更新日:2026年10月3日
高圧ケーブルの更新工事は、「①現地調査・見積・契約」「②電力会社への申込と停電日の調整」「③停電しての撤去・布設・試験」「④報告書の受け取りと精算」の順に進みます。工事には停電が必要で、電力会社の停電作業が必要な工事は、恒電社では希望日の3〜4か月前までのご相談をお願いしています。
高圧ケーブルのうち高圧CVケーブル(高圧用架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブル)は、日本電線工業会の資料で「高圧受変電設備の幹線をはじめとして」高圧配電線に広く使われているとされるケーブルです。高圧で受電する建物では、責任分界点に設置した区分開閉器(PAS・UGSなど)からキュービクルまでの引込みなどに使われます。経済産業省は、比較的新しい高圧ケーブルが絶縁破壊し、電力会社に供給支障を与える波及事故が増えているとして、2025年6月に注意を呼びかけています。
本記事では、東京電力管内で高圧CVケーブルを更新する工事を例に、「事前手続き」「工事当日までの準備」「工事実施」「後日対応」の4段階・15ステップで流れを整理し、各ステップでお客様(設備オーナー)が何をすればよいかを解説します。
恒電社が対応しているケーブル更新工事の内容と進め方は、以下のページでご覧いただけます。
高圧ケーブルの種類・耐用年数、更新工事の費用の考え方、見積もりの比較ポイントは、以下の連載記事で解説しています。
監修
高橋 宏武
高圧ケーブル更新を考える時期と、更新の範囲
日本電線工業会の「高圧CVケーブルの保守・点検の手引」(2024年8月版)では、高圧CVケーブルの更新推奨時期を、水の影響がある場合10〜20年、水の影響がない場合20〜30年としています。一方で経済産業省は、高圧ケーブルの絶縁破壊に伴う波及事故のうち、製造から15年未満のケーブルの割合が令和元年度から令和5年度まで増加傾向にあり、主な原因は水トリー現象(外導トリー)だったとして、劣化の兆候が確認された場合は更新推奨時期に満たなくても速やかに更新するよう求めています(2025年6月27日の注意喚起)。
そのため、更新の時期は年数だけでなく、設置環境(水の影響を受ける管路やピットを通っているか)や、年次点検・精密診断の結果(絶縁抵抗の低下などの指摘)をあわせて判断します。高圧ケーブルの種類・構造や劣化の仕組み、点検・診断の方法は、高圧ケーブルの種類・耐用年数と更新時期の目安を解説した記事で詳しく紹介しています。
更新の範囲も、あらかじめ決めておく必要があります。お客様が管理する範囲は、電力会社との責任分界点で決まります。区分開閉器(PAS・UGS)とあわせて更新するか、ケーブルだけを更新するかで、停電の方法や電力会社との手続きが変わります。責任分界点の確認方法は責任分界点とPAS・UGSの役割を解説した記事で、区分開閉器の交換工事の流れはPAS・UGS交換工事の手順を解説した記事で確認できます。
なお、ケーブルの調達に時間がかかる時期もあります。恒電社が担当した蓮田市の医療機関の工事では、全国的にケーブルの調達に時間がかかる状況のなか、定期検査の約1年前にご相談いただいたことで資材を確保し、計画どおり着工できました。
❶事前手続き
1)お問い合わせ【お客様+電気工事会社】
まずは、電気工事会社へ工事の「相談・問い合わせ」を行います。より正確で迅速に工事を進めるため、問い合わせの際に、お客様側でご準備いただきたい主な書類・情報は以下のとおりです。
- 月次・年次点検報告書の写し
保安管理を担う電気主任技術者(外部委託の場合は委託先)から受け取っている年次点検報告書があればご用意ください。過去の指摘事項や不具合履歴が分かると、高圧ケーブル更新工事の仕様を検討する際に役立ちます。 - 電気料金の請求書の写し(電気料金明細)
電力会社への停電の申込に、供給地点特定番号と契約情報が必要なためです。電力会社への申込に間に合うよう、工事会社がお伝えする時期までにご準備ください。 - 建物・電気図面(可能であれば)
単線結線図や構内図など、設備の情報が分かる図面です。ご準備が可能でしたら、現地確認もスムーズに行えます。
2)現地確認(立入範囲・立会い)の実施【電気工事会社+お客様】
お問い合わせ後、担当者が実際の設置場所や既存設備の現地確認を行います。現地確認でチェックする主なポイントは下記のとおりです。
- ケーブルの敷設状況の確認
ケーブルの経路、敷設方法(管路・ラック・ピット・架空など)、ケーブルの端末部分などを確認します。 - 工事計画・作業環境に関する確認
ケーブルや工具などの搬入搬出経路、クレーン使用の可否(通路の幅・段差等)、大型重機の車両の乗り入れに際する駐車場の確保や、作業スペースの有無とその広さなどを確認します。 - 安全確保に関する確認
高所作業の墜落防止対策の確認(屋上や電柱上の場合)、隣接する建物や設備(作業に影響を与える障害物)の有無、作業員の導線確認を行います。
現地確認の際には、お客様の立会いが必要です。必要事項のヒアリングが完了しましたら、最初と最後のみのお立会いで問題ございません。
主任技術者の立会いは原則不要ですが、施設の管理状況により必要な場合は当社からご相談します。
3)見積書・工事計画書の提出【電気工事会社】
現地確認で得た情報に基づき、工事会社は高圧ケーブル更新工事の見積書を作成します。見積書には以下の内容が明記されます。
- 費用構成の例
ケーブルの長さやサイズ、敷設ルートの難易度(露出/天井裏/シャフト/地中)、端末処理の箇所数などが内訳として示されます。特殊条件による割増費用や道路使用許可の要否、仮設設備(停電できない設備に電気を送るための発電機など)があれば項目に含まれます。 - 所要時間の目安
恒電社では、ケーブル更新工事の停電時間を概ね4〜8時間、工事を通常1日とご案内しています。ただし、工事の範囲や現場の条件で前後します。天候等で順延する場合に備えて、予備日を設定することもあります。 - 夜間・休日工事
電気工事会社によって対応可否(別途費用の発生)が異なります。テナント営業やオフィス稼働への影響を小さくできます。
オーナー様は提示された見積書の工事範囲と金額を十分に確認しましょう。不明な費用項目があれば施工業者に質問し、納得したうえで次の意思決定に進みます。距離や経路で費用が変わる理由は高圧ケーブル更新工事の費用相場を解説した記事で、複数社の見積もりを比べるときの確認点は見積もりの比較ポイントを解説した記事で紹介しています。
また、恒電社ではこのタイミングで工事計画書を作成し、送付する場合もございます。ご希望の時間帯をヒアリングした上でスケジュール表を作成しますが、受注前(電力申請前)のため、未確定の段階です。計画書には、他にも工事の概要、工程表、作業手順、安全対策、緊急時対応などが記載されます。
4)電気工事会社への発注・契約手続き【お客様+電気工事会社】
工事内容・見積金額にお客様が合意いただけたら、電気工事会社に正式発注します。一般的には見積書に発注サインをし、工事請負契約書を取り交わす形です。ここで契約が成立したら、以降は工事会社が主体となって電力会社との各種手続きや工事準備を進めていきます。
※管理会社や建設会社などを通して発注すると、間に入る会社の経費が上乗せされることがあります。恒電社は、お客様との直接契約を基本にしています。
❷工事当日までの準備
5)電力会社への申込【電気工事会社】
契約が完了したら、電力会社への申込を行います。恒電社では、申込に必要な書類の作成や手続きの調整を行います。ケーブル更新工事で関係する申込には、主に次の2種類があります。
- 電力会社の作業で停電させる必要がある場合(開閉器操作など):東京電力パワーグリッドの「開閉器操作のお申込み」で申し込みます。お客様設備の点検などに伴う開閉器操作や高圧引込線の切断接続は有償で、希望日まで申込日から31日以上(電力会社の引込用開閉器がない場合は60日以上)が必要とされています。
- 電力会社の供給設備の工事が必要な場合:東京電力パワーグリッドへの申込は、電気の契約先である小売電気事業者を通じて行います。ある小売電気事業者の案内では、単線結線図と構内図が必須書類とされ、単線結線図は容量変更がないPASやケーブル交換工事の場合でも提出が求められるとしています。
電力会社の供給設備の工事内容によっては、託送供給等約款に基づく工事費負担金がかかることがあります。工事費負担金は原則として工事着手前に支払うもので、ある小売電気事業者の案内では、電力会社の指定する期日までに支払いが確認できない場合は工事日が変更になるおそれがあるとしています。
責任分界点に関わるケーブルの更新など、工事の範囲によっては電力会社との事前の協議が必要になることもあります。申込の種類や進め方は、電力申請の内容とスムーズに進めるポイントを解説した記事で詳しく紹介しています。
6)工事日程の決定【電力会社+電気工事会社+お客様】
工事日程は、電気工事会社が旗振り役となり、以下の関係者で調整します。
- 東京電力パワーグリッド(電力会社の停電作業がある場合)
- 電気工事会社
- お客様(テナントを含む)と電気主任技術者
関係者の要望を踏まえ、「○月○日○時〜○時に停電し工事実施」という計画が決まります。停電時間は工事の範囲と現場の条件で変わります。恒電社の施工事例では、1号柱から敷地内のキュービクルまでの更新が工期1日・停電3時間(埼玉県の福祉施設)、PASとあわせた更新が工期1日・停電8時間(三郷市の工場)、屋上のキュービクルまでの更新が工期3日・停電4時間(蓮田市の医療機関)でした。停電前にできる準備作業を前もって済ませるなど、できるだけ短い時間で復電できるよう工程を組みます。
※工事日程の調整には思いのほか時間がかかります。電力会社の停電枠は日曜日が混み合うため、恒電社ではご希望日の3〜4か月前にご相談いただくようお願いしています。ビル利用者のご都合もあるため、計画段階から「◯月中には実施したい」など出来るだけ早めに調整することをおすすめします。
7)各種許可申請【電気工事会社】
必要に応じて、工事に付随する許可申請も行います。
- 道路使用許可:クレーン車を道路に停めて吊り作業を行うなど、道路で工事や作業をする場合は、所轄の警察署長の許可が必要です(道路交通法第77条)。申請手続きは工事会社が代行しますが、申請の手数料などの実費が発生するケースもあります。
- 特殊車両の通行許可:大型のクレーン車など、車両の大きさや重さが法令の限度を超える車両を通行させる場合は、道路管理者の許可が必要です(道路法第47条の2)。
その他、鉄道や高度な安全管理が求められる施設の場合は事前にリスクアセスメントを行い、計画書に反映します。関係各所への届け出(消防署やビル管理会社への作業通知など)が必要な場合も、この段階で漏れなく済ませておきます。
8)テナント・近隣住民への通知【お客様】
工事日が正式決定したら、建物のテナントや利用者、周辺の関係者へ停電と工事の予定を通知してください。恒電社では、テナント・入居者の方への停電の周知を1〜2か月前に行っていただくようお願いしています。具体的には、以下のような対応を行います。
- 告知文の配布
停電日時や作業内容を記載した「停電のお知らせ」文書を作成し、テナント各社やビル利用者に配布します。 - 協力依頼
テナントには停電中の営業調整(事前の告知や休業検討)や、パソコン・サーバのシャットダウンなどの協力を依頼します。エレベーターや機械警備など、停電の影響を受ける設備の管理会社にも事前に連絡します。マンションの場合は、住民へエレベーターの停止時間を知らせます。
9)当日の入室・鍵手配【お客様】
- ルート上の機械室・シャフト・屋上等に入室できるよう鍵・カードのご準備をお願いします。
停電の時間帯や範囲、テナントへの伝え方で迷う点があれば、周知の前に電気工事会社へご相談ください。
❸工事実施
10)工事日当日(作業前の準備と停電)
いよいよ「工事日当日」です。作業前の流れは以下のとおりです。
- 朝の打ち合わせ:工事関係者(電気工事会社、電気主任技術者、お客様の設備担当、電力会社の停電作業がある場合は電力会社の作業員など)が現地に集まり、停電時刻や作業手順を確認します。
- 停電の操作:定められた時刻に、工事の範囲に応じた方法で停電させます。電力会社による停電作業が必要な場合は、事前に調整した内容に従い、電力会社の作業員が開閉器の操作や高圧引込線の切断などを行います。
- 停電の確認と安全措置:労働安全衛生規則(第339条)に沿って、開路した開閉器に施錠するか通電禁止の表示をし、ケーブルやコンデンサの残留電荷を放電させます。高圧の電路は検電器具で停電を確認したうえで、短絡接地器具を取り付けてから作業を始めます。作業者は絶縁用保護具などを着用し、電柱上など高所の作業では墜落防止の措置をとります。現場には立入禁止の表示を掲示します。
11)既設ケーブルの切り離し・撤去、新設ケーブルの布設・端末処理・結線【電気工事会社】
停電が確認されたら、既存ケーブルの撤去作業に取りかかります。
- 端子部を安全に切り離し、ルートに合わせて引抜・撤去。養生しながら搬出します。
既存ケーブルの撤去が完了したら、続いて新しいケーブルの布設です。
- 既存の管路・ラック・シャフトなどを利用し、必要に応じて新設・補強します。
- ケーブルの端を機器に接続できるように処理する「端末処理」を行い、ラベル表示、結線、締付トルクの管理を確実に行います。
これで主な電気工事は一段落です。
12)竣工時の試験・検査【電気工事会社+電気主任技術者】
新しく布設した高圧ケーブルは、電気を通す前に試験と検査を行います。試験を電気工事会社と電気主任技術者のどちらが行うかは事前に調整し、結果は電気主任技術者が確認します。主な試験項目は以下です。
- 絶縁抵抗測定
ケーブルの絶縁の状態を、絶縁抵抗計(メガー)で測定します。 - 絶縁耐力試験(耐圧試験)
高圧の電路に試験電圧を一定時間加え、耐えられるかを確認します。電気設備の技術基準の解釈(第15条)では、高圧の電路の絶縁性能に適合する方法として、最大使用電圧が7,000V以下の交流の電路は最大使用電圧の1.5倍の交流電圧を連続して10分間加える方法のほか、電線にケーブルを使用する交流の電路では、その2倍の直流電圧を連続して10分間加える方法も示されています。 - 導通試験・外観点検
恒電社の施工事例では、導通試験(相間・接地の確認)や端末部の外観点検もあわせて行っています。
日本電線工業会の手引では、竣工時の初期点検の項目として、外観、シース絶縁抵抗、遮へい層抵抗、絶縁抵抗、耐電圧(法定基準)が挙げられています。現地で行う試験の項目や方法は、設備と工事の内容に応じて決めます。
なお、電気事業法の「使用前自主検査」(第51条)は、工事計画の届出をして設置・変更する事業用電気工作物のうち省令で定めるものに課される検査です。需要設備で工事計画の届出が必要になるのは、受電電圧が1万V以上の需要設備の設置などです(電気事業法施行規則 別表第二)。通常の6,600V受電の需要設備における高圧ケーブルの更新は、工事計画の届出と使用前自主検査の対象ではありません。この場合も、設置者が定める保安規程に基づき、電気主任技術者のもとで竣工時の点検・検査を行います。
13)受電再開(復電)・確認【電力会社+電気工事会社+電気主任技術者】
試験結果に問題がなければ、受電を再開します。電力会社が停電作業をした場合は、まず工事会社・電気主任技術者から電力会社へ「復電準備完了」の連絡を入れ、電力会社の作業員が安全を確認したうえで開閉器の操作などを行い、送電を再開します。その後、電気主任技術者が安全を確認しながら、建物側の復電操作を順次進めます。
復電後は、各相の電圧や、ケーブル接続部の発熱・異音の有無などを確認します。全設備が正常に動くことを確かめたら、復電作業は完了です。
当日の立会いについて
- お客様:終日の常駐が難しい場合は、停電開始時・復電時のみの立会いで問題ございません。
- 電気主任技術者:停電操作には、電気主任技術者の立会いが必要です。
高圧ケーブルの施工事例
屋上のキュービクルまでケーブルを更新した工事と、PASとあわせて更新した工事の流れは、以下の施工事例でご覧いただけます。
道路わきの1号柱から敷地内のキュービクルまでを3時間ほどで更新した例は、こちらの施工事例で紹介しています。
施工事例:高圧ケーブル更新工事|埼玉県 福祉施設(福祉施設で絶縁不良の高圧ケーブルを替えた事例で、入手難の中で伝えたリスクを確認できます)
❹後日対応
14)報告書の提出【電気工事会社】
全ての工程が完了したことをお客様へご報告し、設備一式をお引き渡しします。試験成績書、施工前後写真、更新後の系統図(該当箇所)などの書類も併せて提出いたします。
ここに至るまで長期間にわたる工事となりましたが、高圧ケーブルの老朽化によるリスクを低減し、安心してお使いいただける状態となります。
15)工事費用のお支払いと、立会い費用の確認【お客様】
工事完了後の費用のお支払いについては、電気工事会社への工事代金のお支払いがあります。
見積り・契約時に取り決めた支払条件に従い、請求書の期日までに指定の口座へ工事費用をお振込みください。電力会社の工事費負担金がかかった場合は、5)のとおり工事着手前のお支払いになります。
また、保安管理を外部に委託している場合、工事の立会いや竣工時の確認が月々の委託料とは別の費用になることがあるため、委託契約の内容を事前に確認しておくと安心です。
【まとめ】
以上が、東京電力管内で実施される高圧ケーブル更新工事の主な流れと、お客様側で取り組むべき事項です。
事前準備から後日の対応まで順を追って見てきましたが、高圧ケーブル更新は「停電」や「入室制限(許可)」など、調整ごとが多い工事です。専門的で関係者も多いため大変そうに感じるかもしれません。しかし、信頼できる電気工事会社に依頼し、計画的に進めれば、お客様の負担は主に各種意思決定と連絡調整に集中できます。
高圧ケーブルが絶縁破壊すると、自社の停電にとどまらず、電力会社の配電線に影響する波及事故につながることがあります。更新推奨時期が近い、点検で絶縁抵抗の低下を指摘された、といった段階で、早めに計画を立てることをおすすめします。
この記事を書いた人
岩見啓明
年次点検で絶縁抵抗の低下を指摘された、設置から15年近くたつ、停電できる日が限られている、といった段階でもご相談いただけます。年次点検報告書と単線結線図、電気料金の明細をご用意いただくと、現地確認とお見積りを進めやすくなります。




