更新日:2026年10月22日
高圧ケーブルは、建物や工場の電力供給を支える重要な設備です。ただし、普段は状態が見えにくく、劣化が進行していても気づきにくいため、事故や突発的な停電につながることがあります。
さらに、更新には高額なコストがかかるため、「いつ交換すべきか」は設備担当者やオーナーにとって大きな課題です。実際の現場でも「更新時期が分からない」「そもそも劣化の見分け方が分からない」といった声をよく耳にします。
本記事は、高圧ケーブルをテーマにした全3回のシリーズ連載の第1回です。まず今回は、高圧ケーブルの種類・寿命・劣化の仕組みを基礎から整理し、更新判断のポイントまで、分かりやすく解説します。
更新工事の費用の考え方や、見積もりを比べるときのポイント、どこからが需要家側の設備になるのかを先に知りたい方は、以下の記事もご参考ください。
要約
高圧ケーブルの基礎理解
高圧ケーブルは受電設備の中でも、PASやUASからキュービクルへ電力を送る重要な経路であり、トラブル時には建物全体の停電につながることがあります。普段は目視できず劣化に気づきにくいため、「見えないリスク」として適切な点検・診断・更新判断が求められる設備です。
劣化メカニズム
劣化は湿気・熱・施工不良・外的ダメージなどが重なって進行し、特に水分による「水トリー」や部分放電が代表的です。これらは外観では把握しにくく、内部で徐々に進行し、最終的には絶縁破壊(パンク)として突然トラブルが発生する点が大きな特徴です。
寿命と判断
日本電線工業会の資料(2024年8月版)では、更新推奨時期は水の影響がある場合10〜20年、水の影響がない場合20〜30年とされています。ただし経済産業省は、高圧ケーブルの絶縁破壊による波及事故のうち製造から15年未満のケーブルが占める割合が令和元年度から令和5年度まで増加傾向にあったとして注意を呼びかけており、実際の寿命は設置環境に大きく左右されます。絶縁抵抗測定や直流漏れ電流測定など、点検・診断の結果を組み合わせ、使用年数・環境・履歴を総合的に評価することが重要で、年数だけでの判断は危険です。
高圧ケーブルとは?基礎から理解する
高圧受電とは、主にビル・工場・商業施設などで使用される受電方式です。電力会社から6,600Vなどの高圧で受電し、構内の変圧設備で低圧に変換して使うのが一般的です。
一方、低圧受電は100V・200Vの電圧で電気を受け取る受電方式です。電柱上に設置されているトランス(変圧器)で降圧された電気を引き込む仕組みで、主に一般家庭や小規模店舗等で採用されています。
大きな電力を効率よく送るために用いられる高圧受電では、どこから先が需要家側で維持管理を担う設備になるかは、電力会社との「責任分界点」で決まります。高圧ケーブルは多くの場合、需要家側の設備にあたり、適切な点検・更新判断が求められます。具体的な範囲は設備ごとに確認が必要です(責任分界点の確認方法を解説した記事もご参照ください)。
高圧ケーブルは、受電地点から変圧設備へ電力を送る重要な経路です。この部分でトラブルが発生すると、建物全体の停電につながることがあるため、受電設備の中でも特に重要な位置を占めます。
高圧ケーブルの種類と特徴
高圧ケーブルの基本構造
高圧ケーブルは、電気を流す導体・その周囲を覆う絶縁体・電界を整える半導電層と遮へい層・外部から保護するシースなど、複数の層で構成されています。絶縁体の外側にある半導電層は「外部半導電層」と呼ばれ、ここから導体に向けて進展する水トリーを「外導トリー」と呼びます。劣化は主に絶縁体や遮へい層、端末部で発生します。

高圧で広く使われるCVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁ケーブル)
日本電線工業会の資料では、高圧CVケーブルは高圧受変電設備の幹線をはじめ、高圧配電線に広く使用されていると説明されています。絶縁体に架橋ポリエチレンを使ったケーブルで、メーカーのカタログでは導体最高許容温度を90℃としています。
CVケーブルのなかでも、E-Tタイプ・E-Eタイプに分かれます。主な違いは、外部半導電層の構造と、それに伴う剥ぎ取り作業のしやすさです。
| E-Eタイプ | E-Tタイプ | |
|---|---|---|
| 外部半導電層 | 押出成形 | テープ巻き |
| 外部半導電層の剥ぎ取り | 専用工具等が必要 | 容易 |
| 価格(下記条件での比較例) | E-Tタイプの約1.11倍 | E-Eタイプより安価 |
経済産業省の注意喚起(2025年6月)では、E-Eタイプは耐水トリー性が高いとされ、E-Tタイプは「敷設環境と品質に関する説明に留意」と整理されています。そのうえで、水の影響がある敷設環境では、品質に関する説明を踏まえてタイプを選ぶよう求めています。なお、同じ注意喚起で示された単価の一例(2021年6月時点の近畿地域・6.6kV CVT38sq)では、E-EタイプはE-Tタイプの約1.11倍でした。
CVケーブルとCVTケーブルの違い
高圧ケーブルでよく使われる「CV」と「CVT」は、構造で呼び分けられています。メーカーのカタログでは、CVには単心と3心の製品があり、CVTは絶縁・遮へいを施した線心3本をより合わせた構造として示されています。ここでは、よく比べられる単心のCVとCVTを取り上げます。
単心のCVケーブル:
1本の導体からなるケーブルで、三相回路では3本を組み合わせて使用します。
CVTケーブル:
線心3本をより合わせているため、1本で三相分をまとめて敷設できます。
どちらを使うかは、施工条件(スペース・ルート)や作業性(人力か機械か)、重量制約などを総合的に考慮して選択されます。
高圧ケーブルの寿命
一般的な寿命の目安
一般社団法人 日本電線工業会の資料(高圧CVケーブルの保守・点検の手引、2024年8月版)では、更新推奨時期を次のように示しています。
- 水の影響がない場合:20年~30年
- 水の影響がある場合:10年~20年
一方で、経済産業省は2025年6月27日に、高圧ケーブルが絶縁破壊して電力会社の供給に支障を与える「波及事故」のうち、製造から15年未満のケーブルが占める割合が令和元年度から令和5年度まで増加傾向にあるとして注意喚起を出しています。15年未満のケーブルの絶縁劣化の主な原因は、外部半導電層から導体に向けて進む水トリー(外導トリー)とされ、定期点検で劣化の兆候が見つかった場合は、更新推奨時期に満たなくても速やかに更新するよう求めています(経済産業省「更新推奨時期に満たない高圧ケーブルにおける水トリー現象に係る注意喚起」)。
ただし、これはあくまで更新判断の一般的な参考値であり、実際の寿命は、使用環境や施工状態によって大きく変わります。そのため、年数だけで一律に判断するのではなく、点検結果や診断結果、使用環境なども踏まえて更新時期を検討することが重要です。
高圧ケーブルの劣化メカニズム
高圧ケーブルの経年劣化は、使用環境や条件による影響を受けながら、内部で少しずつ進行していきます。ここでは、「何が劣化を引き起こすのか」と「内部で何が起きているのか」をセットで整理します。
湿気・水分 →「水トリー」現象による劣化
「水トリー」とは、主にCVケーブルの内部に侵入した水分が、電界の影響を受けて微細な劣化を広げていく現象です。絶縁体の内部で、劣化が木の枝のように広がっていくこと(Treeing)から、このように呼ばれます。劣化が進行すると絶縁性能が低下し、最終的には絶縁破壊に至ります。
特にCVケーブルでは代表的な劣化現象であり、地中配管の浸水や湿気の多い環境で進行しやすい点に注意が必要です。水トリーについても、点検・診断の結果を組み合わせて状態を確認することが大切です。

高温・過負荷 → 熱劣化:電流が流れるとケーブルは発熱しますが、過負荷や風通し不良によって温度が高い状態が続くと、絶縁体が徐々に劣化していきます。この熱によるダメージはゆっくり蓄積し、絶縁性能の低下を引き起こします。
施工不良・局所ストレス → 部分放電:端末処理の不備や、無理な曲げ、圧迫などがあると、ケーブル内部や接続部に局所的な電気ストレスが発生します。その結果、「部分放電」と呼ばれる微小な放電が繰り返され、絶縁を少しずつ削るように劣化が進行します。目に見えないまま進むため、発見が遅れやすいのが厄介な点です。
外的ダメージ → 機械的劣化・シース劣化:屋外では紫外線によってシース(外装)が劣化し、内部への水分侵入リスクが高まります。また、施工時や運用中の接触・圧迫などによる物理的なダメージも、絶縁性能低下の原因になります。
劣化は「環境 × 時間」の影響を受けて進行する
ここまで見てきたように、高圧ケーブルの劣化は、「湿気・温度・施工状態などの外的要因」と、それによって起きる「内部の劣化現象」が組み合わさって進行します。そして多くの場合、目に見えないまま進み、ある日突然トラブルとして表面化するのが特徴です。
だからこそ、年数だけで判断するのではなく、「どんな環境で使われているか」を踏まえて管理することが重要になります。
電気工事士に聞く、現場で実際に多い劣化・事故パターン
解説者
高橋 宏武
インタビュアー
岩見啓明
ーーーそもそも「高圧ケーブル」と言うと、どこからどこまでを指すのでしょうか?
高圧電気用のケーブルという意味では、非常に広い範囲を指しますが、工事の文脈では、一般的に「PASやUASからキュービクルまでの区間」を指すことが多いです。責任分界点以降の、需要家側で管理が必要になる部分をイメージしてもらうと良いかと思います。
※需要家側の設備の範囲は、設備ごとの責任分界点によって異なります。
ーーー実際の現場で多い高圧ケーブルのトラブルにはどんなものがありますか?
ケーブルに関してのトラブルで多いのはいわゆる「パンク」、つまり絶縁破壊です。原因はさまざまですが、最終的には絶縁が耐えられなくなって地絡する、という形です。
原因として多いのは、水分の影響による劣化、端末部分の劣化、物理的な損傷などですね。
地中配管だと水が入っていることも多いので、そこから劣化が進むケースはよくあります。また、物理的な損傷の具体例としては、工事中にケーブルを挟んでしまったり、配管が変形してケーブルにダメージが入るイメージです。
ーーーこういったトラブルは突然発生するものなのでしょうか?
そうですね。劣化が原因の場合、劣化自体は時間をかけて進みますが、最終的な絶縁破壊は突然起こることが多いです。
絶縁低下など数字で確認できる予兆もあるのですが、必ずしも段階的に進むとは限らないので、気付いたら電気が止まっていたというケースもあります。
ーーーケーブル更新の費用はどのような要素で変わりますか?
基本的には敷設距離とケーブルのサイズです。サイズが大きいほど許容電流も大きくなるのが特徴ですが、実際は設備容量で決まるので、自由に選べるケースはあまりありません。
ーーー屋内や屋外などの施工条件による違いはありますか?
既存のルートがそのまま使える状態であれば、金額に大きな差は出ません。
一番安く済むのは「既設ルートをそのまま使えるケース」です。ただし、配管が潰れていたり、新設するケーブルとのサイズが合わなかったりして、新しくルートを作る必要が出てくると、その分コストは上がります。
ーーー高所や建物外壁にケーブルを通す場合などにも影響しますか?
そうですね。たとえば屋上まで配管を新設する場合は、その分施工が増えるのでコストにも影響します。
いずれにしても、一番は既存のルートを活かすことです。新設工事を行わなければ、その分確実にコストは抑えられます。
※ケーブルのサイズや費用は、敷設条件・施工条件によって異なるため、現場ごとに確認します。
高圧ケーブルの見積もりは、既設ルートを使う前提か、撤去・処分や試験を含むかで金額が変わり、総額を並べても比べられないことがほとんどです。恒電社は現地で配管とルートを確かめ、既設ルートを使えるかを確かめたうえで、工事の範囲が分かる見積もりをお出しします。
高圧ケーブルの劣化を見極める方法
代表的な診断方法
日本電線工業会の「高圧CVケーブルの保守・点検の手引」(2024年8月版)では、点検・診断を段階に分けて示しています。主な内容は次のとおりです。
| 段階 | 頻度の目安 | 主な項目 | 停電 |
|---|---|---|---|
| 日常点検 | 1〜3か月に1回 | 外観の目視、各相電圧のチェック | 不要 |
| 定期点検 | 使用10年以上は1年に1回。日常点検で要注意と判定された場合も | 外観、シース絶縁抵抗、遮へい層抵抗、絶縁抵抗 | 必要 |
| 精密診断(専門家が実施) | 使用10年以上で、水の影響がある場合は1〜2年ごと、ない場合は2〜3年ごと。定期点検で要注意と判定された場合も | 定期点検の項目に加え、直流漏れ電流 | 必要 |
停電して行う定期点検・精密診断のほかに、電気を止めずに行う診断方法もあります。
単一の測定結果だけで判断するのではなく、複数の点検・診断の結果を組み合わせて総合的に評価することが重要です。また、こうした診断結果に、使用年数・設置環境・過去の不具合履歴をあわせて評価することで、より実態に即した更新判断がしやすくなります。
更新判断では、劣化状態だけでなく、工事費用の見通しも重要です。費用の考え方や相場については、以下の記事で詳しく解説しています。
▼関連記事を読む
診断の結果、更新が必要になった場合に、申請から停電当日までお客様が何を準備するかは、高圧ケーブル更新工事の流れと手順にまとめています。
施工事例
PASとあわせて高圧ケーブルを更新した工事が実際にどう進んだのかは、以下の施工事例でご覧いただけます。
まとめ|高圧ケーブルは“見えないリスク”をどう管理するか
高圧ケーブルは、受電設備を支える重要なインフラです。日本電線工業会の資料では、更新推奨時期は水の影響がある場合10〜20年、ない場合20〜30年とされていますが、経済産業省が注意を呼びかけているとおり、製造から15年未満のケーブルでも水トリーによる絶縁破壊が起きることがあります。複数の劣化原因があり、これらが複合的に作用して絶縁性能の低下につながります。
そのため、年数だけで判断するのではなく、設置環境・点検履歴・診断結果をあわせて確認し、計画的に更新を検討することが重要です。まずは、自施設のケーブルの「使用年数・設置環境・点検履歴」を整理することが、適切な更新判断の第一歩です。
「年次点検で絶縁抵抗の低下を指摘された」「設置から15年近くたつが、ケーブルが水の影響を受ける管路にあるのか分からない」といった段階でも、ご相談いただけます。恒電社では、電気主任技術者による点検・診断の結果と、現地で確認したケーブルの種類や表示・敷設ルートを踏まえて、ケーブル更新工事の内容と進め方をご提案します。
本記事は、高圧ケーブルシリーズ第1回として基礎知識を整理しました。次の記事では、「高圧ケーブル更新工事の費用相場」をテーマに、距離や経路によってなぜ費用が大きく変わるのか、その考え方を詳しく解説します。
絶縁の数値が下がってきた、地中の配管に水が入っているかもしれないといった段階でもご相談いただけます。現地調査で既設ルートを使えるかを確かめ、停電切替と更新後の試験まで含めた段取りをご提案します。
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この記事を書いた人
蕨川 真央








