記事

キュービクルのVCT(計器用変成器)とは?何の略か・役割・所有者と交換時期を電気工事士が解説

カテゴリー:

コラム

タグ:

#キュービクル
投稿日:2025年11月12日
更新日:2026年10月2日
キュービクルのVCT(計器用変成器)とは?役割・交換時期・注意点を電気工事士が解説

ビルや工場で欠かせないキュービクル(キュービクル式高圧受電設備)。金属製の箱の内部には、電気を安全かつ正確に利用するためのさまざまな機器が設置されています。

なかでも、電気料金の計算に直結するのが「VCT(電力需給用計器用変成器)」です。高圧(6,600Vなど)で受電している建物では、電力会社のメーター(電力量計)は高圧の電気を直接測れないため、VCTで測れる大きさに変えてから計量しています。

この記事では、一般送配電事業者(東京電力パワーグリッドなど、送配電網を持つ会社)が電気料金の計量のために設置するVCTを対象に、何の略か、VT・CTとの関係、キュービクルの中にあっても需要家の持ち物ではない理由、取り替えの考え方を、キュービクル工事を行う立場から解説します。

キュービクル全体の構成や、導入・見積もりの確認ポイントから知りたい方は、以下の記事もご参考ください。

キュービクルとは?シリーズ第3回 導入時の注意点
キュービクルとは?連載第4回、受電・変電・配電を構成する各機器の役割を紹介するバナー
キュービクルの価格と見積もり時のチェックポイントを解説するバナー

要約

VCTの基本機能と設置目的:
VCT(Voltage Current Transformer/電力需給用計器用変成器)は、計器用変圧器(VT)と変流器(CT)を1つの箱にまとめた装置です。高圧の電圧・電流を電力量計に入力できる大きさへ変換し、電気料金の計算に使う電力量の正確な計量を支えます。設置場所はキュービクル内部または電柱上で、いずれも「高圧を直接扱わず正確な計測を行う」ことが目的です。

所有と管理の区分:
VCTおよび電力量計は、キュービクル内に設置されていても、原則として一般送配電事業者の所有物であり、需要家や工事会社の資産ではありません。キュービクル本体(筐体・母線・遮断器・トランス等)は需要家所有ですが、VCT部分は一般送配電事業者が選定・取付・管理を行います。そのため、キュービクル内部には「所有者が異なる機器」が混在しており、管理権限が明確に分かれています。

工事・保守における役割分担:
恒電社はVCT本体・電力量計の施工を行わず、VCTの交換や点検は一般送配電事業者またはその委託業者が担当します。恒電社は一般送配電事業者側の作業と調整しながら、キュービクル本体を施工します。VCTの一時撤去・再接続が必要な更新では、一般送配電事業者がVCTを一時撤去→工事会社が設備更新→一般送配電事業者が再接続という流れが通常です。また、VCTと組み合わせて使う電力量計は、有効な検定証印等が付いていることに加え、VCTとセットで「変成器付電気計器検査」に合格し、同じ合番号が付いた組み合わせで使う必要があります(計量法)。VCTと組み合わせる電力量計(変成器付計器)の検定証印等の有効期間は、電子式が7年、機械式が5年です(計量法施行令 別表第三。計器の定格電圧はVCTで下げた110Vなどで300V以下ですが、6,600Vの計器用変圧器とともに使うため、この区分になります)。ただし、平成14年7月3日施行の計量法施行令改正より前の、VCTと組み合わせる電力量計は、電子式・機械式とも5年です(日本電気計器検定所)。有効期間を過ぎた電力量計は取引に使えないため、継続して使う設備では、一般送配電事業者が期限に合わせて取り替えを手配します。VCT本体の取り替えも、所有者である一般送配電事業者が行います。需要家や施工業者による独自のメンテナンスは行われません。

VCTとは?

VCTとは「Voltage Current Transformer(電力需給用計器用変成器)」の略称で、電圧や電流を計測しやすい値に変換する装置です。

施設では高圧電力(6,600Vなど)が受電されますが、そのままの大きな電圧・電流を直接電力量計(メーター)で測ることはできません。そこでVCTを介して電圧・電流を電力量計に入力できる大きさに変換し、正確な電力量を計量できるようにしています。

VCTは何の略?VT・CTとの関係

VCTは「Voltage Current Transformer」の頭文字です。日本語では「電力需給用計器用変成器」のほか、メーカーのカタログでは「電力需給用計器用変圧変流器」とも呼ばれます。中身は、電圧を変換する計器用変圧器(VT)と、電流を変換する変流器(CT)を1つの箱に組み込んだものです。

  • VT(計器用変圧器)の部分:電圧を一定の比率で下げます。定格の一例は6,600V/110Vです。
  • CT(変流器)の部分:電流を一定の比率で下げます。定格の一例は100A/5Aで、一次側に100A流れたとき二次側が5Aになる比率です。一次側の定格は受電設備の規模に応じて選ばれます。

どちらも「元の大きさに比例した小さな値」に変えるのがポイントで、変換された電圧・電流を電力量計で計量し、VCTの変成比を踏まえて高圧側の電力量を求めます。VCTは、VTとCTのうち電気料金の計量(電力の取引)に使うものを一体にした装置だと押さえておくと分かりやすいでしょう。

キュービクルの中には、VCTとは別に、保護継電器や計器のために設置される需要家側のVT・CTもあります。それぞれの役割や交換時の注意点を知りたい方は、VT(計器用変圧器)の役割を解説した記事とCT(変流器)の役割を解説した記事もご参考ください。

VCTの設置場所

VCTは以下の場所に設置されます。いずれも「高圧を直接扱わずに正確な計測を実現する」 という点が共通の目的です。

  • キュービクル(高圧受電設備)内:
    受電した高圧電力を低圧に変換する機器とともに設置され、電力量計と接続して計測を行います。
  • 電柱上:
    キュービクルの外、引込みの電柱にVCTを取り付けて計測する方式もあります。

VCTが果たす役割

VCTの主な役割は以下のとおりです。

  1. 電力使用量の正確な計量を支える:
    高圧の電圧・電流を電力量計に入力できる大きさへ変換し、電気料金の計算に使う電力量を正確に計量できるようにします。
  2. 計測機器の安全確保:
    高圧電力をそのまま計測するのは危険なため、電力量計に高圧がかからないようにする安全性の観点からも重要な役割を果たします。

「VCTは誰のもの?」電気工事士に聞く、所有と管理の考え方

解説者

高橋 宏武
株式会社恒電社

高橋 宏武

大学卒業後、恒電社に入社したプロパー社員。電気工事士として、住宅の電気工事に加え、法人向けの高圧電気設備工事の直接提案を開始するなど、現在の会社の礎を創ってきたメンバー。2020年からは事業部長として、エンジニアリング事業部を統括している。プロフィールはこちら

インタビュアー

Iwami
株式会社恒電社

岩見啓明

恒電社ではマーケティング(動画、記事、広報、企画、セミナー運営、デジタル広告)に加え、人事やインサイドセールスなど、事業部を横断して活動。個人では登録者数1万人超えのYouTubeチャンネルを運用した経験の他、SDGsの啓蒙活動で国連に表彰された経歴を持つ。2023年に二等無人航空機操縦士(ドローンの国家資格)、2024年に第二種電気工事士資格を取得。≫プロフィールはこちら

ーーー VCTがキュービクル内に設置されている場合の所有者や管理者の考え方について教えてください。

まず大前提として、設置場所がキュービクル内であれ電柱の上であれ、VCTは需要家(ビルや工場の所有者)や電気工事会社のものではなく、電力会社(東京電力など)の所有物です。

VCTは、電力量を正確に測定するために「高圧の電圧・電流を計測可能なレベルまで変換する」機能を持ち、その測定値をもとに電力会社がお客様に請求を行う仕組みになっています。したがって、計測制度の信頼性確保の観点からも、VCTおよび電力量計は電力会社が管理・保守を担当します。

つまり、

  • キュービクルそのもの(筐体・母線・遮断器・トランス等)は需要家の所有物
  • その内部に組み込まれているVCTおよび電力量計は電力会社の所有物

というように、1つの設備内に所有者が混在している状態になります。

※ここでいう所有・管理側の「電力会社」は、一般送配電事業者(東京電力パワーグリッドなど)を指します。東京電力パワーグリッドの託送供給等約款では、料金の算定上必要な計量器とその付属装置(変成器を含む)は、原則として同社が選定・所有し、同社の負担で取り付けると定めています。計量値が料金の算定に使われることと、需要家への請求主体が誰かは別の事項です。

ーーー それでは、キュービクルの新設・更新・撤去工事の際には、どのように作業を進めるのでしょうか?

電気工事会社がキュービクル更新や改修を行う際には、VCT部分には原則として手を触れません。VCTの交換・点検などは、電力会社またはその委託業者が行うためです。

恒電社のような工事会社が対応する範囲はあくまで以下の通りです。

項目所有者恒電社の対応可否
受電設備全般(キュービクル・PAS・トランスなど)需要家○(施工可能)
VCT本体・電力量計電力会社×(施工不可)
電力会社側の設備の停電・開放操作電力会社×(立会い・確認)

需要家側の受電設備の停電・復電の手順は、保安を担う電気主任技術者と工事会社が事前に確認したうえで進めます。

そのため、キュービクルを更新する際は、電力会社側でVCTを一時撤去 → 工事会社が更新工事 → 再度電力会社が復旧・接続という流れで進められるのが通常です。

※上記は、VCTの一時撤去・再接続を伴う更新の場合です。お客様側で準備することを含めた実際の工事の流れは、キュービクル更新工事の手順を解説した記事をご参照ください。

ーーー VCTや電力量計のメンテナンスなど、管理は誰が行うのでしょうか?

VCTと組み合わせて使う電力量計は計量法に基づく検定の対象で、有効期間(計器の種類により7年または5年)が切れる前に、電力会社が計画的に交換します。工事会社や需要家が独自にメンテナンスすることはありません。

施工事例

キュービクル更新工事が実際にどのように進むのかは、以下の施工事例でご覧いただけます。

まとめ:

  • 高圧電力を安全・正確に計測する装置
    VCTは高圧で受電した電気の電圧・電流を、電力量計で計量できる大きさに変換する装置です。計測機器を高圧から隔離し、安全かつ制度的に信頼できる電力計測を実現します。
  • 所有・管理は電力会社が担う
    料金の計量に使うVCTおよび電力量計は、設置場所がキュービクル内でも原則として一般送配電事業者(東京電力パワーグリッドなど)の所有物であり、需要家や施工業者が勝手に扱うことはできません。電力量計は、検定証印等の有効期間内で、VCTとセットで検査に合格した組み合わせで使われます。
  • 工事や保守の際は明確な役割分担が必要
    キュービクルの更新・撤去時、VCTの扱いは電力会社が実施し、工事会社は受電設備本体の施工を担当します。また、VCTと組み合わせる電力量計の検定の有効期間は計器の種類により7年または5年で、継続して使う設備では一般送配電事業者が期限に合わせて取り替えを手配します。

VCTは電力計測の根幹を支える装置であり、その所有・管理・作業範囲を正しく理解することが、キュービクル工事の安全性と信頼性を確保する第一歩です。

VCTの一時撤去・再接続が必要なキュービクル更新では、一般送配電事業者との日程調整が必要になり、停電日の決め方も工事の段取りに影響します。恒電社では、こうした申請や調整のサポートを含めて、キュービクル本体の新設・更新工事をご相談いただけます。

関連記事を読む

キュービクルの役割や費用の考え方、VCTと混同しやすいVT(計器用変圧器)について知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

キュービクルとは?選定する際の基準・要素を解説するシリーズ連載バナー #1/4
キュービクルの価格を左右する構成要素と要因を解説するシリーズ連載バナー(#1/3)
キュービクルのVT(計器用変圧器)とは?CT・PTとの違いと交換時の注意点を電気工事士が解説

「VCTの撤去や停電日の調整は誰に何を頼めばよいのか」「自社のキュービクルは更新の時期なのか」といった段取りの段階からでも、お気軽にご相談ください。現地を確認したうえで、工事の範囲と進め方をご説明します。

この記事を書いた人

蕨川 真央
株式会社恒電社

蕨川 真央

教育・福祉などの業界を経て、2025年に恒電社に入社。カスタマーサクセスチームの一員として、採用やマーケティングを担当する。

電気設備工事のことなら、
“まるっと”
恒電社へご相談ください。

お問い合わせはこちら

お電話のご相談はこちら

048-728-4283
自家消費型太陽光発電はこちら