更新日:2026年10月2日
トップランナーⅢ変圧器へ変更前の駆け込み工事
キュービクル更新前
キュービクル更新後
工事の概要|法人向けキュービクル更新工事・PAS新設工事
- エリア :埼玉県 所沢市
- 施設種別:ビル屋上
- 工期 :1日
- 停電時間:8時間
- 費用レンジ:500万円~1000万円
パナソニックホームズ埼玉西株式会社様(埼玉県所沢市)よりキュービクルの更新工事ならびにPAS(気中負荷開閉器)の新設工事のご依頼をいただきました。
第一種電気工事士/第二種電気工事士
鷲巣 純一
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手順・スケジュール
Step0:現地確認・電力会社との手続き
お客さまより全面更新のご相談をいただいた後、まずはお電話にて現状をヒアリングします。その後、現地調査を行い、以下の項目を詳細に確認します。
- 既存キュービクルの外形寸法・設置方法(基礎形状、搬出経路)
- VCB、LBS、変圧器、保護継電器など内部機器の仕様と、PAS・UASなど区分開閉器の有無・仕様
- 引込ケーブル・構内ケーブルのルート・劣化状況
- 周辺状況(搬入スペース、クレーン作業の可否)
- 停電調整の可否と、電力会社申請の必要有無
停電を伴う工事のため、電力会社側の作業や手続きの要否を確認し、必要な申込みと停電日時の調整を行います。
Step1:停電・既存キュービクルの撤去
当日は事前に確認した手順に従って受電を停止します。開路に使った開閉器には施錠や通電禁止の表示などの措置をとり、検電器具で停電を確認します。残留電荷による危険があるときは、安全な方法で放電させます。また、高圧の電路は短絡接地器具で確実に短絡接地してから、撤去作業に着手します。まずキュービクル内部の構成機器から順に撤去します。
高圧ケーブルを開放し、機器ごとに切り離したうえで搬出します。重量物についてはチェーンブロック・台車・クレーン等を用い、慎重に取扱います。
内部が空になったら、外箱の撤去に移ります。撤去した鋼板類は産廃として区分し、クレーンやフォークリフトで搬出します。解体後、キュービクル基礎と周辺の状態を確認し、新設の準備を進めます。
Step2:新キュービクル搬入・据付
新キュービクルを現場に搬入し、所定位置に据付します。大型キュービクルの場合、複数のユニットを順に配置し、連結部をしっかり固定します。これにより、新しい受変電設備を設置する準備が整います。

Step3:高圧受電設備の結線・内部機器の設置
新キュービクル内へ各機器を設置・結線していきます。設置後、以下の試験・測定も併せて実施し、設備全体の安全性と性能を確認します。
- 絶縁抵抗測定
- 導通試験
- VCB/LBS操作試験
- 保護継電器の動作・連動試験(O→T など)
- 変圧器の耐圧試験(必要時)
Step4:試験結果の確認・復電
試験の結果を電気主任技術者が確認し、受電を再開してよいかを判断します。作業者に感電の危険がないことと短絡接地器具を取り外したことを確認したうえで、電力会社による電源側の送電再開が必要な場合はその作業も含め、事前に確認した手順に従って受電を再開します。受電の前後には、次のような点を確認します。
- 引込ケーブル接続の確認
- 保護継電器の整定値の確認
- VCB・LBS の投入/引外し動作確認
- 計器の指示値確認(電圧・電流)
復電後、設備全体の動作に異常がないかを最終チェックします。
Step5:産廃処理・報告書提出
撤去した旧キュービクル・高圧機器・ケーブル・鋼板は、適切に産業廃棄物として処理します。最後にお客さまへ以下を提出し、キュービクル全面更新工事の完了となります。
- 工事報告書
- 試験成績書(絶縁値・導通値・継電器設定等)
- 新キュービクルの機器仕様書



恒電社の3つの特長

導入背景・課題・解決
- 背景:
トップランナー変圧器の第三次判断基準への移行が控えている中、現行基準のうちに変圧器更新を行いたいというご要望がありました。
あわせて、既存設備にはPASが設置されておらず、受電設備の安全性や近隣への影響についても見直しが必要な状況でした。 - 課題:
第三次判断基準へ移行後は、省エネ性能の向上が見込まれる一方で、機器価格の上昇や筐体サイズの大型化が見込まれ、コスト面・設置条件の両面で負担が増える懸念がありました。
また、PAS未設置の状態では、構内で事故が起きたときに配電線を通じて近隣へ停電が波及するおそれがあり、安全面での課題を抱えていました。 - 解決:
現行のトップランナー基準に適合した変圧器を使ったキュービクルへ更新することで、第三次判断基準への移行前に工事を完了し、現行基準のうちに変圧器を更新したいというご要望に沿いました。
さらに、新たにPASを設置し、構内の地絡事故などのときに自社の設備を配電線から切り離せるようにして、波及事故のリスク低減を図りました。
PAS(柱上用高圧交流気中負荷開閉器)とは?
「PAS」は「Pole mounted Air Switch」の略称で「柱上用気中負荷開閉器」といいます。電柱の上に設置され、高圧の電路を開閉する負荷開閉器です。SOG制御装置と組み合わせ、構内で地絡が起きたときは開放し、短絡のときはいったんロックして配電線が無電圧になってから開放することで、周辺の建物まで停電させる「波及事故」を防ぎます。
電流を開閉するときに生じるアーク(電弧)を空気中で消す気中式の開閉器で、地中線で受電する建物では、ガス式のUGSや気中式のUASが同じ役割を担います。
架空線で受電する建物では、構内第1号柱に取り付けたPASの電源側と、電力会社の引込線との接続点が「責任分界点」になるのが一般的です。責任分界点よりお客さま側の設備は、原則としてお客さまの責任で維持・管理します。
責任分界点(電力会社側とお客様側を分ける境目)
電力会社とお客さまの間で、電気設備の保安上の責任範囲を分ける地点です。位置は電力会社との協議で決まります。決まり方と確認方法は、責任分界点を解説した記事で詳しく紹介しています。

ルール・法律・更新目安
複数機器の老朽化が重なる全面更新のタイミング
キュービクルは、変圧器・VCB・LBS・保護継電器・コンデンサ・避雷器など多くの高圧機器を一つにまとめた設備で、機器ごとに更新の目安が異なります。日本電機工業会(JEMA)の「汎用高圧機器の更新推奨時期に関する調査」報告書(2023年3月改訂版)では、更新推奨時期を高圧配電用変圧器で20年、高圧交流遮断器で20年または規定開閉回数、保護継電器・避雷器・高圧進相コンデンサで15年、高圧交流負荷開閉器で屋内用15年・屋外用10年(または定格負荷電流開閉回数200回)などとしています。屋内用・屋外用は、キュービクルの設置場所ではなく、屋外での使用を前提とした構造かどうかによる機器の区分です。この年数は製造者の保証値ではなく、通常の環境で通常の保守・点検をしながら使った場合に、新品と交換したほうが経済性を含めて一般的に有利と考えられる時期です。
本事例で新設したPASも高圧交流負荷開閉器で、同じ報告書は屋外用の更新推奨時期を「使用開始後10年、又は定格負荷電流開閉回数200回」、GR付開閉器の制御装置を「使用開始後10年」としています。PASの役割と交換時期の目安は、PAS(高圧気中負荷開閉器)を解説した記事で紹介しています。
税法上の法定耐用年数は減価償却の計算に使う年数で、機器の寿命や更新の時期を示すものではありません。法定耐用年数と更新推奨時期の違いは、キュービクルの耐用年数と更新推奨時期の違いを解説した記事で確認できます。
設置から年数がたったキュービクルでは、複数の機器が同じ時期に更新推奨時期を過ぎていることがあります。点検報告書の指摘内容や部品の供給状況もあわせて見て、機器ごとに更新するか、キュービクル全体を更新するかを判断します。更新工事の流れと、停電当日までに設備オーナーが準備することは、キュービクル更新工事の流れと手順を解説した記事で紹介しています。
停電計画と最新設備への更新メリット
全面更新では停電が必要になるため、操業スケジュールや夜間・休日作業の可否、冷蔵・IT設備への影響などを事前に確認し、停電の日時と時間を計画します。停電時間の決まり方と短くするための準備は、停電時間を短くする事前準備と現場対応を解説した記事で紹介しています。
変圧器について、JEMAの報告書は、電力損失の少ない新しい変圧器に早めに取り替えることで、日々の運転損失を減らし、突然の故障による停電の危険性も減らす効果が期待できるとしています。新しい変圧器の省エネ基準(トップランナー基準)は、変圧器のトップランナー基準を解説した記事で確認できます。
法令遵守とPCB確認を含む撤去手続き
キュービクルなどの事業用電気工作物を設置する者は、国の技術基準に適合するように維持しなければなりません(電気事業法第39条)。キュービクルの全面更新工事もこの基準に適合するように施工します。6,600Vで受電する一般的なキュービクルの機器更新は、通常、工事計画の届出の対象ではなく、工事計画の届出をして設置・変更する事業用電気工作物のうち省令で定めるものに課される「使用前自主検査」(電気事業法第51条)の対象にもなりません。工事後は、設置者が定める保安規程に基づき、工事内容や機器の仕様に応じた点検・試験を電気主任技術者のもとで行い、安全を確認してから受電を再開します。工事の日程や停電・試験の段取りは、保安の監督を行う電気主任技術者と事前に打ち合わせて進めます。
既存キュービクル内の古い変圧器やコンデンサには、絶縁油に微量のPCB(ポリ塩化ビフェニル)が含まれている可能性があります。銘板の製造年・型式、メーカーへの照会、メンテナンスの履歴などで確認し、判断できない場合は絶縁油を分析します。封じ切りのコンデンサのように、採油すると使えなくなる機器もあるため、採油の可否や方法、分析の時期は機器に応じて確認します。
低濃度PCBを含む機器のうち、すでに廃棄物として保管しているもの(使用をやめた機器など)は、保管の届出をしたうえで、2027年3月31日までに処分(処分の委託を含む)しなければなりません。2026年6月に成立した改正PCB特別措置法は2027年4月1日に施行される予定ですが(2026年10月時点)、施行前に保管の届出をした低濃度PCB廃棄物には改正前の規定が適用され、この期限は変わりません。施行後は、使用を終えた時期や低濃度PCB廃棄物と判明した時期などによって扱いが変わります。使用中の機器の届出・管理を含めた期限の区分は、PCBの処理期限と2027年4月からの新制度を解説した記事で整理しています。なお、高濃度PCBの処分期間はすべての地域で終了しており、新たに見つかった場合は管轄の自治体へ連絡します。
PCBを含まない機器も、撤去後に産業廃棄物として処理する場合、運搬・処分を他人に委託するときは、法令上の例外を除きマニフェスト(産業廃棄物管理票)を交付して管理します。
PCBの確認方法や処分の進め方、費用の負担など、更新前によく寄せられる疑問には、以下の記事で12の質問に答えています。
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仕様・条件
- 型番:
PF-S型キュービクル 1Φ50KVA 3Φ75KVA
戸上電機PAS 方向性300A 300APTLA LA,VT内蔵 - 施工条件:
ビル屋上にあるキュービクルの上げ下ろしにはラフタークレーンを使用しました。ラフタークレーン設置場所からキュービクル設置場所まで高低差並びに距離があったため、作業の仕方についてラフターオペレーターとの打ち合わせを密に行ったうえで実施しました。 - 安全対策:
ラフタークレーン使用時は、事故防止のため警備員を配置するとともに、カラーコーンを設置し、作業半径内への立ち入りを禁止しました。高所作業車の使用時は、現場環境に応じて最適なサイズ・仕様のものを選定します。ラフタークレーンと同様に周囲には立入禁止区域を設定し、落下物や車両の転倒による周囲への被害を防ぐため、作業帯の確保と標識設置を徹底しています。
キュービクルの使用年数が長くなっている、変圧器の更新とPASの設置をまとめて検討したい、という段階でもご相談いただけます。恒電社が現地で設置状況や搬入経路を確認し、電気主任技術者の点検結果も踏まえて、電力会社との手続きや停電日の調整、クレーンの手配を含めた工程をご提案します。
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