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築30年超のビル・マンションの電気設備、何から手をつける?|東京都内オーナーさま向けの優先順位ガイド

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#PAS・UAS(UGS), #PCB, #キュービクル, #トランス, #電気の基礎知識, #高圧ケーブル
投稿日:2026年6月17日
更新日:2026年6月18日

築30年を超えたビル・マンションでは、高圧受変電設備の老朽化が静かに進行しています。

特に東京都内など都市部に立ち並ぶ高層階の建物では、屋上や電気室など、通常アクセス出来ない場所に電気設備が設置されているケースも多く、「設備は動いているから問題ない」——そう思っていても、外観だけでは判断できない劣化が積み重なり、突然の停電や、思わぬ「波及事故」に直面するリスクを抱えるケースも少なくありません。

この記事では、30年を超えて使われる電気設備が抱えるリスクと、限られた予算の中で優先的に対処すべき更新対象をリスク別に整理します。ビルやマンションのオーナー様はぜひご覧ください。

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要約

設備の老朽化と突発的な重大リスク
築30年を超えた高圧受変電設備は、外観に現れない内部劣化(絶縁破壊やネジの緩み等)が静かに進行しています。「動いているから大丈夫」と放置すると、近隣一帯を巻き込む停電や波及事故を引き起こし、多額の賠償責任や資産価値の低下につながります。さらに、製造から年月が経った機器は部品の調達が困難で、故障後の緊急対応では復旧コストの増大や、数週間から数ヶ月に及ぶ長期間の業務停止を招く恐れがあります。

優先順位を決める3つの判断軸
限られた予算の中で対策を進めるには、「事業継続性への影響(止まると困る)」「人身・波及リスク(事故になる)」「法的義務の期限(法令違反になる)」の3軸で優先順位を整理します。施設全体の機能停止に直結する主遮断器や変圧器、周辺への停電や火災を招く高圧ケーブルや開閉器などを最優先とし、一度にすべてを更新するのではなく、リスクの大きさと予算に応じて計画的に改修を進めていくことが賢明です。

迫る法的期限と今すぐ行うべき初期対応
電気設備には期限付きの法的リスクも存在します。特に低濃度PCB含有機器の処理期限は2027年3月末に迫っており、超過すると法的責任を問われるため最優先の対応が必要です。また、テナントの電気代請求に使う子メーターの有効期限切れによる計量法違反リスクも見落とせません。これらを踏まえ、オーナーがまず行うべきは手元にある法定点検報告書を確認し、現状の劣化状況や対象機器の有無を正確に把握することです。

高圧受変電設備では「まだ動いているから大丈夫」が通用しない理由

高圧受変電設備とは、電力会社から6,600Vの高圧電力を受電し、ビルやマンション、工場などの施設内で使用できる電圧(200V/100V)に変換する設備の総称です。

その法定耐用年数は一般的に15〜20年とされていますが、実際の現場では「動いているから」という理由で30年以上使い続けているケースも珍しくありません。特に東京都内では、バブル期に建設されたビルや1990年代以前のマンションが大量に更新時期を迎えており、設備の老朽化問題は今まさに顕在化しています。

電気設備の劣化は外観に現れにくいということが大きな問題です。機器の外側がきれいに見えても、内部では絶縁物の劣化・コネクタのゆるみ・油の変質が進んでいます。「動いている」状態と「安全に使える」状態は別物であり、突発故障が起きてから初めて劣化に気づくケースが後を絶ちません。

放置したときに起きること:5つのリスク

老朽化した電気設備を放置し続けた場合、次の5つのリスクが発生します。

①停電・波及事故
自社ビルだけでなく、近隣一帯を停電させる「波及事故」につながることがあります。波及事故を起こした場合、影響を受けた周辺施設や事業者への損害賠償責任が発生します。

②保守部品の調達困難
製造から20〜30年が経過した機器は、メーカーのサポートが終了し、補修部品の供給が打ち切られているケースもあります。故障した瞬間に代替部品を探すことになりますが、見つかっても納期に数週間〜数ヶ月かかることがあり、その間の業務停止リスクは計り知れません。

③復旧コストの増大
計画的な更新工事と、突発故障による緊急対応では費用が大きく異なります。緊急対応では夜間・休日の割増費用に加え、部材の急調達コストも発生します。計画更新であれば複数社から見積もりを取ることができますが、緊急時にその余裕はありません。

④法令上のリスク
電気事業法に基づく技術基準(電気設備に関する技術基準を定める省令)では、電気設備は「危険のないよう維持」することが義務付けられています。劣化した設備を使い続けることは、コンプライアンス上の重大なリスクになります。

⑤資産価値の低下
電気設備の不備は、テナント入居率の低下や売却査定額の下落に直結します。特に法人テナント向けのオフィスビルでは、設備の信頼性が入居判断にも影響します。

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【機器別】築30年超で要注意な設備と劣化のサイン

ここまで、老朽化した設備が抱えるリスクについてまとめてきました。では、具体的にどの機器が更新をしないことによるリスクが高いのか、特に優先して確認すべき機器を整理します。

高圧ケーブル:波及事故の最大要因

  • 劣化の背景:紫外線や雨水、管路内の浸水による「水トリー現象(絶縁破壊)」などで徐々に被覆が劣化します。特に地中埋設の場合、外観から状態を把握するのが困難です。
  • 具体的なリスク:絶縁劣化による地絡・短絡事故。電力会社の配電網を巻き込んで近隣一帯を停電させる「波及事故」の直接原因になりやすく、賠償問題に発展する恐れがあります。
  • 更新時の壁:いざ高圧ケーブルの更新を行おうとしても、古いケーブルが管路内で固着して引き抜けず、配管自体の改修が必要になるなど、想定以上のコストと工期がかかるケースがあります。

PAS・UAS(UGS):事故を食い止める「第一関門」の限界

  • 劣化の背景:PAS(気中開閉器)は屋外の電柱等に設置されるため、紫外線・風雨・塩害による劣化が激しい機器です。UAS/UGS(地中線用開閉器)も、長年の使用で内部のSF6ガスの気密性が低下します。
  • 具体的なリスク:PAS・UASの更新の目安は15〜20年とされていますが、10年を超えると動作不良のリスクが高まります。施設内で事故が起きた際、ここで電気を遮断できないと、確実に波及事故へと直結します。

VCB(主遮断器)・保護継電器:事故拡大を防ぐ「最後の砦」

  • 劣化の背景:保護継電器(センサー)が異常を検知し、VCB(ブレーカー)が電気を遮断する仕組みです。これらは「いざという時にしか動かない」ため、定期点検(リレー試験等)を行わない限り、機械的な摩耗や接点の固着といった劣化に気づけません。
  • 具体的なリスク:30年超の設備では、事故発生時に「保護装置が正常に動作しない(遮断できない)」リスクが大幅に上昇します。最悪の場合、施設内の設備が全焼するまで電気が流れ続ける大惨事になりかねません。

油入式変圧器(トランス):法令違反リスクと電気代の無駄遣い

  • 劣化の背景:熱や過負荷によって内部の巻線や絶縁紙が劣化し、絶縁油の酸化が進みます。劣化要因として、パッキンの劣化による油漏れや錆びも多く見られます。
  • 具体的なリスク:放置すればガス発生・異常過熱を引き起こし、破裂や火災の原因となります。また、古い変圧器には微量のPCB(ポリ塩化ビフェニル)が含まれている可能性があり、2027年3月末の処分期限を過ぎると法令違反となります。
  • メリット:最新のトップランナー変圧器へ更新することで、電力変換時のロスが減り、大幅な電気代削減(省エネ)が見込めます。

コンデンサ:力率低下による「見えないコスト」増

  • 劣化の背景:常に電圧がかかっているため、経年劣化によって内部の絶縁物が破壊されやすい機器です。
  • 具体的なリスク:劣化が進むとケースの膨張や油漏れが発生し、発火の危険性が高まります。また、コンデンサが正常に機能しないと「力率」が低下し、結果的に電力会社から請求される電気料金の基本料金が割高になってしまいます。

VT・CT(計器用変成器):誤情報の伝達によるシステム崩壊

  • 劣化の背景:高い電圧・電流を、計器や保護継電器が扱える小さな値に変換する機器です。これも長年の熱や湿気で絶縁劣化が進みます。
  • 具体的なリスク:CTやVTが故障すると、前述の「保護継電器」に正しい電流・電圧情報が伝わりません。結果として、異常が起きているのに遮断器が動かない、あるいは異常がないのに突然停電するといった誤動作を引き起こします。VT自体がショート(絶縁破壊)して発火するケースもあります。

低圧盤・分電盤:テナント・利用者に最も近い火災リスク

  • 劣化の背景:高圧から100V/200Vに落とされた電気を各フロアに分配する盤です。長年の振動や温度変化で、ブレーカー端子のネジが緩んだり、湿気や粉塵で端子が腐食したりします。
  • 具体的なリスク:端子の緩みや接触不良は「発熱」を引き起こし、発熱痕を放置すると火災に直結します。漏電ブレーカーが経年劣化で適切に作動しない場合、利用者への感電リスクや漏電火災のリスクが極めて高くなります。

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優先順位の決め方:3つの軸で考える

「どの機器から手をつけるべきか」は、次の3つの軸で機器を分類することで見えてきます。

  • 軸①:「止まると困る」—— 事業継続性への影響
    テナントの業務が停止する、エレベーターや空調が止まる、施設全体が使えなくなる——こうした事態に直結する設備が最優先になります。VCB(主遮断器)や変圧器の突発故障は、ビル全体の機能停止を意味します。
  • 軸②:「事故になる」—— 人身・波及リスク
    周辺への波及停電、火災・爆発につながる設備を優先します。高圧ケーブル・PAS・油入変圧器がここに入ります。事故が起きれば賠償責任が発生し、資産価値も一気に下がります。
  • 軸③:「法令違反になる」—— 法的義務の期限
    電気事業法・計量法・PCB廃棄物処理法など、期限が定められているものは「優先度が高い・低い」ではなく「やらなければならない」案件として別枠で扱います。次のセクションで詳しく解説します。

この3軸を使って機器を分類すると、「今すぐ動くべき案件」と「計画的に進める案件」が整理されます。予算の制約がある場合は、①②③の順で優先し、③については期限から逆算してスケジュールを組みます。

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電気工事士に聞く、都市部ならでは高圧電気設備工事の難しさ

解説者

高橋 宏武
一級電気施工管理技士/第一種電気工事士

高橋 宏武

大学卒業後、恒電社に入社したプロパー社員。電気工事士として、住宅の電気工事に加え、法人向けの高圧電気設備工事の直接提案を開始するなど、現在の会社の礎を創ってきたメンバー。2020年からは事業部長として、エンジニアリング事業部を統括している。プロフィールはこちら

インタビュアー

岩見 啓明
第二種電気工事士/二等無人航空機操縦士

岩見 啓明

前職はWebメディアの編集者。恒電社に参画後はマーケティングに従事し、現在は採用全般も担当している。2023年に二等無人航空機操縦士(ドローン)資格、2024年に第二種電気工事士資格を取得。プロフィールはこちら

―――都市部での高圧設備工事が難しい理由を教えてください。

東京都内の工事が、圧倒的に難しくなる最大の理由は「スペースの制約」です。設備の搬入経路・揚重スペース・重機配置などの諸条件により、地方や郊外に比べてクリアすべき点が多くなります。

また、「時間の制約」も大きいです。オフィスビルや商業施設では、平日の日中作業は避けたい。かといって深夜や休日となると、近隣にマンションへの騒音配慮が必要になる。

詳しくは以前、こちらの記事でご説明しましたので、ご覧いただければ幸いです。

―――仮に、古いままの設備を放置しておいたことが原因で、停電事故が発生してしまった場合、駆けつけ工事が出来ないなどの事態も発生しうるのでしょうか?

十分にあり得る話です。まず大前提として、電気工事(特に高圧設備)を担う会社自体が年々減少しており、いざ停電事故が起きてから対応できる業者を探そうとしても、すぐに見つからないケースが増えています。

仮に対応可能な電気工事店が見つかったとしても、今度は部材の調達という壁にぶつかります。開閉器や遮断器といった高圧設備の部材は在庫を抱えている会社は限られており、発注してから手元に届くまでに数日から数週間かかることも珍しくありません。

さらに、トランスやキュービクル全体の更新となれば、発注から納品まで半年以上を要するため、停電が長期化し、マンションであればその間の生活、オフィスビルであれば生産停止や業務への影響は計り知れません。

さらに、部材が揃ったとしても、工事自体が一筋縄では進みません。ビルやマンションの高圧設備更新にはクレーン車が必要になることが多く、工場の敷地内で完結する工事とは違い、公道に車両を設置する場合は道路の使用許可を取得し、通行を一部規制した上で交通整理員を手配する必要があります。

こうした手続きには相応の時間がかかるため、「設備が壊れたから今日明日で直してほしい」という要望には、現実的に応えられないことが多いのです。

つまり、老朽化した設備を放置したまま停電事故が発生すると、業者探し・部材調達・工事の実施という複数の段階でボトルネックが重なり、復旧までに想定以上の時間を要するリスクがあるということです。

PCB含有機器の処分、2027年3月末が目前

築30年以上の物件では、PCB(ポリ塩化ビフェニル)を含む電気機器が設置されている可能性があります。PCBは毒性の高い化学物質であり、「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(PCB特別措置法)」によって処分期限が定められています。

高圧トランスや高圧コンデンサ、安定器などに微量PCBが含有しているケースがあり、「知らなかった」では済まされません。

低濃度PCB含有機器の処理期限は2027年3月末です。期限を過ぎると事実上の処分ができなくなり、所有者が法的責任を問われるリスクがあります。特例措置が設けられる場合も、「期限がなくなる」わけではなく、あくまでも猶予であることを認識する必要があります。

まず確認すべきことは次の3点です。

  1. 自社物件にPCB含有機器が設置されていないか確認する(過去の点検報告書・機器台帳を確認)
  2. 含有が疑われる場合は、専門業者による分析・判定を依頼する
  3. 処分が必要な場合は、認定処理業者への委託手続きを今すぐ開始する

まずは対象機器の有無を確認するだけでも、法的リスクを大幅に低減できます。

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見落としがちな「子メーター(証明用電気計器)」の有効期限と計量法リスク

高圧キュービクルや変圧器に目が行きがちですが、ビルオーナー様が見落としやすいのが、テナントごとの電力使用量を計測する「子メーター(証明用電気計器)」の有効期限です。

子メーターは計量法の規制対象であり、検定有効期間は7年または10年(計器の種類による)と定められています。この期限を超えた状態でテナントに使用量を請求し続けると、計量法違反になります。

築30年超の物件では、検定期間が何度も切れたまま放置されているケースが珍しくありません。アナログメーターのままで検針の手間がかかっているケースも多く、スマートメーターへの一斉交換を機に業務効率化を図るオーナーも増えています。

確認すべきポイントは以下の2点です。

  1. 各テナントの子メーターの製造年・検定満了年を確認する
  2. 期限切れのものは、ただちに更新する(スマートメーターへの交換も検討)

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まとめ:まずは法定点検報告書の確認から

この記事のポイントは以下の3点です。

  • 築30年超の電気設備は「動いている」≠「安全」
    劣化は外観に出にくく、突発故障は復旧コストと事業リスクを一気に高めます。
  • 優先順位は「止まると困る」「事故になる」「法令違反になる」の3軸で判断
    PCBや子メーターなど期限付き案件は別枠で今すぐ動きます。
  • まず手元にある法定点検報告書(電気保安法人の年次点検結果)を確認
    現状把握なしに更新計画は立てられません。

電気設備の更新は、一度に全部やる必要はありません。ただし、何も把握しないまま放置し続けることで、結果的に計画更新よりも高くついてしまうケースも多いです。

恒電社では、現状の設備診断から更新計画の策定・施工まで一貫して対応しています。「何から手をつけていいか分からない」という段階でも構いません。まずはお気軽にご相談ください。

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記事を書いた人

蕨川 真央
恒電社

蕨川 真央

教育・医療業界を経験したのち、結婚出産を経て恒電社に参画。現在は、マーケティングや採用領域のアシスタントとして従事する。プロフィールはこちら

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