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絶縁抵抗の基準値は?低圧・高圧ケーブルの判定の目安と点検報告書の見方、下がったときの工事【2026年】

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コラム
投稿日:2026年10月26日
更新日:2026年10月26日
絶縁抵抗の基準値と見方|点検報告書の数値が下がったら?

年次点検の報告書に「絶縁抵抗」の欄があり、MΩ(メガオーム)という単位の数字が並んでいる。判定の欄に「要注意」と書かれていたり、電気主任技術者から「前回より下がっています」と言われたりして、どこまで急ぐ話なのか分からない。この記事は、そうした設備担当者・オーナーの方に向けて書いています。

低圧の電路は、法令で絶縁抵抗の最低値(0.1MΩ・0.2MΩ・0.4MΩ)が決まっています。高圧の電路と機器には、絶縁抵抗の一律の法令基準値がなく、業界団体の目安と、前回からの変化で判断します。高圧CVケーブルの絶縁体が業界団体の一次判定基準で「要注意」となった場合は、直流耐圧試験などの劣化診断を行い、その結果で最終的に判断します。

この記事では、絶縁抵抗の意味、低圧と高圧の基準の違い、点検報告書で見るところ、数値が下がる原因、下がっていたときの判断と工事を、恒電社の電気工事士の発言と施工事例をもとに解説します。点検報告書全体の読み方は、点検報告書の読み方と「要注意」と言われたときの対応を解説した記事で確認できます。

要約

絶縁抵抗は「電気の漏れにくさ」を表す数値
電線や機器は、電気が外へ漏れないように絶縁物で覆われています。絶縁抵抗はその漏れにくさを測った値で、大きいほど電気が漏れにくい状態です。絶縁抵抗の測定は、停電して設備を止めた状態で行います。

低圧は法令の基準値、高圧は目安と傾向で判断する
低圧の電路は、電気設備の技術基準で回路ごとの最低値が決まっています。高圧の電路と機器には絶縁抵抗の一律の法令基準値がなく、業界団体の判定の目安と、前回・前々回の測定値との比較で判断します。目安は測定電圧や対象によって違うため、報告書の条件をそろえて読みます。

下がった場所によって、行う工事が変わる
測り直して値が戻る場合もあります。電気主任技術者が更新・交換を必要と判断した場合は、原因のある場所に応じて、高圧ケーブルならケーブルの更新、断路器などの機器ならその機器の交換、複数の機器にわたる場合はキュービクルの全面更新を検討します。数値の判定は電気主任技術者が行い、工事は電気工事会社が行います。

この記事で使う言葉

言葉意味
絶縁電線や機器の電気が流れる部分を、電気を通しにくい材料(樹脂・ゴム・がいし・絶縁油など)で覆ったり離したりして、電気が外へ漏れないようにすること
絶縁抵抗絶縁がどれだけ電気を通しにくいかを表す値。単位はMΩ(メガオーム。1MΩは100万Ω)。値が大きいほど電気が漏れにくい
絶縁抵抗計(メガー)絶縁抵抗を測る計器。測る電路に合わせて、測定に使う電圧(125V・500V・1,000V・5,000Vなど)を選びます
低圧/高圧この記事で主に扱うのは、低圧では建物の中で照明・コンセント・動力に使う100V・200V・400V、高圧では電力会社から受電する6,600Vです。キュービクルは高圧を低圧に変える設備です
地絡電気が本来の通り道から外れて、大地や金属の箱などへ流れ出ること。絶縁が悪くなると起きやすくなります
絶縁破壊(パンク)絶縁が電圧に耐えられなくなり、壊れて電気が流れ出ること。高圧ケーブルで起きると停電につながります
水トリー高圧ケーブルの絶縁材の中に、水と電気の影響で小さな亀裂が木の枝のように広がっていく劣化
電気主任技術者キュービクルなどの高圧設備の保安を監督する人。点検で絶縁抵抗を測り、良否を判定します。保安管理を電気保安法人や電気管理技術者に外部委託している建物もあります

絶縁抵抗とは?点検で測る理由

電気設備の技術基準では、電路は大地から絶縁しなければならないと定められています(例外は接地工事を行う箇所など)。絶縁が悪くなると、電気が漏れて感電や火災、地絡による停電の原因になります。絶縁抵抗は、その絶縁の状態を数字で確かめるために測ります。

絶縁の状態を確かめる点検には、主に次の2つがあります(保安管理業務を外部委託している設備の標準的な例)。

点検頻度絶縁について確かめること
月次点検毎月など(保安規程で定める)設備を止めずに、B種接地工事の接地線に流れる漏れ電流を測り、低圧回路の絶縁状態を確かめる
年次点検原則として1年に1回以上停電して設備を止めた状態で、低圧の電路の絶縁抵抗が技術基準の値以上であること、高圧の電路が大地や他の電路と絶縁されていることを確かめる

※根拠:電気設備に関する技術基準を定める省令 第5条、経済産業省「主任技術者制度の解釈及び運用(内規)」の年次点検の規定、同「自家用電気工作物の標準的な点検項目」。信頼性が高く、所定の確認項目と同等と認められる点検を毎年行っている機器では、停電して行う点検を3年に1回以上とすることができます。

点検で絶縁抵抗を測り、良否を判定するのは電気主任技術者です。恒電社は電気工事会社で、電気主任技術者の保安業務は行っていません。恒電社が担うのは、数値が下がった箇所の更新・交換工事と、工事の後の試験です。

絶縁抵抗の基準値は、低圧と高圧で決まり方が違う

絶縁抵抗の基準の決まり方。低圧(100V・200V・400V)は法令で最低値が決まっている:300V以下・対地電圧150V以下は0.1MΩ以上、300V以下・上記以外は0.2MΩ以上、300V超は0.4MΩ以上。高圧(6,600V)は絶縁抵抗の一律の法令基準値はなく、業界団体の目安と比べる、前回・前々回の値と比べる、高圧CVケーブルが一次判定で要注意なら、劣化診断で判断する
低圧と高圧で、絶縁抵抗の基準の決まり方が違う

低圧は法令で最低値が決まっている

建物の中の照明・コンセント・動力などの低圧の電路は、電線同士の間と、電路と大地との間の絶縁抵抗が、開閉器や配線用遮断器(ブレーカー)で区切ることのできる回路ごとに、次の値以上と定められています。

電路の使用電圧絶縁抵抗の最低値
300V以下で、対地電圧が150V以下0.1MΩ
300V以下で、上記以外0.2MΩ
300Vを超えるもの0.4MΩ

※根拠:電気設備に関する技術基準を定める省令 第58条。対地電圧は、接地式の電路では電線と大地の間の電圧、非接地式の電路では電線の間の電圧です。停電できないなどで絶縁抵抗を測るのが難しい場合は、電圧が加わった状態での漏えい電流が1mA以下であればよいとされています(電気設備の技術基準の解釈 第14条)。

高圧には絶縁抵抗の一律の法令基準値がない

高圧の電路と機器について、技術基準は絶縁抵抗の数値を定めていません。技術基準の解釈では、使用電圧より高い所定の試験電圧を一定時間加えても耐える絶縁性能を定めており、新設・増設・修理して再使用するときなどに、この「絶縁耐力試験」で確かめます。

絶縁耐力試験は高い電圧を加えるため、繰り返すと絶縁を傷めるおそれがあります。そのため、毎年の定期点検では絶縁抵抗を測り、業界団体などが示す目安と、過去の測定値との比較で状態を判断するのが一般的です。

※根拠:電気設備の技術基準の解釈 第15条(最大使用電圧7,000V以下の交流の電路は、最大使用電圧の1.5倍の交流電圧を10分間加えて耐えること。ケーブルを使う交流の電路は、その2倍の直流電圧で試験することもできる)、国土交通省 公開資料「参考資料(点検・整備の解説)」。

高圧の目安は、資料ごとに測定の条件が違う

高圧の判定の目安は、どの資料のどの条件の値かで数字が大きく変わります。代表的なものを、条件と一緒に並べます。

資料対象と測定の条件目安
日本配電制御システム工業会「配電盤の豆知識」高圧の電路と機器。1,000V以上の絶縁抵抗計で、絶縁耐力試験の回路ごとに測る6kV回路で6MΩ以上を確保する(参考値)。新設時は、天候などの影響もあるが、数百MΩ以上を良とするのが通例
日本電力ケーブル接続技術協会「高圧ケーブル絶縁抵抗の一次判定基準」高圧CVケーブルの絶縁体。5,000Vで測る(G端子接地方式)5,000MΩ以上:良/500MΩ以上5,000MΩ未満:要注意/500MΩ未満:不良
同じく10,000Vで測る10,000MΩ以上:良/1,000MΩ以上10,000MΩ未満:要注意/1,000MΩ未満:不良

日本電力ケーブル接続技術協会の一次判定基準は、G端子接地方式で測る場合、遮へい層と大地の間の絶縁抵抗が1MΩ以上あることなど、測定の条件を確かめたうえで当てはめます。この1MΩ以上という条件は計器の内部抵抗が10kΩの場合で、使う計器によって異なります。

同じ6kVの設備でも、測定対象・測定電圧・測定方式が異なる値には、同じ判定の目安をそのまま当てはめられません。同じ資料の中でも、測定方式(G端子接地方式かどうか)によって判定表が変わります。高圧の数値は、測った対象・測定電圧・測定方式をそろえたうえで、目安と前回の値の両方と比べて読みます。日本電力ケーブル接続技術協会の資料では、一次判定基準で高圧CVケーブルの絶縁体が「要注意」と判定された場合、直流耐圧試験などの劣化診断やメーカーによる診断を行い、その結果で最終的に判断するとしています。

点検報告書の絶縁抵抗の欄で見るところ

報告書の書式は点検する会社によって違いますが、絶縁抵抗の欄では次の5点を確かめると、数字の意味が読み取りやすくなります。

見るところ確かめること
どの回路・機器の値か低圧のどのブレーカーの回路か、高圧のどの区間(引込ケーブル・キュービクル内の機器など)か
測定電圧(使用レンジ)と測定方式何Vの絶縁抵抗計で、どの方式(G端子接地方式など)で測った値か。高圧の目安と比べるときに必要です
判定良・要注意・不良などの判定と、その判定に使った基準
前回・前々回の値同じ回路の値が年々下がっているか、急に下がったか
測ったときの天候・温度・湿度雨の日や湿気の多い日は、値が低く出ることがあります

国土交通省の公開資料は、絶縁抵抗の値は温度・湿度・ほこりの付着などで大きく変わるため、その時の値だけで判断せず、メーカーの試験データや以前の測定記録と比べ、傾向をつかんだうえで判定することが大切だとしています。盤全体をまとめて測って値が足りない場合は、配線を外して機器・電線・ケーブルごとに測り、どこで下がっているかを見極めます。

報告書の値の意味がつかみにくいときは、点検を行った電気主任技術者に「どの回路の値か」「前回と比べてどうか」「すぐ工事が要る値か、次の更新計画でよい値か」を聞くと、工事会社に相談するときの材料がそろいます。

絶縁抵抗が下がる主な原因

高圧ケーブル:水分・端末の劣化・傷

高圧ケーブルの絶縁が下がる原因として多いのは、水分の影響、ケーブルの端(端末処理部)の劣化、工事中などについた傷です。地中の配管に水がたまっている場所では、水トリーが進みやすくなります。

経済産業省は2025年6月、製造から15年に満たない比較的新しい高圧ケーブルが絶縁破壊し、電力会社の配電線まで停電させる波及事故が増えているとして、改めて注意を呼びかけました。高圧ケーブルの絶縁破壊による波及事故のうち、製造から15年未満のケーブルの割合は令和元年度から令和5年度まで増加傾向にあります。また、製造から15年未満の高圧ケーブルに発生した絶縁劣化の主な原因は、NITE(製品評価技術基盤機構)などの調査で水トリーと確認されています。そのうえで、劣化の兆候が確認された場合は、更新推奨時期に満たなくても速やかに更新するよう求めています。

恒電社が対応した現場でも、点検時に高圧ケーブルの絶縁抵抗が5,000V・E法の測定で30GΩ(30,000MΩ)あったのに、その約1か月後に地絡したケースがありました(このE法の測定値には、前に挙げたG端子接地方式の一次判定基準をそのまま当てはめられません)。製造から8年ほどのケーブルで、メーカーの見解は水の影響による水トリーの可能性でした。絶縁抵抗の推移で劣化の前兆をつかめることはありますが、水の影響を受ける場所のケーブルは、値だけでなく敷設環境や年数も合わせて更新の時期を考えます。

キュービクルの機器:ほこりと湿気、絶縁物の劣化

キュービクルの中の機器は、電気が流れる部分を、がいしや樹脂などの絶縁物で金属の箱や大地から離しています。周りが畑で砂ぼこりが舞う場所や海沿いの施設では、機器に付いたほこりが湿気を含み、絶縁が下がりやすくなります。絶縁物そのものの経年劣化や、変圧器の絶縁油の劣化も、絶縁抵抗の値を下げる原因になります。

低圧の回路:つないでいる機器が原因のこともある

低圧の回路で「絶縁不良」と指摘された場合、コンセントにつないだ機器が原因で値が下がっていることもあります。あるホテルの電灯回路の調査記録では、125Vレンジで測った値が、客室のコンセントで海外製品を変換アダプタ経由で使っていた時は0.06MΩ、そのコンセントを使っていない時は1.7MΩでした。回路ごとに、つないでいる機器を外して測り直すと、配線を直す工事が要るかどうかを切り分けられます。

関東東北産業保安監督部の管内では、令和7年度に報告された自家用電気工作物の波及事故67件のうち、点検・手入れの不足や自然劣化などの「保守不備」が70.1%で最も多くなっています(同監督部の管内の集計です)。

高圧ケーブルの絶縁が下がっている、地中の配管に水が入っているかもしれないといった段階でも、現地調査で既設のルートを使えるかを確かめ、停電の切替と更新後の試験まで含めた段取りをご提案します。

電気工事士に聞く、絶縁抵抗の数値と設備のトラブル

絶縁抵抗の数値から何が分かり、どこからが「待てない」状態なのか。恒電社エンジニアリング事業部の高橋と鷲巣が、公開済みの取材記事で答えた内容を引用します。出典は各回答の後に記載しています。

解説者

高橋 宏武
株式会社恒電社

高橋 宏武

大学卒業後、恒電社に入社したプロパー社員。電気工事士として、住宅の電気工事に加え、法人向けの高圧電気設備工事の直接提案を開始するなど、現在の会社の礎を創ってきたメンバー。2020年からは事業部長として、エンジニアリング事業部を統括している。プロフィールはこちら

解説者

鷲巣 純一
株式会社恒電社

鷲巣 純一

通信工事や、オール電化など住宅の電気工事業などを経て、恒電社に入社。現在は、法人向け電気設備工事の提案から施工までを担うエンジニアリング事業部のマネージャー職に加え、技術者の視点から自家消費型太陽光発電システムの現場管理も行う。

インタビュアー

Iwami
株式会社恒電社

岩見啓明

恒電社ではマーケティング(動画、記事、広報、企画、セミナー運営、デジタル広告)に加え、人事やインサイドセールスなど、事業部を横断して活動。個人では登録者数1万人超えのYouTubeチャンネルを運用した経験の他、SDGsの啓蒙活動で国連に表彰された経歴を持つ。2023年に二等無人航空機操縦士(ドローンの国家資格)、2024年に第二種電気工事士資格を取得。≫プロフィールはこちら

点検で分かること、分からないこと

ーーーそもそもトラブルは、点検によって事前に防ぐことはできないのでしょうか?

完全に防ぐことは難しいです。多くのトラブルは経年劣化が原因となることが多い一方、劣化の進行自体は止められません。ただし、点検によって前兆を把握することは可能です。たとえば、絶縁抵抗の数値が徐々に低下していくといった数値面での変化や外観の異常を発見することはできます。

ーーー放置した場合、具体的にどのようなトラブルが起こりますか?

大きく3つのリスクがあります。まず、劣化が限界を超えたタイミングで突然設備が停止する突発的な停電。次に、絶縁劣化や接触不良が進むことによる発熱・発火(火災)。そして、工場の操業停止や店舗の営業停止といった事業停止リスクです。「昨日まで問題なかったのに突然止まる」というのが高圧設備の怖いところで、同じ「要注意」でも設備の状態や環境によって緊急度は大きく変わります。現地確認を前提に判断することが重要です。

出典:点検報告書の読み方を解説した記事(解説:高橋)

高圧ケーブルの絶縁破壊は突然起こる

ーーー実際の現場で多い高圧ケーブルのトラブルにはどんなものがありますか?

ケーブルに関してのトラブルで多いのはいわゆる「パンク」、つまり絶縁破壊です。原因はさまざまですが、最終的には絶縁が耐えられなくなって地絡する、という形です。

原因として多いのは、水分の影響による劣化、端末部分の劣化、物理的な損傷などですね。

地中配管だと水が入っていることも多いので、そこから劣化が進むケースはよくあります。また、物理的な損傷の具体例としては、工事中にケーブルを挟んでしまったり、配管が変形してケーブルにダメージが入るイメージです。

ーーーこういったトラブルは突然発生するものなのでしょうか?

そうですね。劣化が原因の場合、劣化自体は時間をかけて進みますが、最終的な絶縁破壊は突然起こることが多いです。

絶縁低下など数字で確認できる予兆もあるのですが、必ずしも段階的に進むとは限らないので、気付いたら電気が止まっていたというケースもあります。

出典:高圧ケーブルの種類と劣化の見極め方を解説した記事(解説:高橋)

「待てる・待てない」の分かれ目

ーーー「更新を勧められたけれど、予算の関係で来年にしたい」という相談を受けた場合、どこをチェックして「待てる・待てない」を判断しますか?

まず、大前提として法定耐用年数や推奨更新年数を超えている設備は、基本的に更新をお勧めします。

その上で、特に「待てない(今すぐ更新すべき)」と判断する基準は、直近で漏電やショートのリスクが非常に高まっているケースです。具体的には、絶縁抵抗値が著しく低下している場合や、屋外設置のキュービクル等において、目視でサビによる穴あき(またはその一歩手前の状態)が確認できる場合です。

ここから雨水が侵入すれば、即座に全停電や火災に直結するため猶予はありません。また、主遮断器(VCBやLBS)や、波及事故防止機器(PASやUGS)に異音・過熱などの兆候がある場合も同様です。これらが故障すると、自社施設だけでなく近隣地域一帯を巻き込む「波及事故」に発展し、莫大な損害賠償リスクを負うことになるため、即時対応を強く推奨します。

一方で、法定耐用年数や推奨更新年数を超えている場合でも、「待てる」(猶予を見込める)のは、年次点検などの測定データが極めて安定しており、目視でも内部・外観に変色やサビ、異音などの異常が一切認められない場合です。

出典:電気主任技術者に更新を勧められたときの進め方を解説した記事(解説:高橋)

絶縁不良が起こりやすい場所

ーーー「点検しづらい場所や汚れやすい場所」とは具体的にどういった場所でしょうか?

例えば、畑の近くにある設備では、風によって砂ぼこりが舞い、ケーブルやキュービクル内部の機器に砂が溜まりやすくなります。そこにほこりが付着し、水分を含むことで、絶縁不良を起こしやすい環境が生まれてしまいます。

このような状況で何度もヒューズ交換が発生すれば、その分コストが積み重なっていくのは避けられません。

出典:LBSの故障で起こるトラブルを解説した記事(解説:鷲巣)

絶縁抵抗が下がっていたときの判断と工事

数値が下がっていたときは、まず電気主任技術者に、緊急性と設備を使い続けてよいかを確認します。そのうえで、次の順で進めると、必要な工事の範囲を決めやすくなります。判定は電気主任技術者、工事は電気工事会社が担います。

  1. 条件を確かめて測り直す:温度・湿度・汚れなど測定時の条件や、回路につないだ機器が影響していないかを確かめ、必要に応じて測り直します。
  2. 下がっている場所を特定する:配線を外して機器・電線・ケーブルごとに測り、どこで下がっているかを見極めます。
  3. 高圧ケーブルは劣化診断で判断する:一次判定基準で絶縁体が「要注意」なら、直流耐圧試験などの劣化診断で、更新が要るかを判断します。
  4. 工事の時期を決める:当てはめる基準・目安、測定値の推移、外観、敷設の環境、劣化診断の結果をもとに、電気主任技術者が緊急性と使い続けてよいかを判断します。その判断をもとに、すぐ工事するか、次の更新計画に組み込むかを決めます。
絶縁抵抗が下がっていたときの流れ。1 電気主任技術者に緊急性を確認、2 条件を確かめて測り直す、3 下がっている場所を特定する、4 CVケーブルが一次判定で要注意なら劣化診断、5 工事の時期を決める。更新・交換が必要と判断された場合の工事は、高圧ケーブルの更新、機器の交換、キュービクルの全面更新に分かれる。判定は電気主任技術者、工事は電気工事会社
数値が下がっていたときの進め方。下段の工事は、更新・交換が必要と判断された場合(判定:電気主任技術者/工事:電気工事会社)

更新・交換が必要と判断された場合の、場所ごとの主な工事は次のとおりです。

下がっている場所主な工事工事の前に確かめること
高圧ケーブル(引込ケーブル・構内ケーブル)高圧ケーブルの更新既設の配管・ルートを使えるか、地中配管に水がたまっていないか、ケーブルの納期
キュービクル内の個別の機器(断路器・LBS・VT・CTなど)その機器の交換同じ年代の他の機器の状態、交換部品の入手
複数の機器にわたる・キュービクル全体が古いキュービクルの全面更新または部分更新どこまでを入れ替えるか、搬入経路と停電できる時間
油入変圧器メーカーなどによる絶縁油・内部の絶縁の診断結果に応じた処置、または変圧器の更新診断の結果、PCBの含有の有無
低圧の回路配線・ブレーカーの交換や回路の改修つないでいる機器が原因でないか

高圧ケーブルや機器の更新では、工事の範囲に応じて停電を計画します。電力会社への停電の依頼が必要な工事は、電力会社との日程の調整も行います。恒電社では、電力会社の停電枠が必要な工事について、日曜日は枠が混み合うことから、希望日の3〜4か月前のご相談をお願いしています。2026年は高圧ケーブルの入手に時間がかかる場合があり、ケーブルの納期も工程に入れて計画します。

キュービクル内の機器の交換や全面更新については、キュービクル新設・更新・撤去・修繕工事のサービスページで工事の内容を紹介しています。

工事の緊急性は電気主任技術者にご確認ください。そのうえで工事の範囲や時期に迷ったら、点検報告書をお手元にご相談ください。恒電社は、電気主任技術者の判断と報告書をもとに、下がっている場所と年数、敷設の環境を現地で確かめ、ケーブルの更新・機器の交換・全面更新の工事範囲と停電の日程、見積をご提案します。

施工事例|絶縁の低下に対応した工事

絶縁の低下が分かったあと、実際にどんな工事を行ったのかを、恒電社の施工事例3件で紹介します。「ご相談の内容」「行った工事」「判断にどう使えるか」の3段でまとめています。

事例1:絶縁不良が出た高圧ケーブルの更新(埼玉県・福祉施設)

高圧ケーブル更新工事|埼玉県・福祉施設
高圧ケーブル更新工事
埼玉県・福祉施設
  • ご相談の内容:老朽化により絶縁不良が出ている高圧ケーブルを更新したい、というご依頼でした。
  • 行った工事:事例ページの掲載値は、工期1日・停電3時間・費用レンジ約100万円です。電力会社と電気主任技術者との事前の打ち合わせを重ね、作業は約3時間で終わりました。ご依頼の時点で高圧ケーブルの入手に時間がかかる状況だったため、決裁までに時間がかかる場合の再見積もりの可能性と、ケーブルの入手に時間がかかる可能性を事前にご説明しました。
  • 判断にどう使えるか:絶縁の低下がケーブルに限られている場合は、端末・接続部や周辺の機器の状態も確かめたうえで、ケーブルの更新を中心に工事の範囲を検討できます。ケーブルの入手に時間がかかる時期は、発注の時期によって希望する工事日に間に合わない可能性があるため、早めに見積と納期を確認すると計画が立てやすくなります。

事例2:絶縁抵抗値の低下が分かったキュービクルの全面更新(埼玉県・企業)

キュービクル更新工事|埼玉県
キュービクル更新工事
埼玉県
  • ご相談の内容:電気主任技術者の方から、老朽化したキュービクルと高圧ケーブルを一新したいとご依頼いただきました。
  • 行った工事:事例ページの掲載値は、工期1日・停電5時間です。現地確認で絶縁抵抗値の低下を含む設備全体の経年の状況を確かめ、ほぼすべての内部機器を含めた全面更新を行いました。工事は営業に支障が出ないよう休日に行い、回路表示やケーブルタグも整えました。
  • 判断にどう使えるか:絶縁の低下が複数の機器にわたり、設備全体の年数も進んでいる場合は、個別の交換を重ねるより全面更新のほうが停電の回数を減らせることがあります。

事例3:絶縁不良の断路器の交換と引込ケーブルの更新(埼玉県・店舗)

高圧ケーブル更新工事(引込ケーブル・断路器・高圧進相コンデンサ)|埼玉県・店舗
高圧ケーブル更新工事(引込ケーブル・断路器・高圧進相コンデンサ)
埼玉県・店舗
  • ご相談の内容:高圧受電設備の更新工事のご依頼でした。
  • 行った工事:絶縁不良のため断路器(ディスコン)を交換し、あわせて電柱から受電設備までの引込ケーブルと高圧進相コンデンサを交換しました。作業は夜間に、電気主任技術者の立ち会いのもとで行いました。
  • 判断にどう使えるか:絶縁不良が特定の機器に出ている場合は、周辺の機器の状態も確かめたうえで、その機器の交換を中心に工事の範囲を検討できます。同じ停電の機会に、年数の進んだ他の機器やケーブルもまとめて交換すると、停電の回数を抑えられます。

まとめ

  • 絶縁抵抗は電気の漏れにくさを表す数値で、停電して設備を止めた状態で測ります。判定は電気主任技術者が行います。
  • 低圧の電路は、回路ごとの最低値(0.1MΩ・0.2MΩ・0.4MΩ)が法令で決まっています。高圧の電路と機器には絶縁抵抗の一律の法令基準値がなく、業界団体の目安と過去の測定値との比較で判断します。目安は測定電圧と対象で変わるため、条件をそろえて読みます。
  • 高圧CVケーブルの絶縁体が一次判定基準で「要注意」となった場合は、直流耐圧試験などの劣化診断の結果で最終的に判断します。高圧ケーブルは水分・端末の劣化・傷で絶縁が下がり、絶縁破壊は突然起こることがあります。製造から15年未満でも、水の影響を受ける場所では水トリーによる事故が起きています。
  • 数値が下がっていたら、まず電気主任技術者に緊急性を確認し、条件を確かめて測り直し、場所を特定して、工事の要否と、必要な場合はケーブルの更新・機器の交換・全面更新のどれが合うかを決めます。高圧の工事は停電の調整とケーブルの納期を見込んで計画します。

恒電社は、埼玉県・東京都を中心に、高圧ケーブルの更新、キュービクル内の機器の交換、キュービクルの全面更新を行う電気設備工事会社です。電気主任技術者の保安業務は行いませんが、点検報告書の内容をもとに、工事の範囲と停電の段取りをご提案します。

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絶縁抵抗の値の読み方が分かったら、次は下がっている場所に合った工事を決める段階です。点検報告書と設備の状態を確かめ、工事の範囲と停電の段取り、見積の内訳をまとめてご提案します。

この記事を書いた人

Iwami
株式会社恒電社

岩見啓明

恒電社ではマーケティング(動画、記事、広報、企画、セミナー運営、デジタル広告)に加え、人事やインサイドセールスなど、事業部を横断して活動。個人では登録者数1万人超えのYouTubeチャンネルを運用した経験の他、SDGsの啓蒙活動で国連に表彰された経歴を持つ。2023年に二等無人航空機操縦士(ドローンの国家資格)、2024年に第二種電気工事士資格を取得。≫プロフィールはこちら

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