な安定運用とコスト低減に寄与します。
仕様・条件
- 型番 :高圧開閉器300A VT/LA内蔵、高圧ケーブル 6600VCVT38
- 安全対策:高所作業車を使用する際は、現場環境に応じて最適なサイズ・仕様の高所作業車を選定しています。周囲には立入禁止区域を設定し、落下物や車両の転倒事故を防ぐため、作業帯の確保と標識設置を徹底しています。
電気事業法に基づく義務と注意点
電力設備の更新や改修を行う際、電気事業法により、自家用電気工作物を設置する事業者は以下の義務を負います。
- 事業用電気工作物の維持・技術基準適合維持(法第39条)
- 保安規程の制定・届出・遵守(法第42条)※小規模事業用電気工作物を除く。
- 主任技術者の選任および届出(法第43条)※小規模事業用電気工作物を除く。
特に、2および3に関しては、国への届出や手続きが必要となります。改修工事を実施する際には、これらの義務を確実に履行しているかを確認することが重要です。







