更新日:2026年10月24日
使わなくなったキュービクルを撤去したい、電気の使い方が減ったので高圧受電をやめたい、建物を解体するので高圧設備を片付けたい。こうした場面で最初に出てくる疑問が「撤去にいくらかかるのか」「何を誰に頼めばよいのか」です。
キュービクル撤去の主な費用は、取り外しと搬出、運搬と産業廃棄物の処分、PCBの調査と処理、付帯設備の工事、申請の対応の5つです。低圧化では、低圧側の工事と電力会社の工事費負担金も確かめます。恒電社が公開している撤去の施工事例2件は、いずれも費用レンジ「100万円以下」でしたが、設置場所やPCBの有無、電力会社側の工事の要否で金額は変わります。
この記事では、撤去が必要になる3つのケース(低圧化・建物の解体・更新)ごとに、費用の内訳、工事の流れ、PCBが含まれていた場合の進め方、設置者が行う届出を、埼玉県戸田市と東京都葛飾区の施工事例をもとに解説します。高圧から低圧への切替工事そのものの手順は、高圧・低圧切替工事の手順を21工程で解説した記事で確認できます。
要約
撤去が必要になる3つのケース
①電気の使い方が減って高圧受電から低圧受電に切り替える「低圧化」、②建物の解体や閉鎖で電気の契約をやめる「廃止」、③古いキュービクルを新しいものに入れ替える「更新」です。ケースごとに、電力会社への申請の内容と撤去後に残る設備が変わります。
費用は置き場所・PCBの有無・電力会社側の工事で変わる
屋上からクレーンで吊り下ろすのか地上でトラックに積めるのか、絶縁油にPCBが含まれているか、電力会社側の工事が必要かで見積の内訳が変わります。PCBの分析費・処分費と電力会社の工事費負担金は、工事会社の見積に含まれるか別途かを確かめる項目です。
撤去の後に、設置者が行う届出が残る
高圧受電をやめる場合は、電力会社への廃止の手続きのほか、主任技術者の選任・外部委託の形態と残る設備に応じて、解任の届出と産業保安監督部への廃止の報告を行います。撤去した機器は、工事を請け負った元請業者が許可を受けた業者に処理を委託し、管理票(マニフェスト)で処分の完了を確かめます。PCB廃棄物は所有者が処分を委託します。
この記事で使う言葉
| 言葉 | 意味 |
|---|---|
| キュービクル | 電力会社から届く高圧(6,600V)の電気を、建物で使う低圧(100V・200V)に変える機器をまとめた金属の箱。高圧受電設備ともいいます |
| 高圧受電/低圧受電 | 低圧と高圧を分ける目安は、契約電力が原則50kWです。高圧受電では建物側にキュービクルなどの受変電設備を設け、低圧受電では電力会社側の変圧器で変圧した電気を受け取ります。供給設備の状況による例外があり、新設や設備変更では契約設備電力などで判定されます |
| 低圧化(高圧・低圧切替) | 高圧受電をやめて低圧受電に切り替えること。切り替えた後は、キュービクルが不要になります |
| 電気主任技術者 | キュービクルなど事業用電気工作物の工事・維持・運用の保安を監督する人。原則として免状を持つ人を選任します。許可を受けて免状のない人を選任する制度や、承認を受けて主任技術者を選任せず、保安管理業務を電気保安法人や電気管理技術者に外部委託する制度もあります |
| 工事費負担金 | 電力会社側の設備工事について、約款などの条件に応じて申込者などが負担する費用 |
| PCB(ポリ塩化ビフェニル) | かつて変圧器やコンデンサの絶縁油に使われた有害物質。古い機器には微量に混ざっている(低濃度PCB)ことがあり、含まれていると処分の方法と期限が法律で決まっています |
| 産業廃棄物とマニフェスト | 撤去した機器は産業廃棄物として、許可を受けた業者に運搬・処分を委託します。工事で出る廃棄物は、工事を請け負った元請業者が排出事業者です。マニフェスト(産業廃棄物管理票)は、処分が終わったことを確かめる伝票です |
キュービクルを撤去するのはどんなとき?3つのケース
撤去の相談は、大きく3つの場面に分かれます。どの場面かで、電力会社への申請、残る設備、撤去の時期が変わります。
| ケース | よくあるきっかけ | 電気の契約 | 撤去の後に残るもの |
|---|---|---|---|
| ①低圧化 | 業態の変更やテナントの入れ替えで使う電気が減った。契約電力が50kW未満で足りる | 高圧契約を廃止し、低圧の契約を新しく結ぶ | 低圧の引込線・分電盤・電力量計(電力会社側の変圧器から低圧で受電) |
| ②建物の解体・閉鎖(廃止) | 建物を取り壊す、事業所を閉じる、売却に合わせて設備を片付ける | 高圧契約を廃止する(新しい契約はない) | 何も残さない。解体工事の前に電気を止めて撤去する |
| ③更新(入れ替え) | 古くなったキュービクルを新しいものに交換する | 高圧契約は続く。設備更新の申請を電力会社に出す | 新しいキュービクル。古い本体の搬出・処分の範囲と費用が更新工事の見積に含まれるかを確認する |
①の低圧化では、高圧のまま設備を更新して使い続ける費用と、低圧に切り替える費用(切替工事・撤去・工事負担金)を並べて判断します。比べ方は後半の「電気工事士に聞く」で高橋が説明しています。低圧化の工事そのものについては、高圧・低圧切り替え工事のサービスページもご覧ください。
③の更新は、撤去が更新工事の一部になります。進め方はキュービクル更新工事の手順を解説した記事で確認できます。以下では、①と②の「撤去して高圧受電をやめる」場合を中心に説明します。
撤去の費用は何で決まるか|見積の内訳と変動要因
撤去の見積は、おおむね次の項目でできています。「どこに置いてあるか」「絶縁油にPCBが含まれているか」「電力会社側の工事が要るか」で金額が変わります。
| 項目 | 何にかかる費用か | 金額が変わる要因 |
|---|---|---|
| 取り外し工事 | 停電して高圧ケーブルと低圧の配線を切り離し、本体を基礎から外す作業。電気工事士が行います | 本体の台数と大きさ、屋内か屋外か、停電できる時間 |
| 重機と搬出 | ラフタークレーン・高所作業車・トラックの手配、交通誘導員の配置、道路を使う場合の道路使用許可 | 屋上か地上か、クレーンを置く道路の幅と交通量、搬出経路 |
| 運搬と産業廃棄物の処分 | 許可を受けた収集運搬業者と処分業者への委託。工事で出る廃棄物は元請業者が委託し、マニフェストで処分の完了を確認します | 重量、絶縁油の有無、処分先までの距離 |
| PCBの検査と処分 | 絶縁油を採取して専門機関で濃度を分析する費用。含まれていた場合は、そのPCB廃棄物を扱える環境大臣認定の無害化処理施設または都道府県知事等の許可施設での処分費と、対象物を扱える許可を持つ業者の収集運搬費が別に必要です | 製造年、台数、分析の結果 |
| 電力会社の工事費負担金(低圧化の場合) | 低圧で供給するための電柱・電線などの工事内容と適用条件により、電力会社から工事費負担金を求められる場合があります。工事会社の見積に含まれるか、別途支払うかを確かめます | 地域の配電設備の状況。架空線か地中線か |
| 付帯設備の工事 | 引込柱(1号柱)の撤去、柱に共架された電話線・通信線の移設、低圧化の場合の分電盤・配線の工事 | 現場ごとに異なる。電話線の移設は通信会社との調整が必要 |
| 申請・届出の代行 | 電力会社への申請、工事完了の報告書など。設置者の名前で出す届出(主任技術者の解任、廃止の報告)は後述します | どこまで工事会社に任せるか |
恒電社が公開している撤去の施工事例では、埼玉県戸田市の物流倉庫(撤去と低圧化・工期2日・停電1時間)と、東京都葛飾区のビル屋上(PCB含有機器の撤去と低圧化・工期1日・停電3時間)が、いずれも費用レンジ「100万円以下」でした。葛飾区の事例では、PCB含有機器の処分は所有者と許可業者が直接契約しています(掲載の費用レンジに含まれる範囲は、個別の見積で確認が必要です)。
見積を比べるときは、「PCBの分析費が入っているか」「PCB廃棄物の処分費は別か」「電力会社の工事費負担金は含まれるか別途か」の3点を必ず確かめてください。この3つは工事会社によって扱いが違い、総額の差の原因になります。工事費の内訳の見方は、キュービクルの価格と工事費の内訳を解説した記事も参考になります。
撤去の範囲、搬出経路、PCBの可能性は、現地で確かめて見積に反映します。キュービクルの撤去・低圧化の現地調査と見積は、以下のページからご相談いただけます。
撤去工事の流れ|相談から処分の完了まで7つのステップ
低圧化と廃止のどちらも、工事日は電力会社の工事日と停電できる日で決まります。この記事で紹介する2事例の掲載工期は1日と2日で、実際の工期は撤去の範囲、搬出の条件、PCB処分の手配で決まります。恒電社のよくある質問では、高圧工事の停電には電力会社の停電枠が必要で、日曜日は枠が混み合うため、希望日の3〜4か月前のご相談をお願いしています。

- 現地確認と見積:電気料金の請求書で契約内容を確かめ、設置場所、搬出経路、引込柱に共架された電話線などを見ます。PCBの判別には、箱ではなく中の変圧器・コンデンサの銘板と保守履歴が要るため、機器台帳・年次点検報告書・銘板の写真を用意します。通電中の機器の銘板確認は、電気主任技術者か保安管理の委託先に依頼します。採油できる機器は、この時点で分析の段取りを決めます。
- 契約と電力会社への申請:工事の契約を結んだ後、低圧化なら「高圧契約の廃止」と「低圧の新設」を、廃止なら高圧契約の廃止を申し込みます。電気の契約の廃止・新設は契約している小売電気事業者に、引込線や計量器など設備の工事は一般送配電事業者に手続きを進め、実務では工事会社が申込を代行します。東京電力パワーグリッドでは、低圧(50kW未満)と高圧・特別高圧(50kW以上)で申込の窓口が分かれています。
- 電気主任技術者との調整:高圧受電を止める日を電気主任技術者に伝え、当日の開閉器(PAS)の開放や、解任の時期を相談します。外部委託している場合は委託先に手続きを確認します。
- 低圧側の準備(低圧化の場合):低圧受電用の配線・分電盤・電力量計を設置し、低圧の供給開始日に切り替えます。切替の21工程は別記事で解説しています。
- 高圧受電の停止と撤去:電力会社が高圧側の送電を止め、電力量計や計器用変成器(VCT)など電力会社が所有する設備を撤去・回収します。工事会社は高圧ケーブルを切り離し、本体をクレーンで搬出します。電話線が共架された引込柱は、通信会社と調整して回線を別の柱に移してから撤去します。
- PCB検査と産業廃棄物の処分:採油できる変圧器などは事前に、封じ切りのコンデンサは使用を終えてから絶縁油を分析し、結果に応じて、PCB廃棄物に当たらない場合の産業廃棄物としての処理と、PCB廃棄物としての処理(所有者が処分を委託)に分けます。判定の時期に合わせて、撤去・保管・処分の日程を組みます。
- 完了報告と届出:工事完了の報告書とマニフェストの控えを受け取ります。設置者は、主任技術者の選任・外部委託の形態と残る設備に応じて、解任の届出と産業保安監督部への廃止の報告を行います。
設置者が行う届出|電力会社の手続きとは別に必要なもの
電力会社への申請は工事会社が代行できます。次の届出は、設備を設置していた事業者(設置者)の名前で行います。書類作成や申請代行の担当と、その費用が工事の見積に含まれるかを確認します。
| 手続き | 誰が・どこへ | 内容 |
|---|---|---|
| 電気主任技術者の解任の届出 | 設置者 → 所轄の産業保安監督部 | 主任技術者を通常の方法で選任していた場合、解任したときは遅滞なく届け出ます。免状のない人を許可を受けて選任していた場合などは、所轄の監督部に手続きを確認します。関東東北産業保安監督部では、保安ネット(電子申請)で「主任技術者の選任/解任届出」ができます。保安管理業務を外部委託している場合は、委託契約の終了と手続きを委託先と監督部に確認します |
| 自家用電気工作物の廃止の報告 | 設置者 → 所轄の産業保安監督部 | 低圧化などで、自家用電気工作物としての事業場を廃止するときは「自家用電気工作物廃止報告」を行います。関東東北産業保安監督部では保安ネットの電子申請の対象です。発電設備などが残る場合の扱いと様式は、所轄の監督部で確認します |
| 産業廃棄物の委託契約とマニフェスト | 元請業者(排出事業者) ⇔ 許可を受けた収集運搬業者・処分業者 | 工事で出る産業廃棄物は、工事を請け負った元請業者が排出事業者として、許可業者と書面で委託契約を結び、引き渡しのときにマニフェストを交付します。設置者は完了後にマニフェストの控えで処分を確かめます |
| PCB廃棄物の届出と処分 | 保管事業者(所有者) → 都道府県知事(使用中の電気工作物は産業保安監督部) | 分析でPCB廃棄物と分かった機器は、所有者が毎年度の保管・処分状況の届出と、期限内の処分(処分の委託を含む)を行います。使用中の変圧器などでPCB含有と分かった場合と、その使用をやめた場合は、電気事業法に基づく所轄の産業保安監督部への届出も確認します。詳しくは次の節で説明します |
※根拠:電気主任技術者の解任の届出は電気事業法第43条第3項(様式は電気事業法施行規則第55条・様式第46)。通常の産業廃棄物の委託は廃棄物処理法第12条第5項・第6項と同法施行令第6条の2(書面による委託契約)、PCB廃棄物など特別管理産業廃棄物の委託は同法第12条の2第5項・第6項、マニフェストは同法第12条の3、建設工事で出る廃棄物の排出事業者は同法第21条の3(元請業者)。廃止の報告の様式は各産業保安監督部の案内による。
PCBが含まれていたらどうなる?|検査の結果で工程を分ける
PCBの有無によって、分析・保管・処分の工程と費用が変わります。古い変圧器やコンデンサの絶縁油には、製造時に意図せず微量のPCBが混ざっていることがあり(低濃度PCB)、含まれていると普通の産業廃棄物として処分できません。
製造年で可能性を絞り、絶縁油の分析で確かめる
環境省のパンフレット(令和5年10月版)では、国内メーカーが平成2年(1990年)頃までに製造した電気機器にPCB汚染の可能性があるとされています。絶縁油の入れ替えができないコンデンサは平成3年(1991年)以降の製造なら可能性はなく(ニチコン製は平成3年以降でも報告あり)、変圧器のように絶縁油の保守ができる機器は、平成6年(1994年)以降の出荷で、絶縁油の交換などの保守が行われていないことを確かめられれば可能性はないとされています(富士電機製の一部は、平成6年までの出荷品に可能性が残るとされています)。これより古い機器は、絶縁油を採取して専門機関で濃度を測ります。
分析の結果、絶縁油のPCB濃度が0.5mg/kgを超え5,000mg/kg以下の機器は、廃棄物となった後、「低濃度PCB廃棄物」として扱います。封じ切りのコンデンサは、絶縁油を採るために穴を開けると使えなくなるため、使用中は分析できず、撤去した後に分析するのが一般的です。見分け方の詳しい手順は、PCB含有機器の見分け方と調査の手順を解説した記事をご覧ください。
結果が「不含有」なら通常の産業廃棄物として処理、「含有」なら処分の契約を先に

戸田市の事例では、撤去する機器を専門機関で分析した結果「不含有」と分かったため、産業廃棄物として処理しました。葛飾区の事例では、1978年製のコンデンサなどが基準値を超えて検出されたため、所有者と許可を受けた処理業者の間で廃棄物処理・収集運搬の委託契約を結び、2024年11月に高圧・低圧の切替を先に行い、2025年3月に撤去と引き渡しを行いました。
PCBの可能性がある機器は、採油できるものは事前に分析し、封じ切りのコンデンサは使用を終えてから分析して、判定の時期に合わせて撤去・保管・処分の日程を組みます。同じキュービクルの中でも、複数の変圧器を分析して一部だけが該当することがあり、該当した機器とそれ以外で処分先が変わります。
処分の期限と2027年4月からの制度(2026年10月時点)
現行のPCB特別措置法では、低濃度PCB廃棄物の処分期限は2027年3月31日です。2026年6月19日に公布された改正PCB特別措置法(2027年4月1日施行)では、使用中の低濃度PCB使用製品に届出と管理の制度が設けられます。ただし、変圧器やコンデンサなど政令で定める電気工作物は、使用中の届出・管理については改正PCB特別措置法ではなく電気事業法の定めによって扱われます(環境省の2026年8月18日時点の資料で12品目を検討中)。使用を終えてPCB廃棄物となった後は、PCB特別措置法に基づく処分義務の対象になります。処分の期間は、使用製品が使用終了によって廃棄物となる場合は使用終了日、保管中の廃棄物が低濃度PCB廃棄物と分かった場合は判明日を起点として、政令で定める期間内です。期間は同資料で「5年」と規定する方向で検討中です。一方、改正法の経過措置により、2027年3月末までに保管・届出された低濃度PCB廃棄物は、引き続き2027年3月31日までに処分(処分の委託を含む)する必要があります。
低濃度PCB廃棄物の分析・処理には助成制度があります。利用する場合は、対象の要件と、契約・分析・処分に着手できる時期を申請先に確認します。処分の手順と届出、費用の目安は次の記事をご覧ください。
※根拠:PCB特別措置法第2条(定義)・第14条(低濃度PCB廃棄物の期間内の処分)・第15条による第8条第1項等の準用(保管等の届出)、環境省「改正法案について」(令和8年4月)、環境省「PCB特措法の改正を踏まえた政省令改正の検討状況」(令和8年8月18日)、環境省パンフレット「PCB使用製品及びPCB廃棄物の期限内処理に向けて」(令和5年10月版)。
電気工事士に聞く、低圧化とキュービクル撤去の判断
低圧化に伴う撤去では、高圧を続ける場合と低圧化する場合の費用を比較して、切り替えるかどうかを決めます。恒電社エンジニアリング事業部の高橋が、公開済みの取材記事で答えた内容を引用します。出典は受電の基礎と切り替えの流れを解説した記事と、高圧受電と低圧受電の判断基準を解説した記事です。
解説者
高橋 宏武
インタビュアー
岩見啓明
低圧化を検討するときの進め方
ーーー高圧受電から低圧受電への切替を検討するとき、どんなステップで進めるのでしょうか?
まずは現地確認を行い、現在の電力契約内容、設備の状況、電力使用量などをチェックし、低圧化の可否を判断します。
継続して高圧を使う場合のコスト(設備維持・保守費用など)と、低圧化に伴う工事費・解体費・新契約費用の見積りを比較したうえで、最終判断をお願いしています。
また、低圧に切り替えた場合の「電気料金単価」「契約メニュー(電灯・動力など)」も併せて確認することが重要です。
ーーー切り替えのためには、電力会社への申請なども必要ですか?
はい。既存の高圧契約を廃止するための「高圧契約の廃止届」を、電力会社に提出する必要があります。また同時に、新たな低圧契約(電灯契約や低圧動力契約など)の申込みも必須となります。
ーーーどのような工事を行うのでしょうか?
まずは低圧受電用として、配線・分電盤の設置、低圧メーターの設置などを行い、低圧受電が可能な環境を整えます。低圧での受電開始日を確定し、電力会社および施工業者と協力して切替を実施することで正式に低圧受電での電力使用が開始されます。
その後、高圧受電を停止し、必要に応じてキュービクル(変圧設備)を撤去または処分します。処分する場合は、産業廃棄物として適正に処理を行います。
低圧化をやめて高圧のまま使い続けるケース
ーーー一方で「低圧化を検討したものの、高圧受電のまま使い続けるケース」としてはどのようなものがありますか?
高圧受電のまま使い続ける、一番多い理由は「工事負担金が想定以上に大きくなるため」です。
低圧に切り替える際、電力会社側が供給容量を確保するための工事が必要になる場合があります。そのときに発生するのが、いわゆる工事負担金です。
ーーー必ず発生するものではないんですよね?
そうですね。ケースによっては発生しないこともありますし、発生しても30万円前後で収まる場合もあります。ただ一方で、条件が悪いと金額が一気に跳ね上がることがあります。
ーーーどのようなケースで、どのくらいまで上がることがあるのでしょうか?
東京都内などの都市部では、
- 道路掘削が必要になる
- 既存配管の撤去・埋設を行う
といった条件が重なると、工事負担金だけで数百万円規模になることもあります。状況によっては、1,000万円近くになるケースもあり得ます。
その結果、「低圧に切り替えたい気持ちはあるけれど、この工事負担金を見ると現実的ではない」と判断されるお客さまは少なくありません。
ーーー実際の判断例として、どのようなケースがありましたか?
例えば、以下のような見積りになったケースがありました。
- 高圧設備をそのまま更新する場合:600万円程度
- 低圧へ切り替える場合:700万円以上
この場合、「だったら無理に切り替えず、高圧設備を更新した方がいい」という判断になります。
工事費負担金の有無と金額は、電力会社側の工事内容と、約款などの適用条件で決まります。低圧化を前提に撤去を考えている場合は、電力会社との事前協議で負担金の有無と概算を確かめ、工事会社の見積に含まれるか別途支払うかを区別して、総額で比較します。
施工事例|撤去と低圧化の実際の工事
撤去の見積で何を確かめるべきかは、実際の工事を見るとつかみやすくなります。ここでは恒電社の施工事例3件を、「ご相談の内容」「行った工事」「撤去の判断にどう使えるか」の3段で紹介します。
事例1:業態変更に伴う低圧化とキュービクル・引込柱の撤去(埼玉県戸田市・物流倉庫)

埼玉県 戸田市・物流倉庫
- ご相談の内容:管理する倉庫の業態変更に伴い、高圧受電から低圧受電への切り替えと、不要になるキュービクルの撤去、PCB検査をご希望でした。撤去する機器がPCB含有製品かどうかが分からないことが課題でした。
- 行った工事:工期2日・停電1時間・費用レンジ100万円以下。低圧への切り替えと、キュービクル・PAS・電柱の撤去を2日に分けて行いました。引込柱に電話回線が引き込まれていたため、回線を別の柱に移してから撤去しました。クレーン作業は道路幅と交通量を事前に調べ、歩行者用と車両用の誘導員を配置しました。撤去機器は専門機関の分析で「不含有」と分かり、産業廃棄物として処理しました。
- 撤去の判断にどう使えるか:引込柱に電話線や通信線が共架されていると、通信会社との調整が工程に加わります。現地確認で柱を見ておくと、見積と工期のずれを防げます。
事例2:PCB含有のトランス・コンデンサを含む撤去と低圧化(東京都葛飾区・ビル屋上)

東京都 葛飾区・ビル屋上
- ご相談の内容:ホームページから高圧・低圧切替工事と、付帯する機器撤去のご依頼をいただきました。キュービクル内の機器がPCB含有製品かどうかが分からないことが課題でした。
- 行った工事:事例ページの掲載値は、工期1日・停電3時間・費用レンジ100万円以下です。事前のPCB検査で基準値を超えて検出されたため、所有者と許可を受けた処理業者の間で廃棄物処理・収集運搬の委託契約を結んでいただきました。2024年11月に切替工事、2025年3月に撤去工事の順で進めました。屋上からの吊り下ろしにはラフタークレーンを使い、交通誘導員2名を配置しました。撤去した機器は収集運搬業者の車両に車上渡しし、処理施設へ運ばれました。撤去したコンデンサは1978年7月製で、環境省が汚染の可能性があるとする製造時期にあたります。
- 撤去の判断にどう使えるか:PCBが含まれていると、処分の契約先と時期が工事会社の見積とは別の契約で決まります。低圧への切替を先に済ませて高圧受電を停止し、撤去を処分の手配に合わせて後日に回す工程は、営業を続けながら進めたいビルで使えます。
事例3:将来の高圧復帰を見据えた低圧への切替(埼玉県伊奈町・工場)

埼玉県 伊奈町・工場
- ご相談の内容:高圧引込から低圧への変更のご相談で、一時的に低圧に変更するものの、将来は再び高圧に戻す可能性があるとのことでした。
- 行った工事:中長期の事業計画を踏まえ、将来の高圧復帰を見据えた機器の選定と配線方法を採用して、低圧への切替を行いました。
- 撤去の判断にどう使えるか:「今は低圧で足りるが、数年後に設備を増やすかもしれない」という場合は、将来の高圧復帰を見据えて、撤去の範囲・機器の選定・配線方法を検討できます。復帰の可能性を先に伝えてください。
撤去を検討している方がまず確認すること
現地調査の前に次の8点がそろっていると、見積の精度が上がり、手続きの抜けを防げます。
- 電気料金の請求書(契約電力・契約者名・受電地点の番号が分かるもの)
- 建物の所有者と電気の契約者が同じか。別の場合は、申込の名義と、委任・同意に必要な書類を契約先に確認し、日程に余裕を見ます
- 直近の年次点検報告書と機器台帳、中の変圧器・コンデンサの銘板の写真(メーカー・製造年がPCB判別の手がかりになります。通電中の機器には近づかず、銘板の確認は電気主任技術者か保安管理の委託先に依頼します)
- 設置場所と搬出経路(屋上か地上か、クレーンを置ける道路の幅、搬出の通路)
- 引込柱に電話線・通信線が共架していないか、撤去する電柱があるか
- 低圧化の場合、今後の電気の使い方(契約電力が50kW未満で足りるか、動力の機器を残すか)
- 希望する工期と停電できる日(電力会社の工事を伴う場合は日程の調整に時間がかかり、日曜日の停電枠は混み合います)
- PCBの助成制度を使う予定があるか(対象要件と、契約・分析・処分に着手できる時期を申請先に確認します)
電気料金の請求書と年次点検の報告書をお手元に、撤去の目的(低圧化・解体・更新)を添えてご相談ください。現地で撤去の範囲、搬出経路、PCBの可能性を確かめ、切替と撤去の工程を分けるかどうかを含めてご提案します。
まとめ
- キュービクル撤去の主な費用は、取り外しと搬出、運搬と産業廃棄物の処分、PCBの調査と処理、付帯設備の工事、申請の対応です。低圧化では低圧側の工事と工事費負担金も確かめます。恒電社の公開事例2件は費用レンジ100万円以下でしたが、置き場所とPCBの有無、電力会社側の工事で変わります。
- 撤去の場面は、低圧化・建物の解体や閉鎖・更新の3つです。低圧化は、高圧のまま更新する費用と、切替・撤去・工事負担金を合わせた費用を並べて判断します。
- PCBの可能性がある機器は、分析の結果で、PCB廃棄物に当たらない場合の産業廃棄物としての処理と、PCB廃棄物としての処理(所有者が委託)に分かれます。低圧への切替を先に行って高圧受電を止め、撤去を処分の手配に合わせて後日に回す工程も選べます。
- 高圧受電をやめる場合は、主任技術者の選任・外部委託の形態と残る設備に応じて、解任の届出と産業保安監督部への廃止の報告を設置者が行います。工事で出る産業廃棄物は元請業者が、PCB廃棄物は所有者が処分を委託します。
恒電社は、埼玉県・東京都を中心に、キュービクルの撤去、高圧・低圧の切替、PCB含有機器の採油から分析依頼、許可業者のご紹介までを行う電気設備工事会社です。電気主任技術者の保安業務は行いませんが、解任の時期や廃止の報告に向けた段取りは、工事の計画と合わせてご案内します。
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撤去の費用の内訳と手続きの担当が分かったら、次は現地調査です。契約内容と設備の状態を確かめ、切替・撤去・PCBの工程と見積の内訳をまとめてご提案します。
この記事を書いた人
岩見啓明
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