更新日:2026年10月6日
この記事を書いた人
恒石陣汰(ツネイシ ジンタ)
マンションの大規模修繕工事の談合は、管理組合の皆様が「比べて選んだ」と思っていた見積もりが、実際には比べられる状態になかったという問題だと私は考えています。
そして、業界全体の課題として見れば、比べられる材料をお客様にお出ししてこなかった専門工事会社の側にも責任があったと考えています。マンションの電気設備の工事を元請けとしてお受けしている会社として、この問題をどう受け止めているのかを書きます。
公正取引委員会が認定したこと
2026年9月28日、公正取引委員会は、関東の7都県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県、栃木県、群馬県)のマンション大規模修繕工事をめぐる談合について、施工会社と設計コンサルタント会社に排除措置命令を出し、37社に計約16億円の課徴金の納付を命じました。同じ年の7月には、東海地方でも同様の疑いで立入検査が行われています。
公表された内容によると、管理組合から業務を受けた設計コンサルタント会社2社と施工会社が、工事ごとに受注する会社を前もって決めていました。ほかの会社はそれに協力する形で見積もりの金額を調整し、設計コンサルタント会社は業務の中で知った予算の情報を、受注する予定の会社に伝えていたとされています。
ここで起きていたのは、相見積もりから競争がなくなっていたことです。相見積もりは、見積もりを出す会社どうしがお互いの金額を知らず、それぞれの判断で金額を出すことを前提にしています。その前提が崩れると、管理組合の皆様が何社分の見積もりを並べても、比べたことにはなりません。そして、その差額を負担するのは、修繕積立金を出しているマンションにお住まいの皆様です。


比べる作業は、なぜ専門工事会社の手を離れていたのか
業界全体の課題として考えるなら、専門工事会社の側にも責任があったと考えています。
工事を比べて選ぶには、金額だけでなく、工事の範囲、使う機器、工程、停電の時間、次に更新が必要になる時期まで、同じ条件で並べられる材料が要ります。しかし、業界ではこれまで、見積書の金額と明細をお出しするところで止まってしまう専門工事会社が多くありました。専門知識がなければ読み解けない見積書を何社分も受け取っても、お仕事や生活のある理事の皆様だけで比べるのは、難しいことです。
その比べる作業を、設計コンサルタント会社や管理会社様が間に入って引き受けてこられました。多くの方がその役割を誠実に果たしてこられたことで、マンションの修繕は長く支えられてきたと思います。
ただし、比べる作業が一か所に集まると、どの工事会社に発注するかを左右できる立場も、その一か所に集まります。今回の談合では、その立場にいた設計コンサルタント会社2社が、施工会社と一緒に、その立場を自分たちのために使っていました。そして、その立場が生まれた理由の一つは、専門工事会社がお客様に直接、比べられる材料をお出ししてこなかったことにあると考えています。
電気設備の工事も、同じ構造の中にあります
恒電社がお受けしているのは、高圧受電設備(キュービクル)の更新など電気設備の工事で、外壁や防水を含む大規模修繕工事の全体ではありません。
しかし、マンションの電気設備の工事も、管理組合の皆様が複数の会社から見積もりを取り、理事会や総会で発注先を決める点は同じです。今回の件を、私たちとは別の業種の話として済ませることはできないと考えています。
実際に、恒電社にも、管理組合の皆様から直接ご相談をいただくことが増えています。今年、高圧受電設備の更新工事をお任せいただいたある管理組合様も、信頼できる工事会社に直接お願いしたいというところから、恒電社にご相談をくださいました。
談合への対策として「専門の工事会社から直接見積もりを取る」ことが広く知られるようになり、この流れは今後も続くと思います。
直接ご相談をいただいた専門工事会社が、引き受けること
直接ご相談をいただくということは、これまで間に入る方が担ってこられた役割の一部を、専門工事会社が自分で引き受けるということです。恒電社では、次の3つを自分たちの仕事として決めています。
1つ目は、比べられる材料を、専門工事会社の側からお出しすることです。見積書には金額と明細だけでなく、なぜその機器を選ぶのか、停電は何時間で、エレベーターや給水ポンプはどうなるのか、今回更新を見送った場合にどんなリスクがあるのかまで書き添えます。他社の見積もりと並べて比べていただくことを前提にしています。

2つ目は、見積もりで終わらせず、計画から工事の完了まで責任を持つことです。ご相談の段階から設備の状態を調べ、何を、いつ、どの順番で更新するかという計画づくりからお手伝いします。理事会や総会でのご説明に資料が必要であれば、その準備もご一緒します。
工事が始まってからは、停電の段取り、居住者の皆様へのお知らせ、電力会社への申請まで、元請けとして私たちが担います。

3つ目は、一緒に仕事をする相手を選ぶことです。恒電社は、今回の談合で名前が挙がった会社からの見積もりのご依頼は、お受けしないと決めました。
説明の言葉や資料の分かりやすさは、お客様からいただいたご意見をもとに、今も改善を続けています。
さいごに
談合を起こしたのは一部の会社です。しかし、管理組合の皆様が見積もりを並べたときに、本当に比べられる状態をつくることは、どの専門工事会社にもできることだと考えています。専門工事会社がそれぞれ、自分の工事の中身と金額の理由をお客様に説明できるようになれば、談合の起きにくい業界に近づくはずです。
恒電社は、比べていただける材料をお出しし、計画から工事の完了まで責任を持つことを続けていきます。
高圧受電設備の更新時期や工事の進め方など、マンションの電気設備のことで気になっていることがあれば、まだ何も決まっていない段階でもかまいません。ぜひ一度、お話を聞かせてください。