更新日:2026年10月25日
「見積もりが、想定の2倍の金額だった。」
「工事は半年先と言われた。」
東京都内で高圧電気設備の更新をご検討されているお客様から、こうしたご相談をいただくことがあります。
高圧電気設備の更新では、機器の手配期間に加えて、施工人員の確保や搬入・停電の調整によって、着工まで時間がかかる場合があります。特に東京都に代表される都市部での工事は、搬入や停電の調整が難しく、依頼してすぐに着工できるとは限りません。
この記事では、キュービクルをはじめとする高圧電気設備の更新工事で費用や手配期間が増える要因と、更新時期が近い場合に早めの計画が必要な理由を、第一線で施工に携わる電気工事士の目線で解説します。
高圧受電の基本や、都内の工事で問題になりやすいクレーン作業(アウトリガー・架空線)の課題は、以下の記事で解説しています。
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要約
キュービクルの納期:
キュービクルは受注生産が中心で、多くの機器の集合体です。部品が一つ遅れると全体が完成しない構造を持ち、2026年は省エネ基準の新しい変圧器(2026トップランナー変圧器)への切り替えも重なっています。当社が2026年4月時点で手配した案件では、標準的な仕様でも発注から納品まで5〜6ヶ月程度、特注仕様では1年近くを見込む場合がありました。
高圧ケーブルの納期(2026年10月2日確認):
2026年4〜5月、中東情勢によるナフサ不足で電線の被覆材料の調達懸念が高まり、高圧ケーブルなどの受注制限や受注停止が起きていると報じられました。経済産業省の2026年10月2日の資料では、ナフサ由来の化学製品の供給は安定的に推移しているとされています。ただし、業界全体の納期を示す公表値は確認できず、実際の納期はメーカー・品種・サイズ・数量で変わるため、見積もりの段階で確認が必要です。
都市部特有の施工難易度:
東京都内ではスペース制約が大きく、クレーンが使えない・道路が狭い・電線が干渉するなど、搬入条件が厳しい実態があります。その結果、人力搬入や大型重機手配が必要となり、さらに作業時間制限や騒音配慮も加わり、工事コストと工期の両方を押し上げています。
調整業務の複雑さ:
都市部の工事では、道路使用許可や電力会社申請、テナント停電調整など関係者が多く、必要な合意や調整が整わないと、予定した日程・施工方法では工事を実施できない場合があります。加えて警察対応や誘導員配置などの手続き負担も大きく、施工以外の業務が増えることで、全体の工期と費用に影響しているといえます。
キュービクルの納期|なぜ長くかかるのか?
なぜキュービクルの調達が困難なのか?
キュービクルは、仕様や手配状況によって納品まで時間を要します。当社が2026年4月時点で手配した案件では、標準的な仕様でも発注から納品まで半年近くを見込む場合がありました(詳しくは後述します)。
キュービクルの納期が長くなりやすい原因は、キュービクルそのものが持つ「受注生産が中心で、構成機器の一つが遅れると完成時期全体に影響する」という構造的な特性にあります。部品の調達や輸送が滞ると、この特性が納期の遅れとして表れます。
1. 受注生産という特性
キュービクルは、設置場所の受電容量や用途に合わせて構成を決める受注生産品が中心です。汎用品のようにあらかじめ大量生産して在庫しておくことが難しいため、注文を受けてから設計・製造するリードタイムが発生します。
2. 多種多様な機器の「集合体」という特性
キュービクル内部には変圧器(トランス)をはじめ、高圧遮断器、各種リレーや計測機器など、複数の機器で構成されています。そのため、構成する機器や部品のうち1つでも納品が遅れると、キュービクル全体が完成しないというボトルネックを抱えています。
キュービクルを構成する機器(変圧器・VCB・LBSなど)の役割を詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
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3. 大型かつ重量物という特性
鋼板で作られた大きな筐体は、製造や保管に広いスペースを要するため、メーカー側も完成品の在庫を持ちにくい製品です。さらに、重い機器を運ぶには輸送に適したトラックやクレーンの手配が必要となり、その手配状況も納期や費用に影響します。
4. 2026トップランナー変圧器への切り替え
制度の対象となる変圧器は、省エネ法のトップランナー制度で2026年度を目標年度とする新しい基準(第三次判断基準)が定められ、2026年4月からメーカーの出荷品は「2026トップランナー変圧器」へ切り替わっています。なお、基準を満たすことを求められるのはメーカーで、既設の変圧器を直ちに交換する義務はありません。
キュービクルメーカーの日東工業は2026年1月のお知らせで、新しい変圧器は従来品より寸法・質量が増えるため、キュービクルのサイズ(盤面数)の増加、基礎の延長・補強、輸送コストの増加に留意するよう案内し、新しい変圧器を載せたキュービクルの設計や収納確認には納期を要する場合があるとしています。
変圧器の新しい基準の内容や、既設の変圧器への影響を知りたい方は、変圧器(トランス)のトップランナー基準改定の解説記事をご覧ください。
このように、キュービクルは「受注生産の機器の集合体であり、かつ大きく重い」という性質を持つため、部品の調達や輸送が滞ったときの影響を受けやすく、納期が長くなりやすいのです。
当社が2026年4月時点で手配したキュービクルの納期例
当社が2026年4月時点で手配したキュービクルでは、標準的な仕様でも発注から納品まで5〜6ヶ月程度、需要家様の環境に合わせた特注仕様なら1年近くを見込む場合もありました。これは当社の案件での目安で、実際の納期はメーカー・容量・仕様・発注時期によって異なるため、見積もりの段階で個別に確認する必要があります。
そして最も注意すべきなのは、故障してから手配すると、希望する復旧時期に間に合わないおそれがある点です。故障発生後の対応では、設備停止期間が長期化するリスクがあり、照明・空調・エレベーター・テナント設備など広範囲に影響します。
営業損失や信用損失を避けるためにも、更新は“壊れる前提”で動く必要があります。
高圧ケーブルの納期と受注停止の状況【2026年10月2日確認】
高圧ケーブルは、電力会社から引き込んだ高圧の電気を、区分開閉器(PAS・UGSなど)から受電設備(キュービクル)へ送るときなどに使うケーブルです。後述の施工事例のように、キュービクルやPASの更新にあわせて高圧ケーブルを更新することもあり、その場合は高圧ケーブルの納期も工事時期を左右します。
2026年10月2日時点で確認できた公開情報をまとめると、次のとおりです。
- 2026年4月には、中東情勢の影響でナフサ(プラスチックなど石油化学製品の原料)の供給が滞り、電線の被覆などに使う塩化ビニルや架橋ポリエチレンなどの調達懸念と、電線メーカーの受注制限の動きが報じられました。5月には、高圧ケーブルなどの電設資材メーカーによる受注制限や受注停止が起きているとして、電気工事業の団体が県に対策を要望しています。
- 経済産業省が2026年10月2日に示した資料では、化学製品の中間段階の在庫は平時の水準(2か月分)に戻り、ナフサ由来の化学製品の供給は安定的に推移しているとされています。ただし、この資料は高圧ケーブル個別の受注状況や納期の回復を示すものではありません。
- ただし、高圧ケーブルの納期を業界全体で示す公表値は確認できませんでした。実際の納期はメーカー・品種・サイズ・数量・発注時期で変わるため、見積もりの段階で確認が必要です。
2026年に起きたこと(公開情報の時系列)
| 時期(2026年) | 公開情報の内容 |
|---|---|
| 2月末 | 中東情勢が変化。ナフサの国際価格は2月27日の588.28ドル/tから、4月8日に1,011.5ドル/tまで上昇(経済産業省資料) |
| 4月3日 | フジクラ・ダイヤケーブルが電線・ケーブルの価格改定(4〜7%、品種・サイズによってはそれ以上。2026年6月から順次)を案内。中東情勢の動向により改定内容を見直す場合があるとしています |
| 4月7日 | 日刊産業新聞が、ナフサの供給が滞り塩化ビニルや架橋ポリエチレンなど石化材料の仕入れ難が避けられない情勢で、電線メーカーに受注制限の動きが広がっていると報道 |
| 5月21日 | 大分県電気工事業工業組合などが、高圧ケーブルなどの電設資材メーカーによる受注制限や受注停止が起きているとして、県に対策を求める要望書を提出(日本経済新聞) |
| 10月2日 | 経済産業省の資料で、ナフサ由来の化学製品の供給は安定的に推移しているとされる。ナフサの国際価格は9月24日時点で838.56ドル/t(2月27日比+42%) |
なお、フジクラ・ダイヤケーブルと住電HSTケーブルの公式サイトのお知らせ一覧を2026年10月2日に確認した範囲では、2026年の高圧ケーブルの受注停止や受注再開を告知するお知らせは掲載されていませんでした。受注の状況は、メーカーや販売店を通じて個別に確認する必要があります。
過去にもあった高圧ケーブルの受注停止(2023〜2025年)
高圧ケーブルの受注停止は、2026年が初めてではありません。たとえばフジクラ・ダイヤケーブルは、需要の高まりで引き合いが急増したとして、2023年11月13日付のお知らせで、3kV〜6kVのCVケーブルなどの新規受注と納期回答の一時停止を案内しました。
その後、2024年2月14日の案内では、高圧CVケーブルの新規受注再開日を3月1日、再開後の概算納期を4〜5か月としています。
同社が2025年8月4日に示した概算納期は、高圧CV(ETタイプ)で3〜5か月、高圧CV(EEタイプ)で4〜6か月でした(同社の在庫品の概算納期で、新規受注後の目安)。これは1社の公表値で、業界全体の納期を示すものではありません。
納期が読みにくいときに設備オーナーが確認しておきたいこと
- 点検で指摘されたケーブルの劣化状況や、敷設からの年数を把握しておく
- 見積もりの段階で、ケーブルの種類(CV・CVT、ETタイプ・EEタイプ)とサイズ・長さ、手配にかかる期間の見通しを確認する
- 停電日の調整やテナントへの周知、道路使用許可などの段取りを、資材の手配と並行して進める
高圧ケーブルの種類や構造、更新時期の目安を知りたい方は、高圧ケーブルの基礎知識(種類・構造・耐用年数と更新時期の目安)の記事をご覧ください。ケーブル更新の費用が距離や経路でどう変わるかは、高圧ケーブル更新工事の費用相場の記事で解説しています。
キュービクルや高圧ケーブルの更新時期が近い場合は、機器や資材の手配期間を見込んで、早めに工事計画を立てることが大切です。キュービクル更新工事の内容と流れは、キュービクル新設・更新・撤去・修繕工事のページでご紹介しています。現地調査で搬入経路や停電の範囲を確認したうえで、工事の進め方をご提案します。
電気工事士に聞く、都市部の工事が「高額・長納期化」する理由とは?
都市部でのキュービクル更新工事は、図面上では同じように見えても、現地の諸条件で難易度が大きく変化します。そして、その“難易度”はそのまま、工事費・管理費・人件費など見積り金額に影響します。
ここでは、現場の電気工事士が「これは施工難易度が高い」と判断する条件を、代表例としてご紹介します。
解説者
高橋 宏武
インタビュアー
岩見啓明
―――そもそも、やはり都市部のキュービクル更新工事は難易度が高いのでしょうか?
結論から言えば、地方や郊外に比べて圧倒的に難しいですね。最大の理由は「スペースの制約」です。たとえば、搬入経路・揚重スペース・重機配置などの難しさが挙げられます。
東京都内のビルは隣接建物との隙間が数センチということも珍しくありません。道も狭い箇所が多く、クレーン車などの重機が入らない、もしくは電線が邪魔をしてクレーンが上げられないという問題が起こります。
本来ならクレーンで吊り上げて数時間で終わる作業が、人力(手揚げ)で運んだり、道路を全面封鎖しての超大型クレーンを呼ぶ必要が出てきたりします。
また、「時間の制約」も大きいです。オフィスビルや商業施設では、平日の日中作業は避けたい。かといって深夜や休日となると、近隣にマンションへの騒音配慮が必要になる。
拠点ごとの周辺状況にあわせて、工事日を分けて停電時間を最小限に済ます方法や、逆に大人数で一気に終わらせる工夫をする必要があります。この最適な施工体制を組むための人件費や特殊車両代が、見積もりにも反映されるわけです。
―――キュービクル以外の工事(PAS、UAS、ケーブル更新など)の難易度も、東京都と埼玉県では変わりますか?
そうですね。前提として、再開発が進んだ都心部(23区内など)では、PASは少ないです。これは、景観保護や防災の観点から電柱が撤去されているからです。
PASとUAS(UGS)工事の難易度の違いについては、以前こちらの記事でご説明した通りです。
※地中から電気を引き込む受電方式では、PASの代わりに地中線用の区分開閉器(UGS・UAS)を使います。PASとUAS(UGS)の違いや工事の難易度は、UGS・UASとは?地中線用区分開閉器の役割とPASとの違いの記事で解説しています。
他の要素としては、お客様のビルや施設が幹線道路に近かったり、人通りが絶えなかったりすると難易度が上がります。都市部以外と比べると、必要な誘導員(ガードマン)の配置人数も違いますし、警察への道路使用許可申請も非常にシビアです。申請は23区ごとにルールが違いますので、手間もかかります。
※道路で工事や作業をするときに必要な道路使用許可は、道路交通法第77条に基づき、工事場所を管轄する警察署長に申請します。申請先は区ではなく警察署で、発言の「23区ごと」は制度上の区分ではありません。また、道路法第32条に定める工作物・物件・施設(電柱、電線、商品置場など)を道路に設けて継続して道路を使用する場合は、道路管理者の道路占用許可が必要です。道路管理者は道路の種類(国道・都道など)によって異なります。
―――なるほど。ステークホルダーが多岐にわたることも難易度を高める大きな要因ですね。
はい。複数のテナントが入るビルでは、1軒でも停電の合意が取れないと工事が成立しません。ビルオーナー様や、管理会社様にとっても、この調整コストは大きなものになります。
※全館停電を伴う計画などを想定した説明です。調整が難しい場合は、停電の範囲や日程、施工方法を個別に検討します。
―――他にも、東京都内(都市部)で起こりがちな事象はありますか?
ビル特有の事象としては、例えばケーブル更新の場合は注意が必要です。特に、築年数の古いビルでは配管が複雑に曲がっていたり、他のインフラ設備が密集していたりして、線を引き抜くのにも通常の倍以上の手間がかかることが多々あります。
こうした「開けてみないとわからないリスク」を、いかに事前の現地調査で読み切れるかが、プロの腕の見せ所ですね。
※このインタビューは、施工担当者が経験した現場についての説明です。隣接建物との距離や引込方式、搬入条件、作業量は建物・現場によって異なります。
キュービクル更新工事の手順と、設備オーナーが準備しておくことは、以下の記事で解説しています。
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施工事例
東京都内の工事では、停電日の確保と当日の段取りが工期を左右します。東京都板橋区のビル屋上では、お客様と調整して休業日(土曜日)に1日の工程を確保し、キュービクル外枠・トランス・高圧ケーブル・UASの更新を同じ日に施工しました。工事の詳細は東京都板橋区の高圧受電設備更新工事の事例でご覧いただけます。
PASや高圧ケーブル、キュービクルの更新が実際にどう進んだのかは、以下の施工事例でもご覧いただけます。
まとめ
キュービクルや高圧ケーブルの納期は、機器の構造や資材の調達状況に左右されます。2026年10月2日時点で、ナフサ由来の化学製品の供給は安定的に推移していると経済産業省は示していますが、個別の納期は見積もりの段階で確認が必要です。
都内のキュービクル更新は、道路の許可、電力会社への申請、テナント様との停電調整など、工事そのもの以外にやるべきことが山積みです。
「自社設備は大丈夫か?」と少しでも感じた場合は、まずは現場の顔が見える専門家に声をかけてみてください。図面だけでは見えない、本当の意味での「安心できる計画」を一緒に立てていきましょう。
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キュービクルの価格の決まり方や、都内のクレーン作業で起こりやすい課題(アウトリガー・架空線)を知りたい方は、以下のシリーズ記事もご覧ください。
「点検で更新を勧められたが、機器やケーブルの納期が読めず工事時期を決められない」「都内のビルで、搬入経路や停電日の調整がつくか分からない」といった段階でもご相談いただけます。恒電社では、現地調査で搬入経路・揚重方法・停電の範囲を確認し、機器や資材の手配時期を含めた工事計画をご提案します。
この記事を書いた人
岩見啓明











