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PAS・UGS・UASの設置は義務?「付けてください」と言われる理由と、古い建物に付いていない訳【2026年】

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#PAS・UAS(UGS)
投稿日:2026年10月28日
更新日:2026年10月28日
区分開閉器シリーズ PAS・UGS・UAS 設置は義務?「付けてください」と言われる理由(電柱に取り付けたPASの写真)

高圧で電気を受けている工場やビルでは、電気主任技術者の点検のあとに「まずはPAS(UGS・UAS)を付けてください」と言われることがあります。恒電社にも、そう言われたことがきっかけのご相談が多く寄せられています。

先に答えを書くと、法律に「PASを付けなければならない」という機器名入りの条文はありません。ただし、国の技術基準は「設備が壊れたときに、電力会社の電気の供給に著しい支障を及ぼさないように設備を設けること」を求めており、そのために使われる一般的な設備が区分開閉器(PAS・UGS・UAS)です。関東東北産業保安監督部は2016年4月の資料で、竣工時にはほぼすべての事業場にPASが設置されていると説明しています。

この記事では、「付けてください」と言われる理由、古い建物に付いていないことがある理由、言われたときに確認することと工事の進め方を、施工事例と電気工事士の話を交えて説明します。

要約

設置は義務なのか
法令はPASという機器名で設置を義務付けていません。一方で、設置者には、設備が壊れたときに電力会社の供給に著しい支障を及ぼさないように設備を設け、技術基準に合う状態を保つことが求められています。東京電力パワーグリッドも、受電設備に地絡リレーの設置を求めています。

古い建物に付いていない理由
長く使われている事業場の一部には、PASが付いていない設備が残っています。関東東北産業保安監督部は2016年の資料で、その理由を「様々な理由」としています。同じ資料では、管内の波及事故の約6割がPASの付いていない事業場で起きていました。

言われたときにすること
電気が架空線で来ているか地中線で来ているか、今の開閉器が何年目かを確かめ、電気主任技術者と相談して設置や更新の時期を決めます。工事には停電と電力会社との協議が必要なので、早めに計画を立てます。

この記事で使う言葉

言葉意味
高圧受電電力会社から高い電圧の電気を受け、建物のキュービクルなどの受変電設備で使いやすい電圧に下げて使う方式です。この記事では、主に6,600Vで受電する設備を扱います。
区分開閉器電力会社の設備とお客様の設備の境目(受電点)の近くに付ける開閉器(スイッチ)です。制御装置と組み合わせて、守る範囲で地絡などの事故が起きたときに、お客様の設備を電力会社の配電線から切り離します。
PAS電柱の上に付ける区分開閉器です。電線が空中を通って建物に来る「架空引込」で使います。
UGS・UAS地中に埋めた電線で電気が来る「地中引込」で使う区分開閉器です。UGSはガス式、UASは気中式で、役割は同じです。
SOG(制御装置)事故の電流を見つけて、PASやUGS・UASに「切れ」と指令を出す装置です。
地絡電気が本来の通り道から外れて、地面や機器の金属部分へ流れてしまうことです。
波及事故自社の設備の事故がもとで、電力会社の配電線が止まり、近くの建物まで停電してしまう事故です。
電気主任技術者高圧の設備の保安(点検や監督)を担う有資格者です。電気保安協会などに委託している場合も多くあります。

PAS・UGS・UASは、事故のときに自社の設備を切り離す開閉器

高圧で電気を受けている建物は、電力会社の配電線を近くの建物と共有しています。お客様側のケーブルやキュービクルで地絡などの事故が起き、それを切り離せないと、電力会社の配電線を止める装置が働き、近くの建物まで停電することがあります。これが波及事故です。

PAS・UGS・UASは、SOG(制御装置)と組み合わせて使います。開閉器より建物側の守る範囲で地絡を見つけると、設定された条件に従って開閉器を開き、お客様の設備を配電線から切り離します。短絡などで決められた値以上の大きな電流が流れたときは、開閉器を閉じたままにしておきます。電力会社側の遮断器が電気を止め、電気が来なくなってから開閉器を開きます。こうして、配電線が送電を再開できるようにします。

※区分開閉器が切り離すのは、基本的にその開閉器より建物側の範囲です。責任分界点(電力会社とお客様の設備の境目)よりお客様側でも、開閉器の電源側や開閉器そのものが壊れた場合は、その開閉器では切り離せないことがあります。電力会社側の配電線で起きた事故を防ぐものでもありません。短絡のときは、電力会社側の配電線が一時的に停電することがあります。機器が正常に動き、電力会社側の保護装置と動作のタイミングが合っていることが前提です。

PASの仕組みはPAS(高圧気中負荷開閉器)の役割を解説した記事、UGS・UASの違いはUGS・UASの役割を解説した記事で詳しく紹介しています。

設置は義務? 国の基準・電力会社・保安の3つから整理

「PASは義務か」という問いには、どの決まりの話かで答えが変わります。主な決まりと、それぞれが求めていることを表にまとめました。

決まり求めていることPASという機器名
国の技術基準(電気設備に関する技術基準を定める省令)地絡が起きたときに、けがや火事、機器の損傷が起きないよう「地絡遮断器の施設その他の適切な措置」をとること。高圧の設備は、壊れたときに電力会社の電気の供給に「著しい支障」を及ぼさないように設置すること。書かれていない(地絡遮断器は例として挙がる)
技術基準の解釈(国が示す具体例)受電点(電気を受ける場所)またはその近くに、建物側の地絡を自動で切る装置を付ける規定がある。ただし、受けた電気をすべてその受電点の受電場所で変成または使用する場合は、この規定の例外としている。例外に当たっても、国の技術基準が求める地絡への対策や供給支障の防止は必要。書かれていない
電気事業法設備を技術基準に合う状態に「維持」すること。設置したときだけでなく、使っている間ずっと求められる。書かれていない
東京電力パワーグリッドの受電設備の設計資料(2026年4月1日実施)地絡を保護するための地絡リレーを設置すること。受電設備は、その損壊により電気事業者の供給に著しい支障を及ぼさないように設置すること。書かれていない(地絡リレーとして求めている)
関東東北産業保安監督部の注意喚起(2016年4月)PASを設置していない事業場は設置を、設置している事業場は定期的な点検と計画的な更新をお願いしている。PAS(SOG付き)と明記

※根拠:電気設備に関する技術基準を定める省令 第15条・第18条第1項、電気設備の技術基準の解釈 第36条第4項(36-1表)、電気事業法 第39条、東京電力パワーグリッド「系統連系に係る設備設計について<受電設備(高圧・低圧)>」Ⅵ 2-1・2-3、関東東北産業保安監督部「PAS(負荷開閉器)の設置・更新のお願い」(平成28年4月)。

まとめると、ここで取り上げた法令の条文は、PASという機器名を挙げて一律に設置を義務付けてはいません。求めているのは、地絡への適切な対策と、設備が壊れたときに電力会社の供給に著しい支障を及ぼさないように設備を設けることです。そのために一般に使われるのが、地絡を見つける装置の付いた区分開閉器です。国の機関である関東東北産業保安監督部も、未設置の事業場にPASの設置をお願いしています。法令に機器名がなくても、設置者には、設備が壊れたときに電力会社の供給に著しい支障を及ぼさないように設備を設け、技術基準に合う状態を保つ義務があります。地絡を見つける装置の付いた区分開閉器は、そのために使われる設備です。

国の技術基準(壊れたときに電力会社の供給に著しい支障を及ぼさない設備に)、東京電力パワーグリッド(受電設備に地絡リレーを設置してもらう)、産業保安監督部の推奨(未設置なら設置、設置済みは点検と計画的な更新)の3つから、対策に使われるのは地絡を見つける制御装置と組み合わせた区分開閉器(架空引込はPAS、地中引込はUGS・UAS)であることを示した図
区分開閉器が求められる仕組み(法令はPASという機器名で一律に設置を義務付けてはいません。要否や仕様、更新の時期は、使用環境や開閉の回数、点検結果を踏まえて電気主任技術者・電力会社と確認します)

なお、すでに使っている設備に区分開閉器を付けるかどうかは、設備の状態や引込の形によって変わります。最終的には、電気主任技術者や電力会社と相談して決めます。

「付けてください」と言うのは誰? 言われる3つの理由

恒電社へのご相談をふり返ると、PAS・UGS・UASの設置や更新を勧めた相手は、電気主任技術者(電気保安協会を含む)の点検での指摘がいちばん多くなっています。ほかに、建物を取得したときに管理会社から提案を受けた例や、改修工事をきっかけにした例もあります。電力会社とのやり取りは、多くの場合、工事を申し込んだあとの協議や停電の段取りで出てきます。

電気主任技術者から言われる理由は、主に次の3つです。

言われる理由どういう状態か
そもそも付いていない受電点の近くに区分開閉器がない状態です。引込ケーブルなどで起きた事故を切り離せるか、設備の構成と守れる範囲の確認が必要になり、設置(新設)を勧められます。
付けてから年数がたっている日本電機工業会(JEMA)の資料では、屋外用の高圧交流負荷開閉器(PAS)の更新推奨時期を「使用開始後10年、又は定格負荷電流開閉回数200回」、GR付開閉器の制御装置(SOG)を「使用開始後10年」としています。通常の環境で、通常の保守・点検をしながら使った場合に、取り替えたほうが一般に有利とされる目安で、壊れる時期ではありません。使う環境や開閉の回数、点検の結果によっては、早めの更新が必要になります。
点検の数値や動作に異常がある絶縁抵抗の低下、接地抵抗が基準を超えている、制御装置の動作試験で異常が出た、などの指摘です。

点検報告書のどこを見ればよいかは、点検報告書の読み方を解説した記事で紹介しています。

古い建物にPASが付いていないのはなぜ?

関東東北産業保安監督部は2016年4月の資料で、受電点のPASは「現在、竣工時においては、ほぼ全ての事業場で設置されています」と説明しています。同じ資料には、PASが普及し始めてから30年以上たったことも書かれています。

そのうえで、長期にわたって使われている事業場の一部には、さまざまな理由でPASが付いていないところが少なくないとしています。資料は、その理由を一つひとつは示していません。

時期の手がかりとして、北海道電力ネットワークは2024年10月の、出迎え供給での開閉器の取り扱いを説明した資料で、1990年からの項に「高圧受電設備指針」の改定による地絡遮断装置の施設の義務化を挙げています。高圧受電設備指針は、高圧で受電する設備のつくり方を定めた民間の指針(現在の「高圧受電設備規程」の前身)です。法令が全国のすでにある設備に、PASの追加を一律に義務付けたことを示す記述ではありません。

恒電社の電気工事士は、現場で見てきた事情として、建てた当時の基準で受電を始めたこと、工事に費用と停電が必要なことを挙げています(このあとの「電気工事士に聞く」で紹介します)。ただし、設置者には設備を技術基準に合う状態に保つ義務があり(電気事業法第39条)、技術基準に合わない設備には、国が修理や改造、使用の一時停止などを命じる規定もあります(同第40条)。「昔のままで問題ない」とは言い切れません。

未設置がどれくらい事故にかかわっているかは、公的な資料で確認できます。

関東東北産業保安監督部管内の波及事故で、事故が起きた事業場のPAS設置状況を示した帯グラフ。2016年4月の資料で示された過去10年間(年平均133件)で、PAS未設置59.4%、PAS設置40.6%
出典:関東東北産業保安監督部「PAS(負荷開閉器)の設置・更新のお願い」(平成28年4月)をもとに作成
資料分かったこと
関東東北産業保安監督部(2016年4月)管内の波及事故は過去10年で年平均133件。そのうち約6割(59.4%)は、PASが付いていない事業場で起きていた。
製品評価技術基盤機構(NITE)「平成27年度に発生した事故詳報に関する報告」(2018年2月)分析した波及事故289件のうち59%は、区分開閉器以外の設備が壊れ、区分開閉器が付いていないか動かなかったもの(Bパターン)。Bパターンでの区分開閉器の状況は、未設置52%、不動作41%、不明7%。資料は、区分開閉器が付いていない事業所の対策として「区分開閉器の新規設置が最重要」としている。

※関東東北産業保安監督部の数値は、同監督部の統計データ(2016年4月の資料時点)によるものです。NITEの数値は平成27年度(2015年度)に発生した波及事故の詳報を分析したものです。

統計で多い波及事故の原因や、事故を起こしたときの影響は、波及事故の仕組みと防ぐ工事を紹介した記事で詳しく説明しています。

PASやUGS・UASが付いているかどうか分からない、点検で設置や更新を勧められたが何から始めればよいか分からない、という段階でもご相談いただけます。恒電社が現地で引込の形と今の機器を確かめ、電気主任技術者の点検結果も踏まえて、設置・更新の進め方をご説明します。

「付けてください」と言われたときに確認すること

言われたら、まず次の5つを確かめると、電気主任技術者や工事会社との話が進めやすくなります。

確認することどこで分かるかなぜ必要か
電気が架空線で来ているか、地中線で来ているか建物の近くの電柱、単線結線図、電気主任技術者への確認架空ならPAS、地中ならUGS・UASと、付ける機器と工事の進め方が変わります。
今、区分開閉器が付いているか単線結線図、点検報告書、電柱やキャビネットの機器付いていなければ新設が必要かを、付いていれば使用年数や点検の結果から更新・改修が必要かを確認します。
付いている場合は何年目か設置・使用開始の記録、点検報告書(銘板の製造年は参考。使い始めた年が分からなければ電気主任技術者に確認)更新推奨時期(屋外用のPASは使用開始後10年など)と比べて、急ぐかどうかを判断します。
何を指摘されたか点検報告書の指摘欄、電気主任技術者の説明未設置・年数・測定値の異常のどれかで、工事の範囲が変わります。
停電できる日社内の操業・営業の予定、テナントの予定工事する受電の系統を停電する必要があります。受電が1か所の一般的な建物では建物全体の停電になります。休日や夜間に合わせることが多くなります。

工事は、現地調査と見積もりのあと、電力会社への申し込みと協議、停電日の調整を経て行います。PASの新設では、電柱のどこに付けるか、隣の土地にはみ出さないかなど、電柱まわりの条件も電力会社と確認します。申し込みから停電当日、復電までの流れは、PAS・UGS交換工事の手順を解説した記事で順を追って説明しています。

※工事費用や停電の時間は、引込の形、電柱やキャビネットの状況、あわせて行う工事の範囲によって変わります。

施工事例

キュービクルの更新にあわせて、PASを新たに設置した事例です。変圧器の更新を計画するなかで、受電設備の安全性や近隣への影響も見直し、構内で地絡などの事故が起きたときに自社の設備を配電線から切り離せるようにしました。

キュービクル更新・PAS新設工事の現場(埼玉県所沢市・ビル屋上)
キュービクル更新・PAS新設工事
埼玉県 所沢市・ビル(屋上)

ほかのPAS・UAS(UGS)工事の工期や停電時間、工事のきっかけは、PAS・UAS(UGS)工事の事例13件を比較した記事で一覧にしています。停電を休日や休診日に合わせた例も載っているので、自社の停電計画を考える参考にしてください。

電気工事士に聞く、区分開閉器は必須? 付いていない建物がある理由

解説者

高橋 宏武
株式会社恒電社

高橋 宏武

大学卒業後、恒電社に入社したプロパー社員。電気工事士として、住宅の電気工事に加え、法人向けの高圧電気設備工事の直接提案を開始するなど、現在の会社の礎を創ってきたメンバー。2020年からは事業部長として、エンジニアリング事業部を統括している。プロフィールはこちら

インタビュアー

Iwami
株式会社恒電社

岩見啓明

恒電社ではマーケティング(動画、記事、広報、企画、セミナー運営、デジタル広告)に加え、人事やインサイドセールスなど、事業部を横断して活動。個人では登録者数1万人超えのYouTubeチャンネルを運用した経験の他、SDGsの啓蒙活動で国連に表彰された経歴を持つ。2023年に二等無人航空機操縦士(ドローンの国家資格)、2024年に第二種電気工事士資格を取得。≫プロフィールはこちら

恒電社の電気工事士が、過去のインタビューで区分開閉器の設置義務や、付いていない建物について話した内容を、公開済みの記事から原文のまま紹介します。発言に出てくるDS(断路器)は、遮断器などで電気を切ったあとに、回路を切り離すための機器です。電気が流れている状態や事故の電流を切る用途には使わず、事故を見つけて自動で切る機能もありません。

回答:高橋 宏武(恒電社 エンジニアリング事業部 事業部長)。出典:責任分界点とは?どこにあるか、財産分界点との違いとPAS・UGSの役割

ーーーPASやUAS(UGS)は、高圧受電の場合、必ずつけなければいけない設備なのでしょうか?

技術的に正確に言えば、法律(電気設備技術基準)で直接「PAS等を付けなければいけない」と明文化されているわけではない、というのが回答になります。

ただし、現代の基準においてPASなどの区分開閉器が付いていない状態で、新たに電力会社が高圧受電の契約(送電)を承認してくれることは、まずありません。これは電力会社が定めている「受電規程」というルールの中で、波及事故防止装置の設置が事実上の義務となっているからです。

※東京電力パワーグリッドの公開資料(受電設備の設計資料・2026年4月1日実施)では、地絡リレーの設置を求めています。発言にある「受電規程」という名前の規程や、新規受電の扱いを定めた条項は、この記事では確認できていません。区分開閉器の要否や仕様は、電力会社との協議と電気主任技術者への確認で判断します。

ーーーでは、古くからある建物では未設置の箇所もあるのでしょうか?

はい。現場を回っていると、築30年、40年という物件では、PASやUGSが設置されていないケースは現在でも一定数存在します。

建設当時に「DS(断路器)」という単純なスイッチだけで認可を受けていれば、その後の法改正や基準変更があっても、強制的にPASを付けろという命令は出ないんです。

ーーーなるほど。当時の基準では「合格」だったから、そのまま使い続けられているわけですね。

その通りです。それに加えて、PASの設置には100万円単位のコストがかかりますし、工事には工場やビル全体の「停電」が不可欠です。設備オーナー様からすれば、利益を生まない設備にそこまでの手間と費用をかける決断が難しい、という現実的な側面もあります。

※建設当時の基準で受電した設備でも、それだけで今後も使い続けてよいかが決まるわけではありません。設置者には設備を技術基準に適合するよう維持する義務があり(電気事業法第39条)、現在の設備の状態を確認したうえで、区分開閉器を追加するかどうかを電気主任技術者と相談して個別に判断します。「命令は出ない」という点は、取材時の現場の見方として紹介しています。電気事業法第40条は、技術基準に適合しない設備について、修理・改造や使用の一時停止などを命じることができると定めています。すでにある設備への当てはめは、設備の状態や適用される規定・経過措置などを確認して判断します。工事費用や、必要な停電の範囲・時間は、受電設備の構成や工事範囲によって変わります。

ーーー実際にPASがないことで起きた事故には、どのようなものがあるのでしょうか?

カラスの営巣や、ケーブル・トランスの経年劣化による絶縁破壊(パンク)などいくつかの原因があります。現場の感覚で言うと、意外と多いのは小動物が原因の事故ですね。

キュービクルの中は、小動物にとって暖かくて雨風もしのげる場所なんです。特に蛇は変温動物なので、寒い時期になるとキュービクルの中に入ってくることがあります。ネズミもよく入り込むことがありますね。

キュービクルの中には、LBSなどの充電部(電圧がかかっている部分)がむき出しになっている箇所があります。小動物が盤内を動き回っているうちに、電線の受電部分とキュービクルの金属部分、両方に同時に触れてしまい、それが原因で地絡事故が発生することがあります。

その場合、動物はほぼ確実に感電死し、設備側も焦げや損傷が発生します。接触した部分の機器は、交換が必要になることもあります。そのような事故が起きた際、PASの設置があればそのビルの停電だけで済みますが、未設置の場合、近隣への停電影響も出てしまいます。

※LBS(高圧交流負荷開閉器)は、キュービクルの中で電気を入れたり切ったりする開閉器です。ここでの説明は、地絡継電装置付きの区分開閉器(GR付PAS等)が保護するお客様側の範囲で地絡事故が起き、電力会社側との保護協調が確保されて機器が正常に動作した場合のものです。未設置の場合は波及事故のおそれが高まるという趣旨で、必ず近隣が停電するという意味ではありません。地絡に大きな過電流を伴って過電流ロックが働く場合は、電力会社側の遮断器が動作するため、周辺も一時的に停電することがあります。動物による事故の説明は取材者の現場経験にもとづくものです。

まとめ

  • 法令にPASという機器名で設置を一律に義務付ける条文はありません。ただし、設置者には、設備が壊れたときに電力会社の供給に著しい支障を及ぼさないように設備を設け、技術基準に合う状態を保つ義務があり、そのために一般に使われるのが区分開閉器(PAS・UGS・UAS)です。
  • 東京電力パワーグリッドは受電設備に地絡リレーの設置を求め、関東東北産業保安監督部は未設置の事業場にPASの設置をお願いしています。
  • 長く使われている事業場の一部には、PASが付いていない設備が残っています。関東東北産業保安監督部の2016年の資料では、管内の波及事故の約6割がPASの付いていない事業場で起きていました。
  • 「付けてください」と言われたら、引込の形、今の機器の有無と年数、指摘の内容、停電できる日を確かめ、電気主任技術者と相談して計画を立てます。

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点検で「PAS(UGS・UAS)を付けてください」と言われた、自社の設備に区分開閉器が付いているか分からない、という段階でもご相談ください。ご相談の際は、電気主任技術者の点検で指摘された内容をお知らせください。現地調査の前に年次点検報告書をご用意いただき、単線結線図もあると、工事の範囲を確かめやすくなります。

この記事を書いた人

Iwami
株式会社恒電社

岩見啓明

恒電社ではマーケティング(動画、記事、広報、企画、セミナー運営、デジタル広告)に加え、人事やインサイドセールスなど、事業部を横断して活動。個人では登録者数1万人超えのYouTubeチャンネルを運用した経験の他、SDGsの啓蒙活動で国連に表彰された経歴を持つ。2023年に二等無人航空機操縦士(ドローンの国家資格)、2024年に第二種電気工事士資格を取得。≫プロフィールはこちら

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