更新日:2026年10月25日
築30年を超えたビル・マンションでは、高圧受変電設備の老朽化が静かに進行しています。
特に東京都内など都市部に立ち並ぶ高層階の建物では、屋上や電気室など、通常アクセス出来ない場所に電気設備が設置されているケースも多く、「設備は動いているから問題ない」——そう思っていても、外観だけでは判断できない劣化が積み重なり、突然の停電や、思わぬ「波及事故」に直面するリスクを抱えるケースも少なくありません。
この記事では、30年を超えて使われる電気設備が抱えるリスクと、限られた予算の中で優先的に対処すべき更新対象をリスク別に整理します。ビルやマンションのオーナー様はぜひご覧ください。
ビルの電気設備リニューアル計画の立て方や、ビルでの更新工事の事例もあわせて知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
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要約
設備の老朽化と突発的な重大リスク
築30年を超えた高圧受変電設備では、絶縁物の劣化や端子のゆるみなど、外観に現れにくい劣化が進んでいることがあります。「動いているから大丈夫」と放置すると、事故が電力会社の配電線に及んで周辺も停電する「波及事故」や、損害賠償の請求につながるおそれがあります。さらに、製造から年月が経った機器は部品の調達が難しいことがあり、故障後の緊急対応では復旧費用が増えたり、停電が長引いたりするおそれがあります。
優先順位を決める3つの判断軸
限られた予算の中で対策を進めるには、「事業継続性への影響(止まると困る)」「人身・波及リスク(事故になる)」「法的義務の期限(法令違反になる)」の3軸で優先順位を整理します。施設全体の停電につながる主遮断器や変圧器、波及事故につながる高圧ケーブルや区分開閉器などを優先し、一度にすべてを更新するのではなく、リスクの大きさと予算に応じて計画的に改修を進めていくことが賢明です。
迫る法的期限と今すぐ行うべき初期対応
電気設備には期限が決まっているものもあります。低濃度PCB廃棄物は2027年3月31日までに処分する必要があり、2027年4月からは使用中の低濃度PCB機器にも届出と管理の制度が始まる予定です。また、テナントの電気料金の配分に使う子メーターは、計量法の有効期間を過ぎると取引・証明に使えません。オーナーがまず行うべきは、手元にある点検報告書を確認し、劣化の状況や対象機器の有無を把握することです。
高圧受変電設備では「まだ動いているから大丈夫」が通用しない理由
高圧受変電設備とは、電力会社から高圧で受電し、ビルやマンション、工場などの施設内で使用する電圧(200V・100Vなど)に変換する設備の総称です。本記事では、公称電圧6.6kV(6,600V)で受電するキュービクルなどの設備を扱います。
受変電設備の年数を考えるときは、税法上の「法定耐用年数」と、機器ごとの「更新推奨時期」を区別します。ビルやマンションのような工場以外の建物に附属する受変電設備の法定耐用年数は、建物附属設備の「電気設備(照明設備を含む。)その他のもの」として15年です(工場用建物の受変電設備は区分の判定が必要です)。法定耐用年数は減価償却の計算に使う税務上の年数で、機器の寿命や安全に使える期間を示すものではありません。
機器ごとの更新の目安としては、日本電機工業会(JEMA)が更新推奨時期を示しています。高圧配電用変圧器や高圧交流遮断器は20年、保護継電器や高圧進相コンデンサは15年などです(機器別の値は後の表を参照)。実際の現場では、「動いているから」という理由で、こうした目安を大きく超えて使い続けているケースもあります。
電気設備の劣化は外観に現れにくいということが大きな問題です。機器の外側がきれいに見えても、内部では絶縁物の劣化・接続部のゆるみ・絶縁油の劣化が進んでいることがあります。「動いている」状態と「安全に使える」状態は別物で、突発故障が起きてから初めて劣化に気づくこともあります。
放置したときに起きること:5つのリスク
老朽化した電気設備を放置し続けた場合、次の5つのリスクが考えられます。
①停電・波及事故
自社の建物だけでなく、事故が電力会社の配電線に及んで周辺の需要家も停電させる「波及事故」につながることがあります。波及事故を起こした場合、影響を受けた周辺の施設や事業者から損害賠償を求められる可能性があります。
②保守部品の調達困難
製造から20〜30年が経過した機器は、メーカーのサポートが終了し、補修部品の供給が打ち切られていることもあります。故障してから代わりの機器や部品を探すと、手配に時間がかかり、その間の停電や業務への影響が長引くおそれがあります。
③復旧コストの増大
計画的な更新工事と、突発故障による緊急対応では費用が大きく異なります。緊急対応では、夜間・休日の作業や部材の急な手配で、費用が増えることがあります。計画更新であれば複数社から見積もりを取ることができますが、緊急時にその余裕はありません。
④法令上のリスク
電気事業法第39条は、事業用電気工作物を設置する者に、技術基準に適合するように維持することを求めています。技術基準(電気設備に関する技術基準を定める省令)は、電気設備を感電・火災などのおそれがないように施設すること(第4条)や、高圧の電気設備をその損壊によって一般送配電事業者などの電気の供給に著しい支障を及ぼさないように施設すること(第18条)を定めています。劣化した設備を点検結果を踏まえずに使い続けることは、法令上のリスクにもなります。
⑤資産価値の低下
停電や設備トラブルが続けば、テナントの満足度や入居の判断に影響するおそれがあります。特に法人テナント向けのオフィスビルでは、電気設備の信頼性も建物を選ぶ材料の一つになります。
点検報告書の読み方や、電気主任技術者から更新を求められたときの次の動き方、自社で管理する範囲を決める責任分界点については、以下の記事で解説しています。
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【機器別】築30年超で要注意な設備と劣化のサイン
ここまで、老朽化した設備が抱えるリスクについてまとめてきました。では、具体的にどの機器が更新をしないことによるリスクが高いのか、特に優先して確認すべき機器を整理します。まず、日本電機工業会(JEMA)の「汎用高圧機器の更新推奨時期に関する調査」報告書(2023年3月改訂版)が示す、主な機器の更新推奨時期は次のとおりです。
| 機器 | JEMAの更新推奨時期 |
|---|---|
| 高圧交流負荷開閉器(PAS・UGS・UAS・LBSなど) | 屋内用15年・屋外用10年、または定格負荷電流開閉回数200回 |
| GR付開閉器の制御装置(SOGなど) | 10年 |
| 高圧交流遮断器(VCBなど) | 20年、または規定開閉回数 |
| 保護継電器 | 15年 |
| 高圧配電用変圧器 | 20年 |
| 高圧進相コンデンサ・直列リアクトル・放電コイル | 15年 |
| 計器用変成器(VT・CT) | 15年 |
| 避雷器 | 15年 |
この年数は、メーカーが機能や性能を保証する期間ではありません。通常の環境で通常の保守・点検を行って使った場合に、部材の老朽化などから、新品に替えたほうが経済性を含めて一般的に有利と考えられる時期です。法律で決まった交換期限でもないため、点検結果とあわせて判断します。JEMAの屋内用・屋外用は、設置場所ではなく、屋外での使用を前提とした構造かどうかという機器の仕様による区分です。高圧ケーブルは、日本電線工業会が別に更新推奨時期を示しています(次の項目で紹介します)。
高圧ケーブル:絶縁破壊が波及事故につながる
- 劣化の背景:管路内の浸水などで水の影響を受けると、絶縁体(架橋ポリエチレンなど)に水と電界が影響して小さな亀裂が樹枝状に成長する「水トリー」が進み、絶縁破壊に至ることがあります。地中に埋設されている部分は、外観から状態を把握するのが困難です。日本電線工業会は、高圧CVケーブルの更新推奨時期を、水の影響がある場合10〜20年、水の影響がない場合20〜30年としています。
- 具体的なリスク:絶縁劣化による地絡・短絡事故です。経済産業省は、比較的新しい高圧ケーブルの絶縁破壊によって電力会社に供給支障を与える波及事故が増えているとして、注意を呼びかけています(主な原因は水トリー)。高圧ケーブルの更新推奨時期や診断方法は、高圧ケーブルの種類・耐用年数を解説した記事で詳しく紹介しています。
- 更新時の壁:いざ高圧ケーブルの更新を行おうとしても、古いケーブルが管路内で固着して引き抜けず、配管自体の改修が必要になるなど、想定以上のコストと工期がかかるケースがあります。
PAS・UAS(UGS):事故を配電線から切り離す区分開閉器
- 劣化の背景:架空で引き込む建物では、電柱上にPAS(高圧気中負荷開閉器)が設置され、風雨や雷サージ、塩分などの影響を受けます。地中で引き込む建物では、電力会社の高圧キャビネットの中などに、地中線用の区分開閉器(SF6ガスを封入したガス式のUGS、空気を使う気中式のUAS)が設置されていることがあります。JEMAは劣化の背景として、ガス開閉器ではガスケットの劣化などによるガス漏れ、気中開閉器では接触部の酸化・腐食による接触抵抗の増加を挙げています。
- 更新推奨時期:JEMAは高圧交流負荷開閉器の更新推奨時期を、屋内用15年・屋外用10年(または定格負荷電流開閉回数200回)、GR付開閉器の制御装置(SOGなど)を10年としています。
- 具体的なリスク:SOG付きの区分開閉器は、自社設備で地絡事故が起きたときに開閉器を開いて配電線から切り離し、波及事故を防ぐ役割があります。開閉器や制御装置が正しく動作しないと、自社設備の事故が波及事故につながるおそれがあります。JEMAも、責任分界点などの負荷開閉器に故障が起きると全停電となるほか、配電線への波及事故となった場合には他の需要家も停電し被害が拡大すると指摘しています。UGSとUASの違いはUGS・UASの役割と違いを解説した記事で、PASと高圧ケーブルを更新した実例はPAS・高圧ケーブル更新工事(埼玉県三郷市・工場)の施工事例でご覧いただけます。
VCB(主遮断器)・保護継電器:事故拡大を防ぐ「最後の砦」
- 劣化の背景:VCB(真空遮断器)を主遮断装置に使うキュービクルでは、保護継電器が過電流や地絡などの異常を検出し、VCBに遮断の指令を出します。通常の運転状態だけでは、事故のときに正しく動作するかは分からないため、保護継電器試験(リレー試験)などの動作試験で確かめないと、劣化に気づきにくい機器です。
- 更新推奨時期:JEMAは高圧交流遮断器を20年または規定開閉回数、保護継電器を15年としています。
- 具体的なリスク:事故のときに正しく遮断できないと、構内の事故を切り離せず、電力会社の配電線に事故の影響が及んで、同じ配電線につながる周辺の需要家も停電する波及事故になることがあります。VCBの耐用年数と交換時期は、VCBの耐用年数と交換時期を解説した記事で詳しく紹介しています。
油入変圧器(トランス):故障時の長期停電とPCB・損失の確認
- 劣化の背景:熱や過負荷によって巻線の絶縁紙や絶縁油の劣化が進みます。パッキンの劣化による油漏れや外箱の錆も、劣化のサインの一つです。キュービクルの機器に共通する劣化の要因は、キュービクルの耐用年数と劣化のサインを解説した記事で紹介しています。
- 具体的なリスク:JEMAは、変圧器の故障は経年劣化した変圧器に雷などの異常電圧が侵入して突発的に起こることが多く、一度故障して停電すると、長時間かつ広い範囲で業務が止まるなどのおそれがあるとしています(更新推奨時期は20年)。また、古い変圧器には微量のPCB(ポリ塩化ビフェニル)が含まれている可能性があります。期限の考え方は後の「PCB含有機器の処分期限」で解説します。
- メリット:変圧器は省エネ法のトップランナー制度の対象機器です。古い変圧器を新しいものに替えると、変圧器で生じる損失を減らせる場合があります。基準の内容と更新のメリットは、変圧器のトップランナー基準を解説した記事で紹介しています。
高圧進相コンデンサ:力率低下による基本料金の割増し
- 劣化の背景:高圧進相コンデンサは、力率を改善するための機器です。JEMAは、油入コンデンサの点検項目として、油漏れ、ケースの異常な膨れ、汚損、錆などを挙げています(更新推奨時期は15年)。
- 具体的なリスク:JEMAは、設置方法や取扱いが正しくないと、コンデンサとしての機能を果たさなくなるだけでなく、系統の短絡・地絡などの二次的な事故にもつながる可能性があるとしています。また、東京電力エナジーパートナーの電気需給約款[特別高圧・高圧](2026年4月1日実施)のベーシックプランなどでは、毎日午前8時から午後10時までの時間における1か月の平均力率が85%を下回ると、下回る1%につき基本料金が1%割増しになります。コンデンサが機能しなくなって力率が下がると、基本料金が上がることがあります。
VT・CT(計器用変成器):保護継電器に正しい情報が届かなくなる
- 劣化の背景:高い電圧・電流を、計器や保護継電器が扱える小さな値に変換する機器です。長年の熱や湿気で絶縁の劣化が進むことがあります(JEMAの更新推奨時期は15年)。
- 具体的なリスク:CTやVTに異常があると、計器の表示がずれたり、保護継電器が誤動作・不動作になったりすることがあります。その結果、異常が起きているのに遮断器が動かない、あるいは異常がないのに停電するといったことが起こり得ます。VTの焼損や絶縁破壊は、地絡・短絡事故や、保護装置の動作による停電を招くおそれがあります。
低圧盤・分電盤:テナント・利用者に最も近い火災リスク
- 劣化の背景:高圧から100V/200Vに落とされた電気を各フロアに分配する盤です。長年の振動や温度変化で、ブレーカー端子のネジが緩んだり、湿気や粉塵で端子が腐食したりします。
- 具体的なリスク:端子の緩みや接触不良は発熱の原因になり、放置すると火災につながるおそれがあります。漏電遮断器が経年劣化で適切に動作しない場合は、感電や漏電火災を防げないおそれがあります。
キュービクルを全体で更新するか部分的に更新するかの判断や、トランスの容量の決め方、VCBとLBSの違いは、以下の記事で解説しています。
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優先順位の決め方:3つの軸で考える
「どの機器から手をつけるべきか」は、次の3つの軸で機器を分類することで見えてきます。
- 軸①:「止まると困る」—— 事業継続性への影響
テナントの業務が停止する、エレベーターや空調が止まる、施設全体が使えなくなる——こうした事態に直結する設備は、事業継続性の観点で優先して検討する対象になります。VCB(主遮断器)や変圧器の突発故障は、ビル全体の停電につながることがあります。 - 軸②:「事故になる」—— 人身・波及リスク
周辺への波及事故や火災につながる設備を優先します。高圧ケーブル・PAS(UGS・UAS)・油入変圧器などがここに入ります。事故が起きれば、損害賠償を求められる可能性もあります。 - 軸③:「法令違反になる」—— 法的義務の期限
PCB特別措置法の処分期限や、計量法の検定の有効期間など、期限が定められているものは「優先度が高い・低い」ではなく「やらなければならない」案件として別枠で扱います。次のセクションで詳しく解説します。
この3軸を使って機器を分類すると、「今すぐ動くべき案件」と「計画的に進める案件」が整理されます。予算の制約がある場合も、③の期限があるものは期限から逆算して計画に組み込み、人身事故や波及事故につながる危険がある設備への対応を確保したうえで、点検結果・止まったときの影響・予算を踏まえて更新の順番を決めます。
保安規程の届出や電気主任技術者の選任など、高圧受電の設置者に求められる義務は、以下の記事で解説しています。
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電気工事士に聞く、都市部ならでは高圧電気設備工事の難しさ
解説者
高橋 宏武
インタビュアー
岩見啓明
恒電社には動画・記事の制作、広報、企画、セミナー運営、デジタル広告などマーケティング/クリエイティブ職として入社。2023年に二等無人航空機操縦士(ドローンの国家資格)、2024年に第二種電気工事士資格を取得し、現在は太陽光発電・高圧電気設備の両軸で、カスタマーサクセス/インサイドセールスの役割を担う。≫プロフィールはこちら
―――都市部での高圧設備工事が難しい理由を教えてください。
東京都内の工事が、圧倒的に難しくなる最大の理由は「スペースの制約」です。設備の搬入経路・揚重スペース・重機配置などの諸条件により、地方や郊外に比べてクリアすべき点が多くなります。
また、「時間の制約」も大きいです。オフィスビルや商業施設では、平日の日中作業は避けたい。かといって深夜や休日となると、近隣にマンションへの騒音配慮が必要になる。
詳しくは以前、こちらの記事でご説明しましたので、ご覧いただければ幸いです。
―――仮に、古いままの設備を放置しておいたことが原因で、停電事故が発生してしまった場合、駆けつけ工事が出来ないなどの事態も発生しうるのでしょうか?
十分にあり得る話です。まず大前提として、電気工事(特に高圧設備)を担う会社自体が年々減少しており、いざ停電事故が起きてから対応できる業者を探そうとしても、すぐに見つからないケースが増えています。
仮に対応可能な電気工事店が見つかったとしても、今度は部材の調達という壁にぶつかります。開閉器や遮断器といった高圧設備の部材は在庫を抱えている会社は限られており、発注してから手元に届くまでに数日から数週間かかることも珍しくありません。
さらに、トランスやキュービクル全体の更新となれば、発注から納品まで半年以上を要するため、停電が長期化し、マンションであればその間の生活、オフィスビルであれば生産停止や業務への影響は計り知れません。
※機器の納期は、時期・機種・メーカーによって変わります。キュービクルや高圧ケーブルの納期が長くなる理由と対策は、東京の高圧電気設備工事の納期と費用を解説した記事で紹介しています。
さらに、部材が揃ったとしても、工事自体が一筋縄では進みません。ビルやマンションの高圧設備更新にはクレーン車が必要になることが多く、工場の敷地内で完結する工事とは違い、公道に車両を設置する場合は道路の使用許可を取得し、通行を一部規制した上で交通整理員を手配する必要があります。
※通行規制や交通誘導員の配置は、現場の条件や道路使用許可の条件に応じて決まります。
こうした手続きには相応の時間がかかるため、「設備が壊れたから今日明日で直してほしい」という要望には、現実的に応えられないことが多いのです。
つまり、老朽化した設備を放置したまま停電事故が発生すると、業者探し・部材調達・工事の実施という複数の段階でボトルネックが重なり、復旧までに想定以上の時間を要するリスクがあるということです。
PCB含有機器の処分期限:低濃度PCB廃棄物は2027年3月31日まで
築30年以上の物件では、PCB(ポリ塩化ビフェニル)を含む電気機器が設置されている可能性があります。PCBの処分の期限は、「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(PCB特別措置法)」と関係する政令で定められています。
環境省の資料では、1953年(昭和28年)から1972年(昭和47年)に国内で製造された変圧器・コンデンサーには、絶縁油にPCBが使われたもの(高濃度PCB)があるとされています。また、国内メーカーが1990年(平成2年)頃までに製造した電気機器には、微量のPCBが混入した低濃度PCBの汚染の可能性があることが知られています。高濃度PCBの処分期間は、すべての地域で終了しています。
低濃度PCB廃棄物(使用をやめて保管しているものなど)は、2027年3月31日までに処分(処分の委託を含む)しなければなりません。2026年6月に成立した改正PCB特別措置法(令和8年法律第44号。2027年4月1日施行予定・2026年10月時点)でも、施行前に保管の届出をした低濃度PCB廃棄物はこの期限のままです。一方、使用中の低濃度PCB使用製品は、施行後は届出と管理の対象になります。改正後第8条に基づいて届け出た製品は、使用を終えた日から5年を超えない範囲で政令で定める期間内に処分する仕組みになります。ただし、電気工作物のうち政令で定めるものは、使用中の届出・管理を電気事業法で行うとされており、使用終了後の手続きや処分の期限も別途確認が必要です。
まず確認すべきことは次の3点です。
- 点検報告書・機器台帳・銘板で、変圧器・コンデンサーの製造年・型式・メーカーを確認する(高濃度PCBを使った変圧器・コンデンサーは、銘板で判別できるとされています。通電中の機器の銘板確認は感電のおそれがあるため、電気主任技術者に依頼してください)
- 製造年だけでは対象外と判断できません。1991年以降の製品でも、一部のメーカーのコンデンサーにはPCB汚染の報告などがあり、変圧器は絶縁油の入替えなどの履歴によっても扱いが変わります。銘板・メーカー情報・履歴で判断できない場合は、絶縁油の分析を専門の機関に相談します。コンデンサーのように絶縁油が封じ切られている機器は、採油のために穴を開けると使えなくなるため、使用中の機器の確認方法は専門家に相談してください
- 低濃度PCBを含むと分かった場合は、届出と、濃度や機器の種類に応じて受け入れ可能な処分先(環境大臣の認定を受けた無害化処理施設など)への委託を、期限から逆算して計画する。高濃度PCBの疑いがある場合は、処分期間がすでに終了しているため、速やかに管轄の自治体へ相談する
対象機器の有無が分かれば、期限から逆算して予算と工事の計画を立てられます。処理期限の詳しい区分や、2027年4月から変わる点は、PCBの処理期限と改正PCB特別措置法を解説した記事で詳しく紹介しています。
PCB検査のよくある疑問や、処理期限の全体像は、以下の記事もご参考ください。
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見落としがちな「子メーター(証明用電気計器)」の有効期限と計量法リスク
高圧キュービクルや変圧器に目が行きがちですが、ビルオーナー様が見落としやすいのが、テナントごとの電力使用量を計測する「子メーター(証明用電気計器)」の有効期限です。
電気料金の配分に使う子メーターは計量法の対象で、検定証印などの有効期間はメーターの種類によって10年・7年・5年です(計量法施行令 別表第三)。有効期間を過ぎたメーターを料金の配分(取引・証明)に使うことは、計量法第16条で禁止されており、罰則もあります。
有効期限は、メーターに貼られた検定ラベルや、変成器付計器の検定票で確認できます。
確認すべきポイントは以下の2点です。
- 各テナントの子メーターの有効期限(検定ラベル・検定票の表示)を確認する
- 有効期間が切れる前に、有効期間内のメーターへ取り替える。変成器付計器は、組み合わせる変成器との検査・合番号の適合も確認します
子メーターの種類ごとの有効期間の一覧や、交換工事の内容は、以下の記事で詳しく解説しています。
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まとめ:まずは点検報告書の確認から
この記事のポイントは以下の3点です。
- 築30年超の電気設備は「動いている」≠「安全」
劣化は外観に出にくく、突発故障は復旧コストと事業リスクを一気に高めます。 - 優先順位は「止まると困る」「事故になる」「法令違反になる」の3軸で判断
PCBや子メーターなど期限が決まっているものは、期限から逆算して別枠で計画します。 - まず手元にある点検報告書(電気主任技術者による年次点検などの結果)を確認
現状把握なしに更新計画は立てられません。
電気設備の更新は、一度に全部やる必要はありません。ただし、何も把握しないまま放置し続けると、故障後の緊急対応で、結果的に計画更新よりも費用がかさむことがあります。
恒電社では、現地調査から更新のご提案・工事まで対応しています。点検報告書で更新を勧められた機器がある、どこから手をつけるか決めたい、という段階でも構いません。月次・年次点検などの保安管理は電気主任技術者(または委託先)の業務のため、点検報告書をお手元にご用意いただくと、ご相談がスムーズです。
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古い変圧器などにPCBが含まれているか分からない、見積もりが「一式」で妥当か判断できないという段階でもご相談いただけます。採油と分析の手配から機器の更新工事まで、進める順番をご説明します。
この記事を書いた人
岩見啓明
恒電社には動画・記事の制作、広報、企画、セミナー運営、デジタル広告などマーケティング/クリエイティブ職として入社。2023年に二等無人航空機操縦士(ドローンの国家資格)、2024年に第二種電気工事士資格を取得し、現在は太陽光発電・高圧電気設備の両軸で、カスタマーサクセス/インサイドセールスの役割を担う。≫プロフィールはこちら














